ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1398
レビュー : 212
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903644

作品紹介・あらすじ

「旅先で何もかもがうまく行ったら、それは旅行じゃない」 村上春樹、待望の紀行文集。アメリカ各地、荒涼たるアイスランド、かつて住んだギリシャの島々を再訪、長編小説の舞台フィンランド、信心深い国ラオス、どこまでも美しいトスカナ地方、そしてなぜか熊本。旅というものの稀有な魅力を書き尽くす。カラー写真多数を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 今年は暖冬といわれていて雪も少なめだけど生活に不自由は感じていて、せめて本の中だけでもいいから旅っぽいものが読みたいと思って借りた一冊。
    (小説もまあそれなりに好きだけど…)村上春樹に限っては、インタビュー集とか対談集とか、そういう作品の方が好き。素の村上春樹の独り言を聴いているようで心地がよかった。

    たくさんの水を日常的に目にする生活の必要性(たしかに一理あると思う…)とか、「ミコノス・バー」で働いていた女性をイメージしてレイコさんを描いたとか、心情を知ることができて読んでいて楽しかった。こうやって旅してヒントを得て物語を作っていくんだ…と感銘を受けた。

    ところどころお茶目でキュートでクスッと笑えて、リラックスできた読書タイムとなりました。アイスランド、フィンランド、トスカナ、ラオスの話が特によかった。人生は旅。私も周囲の人に流されたりしないで柔軟に生きていきたい。(もっとゆっくり読みたいので文庫本ほしいなぁ…とか思ったり)

  • 村上さん巡礼の旅へ、的な。

    表題のラオスと、アイスランドははじめて訪れたようですが、あとのボストンやらギリシャの島やら熊本やらは再訪だったようで、「あのときはああだったな」とか全体的にそんな印象。

    ああ、美味しいものを食べながら旅がしたい。

    「遠い太鼓」が大好きなので、ギリシャとイタリアについての文章は、自分のことのように懐かしく郷愁を感じました。

    あと、くまモンについて考察されていて笑った。
    笑ってから、これはくまモンだけの問題に非ず…笑いごとじゃない現象かもしれないとハッとした。んだけど、やっぱり笑える。

    p.240 それを「芸術」と呼ぶことはおそらくむずかしいだろうが、少なくとも「達成」と呼ぶことはできるはずだ。そして我々が住むこの広い世界には、批評の介在を許さない数多くの達成が存在するのだ。

    p.246 ちょうど「ミッキーマウス」が普遍化して、もともとの「ネズミ性」を失っていったのと同じように。そう、とても複雑な仕組みを持つ世界に僕らは生きているのだ。そこではイメージがずいぶん大きな意味を持ち、実質がそのあとを懸命に追いかけていく。

  • 村上氏の小説は毎年ノーベル文学賞がどーのこーのと騒がれているけれど、正直私はそれらの小説よりもこの作品のような紀行文のほうが好きである。
    村上氏独特の言い回しも、エッセイのような柔らかい雰囲気にはすごく合っていると思う。(カッコ)付きで付け足される感想もクスリと笑えてすごくいい。
    これからもきっと村上氏のエッセイや紀行文は読むと思う。
    2017/07

  • ラオスだけではなく、ボストンもフィンランドもアイスランドもトスカーナもギリシャの島々も、世界には何て素敵なところがあるんだろう。羨ましい豊かな時間・・・。でも、最後の熊本の旅も素敵なのである。村上春樹が行くところ、どこも素敵なのである。つまりそれは、素敵な場所が絶対的にあるのではなく、どこの場所にも素敵なものがあり、それを見つけることができる人と、そうではない人とがいるということだろう。ここではないどこかを探すのでなく、今ここにある素敵を見つけることができたほうがきっと楽しい人生に違いない、てなことを考えさせてくれる本であった。

  • 村上春樹さんの紀行文集。長編小説の間にちょくちょく短編小説や書き下ろしエッセイを入れてくることが多い村上さんなので、何か書き下ろしエッセイなのかなと思ったのだけれど、紀行文というテーマで過去の作品を集めたエッセイ集だった。主にはJALのファーストクラス向け機内誌(そんなものがあるんだ)用に書かれたもののようだが、ここに収められた文章は、実際の機内誌掲載のバージョンとは別に長めのバージョンを作っておいたものらしい。短いものはあくまで短い場所にフィットするように調整したもので、本来その文章が持つべき長さはこれ、という考えなのだろうか。そうだとしたらいかにも村上さんらしいと思うのは自分だけだろうか。

    この本では当然ながら村上さんが実際に行った場所が紹介されている。その中で、ミコノス島には新婚旅行含めて2度行った。ニューヨークには一年間住んだ。ボストンにはニューヨークに住んでいるときに観光に行ったし、仕事の関係で一時期はほとんど毎年行っていた。これらの場所に関する文章を、アイスランド、フィンランド、ラオス、トスカナ、ポートランドなど行ったことがない土地についての文章と比べると、惹き込まれる度合いが大きく違う。具体的な風景やエピソードが頭に浮かぶと(といってもとても不正確でざっとした印象に基づくものだが)、その文章がより直接的に自分に向けて語りかけているように感じる。

    ミコノス島は、村上さんが『ノルウェイの森』を書き始めた場所で、初めて海外で住むことになった土地だという。久しぶりにその場所を訪れて綴ったのが「懐かしい二つの島で」の章だ。ミコノス島もドイツからジェット機が直接来るようになり、観光地としてますます栄えているそうだが、その文章と写真から受ける印象は二十年前(そう二十年も前なのだ)とあまり変わらない。写真も昔の記憶そのまま。この文章が書かれたのはギリシア危機の前だということだが、あの島は変わらないままでいてほしい。同じようにもう一度あの島に行って、あの頃はこうだったけど変わったねえとか、それでも変わらなくて懐かしいねえ、なんてゆっくり島を巡ってみたい。

    ニューヨーク。村上さんは、タイムマシンができれば1954年のニューヨークに飛んで、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ五重奏団のライブを心ゆくまで聴いてみたいらしい。自分はそこまでジャズに入れ込んでいないけれども、いくつかのジャズ・クラブには行っている。ニューヨークのビレッジバンガード - 「不規則に折れ曲がった奇妙な形をしている」という記述から、明かりを落としたフロアでブロンドのニューヨーカー(たぶん)が目を閉じて少し頭を揺らしながらピアノトリオの演奏を聴いていた情景が甦った。思っていたより小さな空間。ああ、ここでビル・エバンスがあのピアノを弾いたんだなあと自分は思っていた。

    ボストンは二度紹介されている。一つ目はボストンマラソンがメインなので、素敵な文章ではあるけれども、いまいち共感が薄かったのだけれど、二つ目はレッドソックスとホエール・ウォッチングの話でそうそう、という気持ちになった。ホエール・ウォッチングは確かにとてもゆったりとした気分になれた。また、懐かしいなあという気持ちでいっぱいになった。

    村上さんの小説がアイスランド語にもフィンランド語にも翻訳されていることが触れられている。こういったマイナーマーケットの言語にまで翻訳されているということに対して、村上さんは珍しく誇らしげだ。

    肩の力を抜いて気軽に読める。この中に行ったことがある土地があればきっと気にいると思う。

    そういえば、最近旅というものをさっぱりしなくなったなあ、と少し寂しくもなった。


    ※ コロンビア大学の近くにある「スモーク」というジャズ・クラブも紹介されているが、そんなのあったけと思って調べると、ちょっと歩くと遠そう。

  • センスよくセレクトされた物や知識のこだわりは、私と重なるところが多々あり、素直に共感できるが、いざ人間の内面や矛盾…と言った部分となると村上春樹さんには全く共感出来ない。知識のベールに包まれた内面をさらけ出す迄は、ノーベル賞の受賞はないと思う。

  • 村上春樹さんの紀行文集です。

    表題のラオスの他、ボストン・アイスランド・ポートランド・ミコノス&スペッツェス島・ニューヨーク・フィンランド・ トスカナ・熊本。。を訪れています。
    村上さんの紀行文を読むと、その書かれている土地が身近に感じる気がします。
    ふとしたときに、読み返したくなるような一冊だと思いました。

  • 『遠い太鼓』で登場した、ギリシャのスペッツェス島・ミコノス島に再訪してて、懐かしかった!
    また読みたくなってきた!
    あとアイスランドに興味が湧いてきました

  • 村上氏の旅行記はどれも好ましくてむかしから割とよく愛読している。
    確かギリシャに行ったとき「遠い太鼓」でおすすめしてたペロポネソス半島にある小さなリゾートに滞在したり、香川の友達のところに遊びに行ったときは「辺境・近境」のうどん屋を探しまわって多分ここってところに行ったりした。

    おこがましいことを承知で言うと、旅やら異国で過ごすということにおいての感性が幾分似通っていると思う。
    ラオスとかいったことないけどめっちゃ共感できるわー。
    ギリシャとかイタリアとかアメリカはあーなんかわかるかもーみたいなノスタルジアを感じる。
    北欧すごく行ってみたくなる。
    熊本は一年前くらいの長閑で平和な風景がもの哀しく、文中に出てくる海の上の赤崎小学校はぶじだったのかなぁとか熊本城の再建がんばれとか、思うよね。

    そこまででなくとも、子どもの頃を過ごした土地だとか、アメリカ東海岸に居住経験があるとか、ヨーロッパに滞在経験があるとか、いくつかの共通してるとも言えなくない世界旅行的経験に照らし合わせて共感できる部分も数多くある。
    それが一言で言うと「旅っていいよね」となる。

    「疲れることも、がっかりすることもあるけれど、そこには必ず何かがあります。」

    まさにこれ。

    「旅先で何もかもがうまく行ったら、それは旅行じゃない」

    ほんとそれ。

  • ランナーで書き物をする人は多いが、小説家が書く走る描写では、この人が一番優れているのではないかと思う。冒頭がボストンの話で、そんな走ることについて描かれている。そのほか、住んだことのあるギリシャやローマだったり、NYやもちろんラオスなど、アゴラに掲載されたものを中心に掲載されている。小説と違い、かまえることなく読めて、一気に読む必要もなく、お正月の読書には最適だったかな。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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