あしたの君へ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904429

作品紹介・あらすじ

裁判所職員採用試験に合格し、家裁調査官に採用された望月大地。だが、採用されてから任官するまでの二年間――養成課程研修のあいだ、修習生は家庭調査官補・通称“カンポちゃん”と呼ばれる。 試験に合格した二人の同期とともに、九州の県庁所在地にある福森家裁に配属された大地は、当初は関係書類の記載や整理を主に行っていたが、今回、はじめて実際の少年事件を扱うことになっていた。窃盗を犯した少女。ストーカー事案で逮捕された高校生。一見幸せそうに見えた夫婦。親権を争う父と母のどちらに着いていっていいのかわからない少年。心を開かない相談者たちを相手に、彼は真実に辿り着き、手を差し伸べることができるのか――彼らの未来のため、悩み、成長する「カンポちゃん」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 望月大地、22歳。
    家裁調査官に採用され、任官するまでの二年間。
    はじめて暮らす九州での 実務修習期間のお話。
    調停委員が解決しきれない問題の調査にあたり
    裁判所のサポートをするのが仕事です。

    自分に自信がなく、人と接することが得意でない大地。
    「この仕事、向いてないんじゃないかな」とずっと言い続けます。
    それでも悩みを抱えている人の力になりたいと思うようになり、
    面談で問題を抱える人のたち話を聞き
    話の裏付けをとるため、関係する場所に足を運びます。
    少年事件では、窃盗やストーカー問題を
    家事事件では、離婚や親権問題を扱うことになります。

    大地は自分に自信が持てないからこそ 地道に調査を重ね、
    申し立て人たちの言葉の奥底にある真実に寄り添おうとします。
    その愚直でひたむきな姿には胸を打たれます。

    常識や表層に現われるものだけで判断するのではなく、
    足を使って 現場を自分の目で見て判断する、という姿勢は
    柚月さんの検事シリーズの 他の作品にもつながる気がしました。
    そして、読者をすっきりさせないまま終わる最後。
    これも柚月さんの作品の楽しみ(?)のひとつ なのかな。

  • 新人家裁調査官(補)の事件簿。ひとつひとつの事案に一生懸命向き合う主人公が好ましい。立派な調査官になってくれるだろう。頑張れ大地。

  • 主人公は 自分が他人の気持ちに疎かったり
    人生経験が少ないこと 特別な能力が
    ないことに引け目を感じていますが
    大変に実直な性格です
    そういう誠実さが 相手にも伝わるんでしょうね
    もし 自分が辛いときに
    良かれと思うことを 押しつけがましくなく
    考えてくれたら ずいぶん助かるだろうな・・・・

  • 家裁調査官補の大地を主人公にした5つの連作短編集。

    裁判所職員採用試験に合格し、家裁調査官に採用された望月大地。
    家庭裁判所調査官の仕事は、少年事件や離婚問題の背景を調査し、解決に導く事。
    見習い家裁調査官補は、先輩から親しみを込めて「カンポちゃん」と呼ばれる。
    「カンポちゃん」の大地は二人の同期とともに、養成課程研修の間九州の家裁に配属されたー。

    窃盗を犯した少女・ストーカー事件で逮捕された高校生・一見幸せそうに見えた夫婦・
    親権を争う父と母のどちらについて行っていいのかわからない少年…。
    心を開かない相談者達を相手に、思い通りに行かず自信を失うことばかり。
    安定した仕事を求め、公務員の家裁調査官を目指した自分はこの仕事の向いていないのではないか…。
    この仕事をする資格すらないのではないか…仕事を辞める事まで思い悩む大地。
    若い新人のカンポちゃん達には、人の人生を左右してしまう調査官という仕事はとっても重荷だと思う。
    でも、周りの先輩たちの優しいバックアップや厳しい叱咤も良かったなぁ♪
    そして、家裁を訪れる人々の助けになりたいと、不器用ながらも真摯に頑張る大地の姿には、
    葛藤を繰り返しながら一人前の家裁調査官を目指す大地の姿には、
    読んでるこちらも凄く応援したくなるし、心が温かくなりました。
    家裁調査官という仕事を初めて知りましたが、人生で苦しんでいる当事者の事を慮ると、
    全ての家裁調査官が全ての事案に対してこの様に寄り添って欲しいと思いました。

    自分の選んだ道で一人前になろうとする大地の姿を描いた本作は、とっても感動しましたし、
    様々な家庭の裏側や救いを求めてもがく人たちの心を繊細に描いた作品。
    とっても心に響く、素晴らしい作品でした。
    続編を熱望します( *´ω`* )/

  • 家庭裁判所の家裁捜査官補の研修中の案件の話。
    就職して現場に出ると思った様に進まない事だらけで悩んだり落ち込んだり。若かりし頃はそうだったなぁ〜今は…開き直ってしまうかも。

    家庭裁判所に関わった事がないので、こんな感じなのかと勉強になった。案件それぞれ、人それぞれで誰もが正直に話す訳ではなく、外堀を埋めて真実を詰めて、正しい結論を導く作業が大変だ。
    最後の案件、本の中では結論が出なかったけど、両親の離婚で迷う悠真くんに正しい結論が出ますように。

  • 内容紹介 (Amazonより)
    裁判所職員採用試験に合格し、家裁調査官に採用された望月大地。
    だが、採用されてから任官するまでの二年間――養成課程研修のあいだ、修習生は家庭調査官補・通称“カンポちゃん”と呼ばれる。
    試験に合格した二人の同期とともに、九州の県庁所在地にある福森家裁に配属された大地は、当初は関係書類の記載や整理を主に行っていたが、今回、はじめて実際の少年事件を扱うことになっていた。
    窃盗を犯した少女。ストーカー事案で逮捕された高校生。一見幸せそうに見えた夫婦。親権を争う父と母のどちらに着いていっていいのかわからない少年。
    心を開かない相談者たちを相手に、彼は真実に辿り着き、手を差し伸べることができるのか――
    彼らの未来のため、悩み、成長する「カンポちゃん」の物語。





    家庭調査官補という仕事も大変なお仕事だなぁとつくづく思いました。
    5話からなる短編集なのですが それぞれのケースにも複雑な人間ドラマがあり 不安を抱え未熟ながらも寄り添う大地の姿が想像出来て 良い家庭調査官になるんじゃないかと期待!
    成長していく大地を見てみたいので 続編があれば良いなぁ...
    ネットカフェを住民票登録出来ることを知り新たな発見

  • 世の中には重い荷物を背負っている人のいかに多いことか。
    窃盗、ストーカー、離婚等の問題の奥に潜む荷物も人それぞれ。

    修習中の家裁調査官補・大地が、問題を抱えた人達に救いの手を差し伸べようと奮闘する物語。
    まだ経験も浅く自分は家裁調査官に向いていないのでは、と一人悩む大地。
    それでも一つ一つの案件に真摯に取り組み、相談者の気持ちに寄り添い、自分の足で丁寧に調査する大地の姿にとても好感が持てた。
    「なにかに傷つき、悩み、その場に立ち止まったまま動けずにいる人が、半歩でもいいから歩き出せる力になりたい」
    大地の強い思いは悩める人の救いになるはず。
    大地の物語は是非シリーズ化してほしい。

  • 柚月さんの本は3冊目。
    佐方検事シリーズを2作読んだあとにこの本を手にしました。

    研修中の家庭裁判所調査官、家裁調査官補のことを調査官たちは親しみをこめて”かんぽちゃん”と呼ぶ。
    望月大地は大学卒業後、九州の福森市で”かんぽちゃん”となる。
    担当する事案に悩みながら、相談者のために一歩ずつ前にすすむ大地。
    こんな調査官に担当してもらったら、相談者も前に進んで行けそうな気がする。
    頑張れ大地~!!

    ”かんぽちゃん”から調査官になった大地の奮闘も見てみたい。
    シリーズ化されるかな…

    • あいさん
      こんばんは(^o^)/

      この作品はたくさんの人に勧められました。
      やはり面白そうですね〜♪
      かんぽちゃんの活躍を私も早く読んでみた...
      こんばんは(^o^)/

      この作品はたくさんの人に勧められました。
      やはり面白そうですね〜♪
      かんぽちゃんの活躍を私も早く読んでみたいです!
      2017/02/03
    • azu-azumyさん
      けいたんさん、こんにちは(*^_^*)

      この本、お勧めの方が多いのですね!
      私も楽しみましたよ~
      ”かんぽちゃん”なかなか良いキャ...
      けいたんさん、こんにちは(*^_^*)

      この本、お勧めの方が多いのですね!
      私も楽しみましたよ~
      ”かんぽちゃん”なかなか良いキャラです。
      また、感想を聞かせてくださいね♪
      2017/02/03
  • ヒトには表と裏がある。隠そうとしていたものが表に現れることで、先に進めることもある。

  • どれも胸にグッとくる話で、読み応えがある。
    心境や言動が繊細に描かれていて、引き込まれる。
    家裁調査官補がかかわる案件は、どれも簡単に答えなど見つからない。
    他人にいきなり本音を語りだす人もいない。
    それでも相手に寄り添い、ベストな道を見つけたいと悩み、模索する姿が、心あたたまる。
    難しくてもいい方向へ進みそうで、読後感はよい。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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