永い言い訳

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784163902142

作品紹介・あらすじ

長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが...。突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。
第153回直木賞、2016年本屋大賞にノミネートされ、2016年10月に著者本人により映画化が予定されている。

感想・レビュー・書評

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  • 西川美和さん「ゆれる」に続いて2作目
    「ゆれる」は映画あっての小説
    オダジョー&香川あっての映画

    今作はまず小説…映画化見越しての作品です。
    凄いですね西川美和(o_o)
    自己愛、承認欲求が強くて捻くれ具合も半端ない。
    小説家なので他人に対してあれこれ自分勝手に分析し、都合よく解釈してほくそ笑む。
    冒頭から主人公の最悪な人となりは当然読み手にはバレてます。
    でも私は「あ〜コイツちょっと好きかも」って思ったんですね笑
    たぶん自分の中にも似たような部分があるのでしょうね( ̄▽ ̄)

    「愛するべき日々に愛することを怠ったことの代償は小さくはない」この言葉にやられました。

    ちなみに映画は本木雅弘です
    もうモッくんしか有り得ない‼︎
    お茶のCMのあのキャラでのモッくん
    バラエティで喋ってキャラ崩壊するモッくん

    素直な方は主人公が変わっていく姿に感動し
    捻くれた方は主人公を理解しつつラストまで引き込まれると思います。

    ゆれる、永い言い訳…DVD観たいなぁ

    • みんみんさん
      おびさんならわかってくれる!と思う笑
      そしてレビューを読んでみたい\(//∇//)
      おびさんならわかってくれる!と思う笑
      そしてレビューを読んでみたい\(//∇//)
      2023/03/15
    • ゆーき本さん
      みんみんさんこんにちは◡̈*.。
      幸夫 いいですよね。
      自分のダンナさんだったら…ちょっと困っちゃいますが笑
      真平の合格発表でおいおいないち...
      みんみんさんこんにちは◡̈*.。
      幸夫 いいですよね。
      自分のダンナさんだったら…ちょっと困っちゃいますが笑
      真平の合格発表でおいおいないちゃう幸夫が
      なんだか大好きです(*´`)♡
      2023/03/16
    • みんみんさん
      ゆーきさんも読んだんですね\(//∇//)
      ダンナはごめんだけど面倒くせーって言いながら友達になってあげたい笑
      ゆーきさんも読んだんですね\(//∇//)
      ダンナはごめんだけど面倒くせーって言いながら友達になってあげたい笑
      2023/03/16
  • 夕べは途中でやめられなくなって結局夜中まで読んでしまった。寝不足である。おまけに最後は涙が止まらなくてぐちゃぐちゃになったせいで目も腫れてる冴えない顔で出勤。

    西川美和さんと言えば「ゆれる」で有名な監督。
    この映画を見た時は衝撃的だったよなぁ。
    人間の奥深くに潜む心理をこれでもかってほどあぶり出して。
    でも決していやな面ばっかり映し出すわけじゃないあったかさがあって。

    で、本書。
    ちょっと前に読んだ短編集「きのうの神様」も珠玉の作品揃いだったこともあり、書き下ろしの長編に期待しないわけがない。
    いやー、良かったね。もう全てが良し。
    正しい日本語を使った綺麗な文章。ユーモアのセンスもそこかしこに。

    ストーリー自体は良くある話。
    交通事故で突然妻を亡くした男の再生ストーリー。
    ユニークなのはこの男、作家津村啓が悲しみの感情も喪失感も持っていないということ。涙一つ流さずに愛人と逢引したりしてる。
    なにしろいやな男、普通じゃない。

    西川さんの巧い所は、彼に対比させて陽一と言う同じく妻を亡くした男を登場させている点。
    彼の妻は津村の妻と同級生で一緒の旅行中に命を落とした。
    陽一は津村とは正反対の妻の死を全力で悲しむ直情型。
    津村のようなプライドだとか体裁だとか全く気にせず感情で突っ走る。

    津村は陽一そしてその子供たちの交流によって変わっていく。
    自分の知らなかった妻、自分の見ようとしなかった妻の姿を知りうちのめされる。
    果たして彼は再生できるのだろうか。

    身勝手で我がままで器が小さくて、最低なんですよ。
    陽一は陽一でがさつだし不器用だし、子供の気持ち分かってないし。
    この二人を交わらせるバランスがもう絶妙。
    そして圧巻は子供たちかな。この物語の要と言っても良い。
    あー、いい話だったな。号泣間違いなしです。

    作家としても一流の西川さん。果たして直木賞受賞なるか。
    もっともっと小説も書いてほしいと思う一方、映画もどんどん作ってほしい。
    いちファンとしては複雑な気もち。
    いずれにしても類まれな才能の持ち主であることには変わりない。
    次作もとっても楽しみ。

    • nejidonさん
      vilureefさん、こんにちは♪
      またまた興味をそそられる本ですね!
      ワタクシもこの作家さん大好きです。
      流行りの本とか売れている作...
      vilureefさん、こんにちは♪
      またまた興味をそそられる本ですね!
      ワタクシもこの作家さん大好きです。
      流行りの本とか売れている作家さんの本を読むのは気恥ずかしいのですが、この方のは別。
      お腹に『別腹』があるように、本にも「別本」があるみたいです(笑)
      こちらの図書館ではまだまだ借りられませんが、この夏きっと読んでみたいです。
      2015/07/17
    • vilureefさん
      nejidonさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます(*^_^*)

      ブクログにレビューを書くのをサボっていたせいか、自分で...
      nejidonさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます(*^_^*)

      ブクログにレビューを書くのをサボっていたせいか、自分で書いたこのレビューを読んでもピンとこないし、10分の1も良さを描けていないとアップするのも気恥ずかしい思いでした。
      それでも少しは伝わったかな?(^_^;)

      西川さん、残念ながら直木賞とれませんでしたね・・・。でも才能のある作家さんですよね。
      nejidonのレビュー読みたいです!
      楽しみにしていますね♪
      2015/07/17
  • 人は大切な人との突然の別れに直面したときに、どうなってしまうのか…。

    面白いのは突然妻を失った立場は同じなのに、
    悲しくない幸夫と、ひたすら悲しむ陽一の対照的な姿。

    プライドばかり高くて、誠実さのかけらもない幸夫。
    どこまでも不器用なくらい真っ直ぐな陽一。

    幸夫が、陽一とその二人の子供達に翻弄されながら、
    (また、この子供たちがいいんですよ!)
    どんどん人間らしく(笑)なっていく様子が最高に面白いです。
    哀しみの中に、時折「くすっ」と笑わせてくれるところもあってね。


    「もう愛してない。ひとかけらも…。」
    そんな言葉を残していた夏子。

    世の中にはいろいろな夫婦関係がある。
    生きていても、もしかしたら別れていたかもしれない。
    それでもその積み重ねた時間には、
    大切な何かがきっとあったはずで…。

    もうね、幸夫の夏子に宛てた手紙が切なくて…。
    永い時間をかけて、やっと泣くことができた幸夫。
    生きているうちに向き合えなかった妻に
    ようやく向き合うことができて、
    失くしてみて初めてわかる大切さに気づく。

    愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償。
    とても胸に染みます。

    • ortieortieさん
      こんばんは。「花桃実桃」にコメントありがとうございます。なんだかとっても嬉しくなりました。ありがとうございます。
      「長い言い訳」杜のうさこ...
      こんばんは。「花桃実桃」にコメントありがとうございます。なんだかとっても嬉しくなりました。ありがとうございます。
      「長い言い訳」杜のうさこさんのレビューでたまらなく切なくなりました。今度手に取ってみようと思います。
      その時はまたお邪魔致しますね。
      2016/03/16
    • 杜のうさこさん
      ortieortieさん、こんばんは~♪

      こちらこそ、コメントありがとうございます。
      『永い言い訳』良かったですよ!
      レビューにも...
      ortieortieさん、こんばんは~♪

      こちらこそ、コメントありがとうございます。
      『永い言い訳』良かったですよ!
      レビューにも書きましたが、
      切なさの中に、くすくすって笑いがこぼれるような、そんな物語でした。
      そんな風に思って頂けて、とても嬉しいです。
      また感想を聞かせて下さいね。
      楽しみにしています♪
      2016/03/17
  • 愛という漠然としたものの形が分かる人はいないです。しかし、特定の人といる時に湧き上がる喜び、失ったときに押し寄せる悲しみの中にそれが有るんでしょうか。
    自分の過去を振り返った時に、恋愛関係の中にそれらしきものが正直ありませんでした。激しい感情の起伏は当然有りましたが、相手を思いやる事なんて本当に有ったかなと首を傾げるばかりです。
    今、家族を持って、心の中に静かに満ちている静かな喜びがあるのを感じます。これが愛ならとても理解できるなあと。もし失うとなったら全力で抗うべき幸せが今あります。

    不実な主人公「幸雄」はそういう静かな喜びの中では幸せを感じられない男でした。小説を書く才能に恵まれて成功するも、妻との関係の中では恋愛関係の起伏のまま家族になれなかった。そして妻はバス事故で亡くなってしまいます。
    一方妻の友人も同じバス事故で亡くなり、妻を失った同士が出会った時、愛を得て失ったものの深い悲しみと、漠然と同居人を失って戸惑っているだけのような幸雄。
    幸雄は妻の友人の子供と触れ合うようになって、湧き上がる感情に「愛」という名前を付けられるようになりました。妻が亡くなる前より活き活きしている幸雄。
    我儘でどうしようもなく不実な夫であった彼を取り巻く人々は、心の中で、また言葉に出して彼を責めます。こりゃ仕方が無い、責められて然るべきだなと思います。
    でも、不毛なはずの心からザクザクと豊かな感情を掘り起こされる彼の変貌ぶりには、読者としては苦笑交じりのエールを送りながら読んでしまいます。

  • 自分が普段無意識に隠している弱くて、脆い部分を西川流の鋭い言葉のナイフですっと切り取り出され、表に出されているような感覚。登場人物の言葉や心の動きに自分が散在する。自己肯定の念を抱けず、拗らせたおじさん主人公の幸夫。自信がなくて甘えたいのに、その自信のなさゆえに、妻も含めた他者に対して優位を保つことでしか自分の存在価値を見出せない。人と繋がりたい、必要とされたい、支えも欲しい。でも傷つきたくない。私もそう。人がいかに未熟で、みっともなくて、弱くて、だけどいかに愛らしいか、どの登場人物も魅力に満ちている。

  • 初めは、幸夫はなんて男だ!と思った。いくらなんでもそれはないだろうと。作家でありながら、情緒のひとかけらもない人間。非情。冷淡。
    でも途中ではたと気付く。幸夫が陽一や子供たちに抱いていた思い。自分がいなければ、この家は成り立たない、という思いは、最初は夏子が抱いていたものなのだろうと。夢を追う夫を、自分が支える。自分がいなければ、この人はダメになる。ところが、幸夫の才能は開花し、世間に認められていく。同時に、夏子は生きる理由をなくしていく。
    最初に手を離したのは、実は夏子の方だったのではないか。幸夫はほんとうにどうしようもない男だけれど。でもそこには、たしかに、愛があった。
    これは、幸夫が妻に宛てた、永い永い言い訳と、ラブレターだ。

  • 西川美和さんの本は初めて読みました。
    映画監督でもある西川さんですが、西川さんの映画も見たことがない私…
    この本は第153回直木賞候補作。


    HPの作品紹介に書かれているのは
    「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」

    長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。
    悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、
    同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。

    突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。
    人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。


    ゆっくり、じんわりと染み込んでくる本でした。
    2016年秋に映画化されるらしい。
    主演は本木雅弘氏、その妻には深津絵里さん。
    これはいい!
    ピッタリだわ~^^

  • 小説家・津村啓こと衣笠幸夫。
    その妻の夏子と親友の大宮ゆきは、二人旅行中、バス事故に巻き込まれ、ともに命を落とします。
    しかし幸夫は、夏子の死を悲しむことができない自分に気づきます。
    そんなとき、大宮ゆきの夫・子どもたちたちと関わることになり…

    主に幸夫が語り手ですが、章によっては語り手が変わります。
    時間も戻ったりします。
    手紙のような語りになったりもして、読みにくさはぬぐえません。
    内容的には、すごく考えさせられたのですが、読みにくさが☆3つにした理由です。

    はじめ、「永い」言い訳とは、どういう意味なのだろう?と、思いました。
    妻を亡くした小説家が、長い時間をかけて、自分を正当化しつつ言い訳を並べるのか?と思いきや、全然ちがいました。

    読み終えて、2つ感じたことがあります。
    1つ目は、相手に愛を感じていなければ、悲しみは生まれないんだ、ということです。

    幸夫と夏子は恋愛結婚ですが、夏子が亡くなったとき、幸夫のなかには夏子への愛は忘れられて見えなくなっていました。

    心のどこかにはあるのに、見えなくなった愛、忘れられた夏子への愛。
    しかし、大宮一家との出会いで、幸夫はだんだん愛というものがなにかを、思い出します。
    そして、やっと思い出すのです。
    自分が夏子を愛していたことに。

    「永い」時間をかけて、思い出した愛。
    夏子への愛を思い出すということは、同時に、夏子を失ったことを本当に実感することでもありました。
    そうして永い時間を経て、幸夫は涙をこぼしたのです。

    2つ目は、「人と関わらずに生きることは、しあわせか?」という疑問です。

    「つくづく思うよ。他者の無いところに人生なんて存在しないんだって。人生は、他者だ。」(306ページ)

    わたしは常々、自分がしあわせと思えれば、しあわせなんだ、と考えてきました。
    しかしこの「人生は他者だ」という言葉を読み、他者はなぜ自分が在るために必要なのか、考えました。

    そもそも、他者がいなければ人間関係のストレスはありません。
    いっけん、それはストレスのない、しあわせな世界に思えます。

    しかし他者がいないということは、自分と他者を区別する必要がない、ということです。
    つまり、自分が何者かを考える必要がなくなり、自分という存在が不確かなままでよくなるのです。

    他者がいるから、他者と自分のちがいを知り、自分が何者かを知ることができます。
    他者がいない世界は、同時に「自分」もいない世界と言えます。
    その世界には、他者がいるからこそ生まれる、悲しみも苦しみもないのかもしれません。
    同時に、他者とわかちあう喜びや楽しみ、愛おしさも何もない世界です。
    その世界にしあわせは生まれません。
    他者なくして、自分はわからないし、自分がわからなければ、自分の人生は歩むことがてきないのです。
    それが「人生は、他者だ。」ということなのです。

    自分のしあわせ(幸夫のしあわせ)の礎には、みえない他者(夏子)がいたのです。

  • お互いの妻を事故で亡くした幸夫と陽一。これを縁に幸夫は陽一家族の手助けをする。欠けていた何かが埋まる。

  • 突然のバス事故で妻を亡くした二人の男、妻同士は親友だった繋がりで知り合い付き合う形になる。二人に共通項は無いがある意味 大人に成れていない事が似ている。片や作家 片やトラックドライバーだがドライバーの二人の子供を媒介にして少しずつ大人になっていく。読み手側としては双方の男に対する反発や共感を覚えながらも そう言えば自分にも あるある感を受けながら読み進んだ。
    その年度の本屋大賞候補になったことに納得です。映画監督 エッセイスト 小説家と多才で、上手い作家さんです。

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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