オールド・テロリスト

著者 :
  • 文藝春秋
3.80
  • (57)
  • (120)
  • (66)
  • (17)
  • (3)
本棚登録 : 769
レビュー : 108
  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902395

作品紹介・あらすじ

日本はもう一度、焼け野原になるべきなのか?経済の衰退した近未来の東京。「満州国の人間」を自称する謎の老人達が、次々に凄惨なテロを仕掛け始めるが…。著者の新たな代表作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  『半島を出よ』以来の村上龍で、厚さにためらって読まずに放置していたのだけど最初の1ページから面白かった。以前はもっと貧乏やダサいものに辛辣だったのだけど主人公がボロアパート住まいのくたびれ果てた中年で、なんだか優しかった。精神安定剤を飲みすぎで、とても辛そう。性的に全く旺盛じゃない。

     クライマックスはあっさりしていたけど、いかにもあり得そうでよかった。長生きすればするほど地獄というのも現実にあるので、こんな老人が現れても不思議じゃない。うちの祖母はもうすぐ100歳ですっかりボケてしまっていて、つらそうだ。

  • 村上龍氏の作品「オールドテロリスト」を読了。文芸春秋に連載されていた作品が単行本化された本だが、よもうよもうと思いながらもテロリストというタイトルに気がひけ読む野を躊躇していた作品だ。

    今回北海道へ戻って働くという転機を迎え、思い切って読んでみた。

    村上龍氏と古市憲寿氏の『この国の希望は何処にある』という対談のなかで古市氏の氏である小熊英二氏が若者、大人、老人の定義を「未来で評価される人が若者、現在で評価される人が大人、過去で評価される人が老人」としているというくだりがあったのだが、その定義にしたがうとこの物語に出てくるテロリスト達は歳は60、70、80代だが決して老人ではない。過去の実績などにはしがみついてはおらずいまもしっかり自分の基盤を持っている年齢は高いがしっかりとした大人達だ。

    彼達がテロを起こし、その真意を世に伝えるべく彼らから選ばれるのが主人公のセキグチだ。高齢のテロリスト達はどうやって未来に関与できるかを考えたあげくテロを起こすのだ。

    主人公セキグチは村上龍の以前の作品「希望の国エクソダス」にもでていたのだがその作品で独立国家を作ろうとする中学生の集団のリーダーが「この国にはなんでもあるが希望だけがない」という印象的な言葉を発していたのだが、その作品から15年後に書かれたこの「オールドテロリスト」の世界でも希望はまったく感じられない世の中であり、その現状打破の為に高齢のテロリスト達が立ち上がったというストーリーだ。

    作品のなかでのマスコミの凋落具合に関する表現も鋭く、「いまのマスコミの当事者が自分たちが真実を伝えていないという事自体に気付いていない」と切り捨てているが、元老の不自由さを海外から指摘されていてもいまだ何も変わらない今の状況を憂う筆者の嘆きの具合が深いのもよく伝わってきた。

    この作品を東京を離れるという転機の今に読んだのはとてもラッキーだった。希望を見つけにくい今の日本をあきらめてしまい自分を老人として世の中への関与をしなくなってしまうのではなく、危機感をなくす事なく何らかの社会への寄与が出来るような生き方をしなくてはとの思いを強くした。

    色々な人たちと仕事をしたなかで得た経験・知恵を国を形作る小さな部品である地方でそれらを生かすという事にチャレンジしたみたいと思わせてくる作品だ。

    セキグチとこうどうを友にする和風美人セキグチの愛に関するコメントもぐっとくるものが大いので、高齢の人たちだけではなく色々な人が楽しめると思う。

    そんな大人と老人ということを考えさせられる作品を読むBGMはTuck&Pattiの"Tears of Joy"だ。Time after Timeの名演だと思う。
    https://www.youtube.com/watch?v=N4ahjXagmWI

  • お久しぶりの村上龍。春樹より龍派。

    表紙からして,はっちゃけた武装爺さんたちがはちゃめちゃなテロ事件を起こしまくる話かと思ったら,思いのほか重苦しかった。

    舞台はほぼ現代の日本。大震災後,原発事故後で東京オリンピック前というどんぴしゃの設定。そして閉塞感ましましのいつもの村上龍ワールドは変わらず。

    主人公は「希望の国のエクソダス」で中学生らを取材したあの人で,今は落ちぶれきったただの無気力なおじさん。

    対する爺さんたちは,年は取ってるけど社会的地位も高くて意志の力にあふれててよっぽどしゃんとしてて,ましましの閉塞感みたいなものを打ち壊したいテロリスト。

    爺さんたちの計画に主人公が巻き込まれていって,爺さんたちの主張に心揺れたり,でもテロはだめって思ったりと葛藤してゆくのですが,物語の読者としてはどうしても爺さんたちに肩入れしたくなる。

    主人公はほんと駄目人間で,吐いたり精神安定剤のみまくったり震えたり泣いたりばかりしているので,さわやかな読後感は感じない笑

    でも続きというか,その後がどうなったのかが気になる本。やっぱり村上龍はいいなあ。

  • いや~久しぶりの村上龍さんです。
    コインロッカーベイビーズ以来か?そんなわけないか。
    なんか久々に骨太の小説を読んだ、という感じです。
    そうか世のお年寄りは怒っているのね。
    いい加減なメディアに、ルールを守らない自転車乗りに、その他いろいろ・・・
    まあお年寄りじゃなくても、ルール違反は困りますけれど、それらを罰していくという少々過激なお年寄りと、そのお年寄りに指名された三流週刊誌の記者(廃刊により失業、妻子に逃げられホームレス寸前)のバトルというか、テロリスト集団の核心に迫っていくというお話です。
    ちょっと残虐で、ちょっと考えさせられる一冊でした。

  • 2015.11.2開始
    2015.11.9読了
    「希望の国のエクソダス」に登場したライター・セキグチが主人公。

  • すでに社会の中枢から(表面的には)外れた老人たちによるテロという着想がおもしろいし、現実社会とのシンクロも見事で、あながち荒唐無稽と思わせない。気になったのは主人公セキグチのグダグタ振り。グダグダ過ぎてリアリティがそがれる。ここさえなんとかすれば、もっとスピード感のある小説になったと思う。惜しい。

  • 珍しく中盤からなかだるみに感じたのはあたしが劣化したからか?ともあれ2011年にこのテーマで書けるのがすごいと思う。できればポンちゃん絡めて完結編が読みたいけど、そんな類ではないこともわかってる。

  • [外の世界や人々に押しつぶされる、それこそが不幸、
    何とか折り合いをつけながら生きていく状態を普通、
    外の世界は人々を従わせたり、関わり合って変化させ、利益を得るのが勝ち組であり幸福、

    というような風潮もあるかと思うんですが、わたしは、年齢を経るにつれて勝ち組とか幸福ではなくて、普通を選びたいと思うようになったんですね。
    何とか折り合いをつけながら生きていくということですが、そのことには実際、普通以上の価値があると、今は確信しております。勝ちや幸福を超えたものかも知れない]

    いいね。
    生活をしていれば日々トラブルが出てくる。それを何とか折り合いを付けながら生きていく。この普通の生き方が良いのだろうと思う。
    あるべき姿に向かって進み続けるのは苦しいだろう。

    [オールド・テロリストたちは、日本をリセットしたいんだよね]

    これはいけないよ 
    いくら経済に活気が出るといっても、戦争直後の生活苦は今の人は耐えられないと思う

  • 『希望の国のエクソダス』のレビューに書いたように、子供たちのパワーに対する期待と畏れが空回りに終わった今、老人パワーを主題にするのは理解しやすい。
    だが、その描き方がちょっと自分が思っていたものと違った。
    老人たちがマッチョすぎる。

    今の高齢者たちの持つパワーの恐ろしさって、戦中戦後を生きてきた世代として、同時代を生き抜いてきた同質的な団結力・集団性みたいな、日常的なところにあると個人的には思っている。
    「昭和の妖怪」的な空恐ろしさというのも解るのだけれど、そこじゃないだろという気がする。
    老人たちが、実行犯として病んだ若者たちを利用するというのもちょっと違う。
    やはりこれはこれで老人たちを買いかぶりすぎというか、高みに乗せすぎなのだ。

    謎の美女・カツラギの造形と、主人公と彼女との関係性にけっこうドキドキさせられるのは望外の収穫。

    テロの描写も迫力あってよいが、巣鴨の書道教室や精神科医との糸電話など、エキセントリックな場面造型が印象に残る。

  • 2016.1記。

    村上龍の最新長編。テーマはずばり「連続テロ」。現場の凄惨さ、人体損壊のグロ描写は相変わらず(映画館のシーンはやばかった・・・)。テロリストに指示されるまま次々と現場に居合わせる羽目になる主人公のメンタルが追い詰められていくところ、とくに過呼吸と思考の迷走は共鳴しすぎて読んでいて辛い。

    そしてテロリストが最終的に標的にしているのは「原発」。テロ集団の正体は、旧満州に関わりのある老人たち(オールド・テロリスト)であり、今のどうしようもない日本を「もう一度焼け野原に戻す」ことを目指していることが明らかになってくる。

    テロ被害への怒りと、老人たちのある意味凛とした生き様との間で読み手に迷いを生じさせる術は手練れの村上節。プロット上の多少の「?」はものともせず疾走する、冴えわたるストーリーテリング。テロリストたちが掲げるVサインの意味、のところで不覚にも私は(満員電車の中で)目頭が熱くなった。

    ところで、本作は、ごく乱暴に言えば「満州というひとつの時代・地域が生み出した何者か(おそらくはシステムそのもの)が現代にも作用しており、それと向き合うことになるのが一見社会の落伍者に見えるがしかし誠実に生きている誰かである」、という内容だ。

    ここで村上春樹の80年代の傑作、「羊をめぐる冒険」を思い出さないわけにはいかない。「背中に星の模様のある不思議な羊をさがす旅」という寓話的な内容だがテーマはまったく同じに思える。本作において村上龍は、まるで春樹の過去の作品群を、2018年の日本という舞台でのよりリアルな「シミュレーション」として語り直しているかのようだ。

    、当時の人脈や組織(例えば某マスコミ)が現代にも生きていること(「羊をめぐる冒険」)。精神を病み、それゆえにシャーマンとして機能する美貌の女性カツラギは、まさしく「ねじまき鳥クロニクル」における加納クレタと重なる。悪の権化でありながら同時に抗いがたい魅力を放ち、自らを殺すように誘導する首謀者たち(「1Q84」との整合性)。不特定多数の人々の集まる場所への恐怖感(「多崎つくると彼の巡礼の年」における駅の描写)と、災厄の予兆を感じ取る市井の人(「かえるくん、東京を救う」)・・・。

    こじつけすぎ、かなあ・・・

全108件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1952年長崎県生まれ。76年に『限りなく透明に近いブルー』(第75回芥川賞受賞)でデビュー。2003年には、514の職業を紹介した『13歳のハローワーク』が125万部を超えるベストセラーに。財政破綻した近未来日本を舞台にした『半島を出よ』(05年)では野間文芸賞を受賞。10年には『歌うクジラ』(毎日芸術賞)を電子書籍として刊行。 近著に『55歳からのハローライフ』、『オールドテロリスト』などがある。16年に『日本の伝統行事 Japanese Traditional Events』を刊行。

「2018年 『収録を終えて、こんなことを考えた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村上龍の作品

オールド・テロリストを本棚に登録しているひと

ツイートする