- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163904948
感想・レビュー・書評
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堤清二生前最後のインタヴュー。
実は、辻井喬の本はほとんど読んだことなくてー
とは言え。昭和の終わりから東京近郊で生まれ育った身としては、もっぱら、堤清二としての仕事ばかりを見てることになる。
子供のころ、船橋西武によく連れられ、PARCOのCMや無印良品、サンシャインシティに目を見張り、90年代前半は雑司ヶ谷に通ってて、池袋西武やセゾン美術館、リブロ、LOFTなんかに足繁く立ち寄ってたりしたので、ある意味、青春時代は堤清二/辻井喬の作品にどっぷり漬かってたようなもの。
彼は企業メセナとか、バブルを象徴するような人物なんだ。
若い頃は共産党活動してたとか、成金で俗物の父親が大嫌い、その事業と性格も受けついだ異母弟の堤義明のことは徹底的にこき下ろす、などと、語り口は温和なのに、割と精神的武闘派。そして努力する天才の常として、他人が自分ほどに出来ないと、努力が足りないと叱り飛ばす、て、まるで宮崎駿と同じニオイを感じるぞ…?
天才なのは確かなんだろう…ほとんど潰れかけてた池袋西武を立て直し、ついでにそれまで場末の町だった池袋そのものを繁華街にした。(でも池袋西武、トイレがショボいんだよなあ、隣の池袋東武のゴージャスなトイレと雲泥の差で。) PARCOや無印良品のコンセプトはやっぱりすごい。今となっては、もう、氏の立ち上げた事業はほとんど、他人の手に渡ったり、消えたりしたけれど。PARCOや無印良品なんかのブランド名が辛うじて残るのみ。
そんな彼が晩年になって、やっぱり父親ラブなのがどーにも。
その父、堤康次郎についてもかなり紙面が割かれてるけど、これがまた、それこそ「家政婦は見た!」なんかの昭和のドラマに出て来るような実業家のイメージまんまで笑えるくらい。結婚2回、他に愛人数人、妻の弟を愛人と結婚させてデパートの経営まかしたら放漫経営でガタガタに、そこに立て直しのために送り込まれたのが父の鬼っ子である堤清二…面白すぎるだろ、この展開。
文学者としては、三島由紀夫との交遊についてもちょこっと出て来る。敬愛する作家として三島を挙げ、彼の同人サークルのために制服をあつらえたりと。思想信条は正反対なのにね。
阪急グループの創業者・小林一三(阪急や宝塚、東宝作った大元だけど、松岡修造の曾祖父ってのが一番通りがいいかしら…)も実業家として尊敬する一人に挙げてるけど、小林もまた若い頃は文学志望だったんだそうで、…もしかしてマンションポエムの源流は彼なのか??(ついでに辻井喬も) ただし、辻井は小林の文学者としての才能は全く認めてないけどな!
堤清二が、自分の事業の原点である池袋西武を特に愛して、なかでもその本屋のリブロに日参して本を買ってた(そして彼の部下たちはいつでも彼に本の感想訊かれたら答えられなければいけない)とあって、あーもしかしてリブロで私も擦れ違ってたかもねーとふと思ってしまった。
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堤清二のことはほとんど知らなかったが、このような複雑な性格ということが分かったのがよかった
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晩年の堤清二氏のインタビュー。
堤家の関係性に、当時の人間ドラマがある。 -
セゾン関連の本はいくつか読んできましたが、晩年に堤清二本人が語った本音にリアリティーを感じました。
偉大すぎる父の存在、異母兄弟との複雑な人間関係、いずれも常人には想像を絶するものだったことが伺えます。
もっとも興味深かったのは、堤清二とは経営者の方向性が似ているようで、まったく性質の異なる小林一三に対する思いが述べられているところです。
会いたいと思いながら、本人に会わなかったのは、かつて小林一三が手掛けた小説の出来に納得できなかったからだそうです
確かに作家としても成功したのは堤清二の方ですが、会わなかった理由に意外性を感じました。
そもそも、会ったところで噛み合わなかったと思いますが。 -
ちょっと堤清二について集中的に読んでみようと思って手始めにこれを。
なんというか、「堤家の隆盛と崩壊」ストーリーのような感じで、当初知りたいと思っていたこと(堤清二の人となり)とは違っていました。しかし、素の堤清二が父を、異母弟を、堤家自体を、どう見ていたのかを通して、堤清二の人間像が透けて見えるようで面白かったです。
義明氏をまるで評価していないところは笑ってしまった。 -
自伝と違ってノンフィクション作品は、客観的にその事実を知ることができるので好きです。
堤帝国と言われている西武・セゾングループ。堤兄弟の確執が生んだもの、失われたものが丁寧に書かれています。(大宅壮一ノンフィクション賞受賞だけのことはある!)
西武百貨店も社長交代劇でいろいろありますが、日本のファッションやライフスタイルの一時代を築いてきたのは間違いないので、もう一度面白い仕掛けづくりを期待したいものですね。 -
「不思議、大好き」「おいしい生活」というコピーを始めとしたセゾングループの文化戦略に身を浸しながら価値観を形成してきた世代なので、堤清二が日本人の生活に描いた物語を理解したい、という気持ちをずっと持っています。たまたま先日NHKの「あの人に会いたい」という番組でも、柔らかい淡々とした口調で自らの挑戦と挫折を語る生前の姿が放送されていました。同じ世代の著者によるインタビューを縦糸に構成されている本書で見せる語り口も映像の雰囲気と重なり丁寧な雰囲気なのですが、でも改めて特に強く感じるのは自尊心。例えば義弟、義明に対する気持ちとして屈辱という言葉を著者が投げかけることに対する反応。絶対、認めようとはしません。セゾングループの物語は父が一代で築き上げた西武グループを舞台にした血の繋がらない兄弟の物語であり、それぞれの実母、操と恒子の代理の愛情戦争なのでありました。そのエモーションを経営者という枠の外で発散したのが辻井喬というコインの裏表の文学者としての顔。でも清二の情念というかクレイジーな天才性が発揮されるのはやはり、堤というファミリーネームを背負った時なのだと思います。文学者というもうひとつの顔を持った稀なる経営者ということで認識していましたが、堤清二のクリエイティヴが発揮されるのは政治的動きであり、それは共産党時代から変わらぬものであり、さらには衆議院議長の父から受け継いだものであるという宿命。堤清二は堤「政治」なのだという感覚を得ました。
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西武・セゾンの堤家をテーマにしたノンフィクション。
20年前ならともかく、今更、堤家かと思っていたが、大宅賞受賞作ということで読んでみた。
清二氏へのインタビューを軸にし、愛憎、因縁が交わる康次郎氏からの歴史をたどる。
作家兼経営者で、ある種天才的な清二氏の語り口、心の揺れを巧みに綴る著者の力量は、さすが大宅賞受賞作。 -
一気に読んだ。
まるで映画やドラマのようなエキセントリックな登場人物とストーリー展開。これがフィクションではないのだから、驚きだ。
誠二氏へのインタビューのみで綴られているので、そういう意味では他の堤家の人物に対してフェアではなく、バイアスがかかっているとは思う。それから、本書には著者の主観も含まれている。そういったものがなるべく排除された文献があれば読んでみたい。 -
セゾングループの功績は大きいんだけど。ちょっと構成が雑かな。ハービーが出てくるとはびっくり。