西洋菓子店プティ・フール

著者 :
  • 文藝春秋
3.56
  • (28)
  • (139)
  • (133)
  • (13)
  • (3)
本棚登録 : 999
レビュー : 128
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904016

作品紹介・あらすじ

女を昂奮させない菓子は菓子じゃないスイーツは誰かの心を不意につかんで新しい場所へと羽ばたかせるスイッチ。下町の洋菓子店を舞台に繰り広げられる鮮烈な六つの物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 下町のケーキ屋さんを舞台に描く人間模様。
    ものすごく美味しそうなスイーツと絡めつつ、視点が変わるたびに文体も変わる連作短編です。

    寂れかけた商店街にある、昔ながらの西洋菓子店プティ・フール。
    懐かしい味のお菓子をきっちり作るじいちゃんの店に、
    本格的なスイーツを創作もする孫娘・亜樹が加わりました。
    店番には、優しいばあちゃんも欠かせない。

    子供の頃から祖父母の店が大好きだった亜樹。
    中学の時に美しい同級生と親友になり、魅入られるようなひとときを過ごした鮮烈な思い出。
    その子のために、初めて菓子を自分で作ったのでした。

    クールな先輩だった亜樹に憧れている若いパティシエの澄孝。
    亜樹が店をやめた後も気になって仕方がなく、勉強のためのケーキ屋巡りのついでを装って、亜樹のいる店を訪れます。

    澄孝のことが好きなミナは、ネイリスト。
    綺麗なものが大好きで、オシャレには気が入ってます。
    まったくの片思いと知りつつ、澄孝に付き合い‥?

    店の常連客の美佐江は、悩みを抱えている様子。
    店にあるお菓子を大量にまとめ買いしていく。おそらくは‥
    そんな買い方を亜樹は断りたい気持ちだったが‥

    亜樹の婚約者は、人のいい弁護士の祐介。
    大手事務所をやめて、今は商店街にある小さな事務所でご近所の人の愚痴を聞くことも。
    仕事に打ち込む亜樹に惹かれたのだが、しだいに亜樹との間にずれを感じて‥

    それぞれに大事にしているもの、打ち込むものがあり、その上での動揺や変化があります。
    軽薄にも見られかねない若い女の子ミナが、やりたいことがはっきりしていて、気持ちいいですね。
    うじうじしていた美佐江さんも、最後には?

    仕事一途な亜樹は職人気質というより、天才肌のアーチスト的な印象。
    まだ若くとんがっていて、時には周りが見えない。
    片思いの連鎖はわかりやすいけど、それで‥
    微妙にすっきりしないのがなんでかなと考えてましたが、この終わり方だと、亜樹自身が何をどう受け止めたのかがはっきりしないからかも。
    じいちゃんの指摘はキビシイけど、なんとも的確ですね。
    そんなじいちゃんの隣を歩いてきた、ばあちゃんの余裕も、とても素敵。

    亜樹の作る濃厚なスイーツを、特別な日に、優雅なお店で食べたい!
    ただ毎週食べたいのは、じいちゃんのシュークリームでしょうね☆

  • 千早さん4冊目。『森の家』以来かな…。『森の家』ではドロドロし過ぎて最後は感情が処理しきれなくなって、しばらく千早作品から遠ざかっていました。が、予約して手にしたこの作品は読み始めたら昼ドラのように続きが気になり、昼から夜にかけての座りっぱなしの一気通し読み。最終章が若干陳腐な展開になるのは相変わらず…。けどおもしろ。


    ビター、セミスイートな西洋菓子たち。毒も、酸いも甘いも入り混じっての6連作。「グロゼイユ」「ヴァニーユ」「カラメル」「ロゼ」「ショコラ」「クレーム」。甘く苦い毒。


    甘みと毒って紙一重のような気がした。「カラメル」が好き。黒い…。ただスイートなだけでなくどろりとしていたり、ふわふわだったりしっとりしていたり、西洋菓子も人の心の機微も変化する。恋愛って知らず知らずのうちに人を傷つけていたり、故意に傷つけたり。心を踏みつけていたり…。ただ喧嘩さえしなくなったらお終いというのは分かるような気がした。


    幼い頃からケーキ職人にあこがれ続けてきた亜樹は、若さゆえに不器用で傍から見ていてハラハラした。そんな雰囲気の中でのおじいさんやおばあさんの名言が心に響いて、ほろりと涙がこぼれそうになりました。沁みる。
    亜樹が作る西洋菓子はお酒がきつかったり、かすかに毒をはらんでいたりもするけれども、彼女の持ち味(武器)のひとつだと思う。


    千早さんの作品は読んでいると脳内で映像化(ドラマ化、映画化)しやすくって、読んでいて新鮮です。脇役ですが素敵な紅茶専門店の長岡さんが好き。おじいさん、おばあさんの過去も知りたいので続編希望します。



    小説ってなんだかとってもホッとする。じいちゃんのシュークリームが食べたくなりました。

  • まず、このカバーのデザインと色合いが涼やかで、とても気持ちがよかったです。

    そしてなぜか主人公の亜樹よりも、
    主婦・美佐江と、ネイルサロンで働くミナを応援したくなりました。

    次から次へと、美味しそうなお菓子が登場します。
    でも読んでいて一番食べたくなったのは、
    じいちゃんのやわらかい皮のシュークリーム。
    パティシエではなく、菓子職人だというじいちゃんが作る昔ながらのほっとした味。

    そういえば、有名パティシエの作った大人気のスイーツ、
    おしゃれで美味しくても、たまにピンと来なかったりするのって、そういうことなのかなぁ…。

    印象的だったのは、「夫婦は他人で作るものだと思う。」の一言。
    そっか…一見冷たく感じてしまうけれど、
    他人だからこそ感情的にならずに対処できることもあるんですよね。

    お菓子も人間関係も、甘くてやさしいだけじゃだめ。
    時に厳しく、互いに尊重し合えることが大事。
    このあたりまえのようなバランスが難しいです。

    そして、じいちゃんの上手をいくばあちゃん。うふふ。

  • 街中の昔ながらの洋菓子店を営む祖父と、その店を手伝うことになったパティシエールの孫娘。彼らと彼らを取り巻く人々が描く、お菓子とともにつむがれる、温かく甘やかな物語が6つ収められています。
    お菓子の描写が繊細で、食べるのは好きでも詳しくはない私自身でもうっとりするような魅力に満ちてます。そのお菓子とともに描かれる人物たちの繊細な人間模様も楽しめて、きっと、きらびやかなプティフールのお菓子たちを手のなかに包んでいるときのようないとおしさを感じる物語になっているように思いました。
    行違ったりうまくいかなかったり、想いも必ずしも通じなかったり。それでも、自分の気持ちを信じて生きていく人物たちを素直に応援したくなります。そして、すごくすごく、お菓子が食べたくなります。昔懐かしのとにかく甘いシュークリーム、良いですよねえ…

  • 作品中とても魅力的なお菓子がたくさん登場するが、登場人物は甘くなかった。生きていく上で皆何かをすり減らしてるみたい。切れ味抜群な刃物の様に鋭利でそこには登場するお菓子の様な甘さはない。そして亜樹がどうしても好きになれなかった。ばあちゃんの言葉じゃないけれど狭い世界で生きてるせいかどうも自分本位な感じ。特に最後の章は最後に辿りつくプロセスにイライラした。本当に20代後半の女性なのか?と。ここまで人の気持ちを慮る事が出来ない人がどうして人の為にお菓子が作れるのか?と。(後輩の澄孝もそう所が見え隠れして苦手)最後に救いがあって気づくのだけれど…。もうちょっと巧く生きれないものか。と何度も思った。本当に人間って不器用でイライラする生き物だ。だがそれが人間の面白さだ(爆)

  • ひとつひとつの物語がキュッと甘酸っぱく色々考えさせられる内容でした。恋愛について迷う時期、亜樹さんやスミくん、あるいはミナちゃんと一緒にオロオロできてとってもおもしろかったし、ふわっとした秘密は秘密のまま終わるところもよかった。
    職業柄、ネイリストのミナちゃんのお話が一番感情移入できたし、職種についてとても細かく調べられているなと思いました。スミくんに対してイライラした、なんでがんばれるって好きだからに決まってんじゃん!て。そういうのも含めてスミくんの未来編とか読んでみたい。私的には長岡さんが一番の耽美キャラでびっくりした、まさかの伏兵でしたわ。

  • 装丁が素敵。
    文章は美しくて好きなんだけど、何故か亜樹が主人公の話とスミが主人公の話が上手く好きになれなくて。自分でも理由がわからない。スミが嫌いなのはわかるんだけど。
    「グロゼイユ」がちょっと読みにくく感じたのもあるかもしれない。
    痩せた奥さんの話とミナの話は好きだった。多分、亜樹は主人公向きでないのだと思う。周りから描写されて輝く人、のような気がした。亜樹が婚約解消しようかと言われてキレた理由もよくわからなかった。
    爺ちゃん、とてもいいですね。彼が何をしたか、どうして墓に参るのか、それをあんまりはっきり書かないところが良かった。
    珠香との一瞬がとても綺麗だった。
    もう少し難を言うなら、いくらファッションに興味ある男性でもペプラムスカートとかわかるんかいな、とちょっと思ってしまった。

    レビューを読んだら私と同じくミナと奥さんの話に惹かれている方多数。

  • 甘い、酸っぱい、しょっぱい、辛い。苦い。人とのふれあいは味覚に似ている。

  • 読んでいる間、ずっとケーキの事を考えていた。甘かったり、苦かったり、ほろっと溶けたりサクサクしたり、味も舌触りも香りもふっと浮かんできて、洋菓子の様々と人の暮らしや気持ちの様々とが似ている気がした。
    色んな人の想いが合わさって隣にならんで比べたり競ったり許したりしながら一緒にいるかんじがショーケースみたいに思えて、読み終わった足で一番近いケーキ屋さんに行ってしまった。
    初めて千早さんの本を読んだけど素敵だなと思った。他の作品も読んでみたい。

  • 図書館で借りたもの。
    下町の洋菓子店を舞台に繰り広げられる鮮烈な六つの物語。

    初読みの作家さん。
    ほんわか~な感じを想像してたけどいい意味で裏切られた!
    静かな強さのあるお話だなーと思った。

全128件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2017年 『人形たちの白昼夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

千早茜の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

西洋菓子店プティ・フールを本棚に登録しているひと

ツイートする