スクラップ・アンド・ビルド

  • 文藝春秋 (2015年8月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (128ページ) / ISBN・EAN: 9784163903408

作品紹介・あらすじ

第153回芥川賞受賞作



「早う死にたか」

毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、

ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。



日々の筋トレ、転職活動。

肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。

閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!

みんなの感想まとめ

介護をテーマにしたこの作品は、祖父と孫の関係を通じて高齢者の生と死について深く考察しています。毎日のように「早う死にたか」とぼやく祖父に対し、孫の健斗はその思いを受け止めつつ、共に日々を過ごしながら自...

感想・レビュー・書評

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  • 第153回芥川賞受賞作。

    タイトルから経済ものかと思ったら、なんと介護もの。
    人を社会の部品として見て、高齢者をスクラップして、若者をビルドするという意味なら、かなりスパイシーなブラックジョークだ。

    読んで思ったのは、確かに「老い様」ってあるな、ということ。
    「早う死にたか」と毎日ぼやいたり、何かしてやるとやたら卑屈な感じで礼を重ねたり…
    そんな老人にはなりたくないなぁ…と。

    まあ、超高齢社会だからこそ、高齢者の精神的なサバイブはなかなか難しいのかもしれないけど。
    若いうちの積み重ねが人生100年時代のためにはとても重要、ということなのだろう。

  • 歩けて、話せて、口から食べられる。
    それは、とても元気なこと。
    じいさん、そのまま長生きしてね。

  • 芥川賞作品、やっぱりギリギリだった。登場人物・健斗が87歳の祖父の面倒を見ながら、祖父、母、恋人、社会と対峙していく様が興味深い。さらに祖父の「早う死にたか~」という言葉に対し、間接的な尊厳死を目論むという人の闇、社会の闇に、少し肯定してしまう自分もいた。戦時中生きてきた祖父、敗戦でスクラップされた日本、高度経済成長(ビルド)を生きてきた祖父。そして、現代に生きる健斗の人生もスクラップとビルドの繰り返し。生きたい、死にたくないの対比がスクラップとビルドという単語に含まれているのかな?ちょっとわかんない~④

    【ネタバレ】川上弘美「こういう家族、知っている(というか、自分の家族の中にもこれと同じような感じがあるなあ)と、確かに私は感じたのです。」「(引用者注:「火花」と共に)人間が存在するところにある、矛盾と、喜びと、がっかりと、しょぼい感じと、輝くような何か(それはとてもささやかなものですが)が、(引用者中略)たくさんありました。」  https://prizesworld.com/akutagawa/senpyo/senpyo153.htm

  • 体が弱ってすぐに怠けようとし、弱い者には強く出る、「死にたか」が口癖のネガティブな祖父と、その祖父をゆっくり衰弱させ、穏やかに死なせることで願いを叶えようという考えに取り憑かれる求職中の孫の健斗。健斗は自分は祖父とは違う強い男だと証明するかのように、筋トレと自慰行為にものめりこむ。
    絶妙に感じの悪い2人だが、どこか滑稽で憎めない。じいちゃんがこっそりピザを食べて、バレないように「珍しい夜行生物のような俊敏な動き」で駆け抜けていくところ大好き。
    テーマとしては重いのだけど、ラストは思いの外ハートフルな着地をする。大きな解決はないものの、理屈で言えない人間の生命力と情を感じられてとってもよかった。「じいちゃんのことは気にせんで、頑張れ」「じいちゃん、自分のことは自分でやる」って言葉なんてうるっときてしまった。
    羽田さんの作品、他も読んでみたい。

  • 『火花』に続き、こちらの芥川賞もようやく読了。

    お笑い芸人である又吉さんの作品が
    「芸人とは何か、どうあるべきか」という骨太な作りとは対称的に、
    専業作家である筆者のこちらの作品の方が
    ひねくれたユーモア感覚が突出していて面白かった。

    タイトルは「スクラップ(解体する)=老人」 と
    「ビルド(構築する)=若者」の物語かと思いきや、
    読み進むにつれ、そんな単純なものではないことに気づいた。
    介護する側、される側の苦悩を描いたというシンプルな物語ではない。

    祖父の面倒を見る孫孝行という形式で物語は進行していくが、
    実は、孫にこそ「スクラップ・アンド・ビルド」が起こっている。
    祖父の介護をする過程で、孫は自らの人生を構築していく。
    無職で就職活動中の孫が、祖父の介護を通して社会復帰を目指す。
    それまでの甘ったれのクソガキから、
    責任ある大人へ成長していくというのがこの作品のメインテーマ。

    「早う死にたか」と口癖のように言う祖父と同居する孫にとって、
    本当の孫孝行とは何か、それは祖父を安らかに
    「死」に向かわせことだと確信し、
    社会復帰するためのすべての機会を祖父から奪い、
    寝たきりの状態に持っていこうと試みる孫。

    「わぁ、きれいになった、ありがとう」
    「楽させてやりたいから」はダブルミーニングだ。ああ恐ろしい。

    語り手でもある孫のフィルターを通してみる現代社会が
    とても偏屈でゆがんでいて面白い。
    すべてを見通せているように物事を饒舌に語るが、
    実のところ何もわかっていないところにリアリティを感じる。

    祖父の部屋のカーテンを全開にして、
    皮膚ガン発症をうながそうと試みる場面には
    思わず笑ってしまった。
    本人は確固たる理念を持ってやっているのにもかかわらず、
    客観的に観ると喜劇のよう。

    この全てを悟ったような幼い孫の思考を読者は笑い飛ばせるか、
    幼稚な主人公をどれだけ受け入れられるかによって、
    この作品の評価も変わるのではないかと思った。
    独特ともいえる、頭でっかちな思考や強固な論理を
    笑い飛ばすのが、この小説の正しい読み方のように思える。

    孫は祖父のために望みどおり安らかな死を叶えてやろうとするが、
    後半になるにつれ、
    実は祖父は「生」にしがみついていることに気づく。
    女性スタッフにセクハラしたりしてるのも「性」の執着。
    「性」は「生」であり、あくまで祖父の「死ぬ死ぬ詐欺」なのだ。
    死ぬ気など一切ない。
    祖父の「死ぬかと思った」は偽らざる彼の本音だろう。

    最終的には、実は弱い立場を演じることで
    居場所や自信を与えていた優しい祖父に孫は救われていた。

    「じいちゃんが死んだらどげんするとね」(P.112)の真意は、
    「今、お前には祖父を介護する役目があるが、
     祖父がいなくなったら介護する役目は終わってしまう。
     これからどうやって生きていくの?」にある。

    祖父は「花粉症で苦しむ無職の孫」に
    「祖父を介護する孝行な孫」というポジションを与えて、
    孫に手をさしのべていたのではないか。
    孫に「介護」という存在価値を与え、自己肯定感を与え、
    再出発してもらおうとするために、ずっと
    「要介護の祖父」という役割を演じていたのではないか、
    とも読み取れるが、実際のところ、
    その祖父の心情は作中には描かれていない。

    この語り手の孫以外の心情を描かずに
    物語を淡々と進行させているところが
    筆者の非常に巧みな部分だと思うし、作家としての力量を感じる。
    他人の言動と本心や意図は、結局のところ本人にしか分からない。
    想像を膨らませるしかないわけで。

    この部分を「あえて」筆者は描いていないので、
    急に物語が終了してしまって
    「結局何だったんだ?」とモヤモヤが解消せず、
    低評価にしている読者もいるかもしれない。

    「じいちゃんのことは気にせんで、頑張れ」(P.117) の言葉には、
    孫の幸せを心から願う祖父の心情が表れているように受け取った。

  • 祖父と孫の健斗と家族の日常。
    特に祖父と健斗の介護について描かれている。早く死にたいという祖父に対して、本当に医療で命を延ばすことは良いのであろうか…と考えさせられる作品。
    祖父へ向き合いながら、健斗自身の転職活動へプラスの形で成長が見えたと感じた。どの家族にも介護は大きな問題。考えさせられる作品だった。
    スルーっと読めた一冊。

  • 朝七時前に「殺せ」と母相手にわめき散らしてからおよそ九時間後の光景だ。健斗はしかしそれをおかしいとは思わない。柔らかくて甘いおやつという目先の欲望に執着する人だからこそ、目先の苦痛から逃れるため死にたいと願うのだ

  • 黙々とある思いを達成すべくやることをなす。
    じいさんがなかなかしぶとい。

  • 近年目覚しい医学の進歩や、頻繁に更新される健康情報により、人の寿命は昔と比べ遥かに延びてきた。
    <不老長寿>は人類の果て無き夢であったはずなので、
    それって実に喜ばしい事!

    だが、それはもしかしたら…
    本当は不自然な事なのではないだろうか。
    まぁ、真意の程は定かじゃないし、
    恐ろしい『死』を遥か先延ばしに出来るのだから、願ってもない事ではあるが。

    ただ、物語は人の手を借りなければ生活できない老人と家族のリアルが描かれていた。
    主人公がまだ若く、健康な30前の男性である所も興味深い。
    人の尊厳重視の介護日誌は読む前から内容は知れているが、
    「人の手を借りなきゃ生きれないならもう死にたい。」とぼやく老人の意志を(本音)だと捉えてしまう青年のある意味純真さと、いやいやな介護から得られてしまう
    宝石の様な<真実>に心射抜かれてしまった物語。

  • 言いたいことはわからないでもないけど、表面的にしか捉えられてないと思う。合わなかった。

  •  無職の三十路前男が祖父の介護をする日々。
     心情として祖父に感情移入するところ、拒絶するところなど、筋トレで鍛えられた肉体以外は社会的弱者の語り手の複雑な意識の流れが非常によく浮彫にされており、非常に純文学らしい純文学だと言える。「火花」人気だけど「火花」の10倍はうまいし5倍は面白い。

  • スピード感が良かった
    ピークに持っていかれる感じがたまらなく心地よかった ラストもうまく、丁度良いところに落としてくれて オリンピックの体操競技の鉄棒選手が大技のちにドンピシャで着地キマッター!
    みたいなアナウンスが脳内で流れたラストだった
    お見事

    • kumkum96さん
      この作品
      読んでるあいだは、ドンっと身体にくる重厚感がいまも忘れられないのと同時に読了後スッキリしたのを憶えていて

      丁さんの
      〈〈...
      この作品
      読んでるあいだは、ドンっと身体にくる重厚感がいまも忘れられないのと同時に読了後スッキリしたのを憶えていて

      丁さんの
      〈〈オリンピックの体操競技の鉄棒選手が大技のちにドンピシャで着地キマッター!
      みたいなアナウンスが脳内で流れたラストだった
      のレビューに、わたしの言いたかったことはコレだ〜!!と興奮しました
      2025/10/31
    • 丁さん
      kumkum96さま
      コメントありがとうございますっ
      ラストがそこだ!とゆう着地点に収まってくれる物語は読後感スッキリしますよね
      ラストって...
      kumkum96さま
      コメントありがとうございますっ
      ラストがそこだ!とゆう着地点に収まってくれる物語は読後感スッキリしますよね
      ラストってめっちゃ大事です
      共有できてしかも代弁できてた事をとっても嬉しく思います!!
      2025/10/31
  • 趣味の合う読友さんお勧めの本を読んでみた。羽田圭介さんは初読み。この本で芥川賞を受賞された時期によくテレビでは見ていたが、結局タイミングなんかが合わず未読のまま。で、この本、面白かった。90歳目前の祖父と30歳目前の無職の孫。祖父はいつも「もう死んだらよか…」と言う。孫の健斗は祖父の願いを叶えるため、やり過ぎの介護を始める。しかしながら祖父が生にしがみつく姿を見て、自分の解釈は正しかったのか…と。今うちの父親がこの祖父と同年代で、私の仕事が介護職なのでととても考えることが多かった。他の作品も読んで見たい。

  • 「使わない機能は衰える」をテーマに、人間の生への執着を見事に描き切った秀作。

    登場人物達は、口は悪いけど悪人は誰一人いない。それでも「正義による悪意」がチラつくのは、誰もが忖度せず、真正直に人生を送っている証拠。面白かった!

  • 運動ってそんなにいいのかしら、マラソンでも始めてみようかな。
    寝たきりの老人がそこに居るだけで他者に与える者もあるが、介護は実際に行ってみないと何も語れない。

  • 表紙とタイトルからは想像できなかったストーリーでした。
    もっと暗いお話かと思っていたので(暗いといえば暗いのですが)。

    みんな持ってる、「不安だけれど頑張ろう」という気持ち、人間の優しさ・脆さ・残酷さが良く表現されています。

    不安で、でも と肯定して、でも やっぱり不安で…

    心情だけじゃなく、介護や人の一生など考えさせられます。

  • 健斗は5年勤めた仕事を辞めて求職中であり、母と祖父と3人で暮らす。心身の不調を訴え、毎日のように「早う死にたか」とぼやく祖父を、孫の健斗はその言葉の通り叶えてあげようとある計画をスタートさせる。

    孫が祖父を死なせようとする考え自体は恐ろしく感じますが、健斗の行動には傍から見ればおかしく滑稽に映るものもあります。ところが本人は至って真剣そのもの。
    家という閉塞された世界で密かに実行されていく健斗の思惑。それに対する祖父の行動は本当の衰えか、裏をかいた作戦か?本当のところは本人にしか分からないという面白さと不気味さが混在します。
    又吉直樹さんの『火花』とともに芥川賞を受賞した話題作。

  • 150906読了。
    羽田くんは(私の方が年下なのに、デビューが若かったために作者をいつもくん付けで呼んでしまうんだけど)、17歳で文藝賞を獲った「黒冷水」の作者で、彼の作品を読むのはそれ以来だ。黒冷水の文体は、若くて粗くて物怖じしない、挑戦的そのものだ。私はちょっとその高校生男子なかんじが残る羽田くんにちょっと憧れて、またちょっと苦手であった。
    大人になった羽田くんの小説は、まあまあに落ち着いていて、一見ぬかりない。
    しかし、少し距離をおいてみると、自我を語る合コンでの暑苦しい男性に出会ったような、少し惜しい気もしてならない。芥川賞の選評で、島田雅彦が「主人公がちょっと天然」と書いていて、言い得て妙だと思った。
    過剰介護して同居の祖父を漸化式に死へ導く20代男性の話だけど、後半、食事の形跡や足音で、弱っているはずの祖父が異様に元気である様子が描かれているところがなにより不穏で、お気に入りのシーンだ。
    文藝賞作家らしい作品でとてもよかったし、まだ読んでいる最中の「火花」と比べると、簡潔で展開もあり頭に残るシーンもあり、個人的には羽田くんの作品が芥川賞でよかったと思う。

  •  再就職活動中の若者から見た、老いて介護が必要になった祖父の話です。

     主人公は前職を離職して就職活動中の29歳男性。母と、介護が必要な状態の祖父の3人で暮らしている。母が仕事に出ている間、祖父と2人になることも多い彼は、老いて様々なことができなくなっていく祖父を見ているうちに、生きるとはどういうことか、尊厳死とはどういうものかと考えるようになる。衰えていく祖父に逆行するように筋トレで肉体を鍛え、祖父の気持ちを知ろうとただベッドから天井を見上げてみる。そうして過ごしながら、徐々にその心の内は変化していく。

     なかなか面白い切り口だと思います。
     我が家の祖母は、病気で長くないことがわかっていたので、介護状態になってからはあまり長くありませんでしたが、病気という病気もなくタダ老衰していっていたら、この話に出てくる祖父のような状態にもなったかもしれません。若い頃のように、元気な頃のように、自分の意志で何でもできた頃のようには動けず、行動は制限され、自分の体も頭も思うようにならなくなっていくのは、どれほどの不安だろうと思うことがあります。
     迷惑をかけるくらいなら早く死にたい、もう生きていたくない、というのは祖母の口からもよく出た言葉です。けれど、それは多分本心だけれど本心ではないのでしょう。本当に生きていたくないなら、食べなければいい。水を飲むのをやめればいい。人間は3日以上水を飲まなければ生きていられないのだから。死にたい、と口で言ったとしても、本能では生きたいと思っている。毎日毎秒沢山の細胞が死に、新しい細胞が生まれている体が持つ、生きものとしての矛盾のようなものだと私は思っています。

     この青年が今後どんなことを考え、どう生きていくのか、自分はどうなのか、考えさせられる話でした。

  • あまり面白くなかった。でも使わない機能は衰退するという言葉で体を動かそうと思った。

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著者プロフィール

1985年生まれ。2003年『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビュー。「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞。『メタモルフォシス』『隠し事』『成功者K』『ポルシェ太郎』『滅私』他多数。

「2022年 『成功者K』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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