オールド・テロリスト

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 734
レビュー : 103
  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902395

作品紹介・あらすじ

日本はもう一度、焼け野原になるべきなのか?経済の衰退した近未来の東京。「満州国の人間」を自称する謎の老人達が、次々に凄惨なテロを仕掛け始めるが…。著者の新たな代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 村上龍氏の作品「オールドテロリスト」を読了。文芸春秋に連載されていた作品が単行本化された本だが、よもうよもうと思いながらもテロリストというタイトルに気がひけ読む野を躊躇していた作品だ。

    今回北海道へ戻って働くという転機を迎え、思い切って読んでみた。

    村上龍氏と古市憲寿氏の『この国の希望は何処にある』という対談のなかで古市氏の氏である小熊英二氏が若者、大人、老人の定義を「未来で評価される人が若者、現在で評価される人が大人、過去で評価される人が老人」としているというくだりがあったのだが、その定義にしたがうとこの物語に出てくるテロリスト達は歳は60、70、80代だが決して老人ではない。過去の実績などにはしがみついてはおらずいまもしっかり自分の基盤を持っている年齢は高いがしっかりとした大人達だ。

    彼達がテロを起こし、その真意を世に伝えるべく彼らから選ばれるのが主人公のセキグチだ。高齢のテロリスト達はどうやって未来に関与できるかを考えたあげくテロを起こすのだ。

    主人公セキグチは村上龍の以前の作品「希望の国エクソダス」にもでていたのだがその作品で独立国家を作ろうとする中学生の集団のリーダーが「この国にはなんでもあるが希望だけがない」という印象的な言葉を発していたのだが、その作品から15年後に書かれたこの「オールドテロリスト」の世界でも希望はまったく感じられない世の中であり、その現状打破の為に高齢のテロリスト達が立ち上がったというストーリーだ。

    作品のなかでのマスコミの凋落具合に関する表現も鋭く、「いまのマスコミの当事者が自分たちが真実を伝えていないという事自体に気付いていない」と切り捨てているが、元老の不自由さを海外から指摘されていてもいまだ何も変わらない今の状況を憂う筆者の嘆きの具合が深いのもよく伝わってきた。

    この作品を東京を離れるという転機の今に読んだのはとてもラッキーだった。希望を見つけにくい今の日本をあきらめてしまい自分を老人として世の中への関与をしなくなってしまうのではなく、危機感をなくす事なく何らかの社会への寄与が出来るような生き方をしなくてはとの思いを強くした。

    色々な人たちと仕事をしたなかで得た経験・知恵を国を形作る小さな部品である地方でそれらを生かすという事にチャレンジしたみたいと思わせてくる作品だ。

    セキグチとこうどうを友にする和風美人セキグチの愛に関するコメントもぐっとくるものが大いので、高齢の人たちだけではなく色々な人が楽しめると思う。

    そんな大人と老人ということを考えさせられる作品を読むBGMはTuck&Pattiの"Tears of Joy"だ。Time after Timeの名演だと思う。
    https://www.youtube.com/watch?v=N4ahjXagmWI

  • お久しぶりの村上龍。春樹より龍派。

    表紙からして,はっちゃけた武装爺さんたちがはちゃめちゃなテロ事件を起こしまくる話かと思ったら,思いのほか重苦しかった。

    舞台はほぼ現代の日本。大震災後,原発事故後で東京オリンピック前というどんぴしゃの設定。そして閉塞感ましましのいつもの村上龍ワールドは変わらず。

    主人公は「希望の国のエクソダス」で中学生らを取材したあの人で,今は落ちぶれきったただの無気力なおじさん。

    対する爺さんたちは,年は取ってるけど社会的地位も高くて意志の力にあふれててよっぽどしゃんとしてて,ましましの閉塞感みたいなものを打ち壊したいテロリスト。

    爺さんたちの計画に主人公が巻き込まれていって,爺さんたちの主張に心揺れたり,でもテロはだめって思ったりと葛藤してゆくのですが,物語の読者としてはどうしても爺さんたちに肩入れしたくなる。

    主人公はほんと駄目人間で,吐いたり精神安定剤のみまくったり震えたり泣いたりばかりしているので,さわやかな読後感は感じない笑

    でも続きというか,その後がどうなったのかが気になる本。やっぱり村上龍はいいなあ。

  • いや~久しぶりの村上龍さんです。
    コインロッカーベイビーズ以来か?そんなわけないか。
    なんか久々に骨太の小説を読んだ、という感じです。
    そうか世のお年寄りは怒っているのね。
    いい加減なメディアに、ルールを守らない自転車乗りに、その他いろいろ・・・
    まあお年寄りじゃなくても、ルール違反は困りますけれど、それらを罰していくという少々過激なお年寄りと、そのお年寄りに指名された三流週刊誌の記者(廃刊により失業、妻子に逃げられホームレス寸前)のバトルというか、テロリスト集団の核心に迫っていくというお話です。
    ちょっと残虐で、ちょっと考えさせられる一冊でした。

  • 2015.11.2開始
    2015.11.9読了
    「希望の国のエクソダス」に登場したライター・セキグチが主人公。

  • すでに社会の中枢から(表面的には)外れた老人たちによるテロという着想がおもしろいし、現実社会とのシンクロも見事で、あながち荒唐無稽と思わせない。気になったのは主人公セキグチのグダグタ振り。グダグダ過ぎてリアリティがそがれる。ここさえなんとかすれば、もっとスピード感のある小説になったと思う。惜しい。

  • 珍しく中盤からなかだるみに感じたのはあたしが劣化したからか?ともあれ2011年にこのテーマで書けるのがすごいと思う。できればポンちゃん絡めて完結編が読みたいけど、そんな類ではないこともわかってる。

  • 希望の国のエクソダスを読んだ時の、心揺さぶられ感は残念ながらない。私自身の問題か?村上龍は時代時代を切り取る作家なので、本人の年齢も合わさり高齢化社会がテーマなのだろう。社会に対する諦め感が感じられる。村上龍にはやはり希望を語ってほしいな。

  • 表紙のキャッチーなイラストから、武装したご老人方が正義の鉄槌を下す「3匹のおっさん」的コメディタッチの作品かと思いきや、大震災による原発事故後&東京オリンピック前という現代日本を舞台に、ご老人方がかなり残酷で過激なテロを起こす話でビビりました。

    そして、563ページの分厚さにもビビり、安定剤とアルコール頼みの主人公のグダグダぶりの描写が多すぎて辟易しつつも、ご老人方の正体と彼らが一体何をやらかすのかが気になって、リアリティのある巧みな描写と奇想天外な展開が続き、かなり読み応えがありました。

    あと下記のアキヅキ先生とのやり取りを終えた後の箇所がすごく刺さりました。

    これまで自身の問題や悩みを第三者に話した時、「そんなこと気にしなくていいって」という言葉をかけられる事が多く、その度に、気にしている自分が否定されたように感じられ、「私はこのことが気になっているんです。私の抱えている悩みや問題について理解して欲しい」という欲求が満たされず、とても寂しい気持ちになったので。

    相手の話を聴くことで自分の中に湧き上がる「何か為になることを言ってあげたい」という自分の考えや気持ちを語っても、「悩みや問題を抱えている方の、自分のことをわかって欲しい」という欲求は満たされず、問題解決に向けての自己洞察が深まることもないので、「なるほど。あなたはそのことがとても気になっているんですね」と、私を信頼して問題や悩みを打ち明けてくれた方のお気持ちを無条件に受け止めて、自分の考えや気持ちは語らず、さらにお話を聴かせて頂くことで、共感的理解を示せるコミュニケーション力を高めていきたいと思いました。

    P149
    不安になるのは異常ではないとアキヅキは言った。「不安になる必要はない」ではなく、「不安になってはいけない」でもなかった。メディアにあふれている「君は一人ではない」「明日は必ずやってくる」「いっしょにがんばろう」「希望を持とう」といった偽の癒しや慰めはいっさいなく、現実を見すえた暗く乾いたリアリティがあり、しかも存在を認めてもらっているという安堵感があった。

    P334
    何がすばらしいのか、何に価値を置くのか、わかっている人間のほうがはるかに少ない世の中です。

  • オールドテロリストって、そのまんまのタイトルであったのね。

    お話がぶっ飛び過ぎのようで、ここまでの規模ではなくても本当にそんな考えを持ち続けでいる人もいそうでなかなか怖い。

    ただ、おじいちゃんの集団…
    そう考えると、想像しづらい。
    考えてらっしゃる事はわかる。年齢を重ねることにより目的意識が純粋化したり、少々の事には動じなくなるのもわかる。

    ただ、行動力が凄すぎて、どうしても脳内ビジュアル化が頑張って50代前半になってしまう。

    シンドイ老後だ…

    リアルおじいちゃん達、楽しく生きていきましょう!

  • ●アラン・ミッスィーさんおすすめのコメント●
    NHK西玄関で突如として起こった爆破テロ!現場に居合わせていた中年ジャーナリスト・セキグチは背後に老人たちによる謎の組織の影を見た!真相を追うセキグチ、否、日本の命運や如何に!!?

    武蔵野大学図書館OPACへ⇒ https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000124912

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著者プロフィール

1952年長崎県生まれ。76年に『限りなく透明に近いブルー』(第75回芥川賞受賞)でデビュー。2003年には、514の職業を紹介した『13歳のハローワーク』が125万部を超えるベストセラーに。財政破綻した近未来日本を舞台にした『半島を出よ』(05年)では野間文芸賞を受賞。10年には『歌うクジラ』(毎日芸術賞)を電子書籍として刊行。 近著に『55歳からのハローライフ』、『オールドテロリスト』などがある。16年に『日本の伝統行事 Japanese Traditional Events』を刊行。

「2018年 『収録を終えて、こんなことを考えた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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