朝が来る

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 3441
レビュー : 578
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902739

感想・レビュー・書評

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  • 辻村深月っていろんな作品をかけるんだなと、まず彼女の才能に脱帽。前回読んだのがアニメがテーマだっただけに振り幅がすごい。

    特別養子縁組に焦点を当てて、母性とは何なのか、血縁とは親子とは何なのかを考えさせられる作品だった。
    養子制度が盛んなアメリカなどとは違って、日本では非常に事例が少ないのだろうと思う。

    でもこの本を読むと育てられない親が育てられる親に子を託すことをもっと柔軟に温かい目でみてあげてもいいんじゃないのだろうかと思わせられる。

    小説の結末はドラマティックすぎて、いやもちろんホロリとしちゃうんだけど、どこかで冷めちゃったかな。とはいえ、やっぱり明るく終わって良かったのかな、タイトル通り。
    一人でも多くの子供が救われますように。
    「朝が来る」、良いタイトル!

    • だいさん
      日本の養子縁組では法律のハードルがめちゃくちゃ高いのではないですか?
      日本の養子縁組では法律のハードルがめちゃくちゃ高いのではないですか?
      2015/09/25
    • vilureefさん
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます(*^_^*)

      そうかもしれませんね、法律のしばりもあるのかもしれません。
      で...
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます(*^_^*)

      そうかもしれませんね、法律のしばりもあるのかもしれません。
      でもこの制度をもっと認知させられれば条件をクリアする人が増えるだろうにとも思います。
      あまり知られていないというのが正直な感想です。
      2015/09/29
  • 帯に書かれている『子どもを、返してほしいんです」
    この言葉がかなり強烈で、頭の中で勝手に想像してしまっていた。
    「子どもを返してほしい」生みの親と「自分たちの子どもだ」と言い張る育ての親。
    いつの間にやらそんな想定が勝手に出来上がっていたのだが…
    当たり前だけど、そんな単純なストーリーではなかったのです。

    子どもを望んでも望んでも恵まれない夫婦。
    望まぬ妊娠をしてしまう女性。
    手放さなければ生きていけぬ事情を持つ女性。
    様々な立場の中で、もがき苦しむことは想像できる。
    欧米とは違って、「血」や「家」を重視する風潮がまだまだ強い日本。
    養子を迎えるという選択はものすごくハードルが高い。
    特別養子縁組。
    言葉は聞いたことはあるし、TV番組を見た記憶もある。
    しかし、ここまで深く考えたことはなかった。
    養子縁組は誰のためのものか?
    子どもが欲しくて欲しくてたまらないのに子どもに恵まれない夫婦のためのもの?
    育てられない女性のためのもの?
    否!
    そうではない!
    当たり前のことなのに…
    子どものための制度なのに…
    その考えが希薄になっている自分に愕然としたり…


    辛い不妊治療に耐えても子どもに恵まれなかった栗原夫妻。
    子どもを手放してしまった片倉ひかり。
    6年の歳月を経て、息子を巡って再びかかわりを持つことになった、夫婦とひかり。

    夫婦とひかりが出会うまでの道のり。
    生みの親、育ての親として再会するまでの夫婦とひかりの歩んだ人生。
    栗原夫妻の決意、覚悟。
    とても胸に響いた。

  • 冒頭を読んでママ友とかタワーマンション内格差とかそういうドロドロはちょっとなぁ...と思ったのですが、お話は全く別の方向へ。
    そういうお話だったんですね。

    不妊治療の末、養子を決意する夫婦と中学生で妊娠し我が子を手放さざるを得ない少女。
    双方の葛藤や決意が切なかったりやさしかったり。

    特別養子縁組については、まあ偏見とかいろいろきれいごとで済まされない問題もきっとあるだろうし、「普通」の子を「普通」の家庭で育てている私が是非を判断できる問題ではないけど、不妊治療に苦しむ夫婦が少しでも減って、望まない妊娠をする女性が少しでも減って、子どもを欲しい夫婦が子どもを持てる環境が少しでも整って、生まれてくるどんな命も救われる社会になって欲しいと思います。

    養子をもらった夫婦がとても毅然としていてもはや理想的な家庭を築いているのに対して、実母の少女は家にも居場所がなくなりもがいてもうまくいかない。
    中高生での妊娠なんて人生狂わすだけでロクなことがないってのが真理に近いと思うの。
    こういうことを美化だけは絶対にするべきではないから。

    国が「女性は22歳でいちばん妊娠やすくてそこから徐々に低下して30超えると可能性はぐんと下がる」的なことを少子化対策の一環として高校生に知識として与えるというようなニュースがありましたが、ほんとオジサンの考えることは...
    事実だけどさ、だから?ってなるよね。
    実際22歳で子供産んで生活していくのすごく大変なのに分かってるのだろうか。

    ちょっと話がそれたな。
    うん、結末もこれでいい気がした。
    これは物語だから皆ハッピーエンドなのがいちばんだから。
    私は基本的にハッピーエンド至上主義なので都合良過ぎでも現実ではこうはいかなくてもハッピーな方がいい。

    辻村さんがこういうお話を書くことがすごく自然になった。
    次も楽しみ。

  • 穏やかに暮らす夫婦と子供一人の家族。日々ささやかな問題は起ころうとも平和といえる日常。そのさなかに掛かってきた一本の電話が、さざ波を立てる…

    という出だしで始まりますが、その電話によってもたらされる動揺や困惑が綴られる物語ではありません。電話を始点として、かかわる二人の女性の過去がそのまま綴られていきます。二人の生き様を丁寧につづった、物語でした。

    「現在」は幸せな家庭を営んでいる妻は、かつて結婚して不自由なく暮らしていたはずが、いつのまにか子供を持たなければいけない、という強迫観念に近いものにおびやかされる日々へと変わっていっていた。そのなかで出会った「特別養子縁組」によって、妻は、夫婦は救われていくことになる、という養子を迎えたほうの女性の物語。
    そしてもう一つが、電話を掛けざるを得なくなる、子供を産んだ実母の物語。中学生の身で身ごもった彼女にいったい何が起こったのか。彼女の視点から描かれるのは、あまりにも幼い自覚と、思春期ならではの周囲への反発、初めて覚えてはまってしまった恋愛の沼。愚かだと一言でいえるかもしれない彼女の行動はけれど、ではどこで引き返せば良かったのか、と問われると、どれもが繋がりあっていて、立ち止まるにはとても難しい大きな流れに彼女はいつしか、乗ってしまっていた。

    そのやるせなさがつらく哀しく、希望がはらはらと剥がれ落ちていくばかりな人生は、あまりにもむごい、と思わされました。

    そうして二人の人生が交錯して迎えた物語の終盤には、かすかな救いがもたらされます。といっても、それはほんとうに淡いものです。けれど、いつしかきっと、彼女にも「朝が来る」ことを祈ってやみません。

    そういう「祈り」を読むほうへもたらせてくれる、美しいラストシーンでした。

  • 誰にでも、起こり得る、起こりえた人生がここにあると思いました。

    タイトルからは内容を想像しにくいですが、だからこそ、先入観なく誰でも読み進められる小説です。

    この小説には特別養子縁組をした夫婦と、養子に出さなければならなかった側の事情が、描かれています。

    特に養子に出さなければならなかった「母」の事情を書いた第三章は、胸が痛くなります。

    こどもの幸せを願うなら、正しい性についての知識は親子ともども欠かせません。

    こどもに絵本を読み聞かせるように、自然に、小さいころから教えられる世の中になっていくことが、必要なんだと思いました。

    「お母さん!学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!」という本があります。
    性について、こどもにどう伝えればいいのかな…と悩んだら、ぜひ手にとってもらいたいと思います。

  • 特別養子縁組を題材にしている話。

    たまぁにTVのドキュメンタリーで見かけます。
    まず不妊治療をしても子供を中々授かれない夫婦、
    そして色々な理由で子供を育てられない女性。
    夫婦の方は割とクローズアップされて、赤ちゃんを迎え入れた後の生活もTVで流されているけれど、
    赤ちゃんを産んだ、女性のその後はどうなっているのか、と言うのは余り知らされていない気がする。

    話の終盤に出てくる、『わかってあげられなくて、ごめんね。』の言葉が全てを物語っていると私は思う。

    どんな事情があるにしろ、十ヶ月間お腹の中で一緒だった赤ちゃんを手放すのは
    きっと本能的に辛いものがあると思う。

  • 子どもを授かることが不可能な夫婦と、生んでも育てられない子どもを身ごもった少女が特別養子縁組みで繋がる。
    ただ、ひとりの赤ちゃんをめぐり全く別のふたつの物語が描かれているように思う。
    辻村深月さんは文章が上手い。どちらの立場も想像でしかないのだけれど、すっと共感できる部分が多かった。 少女があまりにも愚かで痛々しくて辛かったけれど、最後は本当に救われた気持ち。

  • 三人の穏やかな日常の幸せを噛みしめる様に暮らす栗原家。
    無言電話が掛かり始めたのは、ここ一ケ月の事だ。
    悩むと言う程の頻度ではないが、気持ちが良いものではない。
    ある朝、電話が鳴った。佐都子はまた…と、思ってた。
    しかし、幽霊の様に生気のない声がした。
    その女は「子供を返してほしいんです」と告げたーー。


    不妊治療との長く辛い闘いの末に、栗原夫婦が悩み苦しんだ末に
    選んだ道は、特別養子縁組だった。
    不妊治療の苦しみや葛藤、朝斗を迎える迄の複雑な心理描写が、
    丁寧に描かれていて、引き込まれました。
    また、物語の序盤佐都子が朝斗を信じる場面がとても印象的でした。
    そして、実母を名乗る若い女と対面での夫婦の姿に、
    人となりがとても良く表れていました。
    朝斗を産んでくれた小さなお母さんは、自分達と朝斗両方にとって
    大事な〝お母さん〟その大事なお母さんを軽んじたり
    貶めることは誰にも許されない…。
    そう思ってる二人が、素晴らしいって感動しました。

    中学生で妊娠し、産まざるをえなくなったひかり。
    すっごく特別な子かと思ったが、違ってた。
    家族への反発心や嫌悪感をもっている。
    でも、思春期には大きさは違っても心の内に抱く子沢山いると思う。
    やはり、辻村さんは思春期の女の子の内面の描き方がとっても上手。
    普通の子が少しずつ、そこからはみ出してしまう様子が
    息苦しい位、とっても丁寧に描かれていました。
    子供を手放した後、元の生活に戻るんだけど、
    彼女はある意味凄く正直で、真っ直ぐなんだって思った。
    だから、元の生活に戻れなかった…。
    彼女の母親や叔父の言動の無神経さ・浅はかさに本当に腹が立った。
    ありのままの姿のひかりと、しっかり向き合って欲しかった。
    幼くて、考えが浅くて危うくて…。
    彼女が転落の人生を歩んでゆく姿が何とも切なかった。悲しかった。

    終わりに光が見えてホッとしました。
    朝が来て良かったです。

  • 初っ端から惹きつけられるように読みました。時折かかってくる無言電話は、幸せな家族に何かが起こる前触れのように思えたし、幼稚園で起きた怪我をめぐってのトラブルはとてもリアルで、どう決着するのかハラハラしました。加害者になるより被害者の方が気が楽、というのもよく分かります。そして、そのトラブルが決着した頃、電話で子どもを返して欲しいと言われた佐都子…。実は息子、朝斗は特別養子縁組で迎えた子だった、という話。
     不妊、望まない妊娠による出産等、背景には重いテーマが見えます。子どもが欲しい夫婦、子どもを育てる環境にない母親、双方にとって良い制度のように思えますが、現実は理想通りにいかないことも多いでしょうね。子どもを育てる、一人の人間を育てる、というのは大変なことです。
     朝斗の産みの母であるひかりは当時中学生。まだまだ本人も子どもです。ひかりがどんなに親に反発心があったとしても、まだ社会で独り立ちできる状況ではありません。ひかりの両親が妊娠をなかったこととして、再スタートさせようと思ったことも親の立場なら当然だと思います。
     結局、喪失感を埋められず、ひかりは家を飛び出してしまいますが、世の中は厳しいものでした。世の中を知らないが故に転落していくひかりの姿が痛々しいです。 佐都子夫婦が朝斗を迎えた時、“朝が来た”と思えたように、ひかりにも朝が来て欲しいと思いました。 家族とは何かを考えさせられる本でした。 三浦綾子氏の『氷点』を思い浮かべ、血のつながりについても考えずにいられませんでした。

  • タイトル通り、曙光を感じるラストで安堵。ひかりがずるずると道を誤っていくさまが読んでいて辛かったから。
    血が繋がっていても心の通い合わない親と子の姿が寂しく、自分の姿はそうなってはいないかとおそれる。
    呆気なく子どもを授かることもあれば、どんなに望んでも叶わないこともある。どちらであっても、その後も続く人生を、どうやって生きていくのか。その瞬間人生の全てのように感じる出来事も、いくつもある通過点のひとつなのだと感じる。

著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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