私が死んでもレシピは残る 小林カツ代伝

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 132
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903965

作品紹介・あらすじ

「小林カツ代という人は天才でした。紀元前、紀元後ではありませんが、家庭料理の世界では、カツ代前、カツ代後という言葉があってもおかしくない」と、料理専門の編集者に言わしめるほどの存在だった「家庭料理のカリスマ」が亡くなって三年。その波乱万丈の生涯を、生前から親交のあった気鋭のノンフィクションライターがたどる決定版評伝。大阪の商家の「こいさん」(末娘)として生まれ、大学を出てすぐに結婚。新婚当時は味噌汁も満足に作れなかった主婦が、いかにして戦後日本を代表する料理研究家になったのか……。実姉や娘、元夫など家族の証言や、弟子たち、彼女を知る多くの関係者に広く取材し、仕事と家庭の両面から小林カツ代の実像に迫る。伝説の「肉じゃが」、「わが道をゆくワンタン」など傑作レシピも紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 「わが道を行くワンタン」を読んだことがあります。その時は毎日の料理が女性の応援歌になることに気づかせてもらいました。「毎日おいしくつくること」と「毎日おいしくたべること」を繋げ合わせ人生の賛歌にしていった小林カツ代の一生を描いています。これから朝の連想ドラマの原作になりそうな昭和史です。女性にとっての職業が限られていた時代(それはそんな昔ではない…)に主婦の毎日の行為を圧倒的に主婦サイドに立ちながら職業にしていく行動力が眩しく、またそれが女性たちの共感を得ていった源泉だったのでしょう。まさに戦後、家族というカタチが家から核家族になっていく、そして専業主婦が家庭の外に出ていく、そのプロセスの時代のヒーロー(ヒロインって感じじゃない)だったのだと思います。そういう意味では、まだ食べさせる相手としての家族がいた人でしたが、「あとがき」の真実は家族の形態の変化も取り込んでいた人でもありました。そういう意味では個食化の進む今、家庭料理はまた新しいヒーローを求めるかも知れませんね。ケンタロウの自分ごはん、仲間ごはん的な世界、可能性大きかったと改めて感じました。

  • 料理に対して情熱はもちろんあるけれど、それ以上に合理的思考がかっこよかった。
    晩年がせつない気持ちになるけれど読んでよかった。

  • 小林カツ代が「一番年の離れた友人」と人に紹介していたという著者による評伝。生い立ちから料理研究家として名をなすまで、その後の多彩な活動と考え方など一通りの評伝スタイルをもちつつ、近しい間柄ならではの裏話(「食べ直し」へのおつき合いなど)も盛り込まれ、小林カツ代のいろいろな人となりが伝わる好著。いわゆる評伝としての客観性とはやや距離をおき、小林カツ代礼賛のような感じもしないでもないが、それはそれで近しい人ならではの味というところだろう。
    本書では、小林カツ代が名を上げたのはテレビ番組「料理の鉄人」がきっかけとしているが、そうだろうか。少なくとも私はそれ以前から著書などで小林カツ代を知っていて、十分名の知れた人という認識だったのだが、それは料理の世界、いわゆる「女こどもの世界」のなかだけだったということか。
    一方で、本書から再認識したのが、料理研究家にとどまらず、食の世界を超えた文化人としての小林カツ代像だ。思い起こせば、私が「料理の鉄人」以前に知っていた著書も、写真とともに料理の作り方が載っているというよりも、縦書きの文章が連なりながらワーキングマザーの両立術を指南したり、合理的な生活術を取るのに発破をかけるようなものだった。女性が社会に進出し、それでもなお家事も大部分を引き受けるのが実情のなか、そうした実情に即した生活文化の創出に一役買った人ともいえる。さらには、戦争のない世のなかを目指した発言などもあるけれど、それも家庭生活や家族の文化とひとつながりにあるものと解釈した。
    経済だ、科学技術だ、はたまた芸術だ、文学だといった「文化」が表舞台でわがもの顔にしているけれど、人間の基本は衣食住というのはやはり真実で、その部分の文化を創り、語り広める人としての小林カツ代だったのだ。

  • 「料理の鉄人」のところから入るのは、構成の妙。同時代で見ていたときは「売れている人」へのやっかみというか、正当に評価されないところもあったようだが、今から振り返るとたいした人だったのだなぁと、本書で腹に落ちる思いだ。
    「家庭料理研究家」としての矜持を保つということが、この人の背骨だったのだろう。料理人が出す料理と家庭料理は違う、なぜなら「作る人も食べる人」だからという指摘にははっとした。たしかに小林カツ代のレシピには、この考え方がしっかりある。自分自身が子育てしながら仕事もしてという忙しい毎日を過ごす中で、どうしたら手早くおいしい料理を家族のためにつくれるか。「手間をかけることが愛情」という考え方ではなく、ただの手抜きでもなく、カツ代流の合理性が支持の理由だという点に合点がいった。

  • 私はカツ代レシピの女。

  • 大変面白かった。会えるだけの人に会い、ゆかりの地にはできるだけ足を延ばし、なるべくたくさんの資料に当たっている。実に誠実な作り方をしている正統派ノンフィクション。味を文字で伝えるのは難しいことのはずなのに、しっかり伝わる。エピソードのつなぎ方というか話の展開の仕方も上手。小林カツ代という人物の位置づけもちゃんとできている。惜しむらくは文字数の少なさ。この倍ぐらいのボリュームはあってもよかった。ミスターとの関係についてもっと証言が聞けていれば、陰影の深い、よりすごい作品になったのかもしれない。最後の最後、作者がぎりぎりまであとがき作業に取りかかっていたことは知っていたが、こういうことだったのかと、納得した。この本、大手のノンフィクション賞、とるんじゃないだろうか。

  • 私が死んでもレシピは残るってすごいこと。
    ミスターからみたカツ代さんのことが心に残る。

  • 大リーガーのイチローが、気持ちだけでは絶対に打てないように、「プロの仕事というものは、必ず技術が気持ち以上でないと本物にはならない。」
    いわゆる・・
    腕前が一級品であること、必須条件。

  • ●→本文引用

    ●この頃すでに、カツ代の一生の行動原理は形成されていた。「興味を持つ。知識を得る。行動に移す。世界が広がる。」カツ代の人生はこの繰り返しだった。

  • 20171101読了
    2017年出版。実は、活躍されていた頃のカツ代さんを知らない。私が料理に取り組み始めた時期にはもうすでに、親子とも闘病する不運に見舞われておられたから。当然、「料理の鉄人」での偉業もリアルタイムでは知らなかったのだけど、この本の実況中継で時を越えてわくわくさせてもらった。結婚当初は味噌汁すらろくに作れなかった人が、料理を楽しんでパワフルに活動して、そしてレシピが残っている。うちの肉じゃがは、今やカツ代レシピです。

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著者プロフィール

1977年 佐賀県生まれ。ノンフィクションライター。高校卒業後、博多の屋台で働きながら、地方紙や週刊誌で執筆活動を始める。18歳で上京後、南極から北朝鮮、アマゾンの源流からアフガニスタンの戦場など、世界を放浪する。常にフリーランスの取材者として、『AERA』などの週刊誌にさまざまな社会問題のルポを発表し続けている。著書に『奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」』(朝日新聞出版)、『世の中への扉「大好き!」を見つけよう』(講談社)、『水の都「石巻」が消えた日』(英治出版)などがある。

「2013年 『最後の職人 池波正太郎が愛した近藤文夫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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