ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903644

作品紹介・あらすじ

「旅先で何もかもがうまく行ったら、それは旅行じゃない」 村上春樹、待望の紀行文集。アメリカ各地、荒涼たるアイスランド、かつて住んだギリシャの島々を再訪、長編小説の舞台フィンランド、信心深い国ラオス、どこまでも美しいトスカナ地方、そしてなぜか熊本。旅というものの稀有な魅力を書き尽くす。カラー写真多数を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいると落ち着いた大人な旅について行った気分です。自然美の表現も博識も含めて感受性が刺激されます。アメリカの2つのポートランド「おいしいものが食べたい」や、フィンランド「シベリウスとカウリスマキを訪ねて」が面白かったです(*˘︶˘*).。.:*♡

    熊本観光編にて、スタイリストが故郷の熊本に戻ってチェロ弾いちゃう人…に何か既視感あるなぁと思ってたら以前にその人のエッセイ読んでました!!【イン・マイ・ライフ】の著者・吉本由美さんとのリンクも嬉しい発見でした。
    『吉本さんが諸々の事情により東京の住まいを引き払い、故郷の熊本に戻って悠々自適(チェロの練習と園芸)に暮らすことになり…一度訪ねて行かなくちゃと思っていた』

    『旅っていいものです。疲れることもがっかりすることもあるけれど、そこには必ず何かがあります。』
    過去の紀行文「地球のはぐれ方」も、読んでみたいです。

    2024.3

  • 村上春樹の紀行文。とても率直に書かれている。ちょっと上から目線に感じられて鼻につくなーと思うこともあったけど、英語が達者でアメリカでもローマでもギリシャでもどこでも暮らせる語学力と教養があり、実際とてもすごい人なのでそう感じてしまうのもまあ仕方ないのかな…と。過度に知識をひけらかすわけではなく謙遜もなく自然体で書かれているので、こういう世界もあるんだなーと楽しみました。
    「はぐれ子パフィン救出作戦」や各地の美味しそうな食べ物(特に貝とワイン)が印象的です。

  • 雑誌に掲載された紀行文をまとめた1冊。村上んさんの寄稿文は「遠い太鼓」「シドニー!」なども読みました。旅先での出来事を、リラックスしながらも、彼らしい視点でスケッチのように切り取り、村上ワールド化しているのがファンとして楽しめます。中でも、ジャズや、旅先や外国でのランニングが紹介されている作品が好きです。
    本書のあとがきによると、一時期、紀行文を書かない旅というものにこだわったことがあったそうです。そのため、今となってはもう作品化できない、魅力的な旅がたくさんあるとのこと。本人もおっしゃってましたが、残念だなぁ。

  • 村上春樹氏の旅行記はとても好き。
    文章や表現がとても丁寧なので、瞼の裏側で映像化できるし、ページを開けば一気に私も旅をしている気分になれる。

    目の前に広がった見たこともない景色や、出会った人の風貌、交わした会話、今まで食べたことのない美味しい食事。
    それこそワインの味まで。
    そういったものを本を通して愉しめる。

    ボストン、アイスランド、ポートランド、ミコノス島とスペツェス島、ニューヨーク、フィンランド、ラオス、イタリアのトスカナ、熊本県。

    一度は訪れたいと思っていたブルーラグーンも、写真とかではなく、文章で読むとまた違った景色が見えてくる。

  • 村上さん巡礼の旅へ、的な。

    表題のラオスと、アイスランドははじめて訪れたようですが、あとのボストンやらギリシャの島やら熊本やらは再訪だったようで、「あのときはああだったな」とか全体的にそんな印象。

    ああ、美味しいものを食べながら旅がしたい。

    「遠い太鼓」が大好きなので、ギリシャとイタリアについての文章は、自分のことのように懐かしく郷愁を感じました。

    あと、くまモンについて考察されていて笑った。
    笑ってから、これはくまモンだけの問題に非ず…笑いごとじゃない現象かもしれないとハッとした。んだけど、やっぱり笑える。

    p.240 それを「芸術」と呼ぶことはおそらくむずかしいだろうが、少なくとも「達成」と呼ぶことはできるはずだ。そして我々が住むこの広い世界には、批評の介在を許さない数多くの達成が存在するのだ。

    p.246 ちょうど「ミッキーマウス」が普遍化して、もともとの「ネズミ性」を失っていったのと同じように。そう、とても複雑な仕組みを持つ世界に僕らは生きているのだ。そこではイメージがずいぶん大きな意味を持ち、実質がそのあとを懸命に追いかけていく。

  • 2023年3月6日読了。村上春樹がつづる旅のエッセイ。旅といっても彼の場合は観光地でなかったり観光シーズンでない場所に長くステイしてぶらぶらするのがスタイルであるようで、なんとも贅沢な時間の使い方に感じる。どこでも仕事ができる作家はうらやましい。訪問した場所は彼がかつて『ノルウェイの森』などを書いたギリシャ、イタリアから、初めて訪れるラオスや友人とともに行く熊本など統一感がなく目的もバラバラ…。ま、目的があって色々な場所を目指すのは旅人じゃないという気もするな。どこか、猫がいてワインと地元の食材がうまい場所でゆっくりしながらワーケーションしたいものだ…。

  • 村上氏の小説は毎年ノーベル文学賞がどーのこーのと騒がれているけれど、正直私はそれらの小説よりもこの作品のような紀行文のほうが好きである。
    村上氏独特の言い回しも、エッセイのような柔らかい雰囲気にはすごく合っていると思う。(カッコ)付きで付け足される感想もクスリと笑えてすごくいい。
    これからもきっと村上氏のエッセイや紀行文は読むと思う。
    2017/07

  • ラオスだけではなく、ボストンもフィンランドもアイスランドもトスカーナもギリシャの島々も、世界には何て素敵なところがあるんだろう。羨ましい豊かな時間・・・。でも、最後の熊本の旅も素敵なのである。村上春樹が行くところ、どこも素敵なのである。つまりそれは、素敵な場所が絶対的にあるのではなく、どこの場所にも素敵なものがあり、それを見つけることができる人と、そうではない人とがいるということだろう。ここではないどこかを探すのでなく、今ここにある素敵を見つけることができたほうがきっと楽しい人生に違いない、てなことを考えさせてくれる本であった。

  • 村上春樹さんの紀行文集。長編小説の間にちょくちょく短編小説や書き下ろしエッセイを入れてくることが多い村上さんなので、何か書き下ろしエッセイなのかなと思ったのだけれど、紀行文というテーマで過去の作品を集めたエッセイ集だった。主にはJALのファーストクラス向け機内誌(そんなものがあるんだ)用に書かれたもののようだが、ここに収められた文章は、実際の機内誌掲載のバージョンとは別に長めのバージョンを作っておいたものらしい。短いものはあくまで短い場所にフィットするように調整したもので、本来その文章が持つべき長さはこれ、という考えなのだろうか。そうだとしたらいかにも村上さんらしい。

    この本では当然ながら村上さんが実際に行った場所が紹介されている。その中で紹介されているミコノス島には、自分は新婚旅行含めて2度行った。ニューヨークには一年間住んだ。ボストンにはニューヨークに住んでいるときに観光に行ったし、仕事の関係で一時期はほとんど年に二~三回程度行っていた。これらの場所に関する文章を、アイスランド、フィンランド、ラオス、トスカナ、ポートランドなど行ったことがない土地についての文章と比べると、惹き込まれる度合いが大きく違う。具体的な風景やエピソードが頭に浮かぶと(といってもとても不正確でざっとした印象に基づくものだが)、その文章がより直接的に自分に向けて語りかけているように感じる。

    ミコノス島は、村上さんが『ノルウェイの森』を書き始めた場所で、初めて海外で住むことになった土地だという。久しぶりにその場所を訪れて綴ったのが「懐かしい二つの島で」の章だ。ミコノス島もドイツからジェット機が直接来るようになり、観光地としてますます栄えているそうだが、その文章と写真から受ける印象は二十年前(そう二十年も前なのだ)とあまり変わらない。写真も昔の記憶そのまま。この文章が書かれたのはギリシア経済危機の前だということだが、あの島は変わらないままでいてほしい。同じようにもう一度あの島に行って、あの頃はこうだったけど変わったねえとか、それでも変わらなくて懐かしいねえ、なんてゆっくり島を巡ってみたい。

    ニューヨーク。村上さんは、タイムマシンができれば1954年のニューヨークに飛んで、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ五重奏団のライブを心ゆくまで聴いてみたいという。自分はそこまでジャズに入れ込んでいないけれども、ここに書かれているいくつかのジャズ・クラブには行っている。ニューヨークのビレッジバンガード - 「不規則に折れ曲がった奇妙な形をしている」という記述から、明かりを落としたフロアでブロンドのニューヨーカー(たぶん)が目を閉じて少し頭を揺らしながらピアノトリオの演奏を聴いていた情景が甦った。思っていたより小さな空間。ああ、ここでビル・エバンスがあのピアノを弾いたんだなあと自分は思っていた。

    ボストンは二度紹介されている。一つ目はボストンマラソンがメインなので、素敵な文章ではあるけれども、いまいち共感が薄かったのだけれど、二つ目はレッドソックスとホエール・ウォッチングの話でそうそう、という気持ちになった。ホエール・ウォッチングは確かにとてもゆったりとした気分になれた。懐かしいなあという気持ちでいっぱいになった。

    村上さんの小説がアイスランド語にもフィンランド語にも翻訳されていることが触れられている。こういったマイナーマーケットの言語にまで翻訳されているということに対して、村上さんは珍しく誇らしげだ。

    肩の力を抜いて気軽に読める。この中に行ったことがある土地があればきっと気にいると思う。

    そういえば、最近旅というものをさっぱりしなくなったなあ、と少し寂しくもなった。


    ※ コロンビア大学の近くにある「スモーク」というジャズ・クラブも紹介されているが、そんなのあったけと思って調べると、ちょっと歩くと遠そう。

  • 今の自分にまさに必要な一冊だったようで、乾いたスポンジに水がしみ込むみたいにぐんぐん読んでしまった。ルアンプラバンについて語られた「何かひとつのものをじっくりと眺めたりするには、僕らの生活はあまりに忙しすぎる。」から始まる一連の文章があまりに身にしみすぎて、今すぐ知らない土地に出てその場所にしかないものを見たくなりました。村上春樹が語る遠い土地とその土地の食べ物はいつも魅力的で、その気になりさえすれば自分も同じ土地を訪れて同じものを食べることができるなんて俄には信じがたい。そしてプロの小説家の観察眼と、己に取り入れた情報を出力する能力というものはすごいとつくづく思う。読めてよかったです。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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