- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163902944
作品紹介・あらすじ
ゆるされている。世界と調和している。
それがどんなに素晴らしいことか。
言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。
「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」
ピアノの調律に魅せられた一人の青年。
彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。
感想・レビュー・書評
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とても美しい物語でした。
作品全体に静謐さや深さや煌めきや、そういったものが感じられました。
それはきっと、ピアノと北海道の自然がもたらすものなんだと思います。
でも一番美しいのは若い登場人物たちの心だと思いました。ピアノの調律師二年目の外村とピアノが大好きなふたごの高校生の和音と由仁。
この三人のピアノや調律に向けるまっすぐな思い、迷い、覚悟。そこに静かに深いものが感じられて、最後は本当にキラキラ輝いて見えました。
覚悟が決まった三人のラストには、心が震えてしまって涙がこぼれました。
この若い三人、これからどんな風に成長していくのか、と期待に胸が膨らみます。
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nikaku1.1さん、フォロー、ありがとうございます。今 チャコールペンシルを、見つめていました。nikaku1.1さん、フォロー、ありがとうございます。今 チャコールペンシルを、見つめていました。2020/08/01
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nikaku1.1さん、フォロー、ありがとうございます。
私の備忘録はちょっと冴えませんが、ピアノのコンサートに行ったときは調律師ことを注...nikaku1.1さん、フォロー、ありがとうございます。
私の備忘録はちょっと冴えませんが、ピアノのコンサートに行ったときは調律師ことを注視するようになりました。音を文章で喩えるのは難しいですよね。本物の本棚にもこの本が置いてあります。2020/08/24
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心が澄んでいくような心地良さがあった。
前を向く力を与えてくれる。 -
一人の青年のピアノ調律師としての成長物語。
ストーリー全体に大きな起伏がなく、3分の1くらいから失速してしまい、途中で国家試験の勉強が入ったりして、気づけば2ヶ月経過…。試験後すぐに再開し、本日なんとか読了。
個人的に宮下さんは、紳士服のお話に続いて2作目。2作に共通しているのは、物語や登場人物が穏やかで、感情の波風があまり立たず、さらりとしているところ。ストーリーも起伏が少なく、"凪"という感じ。
本作については、ピアノが題材だったが、どんな分野も、専門的な技術を極めていくのは、ひたすら地道な作業、訓練の積み重ねであり、まさに忍耐との勝負なのだなと思った。
小2〜6までピアノを習っていたが、その後はほぼ触れる機会もないままここまできてしまったけれど、本作を読んで単純にピアノに触れたい、と思ったし、中をのぞいてみたい気持ちになった。 -
冒頭──────
森の匂いがした。秋の、夜に近い時間の森。風が木々を揺らし、ざわざわと葉の鳴る音がする。夜になりかける時間の、森の匂い。
問題は、近くに森などないことだ。乾いた秋の匂いをかいだのに、薄闇が下りてくる気配まで感じたのに、僕は高校の体育館の隅に立っていた。放課後の、ひとけのない体育館に、ただの案内役の一生徒としてぽつんと立っていた。
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また小説を読んで泣いてしまった……。
自分が涙もろくなったのか、それとも作家の方々が素敵な作品を書くようになったのか。
“枝先のぽやぽやが、その後一斉に芽吹く若葉が、美しいものであると同時に、あたりまえのようにそこにあることに、あらためて驚く。あたりまえであって、奇跡でもある。きっと僕がきづいていないだけで、ありとあらゆるところに美しさは潜んでいる。あるとき突然、殴られたみたいにそれに気づくのだ。”(P20)
“ピアノの基準となるラの音は四百四十ヘルツと決められている。赤ん坊の産声は世界共通で四百四十ヘルツなのだそうだ。(中略)日本では、戦後になるまで四百三十五ヘルツだった。もっと遡れば、モーツァルトの時代のヨーロッパは四百二十二ヘルツだったらしい。(中略)最近はオーケストラの基準となるオーボエのラの音が四百四十四ヘルツになってきている(中略) 変わらないはずの基準音が、時代とともに少しずつ高くなっているのは、明るい音を求めるようになったからではないか。わざわざ求めるのは、きっと、それが足りないからだ。”(P97~98)
北海道の山間の集落、大自然の森の中で中学まで暮らしていた少年、外村君。
中学時代、体育館にあるピアノの調律のためにやって来た男性が出した不思議なまでの音色に心を動かされ、彼は調律師を志す。
調律師の学校を卒業した彼は、自分を魅了した調律師、板鳥さんと同じ職場に就職し、調律師の仕事を始める。
その過程で感じる多くの疑問と苦悩。
調律とはなにか?
ピアノとはなにか?
音楽とはなにか?
自分はどういう調律師を目指せばよいのか?
自分は本当に調律師になれるのか?
それとともに、
どんな目標を持って生きるべきなのか?
自分の人生に夢や希望などあるのだろうか?
“才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。”(P224)
周囲の人たちの温かい目に見守られ、彼は日常の調律の仕事で出会う様々な光景から、それらの答えを模索し続け、探し当てる。
彼の前に現れた可愛い高校生のふたごのピアニストが抱く葛藤と絡み合わせながら。
“もしかしたら、この道で間違っていないのかもしれない。時間がかかっても、まわり道になっても、この道を行けばいい。何もないと思っていた森で、なんでもないと思っていた風景の中に、すべてがあったのだと思う。隠されていたのでさえなく、ただ見つけられなかっただけだ。”(242P)
随所に現れる珠玉の言葉が胸に沁みわたる。
優しい言葉、優しい心の持ち主によって綴られた美しい話。
様々な場面、主人公の語り、ふたごの女子高生の思い、その他登場人物の台詞などが透き通るように真っ直ぐで、何故か何度も涙が零れる。
広大で、でも静謐な森の中の澄んだ空気を深く吸い込みながらゆっくり散策しているような、心に沁みわたる優しい物語。
胸に刻んでおきたいような言葉がありすぎて、引用が多くなりましたが、素晴らしい小説。
これまで読んだ宮下さんの作品の中でも最高傑作。
お薦めです。
2015年下半期直木賞候補作。
何故に受賞に至らなかったのか、選評者の意見を読みたいと思ったが、「文藝春秋」が貸し出し中で読めず。その選評を読んで後日追記したいと考えています。-
2016/03/24
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2016/04/13
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koshoujiさん、こんにちは。
すっかりご無沙汰しておりました。
頂いたコメントにも返信できずごめんなさい。
色々バタバタとし...koshoujiさん、こんにちは。
すっかりご無沙汰しておりました。
頂いたコメントにも返信できずごめんなさい。
色々バタバタとしていてそのせいなのか、良本に出会いせいなのか読書スランプ気味で・・・。
またボチボチと再会していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
本屋大賞、やりましたね。
地味な作家さんで実力の割に日の目を見ない宮下さんだっただけに、嬉しいです♪
2016/06/20
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音楽という才能果てない世界で、ピアノの調律師を志す戸村。深い森の静謐で語られるような文章が心地よいです。
「何ひとつ無駄なことなどないような気がすることもあれば、何もかもが壮大な無駄のような気もするのだ。」
「一歩ずつ、一足ずつ、確かめながら近づいていく。」
「努力しているとも思わずに努力していることに意味があると思った。」
迷いながら歩みを進める戸村に、思わず自分を重ね合わせ共感や感動をします。宮下さんは、こんな気持ちを文章化できるんだからすごいなと何度も思いました。そして、物語に引き込まれました。
誰しも人生の中で、自分が一体何者で、何を目指しているのか考えるときがあります。
今、目標に向かって進んでいる人、目指したことがある人の心に刺さる内容だと思います。
前向きな気持ち、あたたかな気持ちになれました。 -
じんわりとあったかくて優しくて、この物語の森の中から抜け出てしまうのが哀しい。ずっと羊と鋼の森の中にいたいのに、いられない辛さ。
ぽつりぽつりとしか宮下奈都さんの作品は読んでいないけれど間違いなく一番好き。
淡々とした静けさに一本の光がやわらかく差しているような感覚がたまらなかった。
物語は一人の少年がピアノ調律師の世界に魅せられるところから始まり、一人前の調律師へ一歩一歩近づいていく様が描かれている。
彼の夢を目指すひたむきさ純朴さに胸を打たれ彼を励まし続ける周囲の人々に癒され、大きな展開はないもの物語の森へすっかり迷い込んでしまった。
才能とは何なのか、努力とは何なのか。
ここで描かれるのはピアノ調律師ではあるけれど、夢に向かって頑張っている人、頑張りつつも迷いがある人、そんな人が読んだら絶対に励みになると思う。
調律師が主人公の小説は前にも読んだけれど、今回ほど調律師の世界に魅了されてしまうことはなかった。この物語は脇役であるピアノ調律師の奥深い世界を余すことなく描いていて自分自身がピアノの世界を知らないことに歯がゆくなった。
物語そのものももちろん、タイトル『羊と鋼の森』、それから装丁もすばらしい。全てが一体となって宮下さんの新しい世界を作り出している。
タイトル初見で、「何、このタイトル?」と思った自分が恥ずかしい。-
ご無沙汰しております。<(_ _)>
この本、最高でしたね。最近読んだ本ではベスト。何度も涙が零れました。
宮下さんの最高傑作と思ってい...ご無沙汰しております。<(_ _)>
この本、最高でしたね。最近読んだ本ではベスト。何度も涙が零れました。
宮下さんの最高傑作と思っていましたが、何故か直木賞は落選。
しかし、その代わりに昨日「本屋大賞」を獲得。
いつも優しく温かい筆致の宮下さんの作品が
これをきっかけに脚光を浴びることを願っています。2016/04/14
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調律師という職業を通して、主人公が成長してゆく様が丁寧に描かれている。おしゃれというか、詩的な文章で不思議な読了感だった。
調律師によって各々の哲学を持っており、成る程なと思わせるシーンが多かった。
著者プロフィール
宮下奈都の作品





