『罪と罰』を読まない

  • 文藝春秋
3.89
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レビュー : 127
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903668

作品紹介・あらすじ

抱腹必至。読まずに語り、読んで語る読書会翻訳家、作家、作家であり装丁家の四人が名著『罪と罰』の内容を僅かな手がかりから推理、その後みっちり読んで朗らかに語り合う。

感想・レビュー・書評

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  • いやはや、何とも豪華なメンバー!
    そして『罪と罰』を読まずに読む、つまり、本は読んでいないけど断片的な情報から推理するという、アソビゴコロ満載の企画!
    読んでいる最中、ニヤニヤが止まらなくて困りました。

    案の定、岸本&三浦ペアの妄想が大暴走、クラフト・エヴィング商會のお二人が上手くまとめているような、さらに撹乱しているような…という期待に違わない流れで推理が進んでいきます。
    散々推理をした後、実際に読んでみてからの座談会もおもしろいのです!
    私も『罪と罰』は未読なのですが、4人があまりに楽しそうに小説のことを話しているので、1人取り残されてしまったような気分…。
    何せ、ラスコーリニコフは「ラスコ」、ドストエフスキーは「ドスト」と親しみやすそうなあだ名で呼ばれ、「修造」「捨てキャラ」「恵まれない境遇の女萌え」などなど普通に読んでいたら出てこなそうなキーワードがごろごろ出てくるのです。
    「そ、そんなにおもしろいのか…?」と俄然読んでみたくなりました。
    名作と名高い小説に構えずチャレンジするきっかけを作ってくれる1冊です。

  • ずいぶん前に、クラフト・エヴィング商會のお二人のうちどちらかだったと思うが、「『罪と罰』を読んだことがない」ということを何かのご著書で目にしたように思う。「ふえええ、プロの作家さんでも読んだことがないんだー、でも世の中には小説があふれているからそれは誰にでもあるなあ」とだけぼんやり思ってそのままになっていた。かくいう私も、『罪と罰』は読んだことがない。野田秀樹の『贋作 罪と罰』を観に行って、それで雑にやっつけて何年も経っている。なので、この本の出版を聞いたとき、「えっ、あの流れで企画化されて本になったのか!」と少なからず驚き、すかさず購入。

    クラフト・エヴィング商會のお二人、三浦しをんさん、岸本佐知子さんの、「『罪と罰』を読んでいない」メンバーが、読んだこともない『罪と罰』をイメージであれこれと語り合う…というか、推理する読書会的な座談会本。とはいえ、まったくの材料なしで最後まで突っ走るわけでもなく、途中でちょこっとずつ本編のアシストを加えながら話が進む。

    いやー、みなさん言いたい放題で楽しい。読書会の一般的なイメージとしては、課題書を各自読んできて、詳しい人・詳しくない人を含めてあーでもない、こーでもないと話し合う、ちょっとお勉強会めいたアミューズメントなんだけれども、4人で繰り広げる「読んでいない読書会」は、途中で小出しに投入される材料で軌道修正してはいくものの、基本、連想と推理のゲームだ。文芸のプロのみなさんなので、構成や作劇を見ぬいたり展開したり、分析したりする力はすごいが(特に三浦しをんさん)、吉田浩美さんの「影絵的には…」のキーワードが意外とこのトークの牽引力となっている。この「影絵」については私が見た記憶があるものとどうも同じなようで、なんだか親近感を覚えてしまう。ラスコーリニコフ(愛称ラスコ)、革命家なのか!しかも「すぐ帰るマン」なのか!まあ合っているような気もするし!

    『罪と罰』だからどうこうというより、小説好きが(この本の場合はそれプラス「小説に携わる人」ではあるけれど)なんのてらいもなく「読んでませんが、何か?」と言いつつ、小説好きの一点突破のみできゃっきゃと話す楽しさにあふれた本だと思いながら読み終えた。どんな趣味でもそうだけど、小説にも「マニアがジャンルをつぶす」的な側面がないわけではなくて、こういうふうに、読書歴のなさを押し出して話をする機会というのは意外と少ない。私も本をネタにした集まりに関わってしばらく経つけれど、こういった楽しさを忘れないようにしたいと、ちょっと殊勝なことを思った。

    ネタバレ…とはいいませんが、この本を読めば、『罪と罰』を一生読まなくても大丈夫な情報はつまっていますので、それを含めて、年末年始に一読してみられてはいかがでしょうか。

  • この方たち、本当に自由だなあと、そこに一番感銘を受けた。プロのもの書きの方があの「罪と罰」を読まずに語ろうだなんて、しかもそれを本にしようだなんて、普通はあり得ないでしょう。なんの遠慮もなくワイワイと妄想を繰り広げる様子が、まあ実に楽しそう。本ってこういう風にも「読める」んだなあ。

    一番発言が多く、自由自在にお話を展開していくのが三浦しをんさん。さすがだ。実際の「罪と罰」とは全然違うんだけど、そっちの方が読みたいわ!と何回思ったことか。「読まずに読む」集まりのあと、本当に読んでからまた語り合うという場でも、しをんさんの読みが断然おもしろい。スヴィドリガイロフを「スベ」と呼んで、ヴィゴ・モーテンセンに脳内変換して読むとは。いやもう、また読もうかしら「罪と罰」。

    ……確か、学生のとき読んだはずだが、ほとんど覚えてないのはどういうわけか(読破記憶は捏造?)。数年前大学生の娘に「『罪と罰』って読んだことある?」と聞かれ、「あるよ(当たり前じゃん)」と答えたら、「どんな話なん?」とさらに聞かれ、「えーと、貧しい男が正しいことだと思って金貸しの老婆を殺すんだけど、結局改心する話」と、最初と最後だけまとめといたのを思い出した。娘は「ふーん」とつまらなさそうにしてたので、きっと読んでないと思う。面目ない。

  • いやー笑った。
    この本を読みたいがために、本家「罪と罰」を読んだのだった。
    タイトル通り、読まないで語っているのだとは知っていたけれど、一緒に迷走するよりその迷路を見張り台の上から眺めた方が楽しいかと思って。
    どんどん飛躍する推測がおかしくて!
    しかし、読んだという人も読んでいない人が漠然と知っているあらすじくらいしか語れないことが多く、読んでいるのと読んでいないのとでは大差ないのでは?それなら「読む」とは何なのだ?という問いにはドキッとした。
    後半は全員が読んだ後で改めての座談会で、そちらも面白い。
    岸本さんの、「ラズミーヒンは(松岡)修造だよね」には吹き出した。

  • その手があったか!

    文藝春秋
    http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163903668

  • 本を読まずに、内容を推理して楽しむ、未読座談会。
    ヒントとして朗読してもらえるのは、数ページだけ。
    どのページに重要な情報がありそうか、長編の展開を予想する過程が、さすが小説にかかわる人たち。

    三浦しをんの発言が、特におもしろかった。
    未読のまま空想の翼を広げたり。
    読み終わった後には、登場人物に鋭いツッコミをみせたり。
    さすが作家という、深い考察だった。

    逆に、NHKの影絵であらすじを見てきたという参加者がいたのは、マイナス。
    ネタバレを小出しにしたり、未読の人の空想に「ぜんぜん違うんだけど」と言ったり。
    「読まずに推理する」という企画の足を引っ張る発言だった。

  • 「三大使いたくても使えない訳語があってですね、それは「黒山の人だかり」と「カマボコ兵舎」と「富士額」。」237

    「「読む」とはいつからはじまるものなのだろう、とちうこのです。小説は「よみおわ終わり」ではない。余韻を楽しんだり、「あのシーンで登場人物はどんな思いだったのかな」と想像したり。あらすじや人物名を忘れてしまっても、ふとした拍子に細部がよみがえり、何度も何度も脳内で反芻する作品もあります。」289しをん先生

  • 笑えた。
    妄想力がすばらしいw
    罪と罰を読んだ人も読んだことない人も、楽しめるはず。
    読んだことない人でも、最後の読後感想まで読んでしまっていいと思う。
    だってあんな細かいこと、覚えてられないもん。
    もう一回読み返してみたくなった。
    結局、ドストエフスキーとレジナルド・ヒルさえいえればいい、ということになるのかなぁ。
    あとガルシア・マルケス?
    佐野洋子も読みきっちゃったし。
    みんな死んじゃった。

  • なんという肩透かしのタイトルでしょう。
    著者は翻訳家、作家、作家兼装丁家の4人。全員の著作を読んでおり、みんな好きな作家さん。
    もう、読まない理由がありません。

    文学の世界において、「ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことがない」と言うのはなかなか勇気がいるのではないかと思います。
    読んでいなくても、格好つけていかにも読んだ風の格好をつけてしまう人が多そう。
    そこを敢えて「読んでいない」宣言をし、さらになぜか読まないまま『罪と罰』の読書会を開催するという、謎の企画が組まれます。しかも3回にわたって長々と。

    カオス必至。どんな流れになるのでしょうか。

    ルールは、『罪と罰』の本文中から断片的に示される内容だけを手掛かりに、物語全体を把握しようという大胆な試み。

    普通の人がやったらすぐに破綻しそうですが、文学者4人が集まったとなると、それぞれの豊かな引出しからさまざまな意見が飛び出して、とても楽しい化学反応が生まれていきます。

    つまりは文学的お遊び。こうした試みが好みでない人にとっては、単なる時間の無駄遣いでしかなく、全く響かないことと思います。
    でも、下らなそうで無意味そうな中にも、鋭い指摘が入っていたりすると、気づかなかったチェックに心揺さぶられたりもするもの。

    なにより、陰鬱さに彩られた『罪と罰』が、なんだかおちゃらけた明るい話に脱線して、妙に親しみを持てるものとなってきたのが面白く感じました。

    たまらんな~と思ったのは、
    「ラスコはしょっちゅう失神している」(名前が長いので略している)
    「ラスコが寝ている間にいろんな人が出入りして、客はみんな部屋に入ってる」
    「みんな近所に住んでて知り合いで、すぐ集まって来ちゃって『男女7人夏物語』みたいな感じ」
    「最初、ラズミーヒンは馬の名前かと思っていた」

    笑いを抑えられません。もはや別の物語?いえ、でもたしかに原作からはずれていません。
    見方や切り取り方によって、物語はまったく違うものになるのだなあと思います。

    ただ、こうした未読座談会を経て、最後までオリジナルを読み通したら、相当記憶に定着すると思います。
    ずいぶん前に『罪と罰』を読みましたが、正直、あまり覚えていません。『カラマーゾフの兄弟』とごっちゃになっているところもあります。

    しっかりと覚えこむためには、未読座談会であれこれ想像することはとても良いと思います。

    4人の作家がますます好きになりました。
    この爆笑未読座談会、シリーズ化してほかの難解な作品も採り上げてほしいものです。

  • ロシアの名作『罪と罰』。
    読んだことがなかったり読んでも忘れた人が多いらしい。
    そういう私も表紙の雰囲気だけで挫折…。

    今回の作家陣4人も未読だったり何となくの情報しか持っていない。
    そんな4人が集まって「読まずに読む」未読座談会を開催!
    数少ない情報と適当に選んだ一頁を読んでもらって、探偵のように推理し合う!
    『罪と罰』とは何ぞや!?

    作家だけあって皆さん瞬時に物語を勝手に(?)創り上げる。
    時にタカラヅカ風、時にお江戸風に。
    主人公に対しても言いたい放題!
    特にしをんさんの推理は鋭いけれど、すぐに脱線…。

    そんなしをんさんがラストのまとめで「小説を[読む]には終わりもはじまりもない」と書いておられた。
    小説は読み終わったら終わりではなく、するめのようにいつまでも噛んで楽しむもの。
    そしてはじまりは、頁を開く前からどんな物語なのか思い巡らせる時すでに読むをはじめている。
    「読む」は読んでいなくてもはじまっているし、読み終えても「読む」は続いている。
    本は私達を待ってくれている…。

    沢山笑わせながらも最後の締めはとてもカッコいいしをんさんだった。
    『罪と罰』そろそろ読んでみようかな。

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著者プロフィール

翻訳家。訳書にリディア・デイヴィス『話の終わり』『ほとんど記憶のない女』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』、スティーブン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、ジョージ・ソーンダーズ『短くて恐ろしいフィルの時代』など多数。編訳書に『変愛小説集』『楽しい夜』『居心地の悪い部屋』ほか、著書に『なんらかの事情』ほか。2007年、『ねにもつタイプ』で講談社エッセイ賞を受賞。

「2019年 『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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