さよなら、ニルヴァーナ

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 189
  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902562

作品紹介・あらすじ

「少年A」に人生を変えられた人々の物語少年犯罪の加害者、被害者遺族、加害者を崇拝した少女、その運命の環の外にたつ女性作家。「少年A」は彼らに何をもたらしたのか。

感想・レビュー・書評

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  • 正直読まなければ良かった。『絶歌』だって絶対読むまいと誓っているのになんで読んでしまったのか。
    デビュー作から全て追ってきている窪さんがどうこの事件と向き合ったのか知りたかったのか。

    本書は神戸で起きたあの事件をモデルにしている。もちろんあくまでもフィクションでありエンタメ作品である。
    私の気持ちの問題なのかもしれないが本作はあの事件を完全に消化して新たな物語として読ませる力はない。
    『絶歌』の出版と運悪く重なってしまったことも一因でまだこの事件が世の中で終わっているわけではない。
    だからどうしても重なる。事件の場所も概要もほぼ同じ。ゆえにフィクションとして読めない。
    桐野さんの『グロテスク』などは完全にエンタメ作品として読めるのだからここは作者の力量か、事件の大きさの違いなのか。

    遺族の気持ちを考えるといくら小説とはいえ常に苦い思いがこみ上げてきて登場人物の誰にも共感できなかった。
    最終章も言い訳がましくて頂けない。
    大金をちらつかせてくる出版社の人間には近づかないことと言う文章があるが、実際は逆だと言われている。やりきれない。
    だからこそこの小説が薄っぺらく思われてしまう。

    辛口になってしまったが、窪さんにしか書けない窪さんらしい作品をもっともっと読みたい。
    そんな期待も込めて…

  • 何で、この題材で小説を書いたんだろう?
    あまりにも、加害者だけではなく被害者までもが
    人物特定できるような事件内容。

    残虐な事件なはずが、育児放棄気味な母親によって
    宗教施設を転々とし過ごした幼少期設定が
    あることで少年Aに、同情させてしまう様だった。

    内容が面白いか面白くないかというより
    題材が扱っていい事件だと思いません。

  • モチーフは神戸連続児童殺傷事件。この事件の犯人が捕まった時、学校帰りの私の元に母が飛んできて「犯人が14歳だった」と血相を変えて言ったのを覚えています。
    忙しい母とは普段ニュースの話なんてしなかったので、それだけでこの事件が多くの大人に与えた影響を垣間見たような気がしました。
    肝心の、当時少年とあまり年の変わらなかった私自身の感想はといえば、当時から今までずっと
    「なぜそんなことしたの?」「何が少年にそんなことをさせたの?」
    ということに尽きます。
    今でも私はこの答えを探してる。

    この本と同時期に発売された『絶歌』は読んでないんですけど、この本と前後して当時の資料を見直しました。
    けどやはりいまだに疑問の答えは見つかってないです。
    この本に限って言えば、まず現実の事件をモチーフにしているとはいえ、少年の生い立ちにフィクション部分が多くて参考にはならないのかなと。
    あくまで個人の感想ですが、この作品は実際の少年の生い立ちより『異常性』が多く加えられていて、特殊な環境だったから事件に走ったんだという、ある種安易な道が提示されていたなと感じました。
    (ただし物語の中で少年Aは自分自身の境遇を「特別だ」と思われることに関して違和感を感じているという描写はある)
    もちろん「少年の環境の悲劇性・特殊性」が付加されたからこそ、少女と作家が少年に惹かれるというこの物語が成り立つのは解ります。
    が、実際の事件がモチーフですとここまではっきりわかってしまうとやはり同情はしづらい。
    ただ、作者さんは「登場人物への同情や感情移入」を読者に求めているわけではないのかなとも思いました。
    タイトルは『さよなら、ニルヴァーナ』。
    どなたかがお書きになっていましたが、ニルヴァーナとは涅槃のことで「悟りの境地」とか「人間の本能から来る迷いが無い状態」という意味だそうです。
    少年Aにとっては作中にあった『自分の神様』を見つけた状態、迷いなく人を殺す状態がニルヴァーナの境地であり、少年に憧れる少女と作家にとっては、少年Aに近づくことがニルヴァーナへの近道だった。
    しかし終盤の展開により、少年も少女も作家も、ニルヴァーナの境地に「さよなら」することになってしまう。
    そういうストーリーを追っていると、この作品の結論は『悟り状態に至った殺人行為への否定』だととれそうですけど、
    『ニルヴァーナの境地に至れば人は人を殺す、それは止められない』と言った悲観的な理屈(この環境なら人殺しても仕方ないんだよ、みたいな諦めきってしまった感じ)も読み取れます。
    複数の違った結論を提示しているところは実際の社会と近いのかなと思いました。

    この作品は加害者・被害者の家族・加害者に憧れる第三者という立場の人が代わる代わる語り手になっています。この中の誰かの立場を強く否定する感じではなく、登場人物全員をまんべんなく否定していたり否定して無かったり…と言った感じ。
    だけど一つだけ警鐘めいたものを感じた個所がありました。
    この物語の中では(実際もそうなのかもしれないけど)、『更生完了』として野に放たれた少年は、あくまで『更生が成功している』として扱われています。
    少年の更生には国家的なプロジェクトが組まれ、それで失敗したら、『更生』を前提としている刑罰そのものの理屈が覆されかねない。
    つまり実は構成してないかもしれないのに成功したことにしなくてはいけない……的な陰謀がありそう。
    刑罰の歴史において『少年の更生』はまだ手探り段階で、成功しているかどうかを確認した例は少ないのに、それでも野に放たれることの怖さを感じます。
    いかに更生したかについてはこの作品でも他の資料でも同じような経過をたどっていましたが、成功したかどうかは少年が死ぬまでわかりませんし、かといって差別的な目で見すぎるのもどうかと思うし、なかなか難しいです。

    最後に、この話の冒頭部分に戻りますが、
    冒頭部分の語り手は作家志望(後に作家になる)の女性なんですけど、この人がすでに作家になっている人やその作品にものすごい嫉妬の感情を抱いていて、その感情の醜さがありありと描かれているので息が詰まりました。
    嫉妬の感情は美しくはないけど、生きる上である意味強烈なパワーになるものだなぁ。

  • どうでもいいけど「ニルヴァーナ」って言葉の使われ方が唐突すぎない?タイトルにする分にはいいかもしれないけど、作中での使われ方があまりにも無理しすぎだと思う。

    この作品、ものすごい熱量を持っている。一気に読ませる力を持っている。構成もうまい。文章もうまい。

    ただ、その向かっている方向がおかしいし、納得できないし、認めたくもない。フィクションなのはわかるけど、ここまで現実に沿った設定の中でのこの物語は常識のある人なら書けないし、書いてはいけないものだと思う。たとえ小説であったとしても。小説家として表現したいものを書くのは結構だが、どう考えても題材をここにとるべきではないし、設定をここまで現実に沿わせる必要がないと思う。話題づくりとしか思えないでしょ。
    たとえフィクションだったとしても少年Aを美化しすぎだし、それに恋愛する女性たちの描写は反吐が出そうだった。人間の中身を見たい?は?ただの異常性癖を表現者としての欲求に模して文学的に昇華したつもりになっているのがどうにも許せない。
    どんなに力量があっても合わない作家っているんですね。

    (って書いちゃうと「顔も見せず、名前も明かさず、刃を向ける弱虫たち。」って思われちゃうのかな。。。)

  • 読むのが苦しかった。何度も中断し、何度も深呼吸し、そしてまた読み続けた。
    なぜこんなにも苦しい物語を綴るのだろう。なにがそうさせるのだろう。そしてなぜ読むのだろう。
    地獄だ。これは地獄だ。人が生まれ生きていくなかでもっとも過酷な地獄だ。窪さんはきっと血を吐く思いでこの地獄を文字にしていったはず。だから血を吐く思いの覚悟で対峙しなければ読み終えることができなかったのだ。
    少年Aと彼に囚われた3人の女たち。最初に読んだときと、二度目に読んだときと、一人の少女の印象が全く入れ替わっていた。Aに恋い焦がれる少女は、Aとその罪、そして被害者、その全てを自分の中に取り込み全能の母、あるいは聖女としてそこにあると思えたのに。二読目にその聖性はまったく感じられなくなっていた。彼女の思いも、その存在も、薄く思えてしまった。なぜだろう。あぁ、そうか。私の中に激しい怒りがあったのだ。その怒りに目をつぶっていたのだ。見ないふりをしていた怒りが心のふたを開けてしまったのだ。私は母だ。正真正銘の母親だ。母親として怒りが悲しみを凌駕してしまった。被害者の母であるなっちゃんとともに深い悲しみを怒りで包み、放出してしまったのだ。この物語は私の心に深く打ち込まれた杭となる。

  • 人と人が出会い、そこで生まれる関係こそが救いに繋がる。すれ違ったり、離れることになるかもしれないけれど、出会わないと何も始まらない。出会い・すれ違い・別れる、これこそが人生の尊さであるはず。出会いによって産まれた奇跡がこの小説の唯一の救いだと思った。
    莢の存在が大きいよなぁ。この少女の揺れ動く心が読者を掴んで離さない。出会いの奇跡を起こすのは彼女だ。何度も泣かされた。あの食卓を囲むシーンはどうしようかと思った。あんなもんこっちの感情が追いつかないわ…。
    凄いとしか言いようがないんだが、各章ホントに凄い。いつ壊れてもおかしくない繊細な、ギリギリの感情のはずなのに凄い強度と説得力。少年Aの視点の『霧と炎』なんて特に。

  • 2015.10.20.少年Aの事件をモチーフにした作品。つい最近、被害者の一人である山下彩花ちゃんのお母さんの手記を読んだので、読み進めるうちに抵抗感が強くなっていった。と思ったら参考資料にこの手記があってびっくり。あの手記を読んでどうやったらこの作品を書けるのだろうと芯から不思議に思った。少年Aが書いたという『絶歌』は全く読む気にならなかったのだが、この作品も読んで後悔。ここまで忠実にあの事件を再現してまで書きたかったことが全く読み取れなかった。書いていいことと悪いことがあるんじゃないの?と思った。

  • 少年Aと、奇しくも彼に翻弄されることになった3人の女性の話。

    フィクションなのは分かっていますが、明らかに参考にしている事件があって、物語のどこまでが事実なのかが分からず、混乱しました。
    興味本位で手に取ってしまいましたが、読後感はよろしくありません。
    物語の中の被害者遺族までにも、どうにも納得できず、実際の遺族の方が本作を読んだら、どう思われるのかと勝手に心配しています。

    著者の本は4作目。
    今回は、私には合わなかったのだなと、ちょっと残念です。

  • 【辛口御免】この作品のモチーフが何か、予備知識ありで読み始め、2話目で早々に挫折。
    作家さんにとって、本を生み出すことがどういうことなのかわからないけれど、現実離れした悲しすぎる事件を、追体験するような読書、私は嫌だということはわかりました。
    フィクションとノンフィクションの境界を、全ての人がはっきり認識できているわけではないと思います。だからこそ、あり得ないような事件が現実に起こるわけで…。
    少しでも人の痛みを想像できれば、こんな小説は書けない、と正直思ってしまいました。
    人物を特定し、名指しで小説にしているようなもの…そこまで人を傷つけて、欲しいものはなんですか?

  • 神戸事件をモチーフにした物語で、だからこそ私は書店で手にとった。一人の作家が、あの事件をどのように表現するのか?その興味のみ。

    どうしても納得できなかったのは、事件の概要をすっぽりこの物語に埋め込んでしまったこと。だからこそ、物語の中盤まで、私はひどく残念な気持ちで読むこととなった。
    あの事件は、決して誰かが真似るべきではなく、酒鬼薔薇という存在を生産してはならない。だが、この作者は創ってしまったのである。彼が犯した罪は、彼だけのものであり、彼のそれまでの人生であるはずなのに、この物語で都合よく使われたエピソードのように感じざるを得なかった。

    また、多くの視点が入り混じったために、それぞれの人物の内面の変化に唐突さを感じたのも事実である。

    登場人物はどれも作中でしっかり生きており、愛しさを感じる。
    だからこそ私は、この作品には、現実に起きた神戸事件を取り込んでほしくなかった。作者自身が消化したものを、全くの創作として読みたかった。

    長い期間神戸事件を考え続けた立場としては、腑に落ちない物語だった。参考文献をベースにした感が強くある。
    作者自身が事件を創作したのであれば、全て納得して読めた。それだけ登場人物らの傷みが生きている。もったいない、という感想に尽きる。

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著者プロフィール

窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都稲城市生まれ。カリタス女子高等学校卒業。短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとして働く。2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。2011年、受賞作収録の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位。同作はタナダユキ監督により映画化され、第37回トロント国際映画祭に出品。2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。2018年『じっと手を見る』で直木賞初のノミネート。2019年『トリニティ』で第161回直木賞、二度目のノミネート。

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