羊と鋼の森

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 7598
レビュー : 1258
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902944

感想・レビュー・書評

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  • ひたむきに調律師になろうとする北海道の青年。主人公がピアノを弾く人ではないという設定のお陰で、専門的な調律の世界を身近に感じることができ、彼自身の透明で澄んだ生き方に魅了されて、本を開いてから半日で読んでしまった。
    ピアノは他の楽器と比べて自分の思い通りにならなくて大変だなあと思っていた。本番で弾くのは必ず練習時とは違う楽器。それも本番ごとに違う。叩いて出す音程は自分では変えられない。オーケストラの練習では、よく和音のところを取り出して指揮者の方がこっちは高めにこっちは低めにと指示され、膨大な音符の中からその和音(の一音)が自分に割り振られた時はオーケストラの全体の中からその和音に耳を澄まし、口の圧で自分の音の居場所を探した。ピアノにはそういうことはできない、別物だと思い込んでいた。でも今回始めて、そうかピアノはその曲の調に合わせた調律をされたうえでその和音を響かせるように弾き手がペダル等で駆け引きしていたのか、と知った。ピアノ界では常識なのかもしれないが、今まで与えられた音を出してるイメージだったピアノの像が一新されて、なんだかもっと生き生きとした楽器に思えてきた。
    と言って、ピアノの練習を再開しても自分がそんな弾き手には程遠いのはわかっているが、それでもピアノをまた弾きたくなった。

  • 美しい文体で紡がれたものがたり。

    縁あるいはタイミングの重要性を、改めて認識させられました。

    自分を信じひたむきに努力する少年は、読み終える頃には親しみ深い存在へと変化しました。若い皆さんは彼と自分を重ねるでしょうか。ぜひ感想を聞かせてください。

  • 素敵でした。才能なんて分からないけど、やりたいと思ったことに突き進むしかない、悩みながら、もがきながら、こつこつこつこつ。主人公たちに励まされる本でした。ピアノの見方がちょっと変わりました。

  • 話題の本だったので、読みたいと思いつつ。。。

    積ん読本の中に埋もれて、数ヶ月たってしまいました。



    新米のピアノの調律師の物語です。

    物語の中で、これといった大きな事件は起りません。。。

    それなのに、先が気になる。。。



    一人前の調律師になりたい青年の思いや、先輩からの教え。。。

    いろんな言葉に、心がほんわり温かくなります。

    本のタイトルの羊って何?鋼って何?という疑問が解けていきます。

    読み終えて本を閉じる時に、満足の「ほっ。。。」というため息が出ます。

  • 新人調律師の外村が、双子の少女を始めとしたお客さん達や、個性豊かな先輩調律師と触れ合う中で、一歩一歩調律師として成長していく様を描いた作品。

    始め、この外村の卑屈かつ頑固で無神経な所に苛立ちを覚えていたが、物語が進むうちに少しずつではあるが文字通り"成長"していく姿が垣間見え、そこにこの小説の良さ、味を感じた。

  • また新たにお気に入りの作家さんができた。人生で最も心躍る瞬間の一つ。原民喜の文体を宮下さん自身も目指されているのかしら。静謐で美しく心に響いた。

  • とても静かで情熱的な物語でした。
    これで生きてゆくと思えるものに出会うことは、人生の中で最もしあわせで、最も恐ろしいことなのではないかと思ってしまう。
    正解も、終わりもない、道とも呼べないような道をひたすら前へ進むしかない。それでいて心の底から震えるような熱い気持ちがあふれる瞬間がある。そんな混沌のなかに生きている主人公が、眩しかったです。

    主人公が音に耳をすますたび、緑の匂いや、空の眩しさ、空気の透き通った温度を私たちも一緒に感じているような気がします。

    映画になるそうなので、画面の中でどんな音が響くのか、とても楽しみです。

  • 音という目で見えない世界を、文章でどのように表現するのか。
    冒頭の部分で、タイトルからは全く想像できないピアノの世界がどうやらこの物語のテーマらしいと気づいたとき、そこに興味がわいた。

    主人公の青年が、はじめてピアノの調律の音と出逢ったとき、彼は「森の匂い」を感じた。
    音を色や景色で例えることはよくあるが、匂いで例えた文章に出逢ったのは、記憶にない。
    その森は、秋の、夜の入り口の、静かで、あたたかな、深さを含んだ森だった。(p8)
    その奥深く凛とした音の森に、彼はそこから足を踏み入れていく。

    私も昔、そこそこ長くピアノを弾いていたが、「羊と鋼の森」を感じたことはなかった。
    ピアノの新しい魅力に気づかせてくれる、素晴らしい表現だと思う。

    私は、この作品を通して、主人公の成長過程や物語よりも、主人公がピアノを通して自分と向き合う場面(とくに序盤)がとても印象に残った。
    その一つが、先ほど書いた、彼がピアノの音と出逢う場面であり、
    また、p19~20にある、「美しいものに(知っていたのに)気づかずにいた」ことに気づく場面だった。
    彼の目を通して、私も自分の記憶と心を辿り、「気づかずにいた美しいもの」に気づくことができた。

    それから、主人公の同僚の柳さんが、感覚が繊細で、公衆電話や看板の不自然で派手な色が許せなかったり、道を歩いていると世界がどうしようもなく汚く見えてしまったりして苦しくなり、メトロノームの秩序立った音に救われた、というエピソードには、とても共感した。
    自分自身もそうだし、身近にもそういう人がいる。(その人は数字に敏感で、色がついたり動物に見えたりする、いわゆる「共感覚」をもった人です。)

    「世界との調和」というこの作品のテーマは、私自身の心にすっと沁みこんでくるものがあった。

    レビューブログ
    http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-506.html

  • 話題になっているからと避けていましたが、めちゃめちゃ良かった!!!!賞をとっただけあるなあと思いました。文章がなにより綺麗で、読んでいてすごく気持ちが良かったです。ピアノをやっていたのでよりわかるなあという場面が多かったです。
    ピアノ以外にも美術や写真など所謂芸術と呼ばれるものは優越が付けづらいし、何が良いかっていうのは人によって違うから続けていくのは覚悟がいるなあと思います。でもそれを折り合いつけて各々がいろんなかたちで自分の道を進んでいく姿が本当に良かったです。思わず二回読み直しました。

  • とてもきれいで美しい文章でした。
    読んでるとうっとりした。

    読後、我が家の森により愛しさを感じるようになりました。

    図書館で予約をしていて、ようやく回ってきてゆっくり表紙を開けたら、ゴールドのペンでサインが記載されておりとても神々しく感じました。

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著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月映画化。『静かな雨』が2020年新春映画化が決まり、2019年6月6日文庫化される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

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