長いお別れ

著者 :
  • 文藝春秋
4.02
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本棚登録 : 910
レビュー : 172
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902654

感想・レビュー・書評

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  • 本書は認知症を患っている昇平と介護をする妻の曜子、そして3人の娘たちの10年間を描いた連作短編集。中島京子さんらしいユーモアと優しさにあふれたあったかい介護小説だった。介護と言うと途端に暗くなりがちで読んでいるだけで疲労感が押し寄せてくるものもあるけれど、この小説はあくまでも明るい。

    現実はこんなもんじゃないと心の中で思う一方で、羨ましいと思うのも正直な気持ち。折れることなく夫をまっすぐに思い続ける妻の覚悟もあっぱれだし、なんだかんだと言いつつも3人も娘がいることで気持ちに余裕が出てくるのだと思う。
    これが父ではなく母が認知症になってしまったら、3人の娘ではなく3人の息子だたらそうはいかないだろう・・・、なんて意地悪な思いを抱きつつ読むのもまた楽しかった。

    特筆すべきは一つ一つのエピソードの描き方の巧さ。冒頭の遊園地の場面、同級生のお葬式に参列した時のこと、入れ歯をめぐる冒険、妻の入院などなど・・・。どれもこれもどこかしらほっこりとさせて、深刻なテーマを深刻にさせない作者のさじ加減の妙が素晴らしい。
    さすが中島京子さん。

    まだほんの数冊しか作者の作品は読んでいないけれど、もっともっと読みたくなった。
    とりあえず、「かたづの!」かなぁ。

    • だいさん
      認知症
      介護

      これから(の時代)は、こんなテーマの小説が増えそうですね?
      どちらも、医療ではHOTな話題だから。
      認知症
      介護

      これから(の時代)は、こんなテーマの小説が増えそうですね?
      どちらも、医療ではHOTな話題だから。
      2015/09/04
    • vilureefさん
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。

      そうですよね、増えそうですよね。
      おまけに私の親も認知症を患っているので、...
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。

      そうですよね、増えそうですよね。
      おまけに私の親も認知症を患っているので、余計に目についてしまいますね。
      2015/09/04
  • 文句無しに星5つです♪ まさに今風の「恍惚の人」ですね。元中学校長や公立図書館長まで務めた東昇平氏を縦糸にして、徐々に認知症が進行して行く10年間が支え続ける妻や3人の娘や周りの人々の様子を横糸に語られていく、しかも全体にユーモアをまぶしながら。両親の介護体験がある私には何度も頷きながら時に反省しながら読み進めることができました♪ 長いお別れをこんな風に軽く深刻にならずに著していてとても良かったです。介護等が分かる人 通じる人にはオススメの本でした。

  • じんわりあたためる、炬燵のようないい物語だった。

    中学校の校長や図書館長を勤めあげ
    退任後に認知症になった、
    東昇平さんと家族の十年間の物語。

    だんだんと症状がすすんでいく様子を
    丁寧な物語に包んでありました。

    結構な分量の大変なことも書かれているのに
    ギスギス感が全くないんです。
    入れ歯騒動や、お父さんの椅子ボタン騒動や
    寝室排泄物騒動なども、クスクス笑ってしまいました。

    妻の曜子さん、すごいです。
    曜子さんのように寄り添ってあげることができれば…。

    昇平さん自身もすごいです。
    今あるもの出来ることを駆使して、
    感覚で相手に伝えていきます。

    三女の芙美と父との電話での会話、
    とっても温かかったです。
    そんなこと言われたら…号泣ですよね。
    言葉って意味を超えて、添えた気持ちを届けたり
    できるんですねぇ。

    それと「家へ帰る」とか「嫌だ」とかの発言は
    そういうこともあるのかも知れないなぁと
    色んな場面で考えさせられました。

    このラストの描き方も、本の題名もすごく好みです。
    「くりまらない」で「ゆーっと」する一冊です。

    GPSの名称って、すごいんですね。
    私も地球防衛軍を連想してしまいました。

  • 期待を裏切らない読み応え。二人暮らしの老夫婦と三人の娘たちの話。長女は既婚で子供あり、夫の仕事の都合で渡米中、次女も既婚で子供あり、割合近くに住んでいる、三女は独身でフリーランスで働いており忙しい。父がアルツハイマー型認知症を患っており、母がなんとかかんとか介護しながら暮らしている。少しずつ進行してゆく認知症の症状と介護している母を慮りながらも、自分たちの生活の事情もありつつあれこれ悩みつつ寄り添う家族の様子が、もの悲しいだけでなくユーモアというか暖かみのある筆致で描かれており読み終わるのが勿体なかったです。大変良い本でした。

  • 認知症を患ってしまった「先生」の奥さんと、3人の娘と、その家族やらとのかかわりの中で描かれる、ユーモラスで、しあわせな、ちょっぴり切ない、最後の10年の日々。

  • 定年退職し、3人の娘も独立、妻と平穏な隠居生活を送っていた元教師。認知症と診断された彼を中心とする妻や娘たちとの家族ドラマを描いた連作短編集。認知症家族の介護という現代の重いテーマをとりあげているが、深刻さはなく、どことなくユーモラス。10年間もの介護の時間を「長いお別れ」と称して、皆が楽しんでいる風。

    作者の言いたいことは、介護老人を抱える家族にだって、介護以外にそれぞれの人生があるってことなんだろう。高齢出産や子供の不登校、海外生活、失恋、自身の病気、そして「3・11」、家族の中心話題は常に認知症老人じゃない。妻や娘、義理の息子たちはそれぞれ人生の問題を抱えつつ、その時々で介護に向き合いながら生きている。

    夫が家族のことを忘れていくことに周囲は同情するが、妻は「それがどうした」と言い放ち、世話を続ける。そんな割り切りができる強さが、介護には必要なんだろう。

  • 痴ほう症を発症してから亡くなるまでの家族の物語。優しい言葉で綴られた深い愛情物語に涙しました。

    痴呆が進む様子をくすっと笑わせる文章で優しく表現している。、妻の強い愛情と責任感でギリギリまで老々介護をやり遂げた曜子。家庭はやはり母に支えられている。

    実際家族の介護が始まったら生活は激変して殺伐としそうだけど。

    こんな、最期が迎えられたらよいけどこれは健康なときに徳を積んだ人にしか迎えられない最期なのかもしれない(笑)

  • 久々に本を読んで泣いた。
    大変な日々でも、いつかお別れが来る。
    その大変な日々が大切な日々になる。
    家族を大切にしようと思う。

  • *帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。
    妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、十年ほど前から認知症を患っている。ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう、迷子になって遊園地へまよいこむ、記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、終末のひとつの幸福が描き出される。著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集*

    泣きながら読みました。が、それは、温かく湧き出る涙で。こんなにも愛情たっぷりに、あたたかく、優しく、凛とした強さで書かれた物語に出会えたことに、心から感謝します。そう、忘れたとしても、お別れがきたとしても、そこには確かに存在する何かがある。それを、いつも心に留めておきたい。

  • Twitterで、評判になっていると知ったこの本
    歳をとっていくと、認知症まではいかなくても
    物忘れや、人に説明すること、理解することが
    少しずつ難しくなっていくのかなと親を見ていて思う
    でも、だからといって、それを責めたり馬鹿にしたくないし
    長生きすることに後ろめたさや不安ばかりになって欲しくない
    一生懸命生きてきたんだから、堂々と生きていて欲しい
    この本の東昇平さんは、すっかり認知症で
    老老介護の奥さんや、娘3人を振り回しているけど
    周りの人間の優しさや、本人のユーモア、
    反抗期盛りの孫の人間性などに影響を与えたり
    人生に無駄なことは無いんだよねと思える
    身に積まされることもたくさんあるけど、
    読んでよかったなと本当に思った

著者プロフィール

中島京子(なかじま きょうこ)
1964年東京都生まれの作家。『FUTON』でデビュー。著書に『小さいおうち』(直木賞)、『かたづの!』(河合隼雄物語賞・柴田錬三郎賞)、『長いお別れ』(中央公論文芸賞)等。2019年5月15日、新刊『夢見る帝国図書館』を刊行。

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