長いお別れ

  • 文藝春秋 (2015年5月27日発売)
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  • 本 ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902654

作品紹介・あらすじ

帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。

妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。



東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、十年ほど前から認知症を患っている。長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、娘が三人。孫もいる。



“少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症。ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう、迷子になって遊園地へまよいこむ、入れ歯の頻繁な紛失と出現、記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、終末のひとつの幸福が描き出される。著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集。

感想・レビュー・書評

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  • 認知症を患った父とその家族の物語なんですが臨場感溢れていて、なにも盛ったりしてないけどユーモアが必見で高齢化が進むにつれて我家でも起こりうるシナリオをしみじみと読ませてもらいました。
    10年間の老々介護を続ける母と3人の娘たちの家族との関りが描かれていて、日常に溶け込んだ問題は誰もが抱えていることだけど淡々とこなしてく姿に感銘を受けました。

    特に認知症患者あるあるの事例がたくさん出てきて、うなずきっぱなしでした。
    「長いお別れ」の意味がジーンと伝わってきて、つらいけど前向きにとらえることができた作品でした。

    • かなさん
      つくねさん、こんばんは!
      こちらの作品、私も読みました〜♪
      でも、なんでかな…その頃響かなかったんですよね…!
      今読んだらまた違うかも...
      つくねさん、こんばんは!
      こちらの作品、私も読みました〜♪
      でも、なんでかな…その頃響かなかったんですよね…!
      今読んだらまた違うかもしれないなって思います。
      2024/12/12
    • つくねさん
      かなさん、こんばんはw

      認知症って特別なことじゃないって思えてきてるので、どのように寄り添って行ったらいいのかとか参考になりました。
      ...
      かなさん、こんばんはw

      認知症って特別なことじゃないって思えてきてるので、どのように寄り添って行ったらいいのかとか参考になりました。
      やけにリアルだったので作者自身の体験がモデルになってたりしてそうに思えました。拒否することが存在をあらわす手段とゆうのも最後に残された欲求みたいで尊厳を大切に触れ合う姿とか教えられました。
      2024/12/12
  • 著者、中島京子さん、ウィキペディアを見ると、次のように書かれています。

    ---引用開始

    中島 京子(なかじま きょうこ、1964年3月23日 - )は、日本の小説家、エッセイスト。

    東京都杉並区出身。埼玉県和光市、八王子市育ち。父はフランス文学者で中央大学名誉教授の中島昭和。母はフランス文学者で明治大学元教授の中島公子。姉はエッセイストの中島さおり。

    ---引用終了


    で、本作の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。

    ---引用開始

    帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をするー。認知症の父と家族のあたたかくて、切ない十年の日々。

    ---引用終了

  • 中島京子さん講演会の参加に向けて、図書館で著者の本をいくつか借りてきた。

    この本は題名と装画から予想した通り、認知症を患う父親の介護について書かれている。

    私自身が高齢者施設に長く勤務しているので、この本に描かれている認知症の男性と家族のようなケースは日々目にしている。

    介護は終わりが見えないからこそ、家族にとって不安や疲労との闘いだ。
    中島京子さんもおそらくこの地獄のような介護を経験されたのだろう。

    認知症に限らず、ケアをする際に患者さんの思いと家族の思いが一致せずどちらを優先すべきか悩むことは少なくない。

    そして、熱心な家族ほど、患者さんの思いに応えようと頑張りすぎて家族の思いがなかなか吸い上げられず泣き寝入りしてしまうことは多い。

    この本を読んで、支える側である家族の状況や思いを様々な角度から捉えることの大切を改めて認識できた。

    患者さんが一番大切なのは当たり前。
    だけど、それと同じくらい介護者である家族こそが大切。

    そして、いつか自分も認知症を患う人を支える家族という立場になるだろう。
    最期まで妻の曜子のように献身的にサポートすることができるとは思えない。
    それでも、長いお別れという作業に心して向かいあっていかねばと思わされた。

  • 認知症を発症した東昇平と主にその妻、娘3人の10年間の介護生活を描いた作品。認知症とは「長いお別れ」を意味する…記憶は長い時間をかけて失われ遠ざかっていく…終始、重い介護の視点を明るく前向きにとらえているような、そんな内容でした。この東さんのような方ばかりではなく、急激に認知症状が進み周囲が困惑してしまうケースも多いのが実際です。

  • 本書は認知症を患っている昇平と介護をする妻の曜子、そして3人の娘たちの10年間を描いた連作短編集。中島京子さんらしいユーモアと優しさにあふれたあったかい介護小説だった。介護と言うと途端に暗くなりがちで読んでいるだけで疲労感が押し寄せてくるものもあるけれど、この小説はあくまでも明るい。

    現実はこんなもんじゃないと心の中で思う一方で、羨ましいと思うのも正直な気持ち。折れることなく夫をまっすぐに思い続ける妻の覚悟もあっぱれだし、なんだかんだと言いつつも3人も娘がいることで気持ちに余裕が出てくるのだと思う。
    これが父ではなく母が認知症になってしまったら、3人の娘ではなく3人の息子だたらそうはいかないだろう・・・、なんて意地悪な思いを抱きつつ読むのもまた楽しかった。

    特筆すべきは一つ一つのエピソードの描き方の巧さ。冒頭の遊園地の場面、同級生のお葬式に参列した時のこと、入れ歯をめぐる冒険、妻の入院などなど・・・。どれもこれもどこかしらほっこりとさせて、深刻なテーマを深刻にさせない作者のさじ加減の妙が素晴らしい。
    さすが中島京子さん。

    まだほんの数冊しか作者の作品は読んでいないけれど、もっともっと読みたくなった。
    とりあえず、「かたづの!」かなぁ。

    • だいさん
      認知症
      介護

      これから(の時代)は、こんなテーマの小説が増えそうですね?
      どちらも、医療ではHOTな話題だから。
      認知症
      介護

      これから(の時代)は、こんなテーマの小説が増えそうですね?
      どちらも、医療ではHOTな話題だから。
      2015/09/04
    • vilureefさん
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。

      そうですよね、増えそうですよね。
      おまけに私の親も認知症を患っているので、...
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。

      そうですよね、増えそうですよね。
      おまけに私の親も認知症を患っているので、余計に目についてしまいますね。
      2015/09/04
  • どう老いるか、自分では選べない未来に家族としてどう向き合っていくか、色々考えさせられるストーリーでした。
    良平さんをひたむきに支える家族の姿が素敵でした。愛だな〜

  • 身につまされる。全ての人が必ず歳をとる。
    自分は認知症や病気にはならず 穏やかに老衰で。なんて思ってる。
    認知症 誰もなりたくてなってるわけじゃない
    家族は本当に大変だけど 本人も 徐々に記憶が無くなるのは恐怖らしい。
    文句を言いながらも 妻も娘達もみんな お父さんを大切に思っていて ある意味 昇平は幸せだったのかも。
    物忘れ程度だったのにお話が進むにつれ 症状も進んで 本当に 「長いお別れ」

    自宅で母が老老介護して 亡くなった父を思い出しちょっと涙でした。

  • 文句無しに星5つです♪ まさに今風の「恍惚の人」ですね。元中学校長や公立図書館長まで務めた東昇平氏を縦糸にして、徐々に認知症が進行して行く10年間が支え続ける妻や3人の娘や周りの人々の様子を横糸に語られていく、しかも全体にユーモアをまぶしながら。両親の介護体験がある私には何度も頷きながら時に反省しながら読み進めることができました♪ 長いお別れをこんな風に軽く深刻にならずに著していてとても良かったです。介護等が分かる人 通じる人にはオススメの本でした。

  • 3人姉妹の、両親のことを気にしつつもどこか他人事な態度がリアルだなと感じた。
    数年前に祖父を癌で亡くした。80歳を超えた祖母がヘルパーさんの手を借りながらもほぼ1人で自宅介護をしていた。当時、私の母(祖母の娘)と私自身が同居し、かつすぐ近くに叔母(祖母の娘)が住んでいたにも関わらず。

    私は母子家庭かつ一人っ子なので、妻の曜子が経験したような介護を今後自分ひとりで背負う可能性が高い。読み終わって、いやこれって10.20年後の自分の姿なんじゃない?と気づく。いやいや、気づくのが遅すぎると鈍感な自分に呆れる。

    介護は、本当はもっと過酷で、綺麗なものではないと思う。昇平と曜子の間には2人にしかわからない絆や愛がある。それは昇平の記憶が少しずつ遠く消えて無くなってしまっても。曜子のことを妻だと認識できなくなっても。2人の間には2人にしかわからない何かがある。きっと私の祖母と祖父の間にも、二人にしかわからない何かがあったのかな、と読み終わってふと考えた。

  • 老々介護だぁ。
    わが家はまだ両親も元気にしていてくれているので具体的に考えたことはないが、この先あるかもしれない設定にむむむと考えながら読んだ。
    父が認知症、その介護を母が……。
    夫婦ならお互いの面倒をみようと強く思うだろうけれど、近所に住んでいない娘たちにはどうしていいものか。
    本人、介護をしている人の希望も聞かなければならないし。
    元気なうちにあれこれ話し合っておくのが1番かもね〜。
    父親には、いい暮らしだったと思う。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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