羊と鋼の森

著者 :
  • 文藝春秋
3.92
  • (809)
  • (1159)
  • (732)
  • (123)
  • (24)
本棚登録 : 7605
レビュー : 1258
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902944

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 私が私であることを許されている。宮下さんの小説を読むと、いつもそう思う。
    何かになりたいと思い、何かになろうと頑張っていて、それでも何にもなれない自分を不安に思い、この先どうしたらいいのか迷い、進むことも戻ることもできずにいる。そんな、森の中で迷子になっているたくさんの人たちに、自分を信じてこつこつと一歩一歩進んでいこうよ、とそっと寄り添ってくれる。いつか何か見つけられる時まで、きっとずっと寄り添ってくれる。そんな一冊。
    これは音楽の、ピアノの調律師の物語だ。羊と鋼が奏でる美しい物語だ。だけど、読む人それぞれが心の、身体のなかに持っている森を、ほらっ、と取り出して見せてくれる。あなたにもあるでしょう、森が。あなたを包み、あなたの全てを許し、そして身体の隅々にまで行きわたっている森の泉があるでしょう、と。
    あぁ、そうだ。宮下さんが紡ぐ言葉は静かに湧き出る泉のようだ。透明でさらさらと美しくて、のどの渇きも心の渇きも癒してくれる。私の中でいつまでも消えることなく泉のまま存在する、そんな言葉たちだ。

  • 相変わらず優しい。本屋大賞になる前に読めて良かった。

  • 最高だった、何度も読み返したい

    『才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。』

  • 静かに熱い。淡々と燃えると言うか、そんな空気感。
    冒頭のシーンが1番お気に入り。

    自分の中の世界が丸ごと変わってしまう事に出会えた主人公の外村くんは物凄く幸せだなぁ。
    例え悩み抜いたとしても、進むだけだもの。

    板鳥さんがめちゃくちゃ格好いい。
    真摯で渋くて柔らかくて。
    オジサマ好きな私には堪らない。

  • ピアノの調律師というマイナーな世界を取り上げた佳作。

  • タイトルと装丁に惹かれて読んでみた本。
    主人公の綺麗な心根が印象的。登場人物は、ちょっとクセのある人たちだが、皆 良心的。
    昨今の泥々劇の物語にすっかり慣れているので
    森の中できれいな澄んだ空気をいっぱい深呼吸した気分になった。

  • 高校生がピアノ調律師の仕事に立ち合ったことをきっかけにピアノ調律師の道に飛び込み、成長過程を描く物語。
    明確な「正解」のない仕事の中で、自らの価値観を見出す過程の心の動きが丁寧に描かれている。
    才能を言い訳にしない。
    「才能という言葉で紛らわせてはいけない。あきらめる口実に使うわけにはいかない。経験や、訓練や、努力や、知恵、起点、今期、そして情熱。才能が足りないなら、そういうもので置き換えよう。」
    「音楽は競うものじゃない。だとしたら調律師はもっとだ。調律師の仕事は競うものから遠く離れた場所にあるはずだ。目指すところがあるとしたら、ひとつの場所ではなく、ひとつの状態なのではないか。」
    「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」
    「道は険しい。先が長くて、自分が何をがんばればいいのかさえ見えない。最初は、意思。最後も、意思。間にあるのが頑張りだったり、努力だったり、かんばりでも努力でもない何かだったりするのか。」

  • ピアノの調律師の青年外村くんの成長する物語。
    ピアノの弾く人によって調律を変える秋野さんとピアニストの技量がはっきりと出るピアノを調律する板鳥さんに興味を引かれる。
    最後の外村くんが調律したピアノで双子の姉和音が弾く場面に感動した。

  • 音が聴こえてくるとよく書評に書かれているが、私はそれよりも新人が真摯に感性を必要とする仕事に向き合い、先輩の技量に圧倒され、自分の不甲斐なさに悶えつつ前進しようとする姿に胸熱くなりながら読んだ。どこを目指すか分からないまま進まなければならない、心許なさ。それを見守る温かい先輩の眼差し。新人の頃を思い出した。


    「目印を探して歩いていけるということは、僕も神様を知っているということだ。見たことはない。どこにいるかもわからない。だけど、きっといるのだ。だから美しいものがわかるのだ。そう思えることが嬉しい。」

    「初めから望んでいないものをいくら取りこぼしても辛くはない。本当に辛いのは、そこにあるのに、望んでいるのに、自分の手には入らないこと。」

    「いいんじゃないの。怖けりゃ必死になるだろ。全力で腕を磨くだろ。もう少しその怖さを味わえよ。怖くて当たり前なんだよ。今外村はものすごい勢いで色んなことを吸収している最中だから」柳

  • ピアノの話。そう聞くとピアニストとか演奏の話だと思いがちだけれど、これは調律の話。

    自身も長くピアノを弾いている作者の音楽やピアノへの、そして、なにより人間への愛にあふれた静かな成長の物語。すくすくと、木のように育つ主人公、彼を取り囲む他の木々、森。

    主人公の青年がいくつもの気づきを得て成長し、成長するたびに過去の自分の気づきでは足りなかったことに気づく、その感じが新鮮でとてもよかった。経験をつむごとに、過去の自分を超えて大きくなる感じが。

    いつもは主人公が女性が多い作者だけど、静かで謙虚で優しい青年は、作者の息子さん、長男をイメージしているのかもなぁと思ったりした。

全1258件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月映画化。『静かな雨』が2020年新春映画化が決まり、2019年6月6日文庫化される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

羊と鋼の森のその他の作品

羊と鋼の森 (文春文庫) Kindle版 羊と鋼の森 (文春文庫) 宮下奈都
羊と鋼の森 (文春文庫) 文庫 羊と鋼の森 (文春文庫) 宮下奈都
羊と鋼の森 Audible版 羊と鋼の森 宮下奈都

宮下奈都の作品

ツイートする