西洋菓子店プティ・フール

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 167
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904016

作品紹介・あらすじ

女を昂奮させない菓子は菓子じゃないスイーツは誰かの心を不意につかんで新しい場所へと羽ばたかせるスイッチ。下町の洋菓子店を舞台に繰り広げられる鮮烈な六つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • いつまでも「女子」である20〜30代の女性のための本だった。
    髪も顔も服も手先も、うんとかわいくお洒落をして、そしてうんとお気に入りのパティスリーで美味しいケーキを食べて、楽しくて贅沢な時間を過ごしたい気持ちになった。

    甘くて、だけどほろ苦さもあって、少し酸味もある。まさに、人生や人間関係をスイーツに例えたような本だった。
    みんながみんなそれぞれ、「大事にしているもの」やこだわりを持っているのが良かった。
    それぞれ違うこだわりを持っているからこそ、気持ちがすれ違ったり、関係が変わったりする。

    シュークリームが食べたい。ピーチメルバも、エクレアも、フォンダンショコラも。ラム酒がうんと効いたスイーツも。あったかい紅茶つきで。

    話の中では「ロゼ」が好きだった。

  • 下町の西洋菓子店を舞台にした連作短編集。祖父の洋菓子店で働く””亜樹”を中心とした6つの片思いの話。皆、自分の気持ちを言葉にして伝えようとしないので、もどかしく感じました。

    本や章のタイトルから受ける、甘いイメージとは異なり、やっかみや嫉妬といった苦い感情表現が多いのが印象に残りました。片思いといえども、恋というには重い。仕事や立場も相まって、どんよりとした空気がたちこめます。それでも、各章の終わりには、各々が自分の気持ちに答えを見つけるので、少し晴れやかに。

    おじいさんのシュークリームのように、相手に寄り添う優しさを忘れないようにしたいと思いました。

    老舗の洋菓子店のケーキと、フランス菓子店が提供する本格的なケーキ。どちらもすごく美味しそうに描かれています。読んだら食べたくなるに違いありません。

  • 下町のケーキ屋さんを舞台に描く人間模様。
    ものすごく美味しそうなスイーツと絡めつつ、視点が変わるたびに文体も変わる連作短編です。

    寂れかけた商店街にある、昔ながらの西洋菓子店プティ・フール。
    懐かしい味のお菓子をきっちり作るじいちゃんの店に、
    本格的なスイーツを創作もする孫娘・亜樹が加わりました。
    店番には、優しいばあちゃんも欠かせない。

    子供の頃から祖父母の店が大好きだった亜樹。
    中学の時に美しい同級生と親友になり、魅入られるようなひとときを過ごした鮮烈な思い出。
    その子のために、初めて菓子を自分で作ったのでした。

    クールな先輩だった亜樹に憧れている若いパティシエの澄孝。
    亜樹が店をやめた後も気になって仕方がなく、勉強のためのケーキ屋巡りのついでを装って、亜樹のいる店を訪れます。

    澄孝のことが好きなミナは、ネイリスト。
    綺麗なものが大好きで、オシャレには気が入ってます。
    まったくの片思いと知りつつ、澄孝に付き合い‥?

    店の常連客の美佐江は、悩みを抱えている様子。
    店にあるお菓子を大量にまとめ買いしていく。おそらくは‥
    そんな買い方を亜樹は断りたい気持ちだったが‥

    亜樹の婚約者は、人のいい弁護士の祐介。
    大手事務所をやめて、今は商店街にある小さな事務所でご近所の人の愚痴を聞くことも。
    仕事に打ち込む亜樹に惹かれたのだが、しだいに亜樹との間にずれを感じて‥

    それぞれに大事にしているもの、打ち込むものがあり、その上での動揺や変化があります。
    軽薄にも見られかねない若い女の子ミナが、やりたいことがはっきりしていて、気持ちいいですね。
    うじうじしていた美佐江さんも、最後には?

    仕事一途な亜樹は職人気質というより、天才肌のアーチスト的な印象。
    まだ若くとんがっていて、時には周りが見えない。
    片思いの連鎖はわかりやすいけど、それで‥
    微妙にすっきりしないのがなんでかなと考えてましたが、この終わり方だと、亜樹自身が何をどう受け止めたのかがはっきりしないからかも。
    じいちゃんの指摘はキビシイけど、なんとも的確ですね。
    そんなじいちゃんの隣を歩いてきた、ばあちゃんの余裕も、とても素敵。

    亜樹の作る濃厚なスイーツを、特別な日に、優雅なお店で食べたい!
    ただ毎週食べたいのは、じいちゃんのシュークリームでしょうね☆

  • 千早さん4冊目。『森の家』以来かな…。『森の家』ではドロドロし過ぎて最後は感情が処理しきれなくなって、しばらく千早作品から遠ざかっていました。が、予約して手にしたこの作品は読み始めたら昼ドラのように続きが気になり、昼から夜にかけての座りっぱなしの一気通し読み。最終章が若干陳腐な展開になるのは相変わらず…。けどおもしろ。


    ビター、セミスイートな西洋菓子たち。毒も、酸いも甘いも入り混じっての6連作。「グロゼイユ」「ヴァニーユ」「カラメル」「ロゼ」「ショコラ」「クレーム」。甘く苦い毒。


    甘みと毒って紙一重のような気がした。「カラメル」が好き。黒い…。ただスイートなだけでなくどろりとしていたり、ふわふわだったりしっとりしていたり、西洋菓子も人の心の機微も変化する。恋愛って知らず知らずのうちに人を傷つけていたり、故意に傷つけたり。心を踏みつけていたり…。ただ喧嘩さえしなくなったらお終いというのは分かるような気がした。


    幼い頃からケーキ職人にあこがれ続けてきた亜樹は、若さゆえに不器用で傍から見ていてハラハラした。そんな雰囲気の中でのおじいさんやおばあさんの名言が心に響いて、ほろりと涙がこぼれそうになりました。沁みる。
    亜樹が作る西洋菓子はお酒がきつかったり、かすかに毒をはらんでいたりもするけれども、彼女の持ち味(武器)のひとつだと思う。


    千早さんの作品は読んでいると脳内で映像化(ドラマ化、映画化)しやすくって、読んでいて新鮮です。脇役ですが素敵な紅茶専門店の長岡さんが好き。おじいさん、おばあさんの過去も知りたいので続編希望します。



    小説ってなんだかとってもホッとする。じいちゃんのシュークリームが食べたくなりました。

  • まず、このカバーのデザインと色合いが涼やかで、とても気持ちがよかったです。

    そしてなぜか主人公の亜樹よりも、
    主婦・美佐江と、ネイルサロンで働くミナを応援したくなりました。

    次から次へと、美味しそうなお菓子が登場します。
    でも読んでいて一番食べたくなったのは、
    じいちゃんのやわらかい皮のシュークリーム。
    パティシエではなく、菓子職人だというじいちゃんが作る昔ながらのほっとした味。

    そういえば、有名パティシエの作った大人気のスイーツ、
    おしゃれで美味しくても、たまにピンと来なかったりするのって、そういうことなのかなぁ…。

    印象的だったのは、「夫婦は他人で作るものだと思う。」の一言。
    そっか…一見冷たく感じてしまうけれど、
    他人だからこそ感情的にならずに対処できることもあるんですよね。

    お菓子も人間関係も、甘くてやさしいだけじゃだめ。
    時に厳しく、互いに尊重し合えることが大事。
    このあたりまえのようなバランスが難しいです。

    そして、じいちゃんの上手をいくばあちゃん。うふふ。

  • 洋菓子店を舞台にした連作短編集。

    甘い菓子の名前とは裏腹にピリリと辛味の効いた物語には千早さんならでは。

    女を興奮させない菓子は菓子じゃないってすごい破壊力ある言葉だなぁ。

    じいちゃんもばあちゃんも潔くて好きだし、甘い物は苦手なんだけど、亜樹のつくる菓子を食べてみたい。

  • 千早茜さんの本は『男ともだち』をかなり前に読んで、二作目だと思います。

    これは小さな町の洋菓子店をめぐる人たちの連作ですが、主人公の亜樹の成長譚かな、と思いました。
    でてくるスイーツはとってもスイートだけど、ストーリーはちょっとビターでもあります。
    出てくる女の子、男の子のお話しは、すれ違いあり、片想いありです。

    澄孝くんとミナがうまくいくといいのにとか、美佐江はなんで、あんな夫と暮らしているのか、別れればいいのにと思った。
    一番好きだったのは、亜樹と珠香のお話し。
    珠香の中高生の時のキャラクターは大変そうだけど、好きでした。でも珠香も成長したんですね。

    亜樹は一番最後の『クレーム』ではなんだか、今まで他の女の子たちの目に映っていた大人な亜樹じゃなくなっていて、ちょっとがっかりしたような・・・。
    でも最後は、まあよかったのかな。

  • 街中の昔ながらの洋菓子店を営む祖父と、その店を手伝うことになったパティシエールの孫娘。彼らと彼らを取り巻く人々が描く、お菓子とともにつむがれる、温かく甘やかな物語が6つ収められています。
    お菓子の描写が繊細で、食べるのは好きでも詳しくはない私自身でもうっとりするような魅力に満ちてます。そのお菓子とともに描かれる人物たちの繊細な人間模様も楽しめて、きっと、きらびやかなプティフールのお菓子たちを手のなかに包んでいるときのようないとおしさを感じる物語になっているように思いました。
    行違ったりうまくいかなかったり、想いも必ずしも通じなかったり。それでも、自分の気持ちを信じて生きていく人物たちを素直に応援したくなります。そして、すごくすごく、お菓子が食べたくなります。昔懐かしのとにかく甘いシュークリーム、良いですよねえ…

  • 作品中とても魅力的なお菓子がたくさん登場するが、登場人物は甘くなかった。生きていく上で皆何かをすり減らしてるみたい。切れ味抜群な刃物の様に鋭利でそこには登場するお菓子の様な甘さはない。そして亜樹がどうしても好きになれなかった。ばあちゃんの言葉じゃないけれど狭い世界で生きてるせいかどうも自分本位な感じ。特に最後の章は最後に辿りつくプロセスにイライラした。本当に20代後半の女性なのか?と。ここまで人の気持ちを慮る事が出来ない人がどうして人の為にお菓子が作れるのか?と。(後輩の澄孝もそう所が見え隠れして苦手)最後に救いがあって気づくのだけれど…。もうちょっと巧く生きれないものか。と何度も思った。本当に人間って不器用でイライラする生き物だ。だがそれが人間の面白さだ(爆)

  • 久しぶりにこの作者の本を手にしました。プティ•フールを舞台に描かれています。外からみると、手に職を持ってすごいなと思う人も実は当たり前だけど、悩みを抱えていたり、あがいているのかきちんと書いてくれています。
    個人的に気になったのは、身だしなみを整え、幸せそうに見える主婦が、幸せの象徴である甘いものを吐きだこができるまで消費行動していること。お店の人が気づいたのに夫はいつか気づいてくれるんだろうかそして彼女はどういう選択をするんだろうか。恋愛系のドロドロしたものにならず、お仕事小説にならず、それでも、お店でスイーツを買ってきラッピングしてくれた状態までそれぞれの章を仕上げてくれているので、じゃぁ後は、読み手の解釈かなぁってちょっと思いながら。正直それぞれ、嫌だなぁと思う内面はきちんと描かれています。主人公には職人気質な部分と後輩だから、同じ職人だからいろんなことが共有できると言う気持ちはわからなくもないけれど、恋人としてはちょっとやきもきするのは当たり前だろうなぁって思いましたし。ちょっと後輩の気持ちを利用している部分があるなーってちょっとずるいなぁって。じゃぁその後輩くんもどうかと言うと、自分に思いを寄せてくれる女性を振り回している部分もあったりで。とは言え誰でもそんなもんですかね。結局自分勝手になるよね。甘いだけじゃなくビターな部分、そういったものもきちんと描いてくれているのでそれが魅力かなと思いました。
    読むとスイーツが食べたくなるけど、ちょっとビターに思いますので、コーヒーを片手に読んでる気分です。主人公のおばあさんのように、紅茶専門店のマスターのように、いろんなことを気づき、きちんと見れる人間になりたいな。と思いました。

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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