オールド・テロリスト

著者 : 村上龍
  • 文藝春秋 (2015年6月26日発売)
3.82
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  • レビュー :96
  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902395

作品紹介

日本はもう一度、焼け野原になるべきなのか?経済の衰退した近未来の東京。「満州国の人間」を自称する謎の老人達が、次々に凄惨なテロを仕掛け始めるが…。著者の新たな代表作。

オールド・テロリストの感想・レビュー・書評

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  • 村上龍氏の作品「オールドテロリスト」を読了。文芸春秋に連載されていた作品が単行本化された本だが、よもうよもうと思いながらもテロリストというタイトルに気がひけ読む野を躊躇していた作品だ。

    今回北海道へ戻って働くという転機を迎え、思い切って読んでみた。

    村上龍氏と古市憲寿氏の『この国の希望は何処にある』という対談のなかで古市氏の氏である小熊英二氏が若者、大人、老人の定義を「未来で評価される人が若者、現在で評価される人が大人、過去で評価される人が老人」としているというくだりがあったのだが、その定義にしたがうとこの物語に出てくるテロリスト達は歳は60、70、80代だが決して老人ではない。過去の実績などにはしがみついてはおらずいまもしっかり自分の基盤を持っている年齢は高いがしっかりとした大人達だ。

    彼達がテロを起こし、その真意を世に伝えるべく彼らから選ばれるのが主人公のセキグチだ。高齢のテロリスト達はどうやって未来に関与できるかを考えたあげくテロを起こすのだ。

    主人公セキグチは村上龍の以前の作品「希望の国エクソダス」にもでていたのだがその作品で独立国家を作ろうとする中学生の集団のリーダーが「この国にはなんでもあるが希望だけがない」という印象的な言葉を発していたのだが、その作品から15年後に書かれたこの「オールドテロリスト」の世界でも希望はまったく感じられない世の中であり、その現状打破の為に高齢のテロリスト達が立ち上がったというストーリーだ。

    作品のなかでのマスコミの凋落具合に関する表現も鋭く、「いまのマスコミの当事者が自分たちが真実を伝えていないという事自体に気付いていない」と切り捨てているが、元老の不自由さを海外から指摘されていてもいまだ何も変わらない今の状況を憂う筆者の嘆きの具合が深いのもよく伝わってきた。

    この作品を東京を離れるという転機の今に読んだのはとてもラッキーだった。希望を見つけにくい今の日本をあきらめてしまい自分を老人として世の中への関与をしなくなってしまうのではなく、危機感をなくす事なく何らかの社会への寄与が出来るような生き方をしなくてはとの思いを強くした。

    色々な人たちと仕事をしたなかで得た経験・知恵を国を形作る小さな部品である地方でそれらを生かすという事にチャレンジしたみたいと思わせてくる作品だ。

    セキグチとこうどうを友にする和風美人セキグチの愛に関するコメントもぐっとくるものが大いので、高齢の人たちだけではなく色々な人が楽しめると思う。

    そんな大人と老人ということを考えさせられる作品を読むBGMはTuck&Pattiの"Tears of Joy"だ。Time after Timeの名演だと思う。
    https://www.youtube.com/watch?v=N4ahjXagmWI

  • お久しぶりの村上龍。春樹より龍派。

    表紙からして,はっちゃけた武装爺さんたちがはちゃめちゃなテロ事件を起こしまくる話かと思ったら,思いのほか重苦しかった。

    舞台はほぼ現代の日本。大震災後,原発事故後で東京オリンピック前というどんぴしゃの設定。そして閉塞感ましましのいつもの村上龍ワールドは変わらず。

    主人公は「希望の国のエクソダス」で中学生らを取材したあの人で,今は落ちぶれきったただの無気力なおじさん。

    対する爺さんたちは,年は取ってるけど社会的地位も高くて意志の力にあふれててよっぽどしゃんとしてて,ましましの閉塞感みたいなものを打ち壊したいテロリスト。

    爺さんたちの計画に主人公が巻き込まれていって,爺さんたちの主張に心揺れたり,でもテロはだめって思ったりと葛藤してゆくのですが,物語の読者としてはどうしても爺さんたちに肩入れしたくなる。

    主人公はほんと駄目人間で,吐いたり精神安定剤のみまくったり震えたり泣いたりばかりしているので,さわやかな読後感は感じない笑

    でも続きというか,その後がどうなったのかが気になる本。やっぱり村上龍はいいなあ。

  • いや~久しぶりの村上龍さんです。
    コインロッカーベイビーズ以来か?そんなわけないか。
    なんか久々に骨太の小説を読んだ、という感じです。
    そうか世のお年寄りは怒っているのね。
    いい加減なメディアに、ルールを守らない自転車乗りに、その他いろいろ・・・
    まあお年寄りじゃなくても、ルール違反は困りますけれど、それらを罰していくという少々過激なお年寄りと、そのお年寄りに指名された三流週刊誌の記者(廃刊により失業、妻子に逃げられホームレス寸前)のバトルというか、テロリスト集団の核心に迫っていくというお話です。
    ちょっと残虐で、ちょっと考えさせられる一冊でした。

  • 2015.11.2開始
    2015.11.9読了
    「希望の国のエクソダス」に登場したライター・セキグチが主人公。

  • すでに社会の中枢から(表面的には)外れた老人たちによるテロという着想がおもしろいし、現実社会とのシンクロも見事で、あながち荒唐無稽と思わせない。気になったのは主人公セキグチのグダグタ振り。グダグダ過ぎてリアリティがそがれる。ここさえなんとかすれば、もっとスピード感のある小説になったと思う。惜しい。

  • 珍しく中盤からなかだるみに感じたのはあたしが劣化したからか?ともあれ2011年にこのテーマで書けるのがすごいと思う。できればポンちゃん絡めて完結編が読みたいけど、そんな類ではないこともわかってる。

  • うーん、結局面白かった。
    おじさんとしておじさんに共感するし、出て来るおじいさん達に憧れもする。

    ただ、一方若者としては、この国をスクラップアンドビルドする必要は無いと感じる。それをしたいのは戦後の復興期に人生の一番良い時期を過ごした老人の郷愁にすぎないと。

    現代はこの作品に出てくるオールドテロリストが生きた時代とはそもそも文化の成熟度が違う。現代は飽食の時代で、それゆえ需要が存在しないというのは老人の需要に対する凝り固まった見方だとも感じた。

    また、どの時代も生き方を選べるのは一部の人間だけだというのは正鵠を得ているが、昔は生き方を選ぶという概念自体がなかった、現在は多くの人に選択肢は無いにしろ、生き方を選択するという概念は存在している、未来にはもしかすると生き方を選択できる人間の割合が増えているかもしれない、と私はその点について多少明るく考えている。
    日本を経済的にしろ、物理的にしろ焼け野原に戻してしまえば、文化の成熟度も戦後に戻ってしまうだろう、私にはそれが正しいことだとは思えない。

    あ、あとエクソダスと主人公が一緒らしいけど、エクソダス読んだのは十年以上前で、内容がほぼ忘却の彼方なのでもう一回読みたい所存。

  • 2018年
    ASUNAROの中学生たちが北海道に移り住んだ「事件」も
    すっかり昔話になったころ
    東京は、連続爆発テロに見舞われていた

    「希望の国のエクソダス」続編である

    テロの実行犯はいずれも20代の若者たち
    ASUNARO世代より少し下ということになるが
    犯行に至った具体的な動機は、いずれも漠然としてよくわからなかった
    テロに使用された可燃剤やガスの出所は不明
    各犯行が関連しているのかどうかも不明である
    しかし、出版社に送りつけられた予告状の指名を受けて
    前作の主人公、フリー記者セキグチは事件を追いかけていた
    そしてテロリストたちの背後に
    謎の老人集団が存在することをつきとめる
    老人たちは
    人生に行き詰って茫然自失の若者たちに生きる意味を与える、と称して
    洗脳し、食い物にしていた
    セキグチも、テロに参加させられはしないまでも
    老人たちの提灯ジャーナリストに仕立て上げられてしまったのだった
    セキグチが書くことで
    またしても日本経済は壊滅の危機に直面するだろう
    ひょっとすると老人たちは
    それに乗じた新生・満州国の建設を目論み
    その捨石になるつもりではないか
    ならばASUNAROも黙ってはいまい…次回作が待たれる

  • 暴走老人をモチーフにした小説。主人公は「希望の国のエクソダス」にも出てくる記者。社会にいながら生きる。生き方の交差というのかな。村上龍らしい小説だったし最近の作品にちりばめられたものも感じられる。「歌うクジラ」や「五分後の世界」なんかにも通じると思う。生きる上で考えることをやめない人の姿がここにある。それがどのような姿であっても読むに値するものだと思う。

  • トップダウン型のテロ組織ではなく、
    ネットワーク型のテロ集団?が
    何の罪のない人達相手に無差別なテロを繰り返します。

    そして実行犯は誰かに洗脳されています。
    洗脳している人間は今のところ罰せられる様子がありません。
    そんなこの物語の中で元官僚のセリフが印象的だったので抜書。

    『テロの実行犯は、静かな怒りとは無縁です。衝動的に通行人をナイフで刺すような人にあるのは、甘えなんですね。もちろん彼らにも怒りという感情はあります。ただ、静かな怒りではなく、現実が思うとおりにならないというという幼児的な怒りです。そういう人は、甘えられる対象を常に探しています。自分をコントロールできない、また問題が何かもわかっていないし、見ようとしないし、認めようとしない。だから現実が思い通りにならないのは自分自身のせいではなく社会や他人のせいだと決めつけていて、誰かに、頼りたい、服従したい、命令されたい、そう思っているんです。今、そういう人間は社会に溢れかえっているので、探しだして、洗脳というか、誘導するのは、そう難しいことではないでしょう。何がすばらしいのか、何に価値を置くのか、わかっている人間のほうがはるかに少ない世の中です。』p334

    最近の現実世界でのテロのニュースとリンクする言葉で刺さりました。
    2016/03/28 10:46

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