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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784163902425
作品紹介・あらすじ
ニューヨークの中心、マンハッタンに存在し、1920年代から「ザ・モダン」と呼ばれたモダンアートの殿堂。それが「MoMA」ニューヨーク近代美術館。近現代美術、工業デザインなどを収集し、20世紀以降の美術の発展と普及に多大な貢献をしてきたこの美術館を舞台に、そこにたずさわる人々に起きる5つの出来事を描いた自らの美術小説の原点にとりまくんだ美術小説短編集がついに刊行。
『楽園のカンヴァス』で、山本周五郎賞を受賞、本屋大賞三位を獲得した原田マハが、半年間勤務し、『楽園のカンヴァス』でも重要なモチーフとなった〈ルソー〉の「夢」も所蔵する「MoMA」が舞台。『楽園のカンヴァス』とは、世界観を共有し、その作中人物も登場。「新しい出口」は、マティスとビカソ、そしてある学芸員の友情と別れを描いた作品。そのほかにも、アメリカの国民的画家〈アンドリュー・ワイエス〉と〈フクシマ〉の原発事故について描く「中断された展覧会の記憶」、MoMAに現れる一風変わった訪問者にまつわる監視員の話「ロックフェラーギャラリーの幽霊」、初代館長アルフレッド・バーと、美しきMoMAの記憶を、インダストリアルデサイナーの視点から描いた「私の好きなマシン」、美術館に併設されたデザインストアのウィンドウにディスプレイされた日本に待つわるものについての意外なエピソードをつづった「あえてよかった」など、著者ならではの専門的かつ、わかりやすい視点で、芸術の面白さ、そして「MoMA」の背景と、その歴史、そして所蔵される作品群の魅力を、十二分に読者へと伝える待望の「美術館」小説集。
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
アートと人々の心の交差点を描く短編集で、ニューヨーク近代美術館(MoMA)を舞台にした5つの物語が展開されます。各短編は、マティスやピカソ、アンドリュー・ワイエスなどの名画とともに、9.11や東日本大...
感想・レビュー・書評
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あなたは自分の過去を振り返り、10年も前のある日のある時間、分単位まで指定されたその時間に、どこで何をしていたか、何を見ていたか、そして何を思っていたか、を答えろと言われてすぐに答えられるだろうか。
目の前の巨大な建物が左右にゆっくりと大きく動いている。建物と自分が立っている地面の境目が大きくせり上がり、また戻っていく、まるで遊園地のバイキング船の上に建物が乗っているのを見ているようだ。そんな自分はその場に立っていられない。あぶない。うずくまる。でも、目の前の建物の大きな動きに目が離せない。そして、こんな地面と地面の隙間に挟まれたら一巻の終わりだ。免震構造の建物が大地震の時にどう動くかを図らずも目撃したその瞬間、一方でそんなことを冷静に考えている自分がそこにいた。
2011年3月11日、午後2時46分。この国の未来を、この国の人々の未来を大きく変えたあの日。この瞬間もどんどん過去になっていく時間。記憶に残らず過去の記憶の中に埋もれてしまう時間。そんな中にあって、数多くの人の記憶の中に、心の中にはっきりと刻まれたあの時間。どんなに時が経っても忘れられないあの時間。そんなこの国の分岐点とは遠い世界、地球の裏側の世界でニュースでその惨状を知った人がいた。そして、その人が日本を訪れる理由が語られていく物語が始まる。
『二〇一一年三月十一日金曜日、午前六時五十五分。その朝はよほど疲れていたのだろう。夫に声をかけられるまで、自然に目覚めることはなかった』という杏子。『マンハッタンの百九十丁目にある自宅アパート』の朝のことでした。『杏子の両親は、若い頃にアメリカに移住した日本人カップルだった』という杏子はボストンで生まれ、『ハーバード大学で東洋史学を学んだが、その間日本の大学に一年間留学』の経験もあり『ほぼ完璧な日本語で会話ができ』ます。『ニューヨークに住み、美術関係機関での転職を繰り返し、アメリカ人男性と結婚して、五年まえにいまの職場に落ち着いた』という杏子。『三十代のうちになんとしても論文を完成させ、年内には博士号を取得したい。それが、杏子の直近の野望だった』という杏子は昨夜も遅くまで論文の提出に向けた準備をしていました。『キョウコ、ちょっと来てくれ。すごいことになってるよ』と、隣室から夫のティルに呼ばれた杏子。『トウホクって、日本のどのあたりのことだい?』と聞かれる目の前の画面には『「インデペンデンス・デイ」のラストシーンじゃないか』と思われる光景が広がっていました。『親愛なる杏子ハワードさま お見舞いのメールありがとうございます。御館よりお貸し出しいただいております、アンドリュー・ワイエス作「クリスティーナの世界」が無事であることを、まずはご報告申し上げます』というメールを受け取った杏子。職場であるMoMAに出勤し館長に呼ばれた杏子。『「クリスティーナの世界」も無事です。フクシマのキュレーター、ノブコ・ハセベから、昨日メールが入りました。破損はいっさいないとのことです』と報告します。それに対して『館長は「ミッション」』を告げます。『今朝早く、MoMAで緊急の理事会が開かれた。議題はたったひとつ 「クリスティーナの世界」をフクシマから救出することだ。行ってきてほしいんだ。私たちのクリスティーナを連れ戻しに ー フクシマまで』と杏子に。
5つの独立した短編から構成されるこの作品ですが、かつて原田さんも働かれていたことのあるMoMAが舞台となることが共通しています。収蔵されている絵画に関する描写は相変わらずとてもわかりやすく、絵画を鑑賞する際に手元に置きたくなるくらい。そんな中でも特にこの作品で興味深いと感じたのは〈ロックフェラー・ギャラリーの幽霊〉の主人公の視点でした。この短編ではスコット・スミスという監視員(セキュリティ・スタッフ)が主人公となります。原田さんはその監視員の仕事を『美術館にとっては、大切なヴィジターが、監視員にとっては、常に「作品に悪さをしないか」嫌疑を持って接する対象なのだ』とその業務ならではの美術館スタッフの立ち位置を一言で説明します。そして、さらに『勤務を始めて最初に教えられたこと。それは、「ヴィジターを、敬意をもって疑うこと」だった』とさらに大胆に語らせます。そして、『正直、どれを見ても、どこがいいのか、さっぱりわからなかった』という監視員視点での素直な絵画の印象が興味深く語られます。例えば、ピカソの絵を見て『なんでまた、あんたはアートをぶっ壊しちゃったんだよ、ピカソ?』と一刀両断にしたかと思うと、代表作の『アヴィニョンの娘たち』の印象を、『その「醜い絵」の中には、ひどく歪んだ顔つきのヌードの女たちが五人、描かれていた。険しく、醜い顔は、人間にはほど遠い』と表現した上で『いや、これが人間の女であるものか。宇宙人といったほうが、ずっとしっくりくる』と結論します。表現自体はとても素朴ですが、まさしくその絵に我々が感じるそのままをここまで鮮やかに言いえた表現は逆にとてもわかりやすいと思いました。絵画は万人がそれぞれの見方で楽しむもの、それぞれの感じ方で楽しんでいくものなんだととても感じる短編でした。
また、『展覧会は、規模にもよるが、通常二年から五年程度、場合によっては十年もの準備期間を経て開催される』という我々が楽しむ展覧会の舞台裏に関する記述も興味を引きます。〈中断された展覧会の記憶〉の主人公・杏子のような展覧会ディレクターのお仕事。その舞台裏には『巨額の予算が動く。多くの関係者を、巻き込む。展示のセンスや知識ばかりがものをいうのではない。政治力、交渉力、そして忍耐力がなければすぐれた企画展はとても実現できないのだ』という、その企画実現までの長い道のり。でもこれだけではその長い道のりは歩めません。そのことを『何より、アートと作品への愛情がなければ』と書く原田さん。こういった描写には、原田さんだからこその強い説得力があると思いました。
『おもしろいか、おもしろくないかは、誰かに言われて決めるんじゃなくて、見た人が自分で決めていい』という考え方。そんなおもしろいと思うきっかけを提供し続けてくれる美術館。その中でそれぞれの役割を果たしていく人々がいました。この20年の世界には、9.11、そして3.11ととても大きな出来事が起こりました。その瞬間その場所にいた人々に残した分単位のリアルな記憶、でもそれらは遠く離れた場所にいる人々にも思わぬ形で影響を与えていました。そんな一つが美術館でした。美術館、そして美術館で働く人たちの生き様を9.11や3.11に絡めてリアルに描いたこの作品。色々な人々が順番に主人公となれる短編集ならではのメリットを最大限に活かしたこの作品。絵画の世界の面白さを、少し違った角度からたっぷりと見せていただきました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
The Museum of Modern Art ( ニューヨーク近代美術館)、通称”MoMA”を舞台にした5つの短編集。
19世紀後半の印象派から20世紀中盤のヨーロッパとアメリカの近代アートの作品を中心とし、1929年に設立された近現代アートの歴史に重要な役割を果たしてきた美術館。本作表紙のピカソの「鏡の前の少女」をはじめ、ゴッホの「星月夜」、セザンヌの「水浴」、モネの「睡蓮」、マティスの「ダンス」、ダリの「記憶の固執」、ルソーの「夢」、ポロックの「ワン:ナンバー31」、ワイエスの「クリスティーナの世界」、ダリの「最後の晩餐」、シャガールの「誕生日」、マグリットの「恋人たち」、ウォーホルの「キャンベル缶」、キリコの「愛の歌」など私でも作者と作品名が出てくる超有名どころが展示されている。
アメリカの大学で数年研究員としてしばらく住んでいた主人は数回訪問しており絶賛している。
中断された展覧会の記憶
2011年4月、MoMAの展覧会ディレクターである杏子は、ふくしま近代美術館にワイエスの「クリスティーナの世界」を引き揚げるために向かう。
ふくしま近代美術館と、福島をふくしまとして、福島県立美術館と福島県立博物館を思わせる。(おそらくは福島県立美術館を想定して書かれているのだろうと、思いながら読んだ。)
東北震災による福島原発事故は、海外の友人から「日本に住んでいて大丈夫?」と、よく聞かれた。海外のメディアでは、放射能汚染領域は日本をすっぽり包み込んでいるように言われていたようである。
大切な絵画なので早期の引き揚げるを考えるのは当然のことである。そして、ネイティブアメリカンのはずの杏子も同じ態度であったら、少し寂しく感じるところであるが、本作での杏子はとても日本人的な対応に書かれており、そのことにホッとしていた私がいた。
また、ふくしま近代美術館のキュレーター・長谷部伸子の震災後に杏子に送ったメールと実際に杏子が会った時の雰囲気にギャプを感じるとともに、長谷部の真面目な性格と展示会中断の残念さが読み取れる。美術館の関係者として、クリスティーナの前を向いて進むというメッセージを今、この時の福島の人に届けたいと切に思っているからこそ、返却を理解しつつも、態度が伴ってないように感じた。
ワイエスの語ったこの言葉も印象的であった。「多くの人が不幸の烙印を押すであろう彼女の人生を、彼女は自ら克服した。その力をこそ、私は描きたかった。彼女は確かに身体的には不自由だったろう。けれど、心は自由だったのだ」過酷な重量に逆らいながらも両手を枯葉の大地にしっかりと食い込ませ、懸命に進もうとする後ろ姿。絵画の中ではクリスティーナは決して振り向くことはない。自分が向かう道はどんなことがあっても自らが進んでいくという意思の強さのようなものを感じると同時に、その向かう方向は彼女の意思に従い自由である。作者の思いがこれほどすんなりと感じ、納得できる絵画であることに威風を感じる。
ロックフェラー・ギャラリーの幽霊
MoMAの監視員のスコット・スミスは、閉館直前にピカソの前で絵画を見つめる身なりの良い青年・アルフレッド・と出会う。
やはり、ピカソの「アヴィニオン」を見つめていた少年は、若き日のアルフレッド・バー・ジュニアだったのだろう。閉館前に現れ、いつのまにか消える。ピカソの展覧会を初めてMoMAで開催した当時の館長。ピカソとの約束、それぞれの絵画に秘められた歴史を鑑賞しに、やってくる。誰しもがそう考えるかと思う。
スコットが今度アルフレッドとあった時、彼らはどんな会話をするのであろうか。それがとても知りたい。
この作品でも、まさしく私だと思う言葉を見つけた「中に入ったら、すごい熱気でさ。まずそれに当てられたのかもしれないけど、なんかこう、観なくちゃって気分になるわけ。一点も見逃しちゃならないと。展覧会っていうか、事件に遭遇したような感じでね。おれら、みんな、鑑賞者っていうより、目撃者っていったほうが、しっくりくるような」美術館では、いつも私は目撃者である。
私の好きなマシン
1981年8月、デザイナーのジュリアは、初代MoMAの館長・アルフレッド・バー・ジュニアの思わぬ訃報に、自分にとっての最も素晴らしい場所へ行った時のことを思い出していた。
幼いジュリアが初めて訪れたMoMAで初めて見たコイルは、コイルの固定概念が定着する前に床から天井までのものだり、通常、コイルとして想像できるものではなかったのであろう。だから、コイルがアートに見えて、夢中に慣れるものだったに違いない。
「私の人生を導いてくれた言葉もMoMAで学びました」「知らないところで、役に立っていて、それでいて美しい。そういうものを『アート』と呼ぶ」この言葉がジュリアにとってどれくらい大きなものかが、今の彼女が工業デザイナーであるということからも伺える。アルフレッドがMoMAを去る2日前にジュリアに会い、この言葉を聴けたことで、彼の心の波をどれだけ穏やかにしたことだろうと、想像した。
新しい出口
ローラ・ハモンドは、職場に向かう地下鉄に乗るたびに9.11で亡くしたMoMAの同僚で友人のセシル・アボットを思い出す。
まず、本作では、MoMAのキュレーターのふたりに反応した。MoMAの前チーフ・キュレーターで現在はハーヴァード大学教授、世界的なピカソ研究の権威として知られるトム・ブラウンと彼のかつてのアシスタントなティム・ブラウン。彼らの名前を見て、思わず「楽園のカンヴァス」を思い出した。
そして、トムのMoMAを去った後の経歴までも知ることができた。
トムとティム、ローラとセシル、そしてピカソとマティスの言葉に「楽園の」ではなく「暗幕の」を再読したくなった。
あえてよかった
研修でMoMAに派遣された麻美はデザインストアで、どうしても気になるものを見かける。
MoMAの本館の通りの向かいにあるMoMAデザインストアの赤と黒の塗り箸がクロス(×)にディスプレイされている。これに麻美が反応し、アシスタントのパティに相談をした。きっと、パティにとっては些細なことであっても、麻美の気持ちを尊重し、一刻も早く水平にディスプレイしてもらうよう手配する。そんな心遣いも素敵だか、箸がたまたま黒と赤だったので、水平よりクロスにディスプレイしたのであろう。逆にクロスのディスプレイは、マナーとしてはあり得ないが、アートとしてはアリではないかと思い、日本人としての箸の固定概念だと感じてしまう。
最後に、本作では、「ゲルニカ」の歴史背景の記載が所々である。自分自身の記憶の整理の意味で、「ゲルニカ」の歴史を書き留めておきたい。
「1936年のスペイン戦争勃発後、フランコ将軍率いる反乱軍に加勢したナチスは、1937年、スペイン・バスク地方の小都市、ゲルニカに対して、人類史上初となる無差別空爆を仕掛けた。非武装の市民が標的にされ、何千人もの罪なき人々が命を失った。祖国での惨事に怒りを爆発させたピカソは、その焰をカンヴァスの上に燃え上がらせた。そうして描かれたのが『ゲルニカ』である」
アートと歴史の関係について考えてしまう作品で、著者の美術作品を再読したくなった。 -
NY近代美術館MoMAを舞台にした短編小説
どれもコンパクトで綺麗にまとまっており、サラッと読める
『中断された展示会の記憶』
アンドリュー・ワイエスの作品
「クリスティーナの世界」をMoMAが福島県は貸し出し中に、東日本大震災が起こり、作品を引き上げなくてはいけない…
という誰も悪くない悲しい運命のストーリー
福島美術館の学芸員の娘さんとのやり取りで悲痛さを語る描写が素晴らしい
胸を鷲掴みにされる痛みが襲った
近代美術は疎いため、こちらの作品を知らなかったのだが、アンドリュー・ワイエスが足の不自由だった女性クリスティーナを描写
不自由だったにも関わらず自分のことは何でもやり抜く非常に前向きな生き方に、アンドリュー自身も虚弱体質でほとんど学校に通えなかった中、深い感銘を覚えた
歩けない彼女が誰の助けも借りず自らの意思で行きたい場所へ這ってでも行こうとするそんな後ろ姿の作品だ
作品背景や、福島第一原発に対する国や電力会社の姿勢、福島や福島周辺で生きていこうとしている人たち
多くのことを改めて考えさせられる作品だ
近代美術、日本人、自然災害、人の温もり
全てを絡め、かつ心を揺さぶる短編集に仕上げられる才能がさすがだ
『ロックフェラー・ギャラリーの幽霊』
ピカソの作品にスポットを当てたMoMA警備員目線からのお話し
アートに全く興味のない独り者の警備員が主人公という風変わりな目線でのストーリー展開がなかなか新鮮だ
ピカソの「アヴィニョンの娘たち」と「鏡の前の少女」
どちらも強烈なインパクトある作品が登場
『私の好きなマシン』
MoMAの初代館長アルフレッド・バー
を支持する主人公とその友人の暖かいストーリー
「知らないところで、役に立っていて、それでいて美しい。そういうものを『アート』と呼ぶ」
アートの概念が変わる言葉
『新しい出口』
このタイトル!
とても良い
9.11のショックでPTSDになったMoMAで勤務するアシスタント・キュレーターの主人公
母を亡くし、9.11で同僚の友人をも亡くす
そんな彼女の無理をしないしかし決して後ろ向きではないリタイア的なストーリー
勝ち続けなくたっていいじゃん
世間の価値なんて自分の人生に必要ないじゃん
そんなふうに応援されるような温かい話
ピカソとマティス
宿命のライバルであり、唯一無二の友人同士
それぞれの比較される作品
実に興味深い!
また「楽園のカンヴァス」のキャラクターも登場するのも魅力
『あえてよかった』
日本の美術館の学芸員の主人公がMoMAへ派遣され、シングルマザーの優秀なアシスタントにお世話になる内容
ああ、こう書くとえらく陳腐である(作者に申し訳ない)
内容はともかく
ここでとても気になることが…
MoMAのショップでディスプレイされていたお箸が✖️印の形となっていて主人公が、2本をきちんと揃えるディスプレイに変えて欲しいと申し出る場面がある
確かに我々日本人にとって大変違和感を感じてしまうが、これを外国人に理由をどう説明すれば良いのか…
これには主人公と一緒にとても悩んだ
この当たり前の日本人感覚を説明できるようになりたいものだ
気になったので、脱線するが
箸は人間と食物(命)を結ぶ「橋」から
-文字通り、箸は人と食物(命)を結ぶ「橋」
という話や他にも箸には神話もいくつかあり、
弥生から古墳時代の祭祀や儀式において箸は神々を祀る聖なる祭器として使われ重要な役割を果たしていたことが伺える
箸の歴史も奥深そうだ
原田マハさんの本は
時々設定の行き過ぎ感が否めず、引いてしまうことも結構あるのだが…
その辺りを差し引いてもなかなか面白い
彼女の知識と経験から生まれる作品は、
知的好奇心と心の震えを感じられ、何やかんや言ってもまた読んでしまうだろうなぁ…
近代美術はあまり好きではないがMoMAはまた行きたい
純粋に楽しめる
自分の感性の変化を知る術となる場所でもある
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東日本大震災、美術館警備、9・11、工業デザイン。これらとアートとの関連についての短編集。
「楽園のカンバス」に出てきたトム・ブラウンとティム・ブラウンなんかもチラっと出てきたりして、そんなちょっとしたイタズラ(?)もあって面白い。
基本、マハさんのいたニューヨーク近代美術館が舞台で、またいろんな絵画の名前が出てきて、その都度スマホで検索しながら読み進めると楽しいです。 -
MoMAを舞台に5人の視点で語られる短編集。マティス、ワイエス、ピカソなどの画集を開きながら没入していた...。9.11や3.11も差し込みながらそれぞれの心情を豊かに描く。「私の好きなマシン」が好み。
「知らないところで、役に立っていて、それでいて美しい。そういうものを『アート』と呼ぶ」―わび・さびっぽさに心惹かれた。 -
ワイエスの「クリスティーナの世界」をスマホで検索するとどこかで見たことある。って、MoMAで見たんだよね(^_^;)
『楽園のカンヴァス』に登場するルソーの「夢」もそうだったけど、全く覚えていない。
ウォーホルのモンローだとか、宇多田ひかるのPVに登場するロボットだとか、前衛的な理解不能なアートだとか、そんな印象しか残っていないMoMA。
MoMAに行く前にこの本読みたかったなぁ。そしたらもっともっと楽しめたのに・・・。
MoMAにまつわる5つの短編が収められた本書。
9.11や震災にまつわるお話、ちょっとファンタジーめいたお話などなど。
その中でも印象に残ったのが最後の「あえてよかった」。
マハさんのご自身の体験が一番投影されているだろうこの物語は極めて短いけれど心に残った。
日本から研修でMoMAに派遣されている麻美と、パートタイムで働くパティの交流が描かれる。
上を目指し続けるパティの生き方が良かった。
全体としては小ぶりな印象の作品で、同じく短編集の『ジヴェルニーの食卓』に比べるとどうしても劣る。ねらってる感も鼻につくし。
でも単純にMoMAの歴史、裏事情、展示作品などを知るうえでは興味深い作品だと思う。
もういっそのことマハさんには絵画にまつわるエッセイもしくは解説本を書いてほしいなと思うのですが、いかがでしょう。 -
MoMAにまつわる短編集。
『中断された展覧会の記憶』と『あえてよかった』が好み。『楽園のカンヴァス』に出てきた方も出てくるよ。
『中断された展覧会の記憶』
【クリスティーナの世界】
アンドリュー・ワイエス
『ロックフェラー・ギャラリーの幽霊』
【アヴィニョンの娘たち】
パブロ・ピカソ
『私の好きなマシン』
【マシン・アート】展
『新しい出口』
【マティス ピカソ】展
『あえてよかった』
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ニューヨーク近代美術館MoMAを舞台に『楽園のカンヴァス』の著者が切り取る5つの風景。いい話だったが、それぞれの短編で内容がかぶることがあったので星減点。キュレーターの仕事ぶりがわかる。MOMA行ってみたくなった。9/11テロ後の様子も人々の感情も伝わって来た。
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ニューヨーク近代美術館MoMAを舞台に、
そこにたずさわる人々に起こる5つの出来事を描いた短編集。
MoMAという特別な空間に包まれた人と人との関係が、優しく愛おしい。
1番目は、フクシマの原発事故とアメリカの画家 アンドリュー・ワイエス の作品
『クリスティーナの世界』をめぐる物語。
生きることを望み、前進すること以外眼中にない、
まっすぐでひたむきな一人の人間として描かれる絵の中のクリスティーナ。
彼女が静かにフクシマの復興を後押ししているよう。
そして、フクシマの悲惨な出来事のあとの、
いつもと変わらない美術館の満開の桜吹雪が、静かに力強く感じられた。
2番目は、MoMAの監視員スコットのストーリー。
スコットが未確認アーティストに出会うという、ちょっとおかしくて温かい話。
スコットの知り合いは、ピカソの絵との出会いを
「事件に遭遇するようなものだ」と表現した。
人間の心の奥深くに潜む闇、醜さを超えたところにある本物の「美」との出逢い。
スコットはピカソを理屈ではなく体感する。
美術に対して知識を持たないスコットの目から語られるピカソに親しみを感じた。
3番目のストーリーでは、絵画ではなくマシンアートについて語られる。
若きMoMA館長アルフレッド・バーが始めたマシン・アート展。
子どもの時にそれを見たジュリアは、その世界に魅了されて産業デザイナーになる。
「見えないところで役に立っていて、しかも美しい」
というアルフレッド・バーの言葉に導かれて。
やがて、そのことが彼女の未来を切り拓くことに。
4番目は、「マティス ピカソ展」にまつわる物語。
『楽園のカンヴァス』で大活躍したティム・ブラウンが登場する。
この短編集の中で、最も力の入った作品ではないかと思う。
語り手はアシスタント・キュレーターのローラ。
前年に起こった9・11事件で友人を失ってPTSDを患い、
苦しみながらMoMAでの勤務を続ける。
この章では、マティスとピカソの友情について触れられ、
2人の作品の対比が示されているのが興味深い。
5番目は、
MoMAで一年間の研修を経験する日本企業のキュレーター麻実が語るストーリー。
美術館に併設されたデザインストアのウィンドウにディスプレイされた日本の箸。
ふと感じた違和感を同僚のパティに漏らす。
麻実とパティとの心温まる交流の物語。
もしかしたら、原田マハさんの実体験なのかなと、想像してしまった。 -
「MoMA」で、アートにかかわるさまざまな仕事に就いている人々の思いを描く短編集。
面白くない訳がない。
アートを心から愛しているからといって、霞を食べて生きているわけではない。
働く上での困難は、数字やデータで答えが出にくいものと関わるだけに、時により一層、容赦なく生々しいまでに現実的。
フクシマや9.11などの歴史に残る事件をからめた物語では、よりその感覚を強く感じた。 -
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ニューヨーク近代美術館MoMAを舞台にした短編集。原田マハさんのアート作品は、芸術に疎い私を別の世界に連れていってくれる。そして私は、ちょっと芸術通になった気がしてしまう(笑)。
いつもながら、美術館のキュレーターやディレクターの方々が生き生きとお仕事されているのが素敵だった。
過去作品の登場人物もチラッと出てきたりして、ついニンマリしてしまった。 -
モダンアートの殿堂「MoMA」(ニューヨーク近代美術館)を舞台にした短編集・五話が収録されています。
原田さんのアートものは、長編短編問わず好みな作品ばかりなのですが、本書も期待通りの仕上がりでした。
第一話「中断された展覧会の記憶」は福島原発事故、第四話「新しい出口」は同時多発テロ事件が背景という事で、テーマは重いのですが、アートに向き合う人達の真摯な思いが伝わってくるものがありました。
第一話に出てきた、ワイエスの「クリスティーナの世界」は本書で知り、検索で初めて目にしたのですが、心を鷲掴みにされるような感覚になりました(本書の話を読んだから殊更だったのかもしれませんが)。このように自分の知らなかったアートと出会えるのも魅力です。
そして、ピカソやマティス等のメジャーな“絵画”だけでなく、第三話「私の好きなマシン」では“マシン・アート”のような工業デザイン系の話もあり、MoMAの守備範囲の広さに感心した次第です。因みに、この話はオチも洒落ていて素敵でした。
さらに本書は“MoMAが舞台”という事で、『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』に登場したキャラもチラっと出てくるので、そこもお楽しみですね。 -
ニューヨーク近代美術館(MoMA)を舞台とした粒ぞろいの短編集。マハさんの作品を読むのは「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」に続いてこれが3作目。ティムブラウンが出てくるとなんだか嬉しくなる。お気に入りは、ラストの「あえてよかった」という話。仕事のできる女性のカッコ良さに加えて相手に対する気遣いも忘れないパティと、慣れない土地でひたむきに頑張っている麻美との心の交流がなんとも爽やかで良い読後感だった。
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モダンアートの殿堂ニューヨーク近代美術館(通称「MoMA」)を舞台に、MoMAの美をそれぞれの立場から愛し、守り、時に発展させるために日々を過ごす人々の人生の断片を、 MoMAが所蔵する作品やその画家、そして同じく美を愛する人とのつかの間の交流と絡めて描いた短編集です。
「中断された展覧会の記憶」
3.11東日本大震災によって原発被害を受けた福島の美術館へ貸し出しをしていたワイエス作「クリスティーナの世界」を、会期途中で返還してもらうために日本に来た日系アメリカ人の展覧会ディレクター・杏子と、現地の学芸員・伸子との交流。そして、福島の子どもたちのための次の展覧会への強い意志と希望。
「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」
MoMAで監視員として働くアフリカ系アメリカンのスコットと、ピカソの作品を食い入るように見つめる謎めいたインテリ風の若い男性来場者との短いやりとりと、後日の予想外の事件。
「私の好きなマシン」
幼い頃にMoMAで観た、工業部品を美として展示した「マシン・アート」展をきっかけに機能美の虜となり、工業デザイナーとなったジュリアと、その斬新な展示を作ったMoMA初代館長アルフレッドとの交流。そして、ジュリアの機能美をめぐる新たな挑戦への参加。
「新しい出口」
9.11アメリカ同時多発テロにより、好敵手でもあり親友でもあった同僚・セシルを失ったことをきっかけに、PTSDを患うアシスタント・キュレーターのローラの選択と再生への希望を、作風は全く違いながらも好敵手で親友でもあったピカソとマティスの交流と彼らの作品に絡めて描いた作品。
「あえてよかった」
研修生としてMoMAに来た日本人女性・麻美と、彼女の世話役をするMoMAのパート職員でシングルマザーのパティとの交流と、美術館の付属ショップでみせたパティの真摯な対応。
短編集なので、どのお話も当然短いのですが、それでも、MoMAの美を愛する彼らがそれぞれの立場でその美を守り、それを誇りにしていること、そして、そんな彼らが直面している人生の岐路や悲しみなどが、慈しむような視点で書かれており、とてもいい読後感でした。
原田さんは、一時期MoMAへ勤務されていたそうなので、もしかしたら、実在のモデルがいるのかもしれない、と思ってしまうほど、登場人物たちの個性が際立っています。
美術館って、色々な人の努力があって成り立っているんだな、というのも、よくわかりました。これから美術展に行くときは、もっと携わる人に感謝しながら鑑賞しようと思います。
ちなみに、この作品は、スピンオフキャラやエピソードの関連性から、原田さんの「楽園のカンヴァス」と「ジヴェルニーの食卓」を読んだ後の方が、より一層楽しめると思います。 -
「この絵画が意味する所は…」
なんて説明そっちのけで
>絵の声を直かに聞きたいものだね。
自分の、ここでね。
なんて胸を挿している様な熱い人達に
きっと絵画は
じ~~~ん、としていると思う。
語り部は絵画かも知れない。
MoMAで働く人達を見て。 -
ニューヨーク近代美術館(MoMA)にまつわる5つの短篇が収められています。
各短篇の主人公はキュレーターだけでなく、MoMAの警備員や幼い頃にMoMAの展覧会に魅了された女性など、立場はさまざま。
かつてMoMAで勤務されていた原田マハさんだからこそ、さまざまな人々の視点から見るMoMAや所蔵作品を鮮やかに描き出せるのでしょう。
特に好ましかったのは「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」。
主人公のスコットは警備員で芸術作品に詳しいわけではない、ということにちょっと親近感が沸いたのかも。
仕事帰りに馴染みの店で店主や常連たちと、MoMAの作品やアートについて彼らなりに話している感じが好きです。
またMoMAのマシン・アート展をテーマにした「私の好きなマシン」も面白かったです。
当時、機械部品を芸術作品として展示した試みは画期的だったのでしょう。
自分がこれまでアートとデザインをちゃんと意識して区別したことがなかったことに気付かされました。
まったく予想できない物語の結末に驚きと満足感を味わいました。 -
短編集で、サクっと読める。
楽園のカンヴァスとの繋がりも垣間見えて、ちょっと嬉しい。
本物のピカソの絵をみてみたい。 -
ニューヨークの中心マンハッタンにある
世界的に有名なモダンアートの殿堂『MoMA』
ニューヨーク近代美術館を舞台にした
美術館に携わる人々に起きる5つの短編集。
● 中断された展覧会の記憶
ワイエスの「クリスティーナの世界」をフクシマから救出する…。
● ロックフェラー・ギャラリーの幽霊
閉館時間間際にピカソの絵の前で佇む一人の青年…。
● 私の好きなマシン
● 新しい出口
● あえてよかった
美術館に携わる人々は、時代も国籍も年齢も様々
部署や役職によって仕事内容も多岐に渡る
展覧会ディレクター・監視員・初代館長・工業デザイナー・学芸員(キュレイター)
美術史や画家や絵画に全く疎い私ですが、
ピカソやマティスやワイエス…。
誰もが耳にした事のある有名な画家
登場する画家を検索し登場する絵画の画像を眺めながら読み進めた。
ちょっと、大変だったけど楽しかった。
どのお話もじんわり温かくなれる読了感。
MoMAに携わる人々の熱い情熱も感じられました。
東日本大震災後のフクシマのお話『中断された展覧会の記憶』と
9.11の同時多発テロに触れた『新しい出口』は、胸が痛く
読んでて苦しかったけど心に残りました。
また、MoMAの屋台骨を創り「モダンとは何か」を提議し続け、
新しい分野を次々にアートの世界へ導いた初代館長アルフレッド
のお話も素敵だった。
原田さん自身がMoMAに勤務していたんですね。
キュレイターだったんだって知った時
ラストのあえてよかったは原田さんなのかなぁ…なんて思った。
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