屋上のウインドノーツ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902869

作品紹介・あらすじ

「みんなとつながることができない」私立中学の三年生・給前志音(きゅうぜん・しおん)。これまで勉強やスポーツ、そして人間関係さえも唯一の友達・青山瑠璃に頼り切って生きてきたが、離れて暮らしていた父との再会をきっかけに、あえて友達がひとりもいない県立高校への進学を決意。しかし志音の父はその後、過労が原因で急死――。父の遺品の中からドラムと「志音、大志を抱け」と書かれた日記を見つけた志音は、ひとりドラムの練習を始める。 県立高校入学後、学校の屋上でドラム(エアで)の練習をしていた志音は吹奏楽部の部長・日向寺大志(ひゅうがじ・たいし)から入部を誘われる。一度は入部を断った志音だったが、大志の強い誘いと「何かが変わるかもしれない」という予感で入部する。いっぽうの大志は、実は過去の部活運営での失敗を抱え、その傷を乗り越えられないままでいた(部長になったのも実はくじびきの結果!)。志音の出現は「何か」を変えるのか? やがて二人と部員たちは吹奏楽部の東日本大会出場をめざして厳しい練習の日々を過ごすようになる。そして地区大会の日がやってきて――。 決して小さくはない過去の傷や挫折を抱えながら、懸命に吹奏楽に打ち込む少女と少年の奮闘の姿を爽やかに描いた第22回松本清張賞受賞作。松本清張賞に新しい「風」を吹き込む部活小説の傑作です!

感想・レビュー・書評

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  • 吹奏楽部をめぐる青春小説。
    吹奏楽のコンクールは、話には聞いたことがあるけどよく知らず、講習会とかあるんだなとか、予選みたいのがたくさんあるんだなとか、いろいろ知れて面白かった。

    主人公たちを応援したくなるし、読んでいるこちらまで胸が熱くなる、素敵な世界だなぁ。うまくいきすぎ、というところがまたいいんだよな。
    ラストのその先は、志音たちみんなの笑顔を期待!

  • 第22回松本清張賞受賞。
    ど真ん中の青春小説。
    なんでもできる幼稚園からの幼なじみに寄り添っていた引っ込み思案の志音。そんな自分が嫌で、幼なじみとは違う高校へ。父の形見のドラムのバチを叩き始めた志音が、少しずつ変わっていく。
    不器用な子が頑張る姿に感動しますね。グッときました。

  •  高校生の吹奏楽青春ストーリー。

     高校進学した志音は、一人屋上にいたところを、吹奏楽部部長の日向寺大志に誘われ吹奏楽部に入部する。
     人見知りで、友達と打ち解けられなかった志音が、東日本大会を目指して練習していくうちに、少しずつ変わっていく。

     主人公、給前志音と、部長の日向寺大志の視点から交互に物語が語られていきます。
     初めは頑なな性格だった志音が、大志たちと練習を重ねていくうちに、少しずつ成長していくところは読んでいてとても引き込まれました。
     志音にも、大志にも、それぞれ心に陰を落としていることがあって、それを乗り越えていくところ、共感しながら読みました。

     額賀澪さんは茨城県麻生町(現・行方市)の出身で、出てくる高校だとか地名だとか、元ネタを想像しながらニヤニヤしてました。
     前に読んだ「タスキメシ」の時もそうでしたが、めっちゃ茨城感あります。

  • 私立の中高一貫校から、友達がひとりもいない県立高校へ
    入学した引っ込み思案の少女・給前志音。
    学校の屋上で、父の遺品のステックでエアドラムの練習をしていた時、
    吹奏楽部の部長・日向寺大志に誘われて吹奏楽部に入部する。
    やがて、厳しい練習の日々が始まって…目指すは東日本大会出場ーー。


    これまで、勉強やスポーツ、そして人間関係さえも幼稚園からの
    唯一の友達・青山瑠璃に頼り切って生きて来た。
    瑠璃ちゃんの金魚のふん…。
    何にも夢中になる事が出来ず「みんなとつながることができない」志音。
    全てがつまんなくって、面白い事などない…。
    そんな自分自身の事が大嫌い。
    誰も知った人がいない高校に入学しても一緒…。
    屋上でひとりぼっちでお弁当を食べている。
    突然の大志からの、吹奏楽部への誘い。
    何かが変わるかもしれない…。変われるかもしれない…。
    大志が少しずつ志音の心を開かせていく。
    善良で明るく見える大志だったが、実は中学の吹奏楽部の部長の時、
    部活運営での失敗を抱え、その傷を乗り越えられないままでいた。

    そんな大志を支えたのは…志音だった。
    傷付いて、傷付いて臆病になった二人だったからこそ、
    支え合えたんだろうなぁ。
    大志は、志音という助けたい存在に出会って、助けつつも
    自分の愚かさに気付いてゆく。助けていた子に助けられる…。

    自分は、自分が思っているよりずっとずっと、色んな事が出来て、
    案外それは、自分じゃ気付けないものなんですね。

    見守ってる、志音と大志の家族の姿も良かったなぁ。
    支え合って終わりじゃなくって、二人ともそれぞれが抱えてた問題に、
    自分自身でしっかりと向き合って乗り越え次のステージへと歩んで行った。
    それが、とっても良かったです。
    とても、爽やかな気持ちになりました。

  • 青春音楽小説には傑作・佳作が多い。バンド、合唱、吹奏楽など、高校・中学の部活動ものは特にそうで、あれやこれやすぐにタイトルが浮かぶ。本作は高校の吹奏楽部が舞台。ちょっと気恥ずかしいくらいにストレートだけれど、ぬるい感じはなくて楽しんで読んだ。

    なんというか、作者の若さがキラキラとまぶしい。これはデビューしたころの朝井リョウ作品を読んだときの気分に似ている。言葉の連なりに清々しさがあって、高校生たちを描いていくのにぴったりだ。さらっと描かれる大人たちも、類型的でないところがいいと思った。

  • Facebookか何かで目に留まり、吹奏楽の話だというあらすじを知ったので読んでみたいと思い購入。

    志音みたいなこういう子、いるよな~!と思いながら読み進めた。大志みたいな子が強引に誘ってくれたからやっていけたものの、こういう存在がいなければ「おとなしい子」で終わってしまうような目立たない子。
    ここまで人数の少ない編成だと、確実に自分の責任や役割が大きいし、「必要とされている」「自分の居場所がある」と感じられると思う。大志のおかげで志音は変われて、良かったな~。

    ・・・しかし吹奏楽経験者としては、いくら人数少ないとはいえ関東の支部大会を目指すような高い目標持ってる高校なのにスウェアリンジェンを選ぶというのが・・・なんとも微妙。小編成向けの曲はもっとあるやろうに、ちょっとカンタンすぎる曲やからなあ。私が中学2年のコンクールで使った曲やから思い出深いし、メロディーも浮かんで読みやすかったけど。

    ただ単に「吹奏楽部同士くっついて終わる」というエンディングじゃなくてよかった。

  • アオハル!!!
    自分に自信がない志音と中学の大失敗を引きずっている大志
    2人が出会い、吹奏楽部を通して成長していく。
    恋愛が挟まってこないのも良かった。

  • 優しくて出来過ぎな友人に守られ過ぎて、息苦しくなってしまった中3の志音。全てについていけなくなり、私立中学から県立高校へと進学先を変えた。
    高校でも、透明になって、存在しないかのように生きていくのだと思っていた…大志先輩に吹奏楽部へ誘われるまでは。
    成長途中の中学時代は、50/50の友人関係というのは難しい。どうしても、力関係が出てしまう。親友と思っていた存在が、苦しい存在となり、嫌いになる前に逃げた。でも、いつまで逃げているわけにはいかない。志音はここで自分と向き合えて良かったのだろう。
    そのままズルズルと友人関係が続いてしまう場合も多いと思う。
    離れたことで、成長し、友人関係を立て直せた。
    吹奏楽部の青春、それぞれの思いが丁寧に書かれている。
    私立の生徒より、県立高校の生徒の方が、視野も広く大人な気がする。
    2018.4.26

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    友達がひとりもいない県立高校へ入学した引っ込み思案の少女・給前志音は、ワケありの部長・日向寺大志に誘われ吹奏楽部に入部する―やがて厳しい練習の日々が始まって…目指すは東日本大会出場!音楽と友情の疾風怒涛。第22回松本清張賞受賞。

    青春期に全く青春していなかった悲しみの高校生でしたが、本やドラマの青春ものは大好き。満たされなかった青春の思い出を改ざんしたいからでしょうか。田舎の高校生で青い空白い雲、吹奏楽の鳴り響く音とカルピスソーダ。うーん甘酸っぱいですなあ。
    この本の良い所は、青春小説につきものの初恋の切なさみたいなものはほんのりと香る程度で、ほぼ思い悩み、傷つきながら自分の居場所と進むべき道を切り開く高校生たちの足掻きの物語であることです。
    大仰な展開は無く、とてもオーソドックスであるといえます。でも地味ではないのがとても不思議。青春ものって口当たりはいいけれどしばらくすると話の筋が思い出せなくなりそうな事が多いですが、2人の主人公の両方の観点から交互に書く事によって物語と人間関係が立体的にに感じられるため、頭に話の筋が明確に残っています。
    思えば娘も吹奏楽でサックスをやっていて、大変そうだったけれど楽しかったようですね。強い学校だったんですが残念ながらいい成績を残せなかったようで、たいそう悔しがっておりました。楽器が出来るといいですよね、音で会話というか心の交流が出来ますから。
    それにしても引っ込み思案のドラマー志音ちゃんの成長っぷりが頼もしかった。友達と目標に恵まれると誰でも輝く青春を送れるんじゃないかとこの年になると思います。結果よりも頑張ったという過程が大事ですよね。昔はきれい事言いやがってと思っていましたが、結局それが真実だと今は分かる。

  • ヒトリコが良かったので、ダブルデビュー作のこちらも読んでみました。
    爽やかな読後感!
    しかし、もっと長くても良かったと思います。
    もっとこの物語に浸っていたかった!

    何かを一生懸命やった経験ってホントに大切ですね。
    そしてそれは学生時代だけじゃなく、いつから始めても遅いということはないと思います。

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著者プロフィール

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部卒業。2015年、「ウインドノーツ」(刊行時に『屋上のウインドノーツ』と改題)で第22回松本清張賞、同年、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞する。著書に、『ラベンダーとソプラノ』『モノクロの夏に帰る』『弊社は買収されました!』『世界の美しさを思い知れ』『風は山から吹いている』『沖晴くんの涙を殺して』、「タスキメシ」シリーズなど。

「2023年 『転職の魔王様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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