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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784163905013
作品紹介・あらすじ
逝去直前まで推敲を重ねた津島文学の到達点
顔も知らぬ父、15歳で早世した兄。絵美子と母を気遣う、大勢のおじ・おばたち。大家族の物語はこの国の未来を照射する。遺作長篇。
みんなの感想まとめ
家族の絆や個々の心情が深く描かれた物語は、主人公の絵美子が知的障害を持つ兄を失った後の成長を通じて、多様な人間関係の複雑さを浮き彫りにします。特に、絵美子が兄の死を受け入れ、自らの人生を歩む決意をする...
感想・レビュー・書評
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最後の職場で、僕はしばしば彼らのお父さんやお母さんと、狭苦しい面接室で対面した。 その頃の僕には、あの時のお父さんやお母さんの気持ちは全くと言っていいほど分かっていなかった。 この本を読んで、少しだけそれに近づけたような気がする。
主人公絵美子の知的障害を持つ兄耕一郎が、肺炎のため15歳で亡くなる。 『ところが、棺に入れられた耕一郎を火葬場に運ぶとき、眠気のなかで絵美子は急に気がついた。これでこうちゃんはおとなになれなくなったんだ、そして、わたしはもうこうちゃんのことを考えなくてもよくなった。わたしはわたしで勝手におとなになれるんだ。それは絵美子にとって、まったく予想していなかった、新しい時間だった。』 この文章に遭遇したとき、反射的にもう一つの文章が脳裏に浮かんだ。
『それから三人そろって家を出た。もう何か月もしたことがなかったことだ。そして電車で郊外へ出かけた。車内は彼ら親子だけで、あたたかい陽射しがさしこんでいた。三人はのんびりと座席にもたれ、将来の見通しを話し合った。よく考えると、現状はさほどひどいものでもないのである。』 カフカの「変身」で、グレーゴルが死んだ後の家族の様子を描いた文章だ。 人のこころの悲しい、だが真実の動きだろう。 あの事件以来、僕の中にわだかまっていたものが、ほんの少しだけ腑に落ちたような気がした。
作者には、もっと書きたいことが有り余るほどあったに違いない。 だが、彼女には時間が残されていなかった。 この本は、彼女が僕らに残してくれた遺書だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
主人公一家とヒトラー・ユーゲントとの時空交差。「差別」を定位するまでは良かったが,その後の展開はうまく処理し切れていない気が。
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難の多い小説だった。序盤は10行に1人の勢いで増え続ける登場人物の数に圧倒され、途中からは過剰な時系列シャッフルに悩まされた。それがことさら効果的だったかというと疑問符がつく。
もっと端的にまとめることもできた作品だし、さもなければもっと内容を充実させて、大長編にすることもできたのではないかと思う。どちらでもいいのに、どちらでもない。なんともバランスが悪かった。
ただそれも、この作品が病苦を押して書かれた絶筆だとなれば仕方がないのかもしれない。作家の問題意識の置きどころとか、個々の登場人物の心情の書き込み、といった部分にはスムーズについてゆくことができたから、それで粗が多かったわりには読後感がいいんだろう。
この作品をことさらお薦めはしないけど、津島佑子さんのほかの作品は読んでみたくなった。思いがけない掘り出し物があってもおかしくはない。 -
差別をテーマに人間模様を描いたドラマ。
記憶と事実と夢と、いくつもの物語が折り重なって、絡み合いながら進みます。
テーマの普遍性とプロットはノーベル文学賞的です。著者は亡くなる直前まで、表現をさらに磨きたかったのでしょうか。 -
差別はどの時代にもあるというような描写があった。だから差別はあってしょうがないと諦めるのでなく、どうするかを考え続けなければならないのだけれど、簡単にその回答が出るわけでもなく、本当に難しい問題なのだと、この著書から改めて感じる。 タイトルがズシンとくる。
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私たちは互いに狩り合っていたのだ。無意識のうちに。
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絵美子にはダウン症の兄耕一郎がいたが、彼は15歳で亡くなる。それ以前に父遼一郎も亡くなっていて、彼女には父の記憶がない。
思い出すのは、いとこが耳元でささやいた「フテキカクシャ」「ジヒシ」などの言葉。その言葉だけがぼんやりとわき出て、絵美子はその言葉がどういう意味で発せられたのか、なんだったのか知りたいと願う。
役に立たないものを切り捨てることをすすめて繁栄をめざし、敗戦したドイツ。そのあとを追うような日本は、考えること、止めること、をせずにすすめる一方。
無自覚のまま差別している恐怖。
すべては無自覚のまますぎているのではないかという恐怖。
すごい遺作を読んでしまって、困っている。 -
津島さんの遺作.15才で亡くなった障害者の兄をずっと忘れられない絵美子.子供の頃に囁かれた「フテキカクシャ」という言葉にずっと捕らえられている.大勢の親戚縁者や行ったり来たりする時代や視点,ヒットラーユーゲント,原発,アメリカと様々な差別も含めて,とても雄大な物語となっていて,遺作となってしまったのが本当に残念だ.
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こどもの頃に耳元で囁かれた言葉。フテキカクシャ、アンラクシ、ジヒシ‥誰が、どうして、そんなことばを言ったのか?こどもながらに「口にしてはいけないことば」の気がするが、確かめられない絵美子は、そのまま差別に対して無知で無自覚な「わたしたち」の姿でもある。
あとがきで、本書が津島佑子さんの遺作だと知る。
娘の香以さんが「なんとかして差別を克服しなくてはならないと思うのだが、自覚すらされない感情をどうしたら乗り越えられるのか?」と問いかけているのは、母娘の間で繰り返されていた会話なのかもしれない。
ヒトラー・ユーゲントのこどもたちが担わされた役割を考えると、熱狂することへの警戒、ひとりひとりの責任の重さを痛感する。 -
【逝去直前まで推敲を重ねた津島文学の到達点】顔も知らぬ父、15歳で早世した兄。絵美子と母を気遣う、大勢のおじ・おばたち。大家族の物語はこの国の未来を照射する。遺作長篇。
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著者プロフィール
津島佑子の作品
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