堤清二 罪と業 最後の「告白」

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904948

作品紹介・あらすじ

第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞作。月刊「文藝春秋」の連載『堤清二の「肉声」』に大幅に加筆したもので、セゾングループの総帥だった堤清二氏が死の一年前、父・康次郎氏そして弟の義明氏との関係をじっくり振り返った一族の物語です。 清二氏が、著者の児玉さんに10時間以上も語った堤家の物語は、愛憎と確執に満ちた肉親相食む世界でした。大宅賞の選評で、選考委員の後藤正治氏は「インタビューを重ね、その足跡をたどるなかで、入り組んだ内面を宿した人物像を浮き彫りにしている。読み物として読み応えがあった」とし、奥野修司氏は、「筆力、構成力ともに群を抜いている」と評価しました。 康次郎氏は西武グループの礎を築いた実業家であると同時に、強引な手法で「ピストル堤」の異名をとり、異常な好色でも知られていました。清二氏ら七人の兄弟姉妹の母親だけで四人、そのうち二人とは入籍をしませんでした。関係を持った女性はお手伝いから看護士まで相手選ばず、清二氏の母・操さんの姉妹とも関係を持ちそれを操さんも承知していたといいます。その異常な環境で、清二氏・義明氏兄弟は静かな“狂気”を身の内に育まざるをえませんでした。 フォーブス誌の世界長者番付で世界一位に輝いた義明氏と、セゾン文化で一世を風靡した清二氏は、一転して凋落し、軌を一にするように堤家も衰退の一途を辿ります。 西武王国について書かれた本は数多くありますが、清二氏が初めて明かした一族の内幕は、堤家崩壊の歴史であると同時に、悲しい愛と怨念の物語であり、どうしようもない定めに向き合わなければならなかった堤家の人々の壮大な物語です。

感想・レビュー・書評

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  • 堤清二生前最後のインタヴュー。
    実は、辻井喬の本はほとんど読んだことなくてー
    とは言え。昭和の終わりから東京近郊で生まれ育った身としては、もっぱら、堤清二としての仕事ばかりを見てることになる。
    子供のころ、船橋西武によく連れられ、PARCOのCMや無印良品、サンシャインシティに目を見張り、90年代前半は雑司ヶ谷に通ってて、池袋西武やセゾン美術館、リブロ、LOFTなんかに足繁く立ち寄ってたりしたので、ある意味、青春時代は堤清二/辻井喬の作品にどっぷり漬かってたようなもの。
    彼は企業メセナとか、バブルを象徴するような人物なんだ。
    若い頃は共産党活動してたとか、成金で俗物の父親が大嫌い、その事業と性格も受けついだ異母弟の堤義明のことは徹底的にこき下ろす、などと、語り口は温和なのに、割と精神的武闘派。そして努力する天才の常として、他人が自分ほどに出来ないと、努力が足りないと叱り飛ばす、て、まるで宮崎駿と同じニオイを感じるぞ…?
    天才なのは確かなんだろう…ほとんど潰れかけてた池袋西武を立て直し、ついでにそれまで場末の町だった池袋そのものを繁華街にした。(でも池袋西武、トイレがショボいんだよなあ、隣の池袋東武のゴージャスなトイレと雲泥の差で。) PARCOや無印良品のコンセプトはやっぱりすごい。今となっては、もう、氏の立ち上げた事業はほとんど、他人の手に渡ったり、消えたりしたけれど。PARCOや無印良品なんかのブランド名が辛うじて残るのみ。
    そんな彼が晩年になって、やっぱり父親ラブなのがどーにも。
    その父、堤康次郎についてもかなり紙面が割かれてるけど、これがまた、それこそ「家政婦は見た!」なんかの昭和のドラマに出て来るような実業家のイメージまんまで笑えるくらい。結婚2回、他に愛人数人、妻の弟を愛人と結婚させてデパートの経営まかしたら放漫経営でガタガタに、そこに立て直しのために送り込まれたのが父の鬼っ子である堤清二…面白すぎるだろ、この展開。
    文学者としては、三島由紀夫との交遊についてもちょこっと出て来る。敬愛する作家として三島を挙げ、彼の同人サークルのために制服をあつらえたりと。思想信条は正反対なのにね。
    阪急グループの創業者・小林一三(阪急や宝塚、東宝作った大元だけど、松岡修造の曾祖父ってのが一番通りがいいかしら…)も実業家として尊敬する一人に挙げてるけど、小林もまた若い頃は文学志望だったんだそうで、…もしかしてマンションポエムの源流は彼なのか??(ついでに辻井喬も) ただし、辻井は小林の文学者としての才能は全く認めてないけどな!
    堤清二が、自分の事業の原点である池袋西武を特に愛して、なかでもその本屋のリブロに日参して本を買ってた(そして彼の部下たちはいつでも彼に本の感想訊かれたら答えられなければいけない)とあって、あーもしかしてリブロで私も擦れ違ってたかもねーとふと思ってしまった。

  • 題材のどぎつさの割に親族関係が複雑なんだな程度の感想しかなく輪郭のボヤけた内容という印象。
    ビジネスも私生活も中途半端な浅さの掘り下げなことと堤清二の主観と著者の主観が両方同じようなボリュームで出てくることが主な原因かと思う。
    終始著者の主観ぶっ放しにするか堤清二の言うことを淡々とまとめるかに振り切った方が良かった気がする。
    変に他人が書くより堤清二本人が書いた方が味わい深かったかもしれない。

  • 堤ファミリーという抜群に面白い素材を使いながら内容は…。
    おそらく人間・堤清二にスポットを当てたかったんだろうけど、詩人や小説家として、更に共産党時代の話が薄いので、康次郎や義明への複雑な心境を伝えるに留まっている。序章で「清二を分かりづらくしているのが小説家・辻井喬という存在」とか書いておきながらそこを掘り下げないというのはいただけない。
    最期の最期まで義明を見下した態度はさすがというべきか。天才・堤清二の最期の語録としての価値はあるが、ノンフィクションとしては凡庸な出来。

  • 堤清二のことはほとんど知らなかったが、このような複雑な性格ということが分かったのがよかった

  • 晩年の堤清二氏のインタビュー。
    堤家の関係性に、当時の人間ドラマがある。

  • セゾン関連の本はいくつか読んできましたが、晩年に堤清二本人が語った本音にリアリティーを感じました。

    偉大すぎる父の存在、異母兄弟との複雑な人間関係、いずれも常人には想像を絶するものだったことが伺えます。

    もっとも興味深かったのは、堤清二とは経営者の方向性が似ているようで、まったく性質の異なる小林一三に対する思いが述べられているところです。

    会いたいと思いながら、本人に会わなかったのは、かつて小林一三が手掛けた小説の出来に納得できなかったからだそうです

    確かに作家としても成功したのは堤清二の方ですが、会わなかった理由に意外性を感じました。
    そもそも、会ったところで噛み合わなかったと思いますが。

  • ちょっと堤清二について集中的に読んでみようと思って手始めにこれを。

    なんというか、「堤家の隆盛と崩壊」ストーリーのような感じで、当初知りたいと思っていたこと(堤清二の人となり)とは違っていました。しかし、素の堤清二が父を、異母弟を、堤家自体を、どう見ていたのかを通して、堤清二の人間像が透けて見えるようで面白かったです。

    義明氏をまるで評価していないところは笑ってしまった。

  • 読んでいるときは面白かったのだけど、読み終わったあとで特に何も残らなかった。
    本がつまらなかったというわけではない。相当面白かった。食い入るように読んだし。中身も書き方も、堤清二という人もその生きた時代も全て面白かった。だけど終わってみたら、何かどうでもいいという感じがする。
    なんで? と思ってから、これが彼の生きた時代だったのだと思った。

  • 著者 児玉博氏のインタービュー力は傑出 最近も東芝西田元社長「テヘランから」
    堤清二という希有な事業家であり文化人 両者の併存を成立させたのは父康二郎への愛憎
    能力は自分が圧倒的に上と自負しながら、父が弟義明を後継者とした事への大きな屈折
    そのコンプレックスがセゾン王国を誕生させ、バブルと共に崩壊させてしまった
    悲しすぎるストーリー
    人間の幸せとは何か 考えさせられるというより、こういう人生はご免

    阪急電鉄の小林一三氏☆☆☆ 
     事業欲はずば抜けていた 
     金銭欲は低位においた
    京セラ稲盛和夫氏に相当
     康二郎氏はリクルートの江副浩正
     稲盛氏は江副氏を嫌った


    200502再読
    コロナ対策で日本の本質が問われている
    南原繁を読んで「個の尊重」
    はたと「堤清二」の価値に思い至った
    「セゾン」の構想の大きさに比べると
    本書は「私小説」のような肌触り
    家庭環境の大変さがベースにあるのを再認識した
    それが「業」というもの
    そこは私も理解するところがある
    堤義明の単純さ・スケールは後継者指名だけある
    堤清二は時代を創造 後継者では無く初代ベンチャー

  • 2018年9月18日読了

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