橋を渡る

著者 :
  • 文藝春秋
3.17
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  • (48)
  • (13)
本棚登録 : 976
感想 : 159
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  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904252

作品紹介・あらすじ

『悪人』『路』『怒り』の作家が満を持して放つ2016年最大の話題作。新次元の群像ドラマ、ここに誕生!ビール会社の営業課長、明良。部下からも友人からも信頼される彼の家に、謎めいた贈り物が?都議会議員の夫と息子を愛する篤子。思いがけず夫や、ママ友の秘密を知ってしまう。TV局の報道ディレクター、謙一郎。香港の雨傘革命や生殖医療研究を取材する。結婚を控えたある日……2014年の東京で暮らす3人の選択が、未来を変えていく。一気読み必至、2016年最大の話題作!

感想・レビュー・書評

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  • 最終章いる?
    もうこの手の展開お腹いっぱいなんです。
    近未来ネタいらないよ。
    吉田修一らしい冬を描いて欲しかった。

    完全にエンタメ作家めざしてるの?
    文章力抜群なのに…
    どうして無駄に大風呂敷広げちゃうんだろう。
    もっと普通でいいのに。

    秋?だったかな。
    謙一郎のストーリーなんて抜群に良かった。
    生まれた時からまっすぐに生きてきた人間がつまずいたときの脆さ。
    想像を超える展開にハッとなる。

    こんなに巧いのにいきなり近未来?
    いやー、もったいないでしょ。
    そんな感想でした。

  • 4部仕立てで、それぞれに不正や裏切りなどの悩みを抱えた男女ペアが登場し、最後に驚きの場所に収まっていく。

    2部までは話がどこに向かうのかがつかみきれず、また実際に起きた事件が盛り込まれている意味もわからず、かなりもやもやと。しかも話の途中で放り出されて、作者は何を書きたいんだろうと困惑したままページをめくり続けた。さらに3部では、急展開の終わりに面食らう。
    そして4部、まさかの70年後の未来に話は飛ぶ。そこで初めてそれまでのストーリーがつながって、すとんと納得。しかも、単に人物の相関図がつながっただけでなく、殺伐とした近未来のストーリーは単独でも十分な重みがあり、胸に響く。それまでの半端な気持ちは一気に吹き飛んで、胸がいっぱいになった。

    一見突拍子もないSF要素を加えながら、描かれているのは人間の誠実さや正義、悪意そして社会批判など奥は深い。
    エピローグも素敵で、印象深かった

  •  著者の作品は2作目、なのに「あぁ、あの…」と思ったのは去年映画『怒り』を観たからだな。原作者が著者だ。本作のヒトヒネリした作風が『怒り』と似ている気もする。『怒り』は無関係の男性3人がひとつの殺人事件を通じて繋がり合う(かのように)描かれる手法はなかなか斬新だった。
     本作も、まったく縁もゆかりもない3人の主人公による別々のストーリーが春、夏、秋、と題して順に語られる。なかなか力量のある作家さんなのだろう、それぞれに読み応えがあり、中編の小説として成立している。2014年という同じ時代をそれぞれの場所で暮らし、価値観の揺らぐ現代において、何が正しくて、何が正しくなく、そして自分は何を選択して生きて行くかを、息苦しくなるほど濃密な空気感の中で描き切っている。この閉塞感は、まさに”今だな”と思わされる。つい3年ほど前の、記憶も生々しい実際に世間を騒がせた事件、ニュースが巧みに織り込まれている点も面白く読み進められる要因だ。

     全く関係はない3人とはいえ、前の章の登場人物が、次章の中になんらかの形で登場する手法は、最近読んだ中では、湊かなえの『山女日記』など、ありがちと言えばありがち。それはさほど特筆するところでもなく、むしろ、これが本書の読者を引き付ける舞台装置かと思うと、やや鼻白むくらいの小手先のテクニックだ。
     だが、さにあらず、本書にはもっと大仕掛けが隠されていた。

     これ以上は、さすがに書けないな。なかなか、驚かされたし、爽快だったよ。”あのページ”以降は、もうページを繰る手を止めること出来ずに一気に読み終えてしまった。

     ただ、評価は難しいなぁ。賛否が割れそうな作品だ。映画も小説も、ダイドンデンガエシはWelcomeなほうだけど、本作はクライマックス前の3つの章もそれなりに独立した物語として成り立っていて、それだけでも実に味わいがあった。
     それを最後の1章、そしてエピローグで伏線大回収を行うが、やや駆け足で、若干辻褄の合わないというか「なぜ?」が残る感が無きにしも非ず。
     いや、それでも、そのきっちりと閉じない部分、ホコロビのようなものが、なんとも現実っぽいというか、不思議な余韻も残してはいる。

     あらすじも、詳細な感想も、あえて本書に限っては避けるが、一読して損はない作品だということは言っておこう。 登場人物のひとりが言う、この言葉は現代に対する痛烈な警告だと思いながら読み切った。

    『あの時に変えればよかったと誰でも思う。でも今変えようとはしない』

  • 春-明良 夏-篤子 秋-謙一郎 そして、冬。
    4編からなる物語。
    それぞれが自分の思い描く正義へと迷いながら
    あるいは迷いもなく進んでいく。
    謙一郎は友人に言われる。
    「正しい奴は、たとえ自分が間違ったことしても、それを正しいと思い込むんだよ」
    正しいと思い込んでいる謙一郎は、自分を変えることは出来るのだろうか...。
    途中、空しくて、悲しくて泣きそうになった。
    ページを戻り頭の中を整理しながら
    (吉田修一さんにやられたなぁ)と、なんだか嬉しくなった。楽しく読了。

  • 春・夏・秋の各章ごとに、違う主人公の2014年の姿がえがかれます。

    2014年の時事ニュースも詳細に出てくるので、読み手もその年に暮らしているような感覚になります。
    各章だけでも読みごたえがあり、おもしろいのですが、はじめは各章の主人公ともに独立していて、つながりがないように思えます。

    急展開するのは最後の章「そして、冬」です。

    冬の章の読み始めは、とても混乱します。
    何度も事実関係を確認するため、春・夏・秋の章に戻って、読み直しました。

    冬の章の半分くらい読んだところで、ようやく冬の世界観に頭が追いつきました。
    が、春・夏・秋を読んだ後の冬の世界観ギャップは、ものすごいです。

    冬の章をどう感じるかで、この小説全体の評価がわかれると思います。

    私は最終的におもしろいと思いましたが、謎がイマイチ解き明かされないままの伏線もあったので、少しもやっとしたままでした。
    特に、春の章で主人公宅の玄関に置かれた、差出人不明の米と酒の謎…
    米と酒の名前と、冬の章の主人公のつながりはわかりましたが、では一体「誰が」、そこに米と酒を置いたのか?の方が、私は気になりました。

    読み終えて思ったのは、「正しいか間違いか」で物事を見過ぎることのあやうさです。
    正しいか、間違ってるかを判断するとき、その判断には「世の中の倫理観」が関わってきます。

    自分で「正しさ」を判断したようにみえても、実は世論に左右されていないか?と、著者から問いかけられているような気がしました。
    結局は「世の中からみて」正しいか間違ってるかではなく、「自分が、どうしたいのか」が大事だと感じました。

  • 2014年、春。甥の高校生を預かる夫婦。
    妻はギャラリーに務める画商?のような感じ。夫はこっそり浮気している。そんななか妻のギャラリーがうまくいかない状況になり、甥は彼女を妊娠させる。

    2014年、夏。都議会のやじ問題でニュースは連日大騒ぎ。
    夫が議員だから妻は騒動が恐ろしくてしょうがない。もっと大きい事件があれば都議会のニュースなんてみんな忘れるはず。議員の夫は入札情報を知り合いに流して賄賂を受け取ってしまう。

    2014、秋。香港の若者たちが政治に抗議をしている。ノーベル平和賞はパキスタンの17歳の女性が受賞。
    もうすぐ結婚を控える男女。テレビで報道の仕事をしている男は彼女からの婚約破棄を受け入れられず、首を絞めて殺害してしまう。その後、逃走するが対馬で捕まる。

    70年後。春と夏の登場人物の子孫たちが入り混じる。
    そこにタイムスリップしてきた婚約者を殺害した男。70年前に取材していた人間を”造る”研究が成功した世界。造られた男女が逃げ、タイムスリップしてきた男を70年前に還す。

    --------------------------------------

    2014年の時事ネタをガンガンぶち込んでてすごいなーと思っていたら、最後の章でSF的展開になり開いた口が塞がらなかった。変化球ですらなくて、野球だと思っていたらアメフトになってたような感覚。
    春夏秋が良い感じにドロドロしていて、さあ冬でどう締めるんだ!ってときに、70年後の未来だもんなあ。春の章に出てきた後輩のSM話とか、夏の章の友人ママの不倫話とか全部吹っ飛ばしてて大爆笑だった。個人の記憶や些細な事件なんて数十年経てば何もなかったのと同じになるんだな。後世に残るのはノーベル賞受賞者のことくらい。時事ネタなんてみんなすぐ忘れる。

    まさかの展開に満足。ちょっと反則かな、とも思ったけど、こんなに笑えわせてもらえるなんて思わなかった。

  • 吉田修一「橋を渡る」https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163904252 … 以前読んだの忘れて図書館でまた借りちゃった。こうなるから記録つけてるのにその行為を忘れるのはもう病気の域だ。物語は序盤からは全く予想しない近未来SFで、最初の雰囲気のまま進んでくれたらよかったのに。だから読んだ記憶も抜けたのかと…(おわり

  • 「悪人」「怒り」などの作品が良かったので読んでみたら、肩透かしでした。急に近未来の話になられても。どうしたらよいのか。

  • エッって感じ

  • 最終章は蛇足。吉田修一は文章力だけで魅せられるんだから、へんにSFとかやらなくていいのに。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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