拳の先

  • 文藝春秋 (2016年3月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784163904160

作品紹介・あらすじ

恐怖と不安の先にあるものとは。感動長編!



文芸編集者の空也はボクシング選手・タイガー立花の日々を見つめ続けるうち、不吉な予感を覚える。才能とは。逃げるとは。傑作長編。

みんなの感想まとめ

恐怖と不安の先にあるものを描いたこの作品は、ボクシングを通じてさまざまな登場人物の成長や葛藤を描いています。前作から引き続き、主人公の空也がボクサー・タイガー立花の日常を見守る中で、立花や新たなキャラ...

感想・レビュー・書評

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  • じわじわとこみ上げてくる・・・・
    前作「空の拳」から本作まで、
    一人のボクサーを中心に・・・
    様々な登場人物たちの生き方が変化していく。
    泣きたいような、
    笑顔になりたいような・・・・
    ちょっと不思議な感情が、じわじわとこみ上げてきます。
    本作品は、間違い無く、
    前作の「空の拳」を先に読み終えてから、
    がオススメです。良い作品でした。

  • モチベーション。

    ボクシングだけでなく、
    今熱いオリンピック選手などのスポーツ選手だけでなく、
    いろんな目標に向かって努力をしている人々。

    自分が成長している、実力が伸びている感覚があり
    楽しいと思える時は考えないでがむしゃらに誰もが進む。

    でも怪我をしたり、怖い思いをしたり
    どんなに苦しいことをしてもマイナスしか感じないとき
    何のためにやっているのかさえわからなくなったとき
    どこにそれを置き、何を見据えたらいいのか。

    自分の心にどう折り合いをつけるのか…。

    『空の拳』より私はこちらの方が好きでした。
    タイガー立花が好きだったので、
    今回の展開は複雑な気持ちでしたけど。

    最後は、タイガーいいっ!!って思えましたので。

    メダルを取れても取れなくても
    どれだけの選手が自分を出し切れたと思えているのか。
    オリンピックを観戦しながら
    こんなことを考えてしまう一冊です。

  • 「空の拳」続編(続編とはいえ、単独でも十分楽しめる)。出版社の文芸編集担当として慌ただしく過ごす空也が、久々に、かつて関わっていたボクシングジムに関わることとなる。
    ボクシング雑誌担当時代はへなちょこっぷりが目に余るほどだった空也だけど、今回は前作ほどボクシングにどっぷりというわけでもなく、ワンクッション置いたところから状況を見ているためか、落ち着いてストーリーを追うことができた。新キャラとして登場した作家・蒼介。だが、一癖二癖ある面倒な人物で、ボクシングに興味を持ち始めたはいいが、イヤな予感しかしない。不快なキャラだが、ちょっと違った視点からボクシング界が見えてくる。空也と同い年の花形ボクサー・立花は着々とキャリアを積んできたが、ライト級にすさまじい強さを見せる大型新人が登場し、本作では割と早い段階から、立花に翳りが見え始める。その翳りの正体が掴めず、常に漂うもやもやした不穏な空気。その不穏さを早く取っ払いたくて必死でページをめくるが、その不気味さに読む側まで足を絡め取られた気分になる。
    更に、ジムに通う小学生・ノンちゃんを取り巻く状況からも目が離せない。立花ファンで、強くなりたいと健気にトレーニングする彼だが、ひた隠しにするいじめの兆候を、見て見ぬ振りができない空也。
    前作と比べると、スポーツ小説らしい爽快感は少ないかもしれない。試合の描写は臨場感に溢れてリアルだけど、どちらかというと全体を通してとにかく苦さが際立つ。キャリアを重ねていくからこそ、ぶち当たることを避けられないいくつもの壁。否応なく感じてしまう限界、己の弱さ、恐怖心。じわじわと不安の正体をあぶり出していく手法は、さすが角田さん。ボクシングがテーマではあるけど、こんな思いを誰もがしているのではないだろうか。
    長く、非常にボリュームのある一冊だが、飽きることはなかった。角田さんの放つ言葉の一つ一つが、まるでパンチのように心に鋭く刺さった。非情な現実に打ちのめされる場面も多かったけど、空也の真摯さにすごく救われた気がする。強くもかっこよくもない空也かもしれないが、腕っぷしという意味ではなく、一本筋の通った心の強さを感じた。こんな風に相手を思いやり、そっと支えることができたらと思う。負のスパイラルの渦中の立花に対しても、散々自分を振り回す蒼介に対しても(書きたいことを求めたあげくの彼の行動も、何気に目が離せない)、身の振り方に悩むノンちゃんに対しても、放っておくことができないある種のお節介さを、好ましく思う。
    拳の先に見えるものの重さ、儚さ、苦しさ、残酷さ。アスリートが背負うものの一端を本書で垣間見ることができた気がする。壮絶さを極めた先にはきっと、まだ見たことのない景色が広がってることだろう。自分の目指す結果が、得られたとしても得られなかったとしても。そんなことを感じさせてくれた、とても意味のある出会いだった。

  • 結論から言うと「面白かった」ですが、途中は読んでも読んでも前に進まない感じで結構苦しみました。
    ボクシング小説『空の拳』(2012年)の続編。2016年に出版。
    主人公は前作と同じく雑誌編集者の空也。前作に引きつづき鉄槌ジムのボクサー・立花と坂本が登場しますが、加えて立花と同一クラスの超新星・岸本と、同じ鉄槌ジムの若手成長株の安城が出て来ます。そして脇に鉄槌に通う肥満体の小学生・ノンちゃん。
    実は『空の拳』を読んだのが10年前。主人公も主要登場人物も相当重複しているのですが、今回のこの『拳の先』を読みながら、前作の記憶は一切蘇らず。。。
    順調に戦績を伸ばしてきた立花が、高校卒業したばかりの新人・岸本に完膚無きまで倒され、一旦は沈み込みながらも少しづつ自分を取り戻していく姿と、いじめにあっていたノンちゃんがそこから持ち直していく姿を重ね合わせながら話が進んでいきます。
    前作が「若者たちの成長物語」なら、本作は成熟から減衰へと向かう物語。
    単に勝った負けたでは無く、その精神性、例えば戦いの中で、あるいはその後に感じる恐怖感とか、試合中に「ゾーンに入る」様子だとかが丁寧に描かれ、読み応えがあります。
    さらに他の3人のボクサーの試合もかなりのボリュームで描かれ、加えてトレーナーあるいはファンや応援団の視点、ボクシングの興行の裏側、さらにはルポルタージュを書く為にボクサーを追う作家など非常に多くの視点で追いかける重厚な物語です。一方それゆえに最初に書いたように「読んでも読んでも前に進まない感じ」になってしまいます。もう少し「枝を刈り込んだら」(例えば坂本や安城は背景レベルで、作家の蒼介は居なくても良かった)、物語としてはずっとシャープになると思います。しかし自らも10年にわたりボクシングジムに通う角田さん、捨てきれなかったのでしょうね。
    全体に重っ苦しい話が続きますか、吹っ切れたエンディングは心地良く。

  • 最後まで蒼介(作家)のことが好きになれなかったし、空也がなぜ、メモを渡してもいいも思うほど彼に思い入れるのか、まったくわからなかった。

  • ボクシングには、あまり詳しくないのですが角田さんが書いたということで読んでみました。試合のシーンは、やはり漫画には描写ではかなわないものがありますが、本書はなかなかに読みごたえはありました。読み慣れないうちは、試合が終わったことが分かりづらく、次のシーンの記述に移って気付くという事が少しありましたが、中盤にかけて慣れてくると段々と読みごたえが出てきました。弱小ジムならではの苦労が側聞していたほど感じられなかったのは、多少違和感がありましたが。

  • 「空の拳」の後日談。文芸編集者としての仕事が忙しくなりボクシングから遠ざかっていた空也が、ふとしたきっかけでまたボクシングに関わっていくことになる。悪役路線をつづけている立花、ぽっちゃり小学生のノンちゃん、無敗の新人岸本…それぞれにとってのボクシングとその人生を綿密に描く物語。

    正直言って、前作を読んでいると後半特に辛い。時の人だった立花が、落ちぶれるとまではいわないけれど、明らかに中心から外れていくさま、そして彼が呑み込まれていた闇の姿。唯一無二だと思っていた頼りの綱が、突然化け物に変わっていたという恐怖。

    それはなにもボクシングに限った話ではなくて、友達や恋人との齟齬、仕事の行き違いなど、突然それまでの親密性がぱたりと憎悪に入れ替わる瞬間はだれにだって訪れる。だからか、彼の陥った状況にあまりにぞっとさせられたのです。

    そして容赦のないその描写がつづいても、彼にかかわる人々のあたたかさ(無論その逆もみっちり描かれてはいますが)、ボクシングそのものの魅力、けして悪いことばかりではないという側面も描かれていて、あまりにどんよりさせられるわけでもありません。

    そういった意味で、前作を含めてこの二作は、ボクシング小説というより、ボクシングにかかわった人々の物語、人間を描いた物語だと思うのです。だから、すかっとするスポーツ物を求めると、うん?と感じるかもしれないですね。

    無敗の王者として描かれた岸本がなぜそんなにうつろなキャラクタとして描かれているのか気にかかりますし、蒼介が空也のメモをもとに立花の物語に着手する日が来るのかと妄想したりしますが、きっと彼らの物語はこれで終わりなのでしょう。

    立花が、空也がうつくしい光を一瞬捉えたというシーンの印象を残したまま、そっと閉じられていった本編のかたちがこれ以上なく完璧だと、そう感じたからです。

  • 凄く良かった!ボクシングものなんだけどボクサーを主人公にせずに特にボクシングファンでも無いのにボクシングに関わった男を主人公にしてるところがとてもユニークで、かつ普通のボクシング物では辿り着けない視点にまで達してる。中盤の葛藤から逃げたいという気持ち、更には最後の試合でのゾーン体験の共有、拳の先の化け物を叩き潰したって表現、それぞれ素晴らしいシーン。ノンちゃんの登場もこの作品を単なるボクシング小説の枠に収めないことに一役買ってる。全然関係無いけど角田光代ってすごいおばあさんだと思い込んでたんだけど若いのね。トレーナーの有田みたいな無自覚に人を傷つけたり意気消沈させたりって凄くわかる。

  • 過酷でかっこいいスポーツボクシングに魅了された男たちの生きざま。くうちゃんも、立花も坂本も、中神も大好きです。一対一で相手を叩きのめし、または叩きのめされるリアルに目が離せなかった。
     落ち込み、恐怖しながらも、それでもなお拳を突き出す立花に泣かされた。

  • 絶望して光を失うくらいなら逃げればいい。逃げるうちにここだと思える場所に辿り着けることもできることもあれば、逃げる中で戦い方を見出すこともできる。恐怖に戦き落ち込み苦しむこともあるだろう。だけど追い詰めてくる奴は意外に悪意がない。実は追い詰めるのは他者ではなく自分だったりする。人は脆く弱い。拳の先にあるのは全然他者と変わらぬ自分なのかもしれない。

  • 視点は出版社勤務の那波田空也。前作『空の拳』で、ボクシング雑誌に配属になり、嫌々取材を開始したものの、自らジムに通うほどまでに魅せらた彼は、ボクシング雑誌が廃刊したことで文芸誌に異動になり、二年ほど足が遠のいていた。今回、「ボクシングを見にいきたい」という作家の要望に応えたことをきっかけに、ふたたびタイガー立花の試合を追いかけるようになる。タイガー立花の世界挑戦までの軌跡、「プリンス」と呼ばれるアマチュアボクシングから鳴り物入りでプロに転向してきた強敵(井上尚弥なのかしら)の存在、立花を応援する小学生練習生、ノンちゃんが、学校でひどいいじめに合っているらしいのに助けてやることのできないもどかしさ、などが並行して描かれる。

    日本タイトルに挑戦するも破れ、その後の八回戦の試合を最後に、ボクシングを辞めることにした坂本くんの話が印象に残った。途中までは順調に勝ち上がってきた。「行けば行くほど知らない場所が広がっておもしろかった」。だけどあるとき自分でわかるという。「この先はもうないな」っていうのが。何年も、毎日同じトレーニングを重ねることができるのは、その先があると、信じられるからだ。自分はここまでと、悟る。とても残酷なことだと思う。
    坂本くんをジムに引き込んだ、そして自身はとうに選手を辞めてトレーナーをしている中神が、無人のリングを見下ろし、つぶやくように言う。
    「ほんとこんなもんに興味なんか持たないで、女の子とデートしたりライブ行ったりしたほうが、どんだけいいかって思いますよ」

  • 以前ボクシング雑誌の編集をしていた空也は、記事を書くために入会したボクシングジムで、知らず知らずにボクシングにのめり込んでいく。
    そのボクシングジムで知り合った同い年のタイガー立花。立花は、日本チャンピオンになったが、その後はリンクでの、その拳の先にある得たいの知れない恐怖と闘っていた。
    空也は、いじめにあっているジムに通う少年ののんちゃん、若き作家の蒼介らと、関わり合いになりながら、その拳の先にある得たいの知れないものに対していく。

  • 主人公の目から見たひとりのボクサーの物語。大きな期待をされながら年齢を重ねるうちに新人のすごい選手が登場し世代交代の中でも奮闘を続けるといった、わかりやすくもあり、ありきたりとも思えるストーリー。素直な文体と自然な描写でストーリーが展開される角田ワールドです。

  • 角田光代さんが描いたボクシング本。
    「空の拳」の続編と知らず、先に読んでしまったけれど、超長編にも関わらず、飽きずに読めました。
    ボクシングは、シンプルに勝ち負けの世界なので、どれだけ強くなってもその先の進退もあるわけで、周囲からの期待も罵倒も背負わなければならない。
    それに合わせて、ノンちゃんの成長ぶりもいい塩梅に差し込まれていて、角田光代さんらしさも出ていて良かった。
    ボクシングについては、知識も興味も無い私だけど、試合の緊迫したムードは差し迫るものがありました。
    文章でこれだけ再現するのって素晴らしい。

  • 長いが飽きずに読み切れる。
    すでにボクシングをやめて記者として仕事をしている主人公はボクシング雑誌から他のジャンルに替わる。
    しかしむしろ前作のような濃い関係より、第三者としての視点がまたボクシング関係者の思いをうまく浮き彫りにしている。
    アジアの国で一人自分を磨くボクサー。でもものすごく努力をしても、全てがうまく行くわけでもない現実との葛藤。
    スポーツマンとして淡々と受けて一つの人生の経験として流せていく潔さ。ここにいじめを受けている前向きな少年の姿が重なり…。

  • 前作より面白かった

  • ボクシングも好きだからとっても面白かった!
    でもでも、ひっかかっていることが。
    立花の最終戦は2011年3月10日にタイで行われていたはず。そして、翌日の昼過ぎに成田着の飛行機で帰る予定、となっている。つまり、あの、3月11日。しかも、立花は本当は試合の翌々日に帰るはずだったけど、「かんなといっしょに帰ったほうがいい気がして」フライトを変更している。
    成田に着いた直後にあの震災が起きるタイミング。
    えっ、どうなるの!?とドキドキしたけど、あと2ページしかない!そして何もないまま終わった!
    こ、これは続編への伏線なのか!?
    気になる・・・!

    そして、立花とノンちゃんは成長したけど、蒼佑さんはくすぶってるなー、これも続編で解決するのか?
    乞うご期待ってこと!?
    しかも空也のプロポーズの行方も気になる!

    角田さん、答えをプリーズ!

  • 空の拳の続編。ボクシング雑誌は廃刊となり念願の文芸部に異動した空也は通っていたジムの立花を追い続ける。階級がありランキングがあり国内から世界があり。誰もが勝ち続けることの出来ない世界でひたすら一勝を積み上げるために毎日練習する。ボクサーの強さとは。逃げるとは。ボクシングに限らず何かに打ち込めば同じ、サラリーマンであったって。

  • 続編らしいけど、ここから読みました。途中ちょっとだらけて読みずらくなりましたが 時間をかけて読了。立花が負けてからがいい。スポ根ではないので都合よくチャンピオンはないだろうと思いつつ期待もしたり、最後もいい終わり方だと思う。平行して描かれていたノンちゃんの話は、必要なのかな。拳の先にあるものは、ゾーンに入るという事?負けるという事を良く描いていると思います。拳の先を知った立花は勝ったのだと思います。

  • 17/12/10 (91)
    角田さんのは全部読む!な勢いで手に取った一冊だけど、ボクシングは興味ないし話に入り込めなかった。。リタイア。。

    ・だれもが少しだけ強くなってその違う世界に向かうのだと思った。(P540)

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著者プロフィール

角田 光代(かくた・みつよ):1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。90年「幸福な遊戯」でデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞、07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、11年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、12年『かなたの子』で泉鏡花文学賞また『紙の月』で柴田錬三郎賞を、14年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞、21年『源氏物語』の完全新訳で読売文学賞を受賞。その他の著書に『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『わたしの容れもの』『月夜の散歩』などがある。

「2025年 『韓国ドラマ沼にハマってみたら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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