こちら文学少女になります

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 138
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905273

感想・レビュー・書評

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  • おもしろかった! 一ページに12回「童貞」という言葉が出てくる。
    主人公の語りで話が進みますが、この語り口が軽妙かつ笑いに満ちている。
    話中に出てくる漫画家・荒又が自作について語るシーンは圧巻。荒又は童貞の男の子の漫画を描いており、本人も童貞。彼が「童貞だから自分は漫画が描けるのだ」と力説するシーンが、冒頭で挙げたシーン。大変良かった。

    希望していた出版社に入社したものの、得意な文芸ではなく、週刊漫画雑誌の編集部に行くことになった主人公の女性・山田。
    大御所の漫画家・柳沼の担当を引き継いだが「素直な感想を言え」と言われてメタメタにけなしてしまい、漫画家が筆を折ると言い出すなど、初めからトラブル連発。
    そもそも山田は漫画が嫌い。グラビアの載った週刊漫画雑誌など、自分の好きな文学作品の前ではゴミみたいな存在だと思っている。
    同僚編集者はナチュラルにセクハラしてくる。
    同期入社の男性社員・大沢は漫画希望なのに文芸に行き、ファンだった作家を担当してて羨ましい。
    大澤の仲介でその作家と知り合い、さらに彼の本の装丁を手掛けていた茂田井という女性画家と仲良くなった。

    そんな中、山田は今井コウタという漫画家の担当をすることになった。今井は週刊漫画雑誌を支えるヒットメーカーだが、間にエージェントの江上を挟んでやり取りしている。連載中の「キヨの開く箱」という漫画は、完璧な原稿のでそのまま載せており、山田が関わるようなことはなく、素顔は謎。
    今井コウタの作品と関わるようになり、「キヨの開く箱」を読んで、ある日山田の前に、漫画の主人公・キヨが抜け出してくる。
    キヨはそのまま山田に話し掛けてくるようになり、奇妙な生活が始まる。

    さらに、セクハラ同僚・平井が担当していた漫画家が「担当を変えてくれ」と言い出し、これも山田が担当することになる。
    この漫画家・荒又は、童貞が主人公のお色気漫画を描いていた。本人も童貞で、それが売り。元担当の平井は荒又の漫画にびしばし駄目出しをしていた。山田が担当となり、顔を合わせると、女性に面識のない荒又は面食らった様子。それでも一緒に漫画をすすめていくうちに、どうも荒又が山田に惚れてしまった模様。
    山田は荒又にいろいろな提案をし、荒又もそれに応えて原稿を仕上げるが、何故か読者が離れていく。
    山田は同期の大沢の話などから、荒又の漫画が平井の指示の下、完璧なバランスでウケていたと知る。荒又に納得してもらったうえで、平井が担当に戻る。

    山田は柳沼の頼みもあり、彼の新しい原稿を見ていた。いままでのマンネリ化した作風を捨てて、一から新しい漫画を作りたいという柳沼に、山田は二人三脚で寄り添う。
    しかし二人でつくった新しい漫画は、編集会議を通らず没になる。


    女性編集者が、もろもろのことを乗り越えて成長していくというのがストーリーの根幹。
    今井コウタが茂田井だったという謎が含まれていたりする。
    そこへ山田の過去の記憶(小学校時代、友達との交流で漫画が嫌いになった)や、内面を写したキヨが絡み、いい味を出している。キヨは最後、過去を咀嚼した山田の前から消える。

  • 面白いなぁと思う物語はどのキャラクターも生き生きその風情が目に浮かぶ動きや感情を描写されている。これもそう。直前に「ヌードが分かれば美術が分かる」を読んで、次にこの「エロと向き合う」エピソードというのも面白かった要因か。女の裸は男にとって云々。主人公が堂々と下ネタも口に出せてしまう辺りは男性作家所以か。

  • 小嶋陽太郎らしいというか、さすが楽しませてくれるエンタメお仕事小説。
    可愛くはないがブスではない(自称)、巨乳(自他ともに認める)の大卒新人文学少女が、よりによってコミック誌の編集に配属される。

    そっからはもう、ジェットコースター。大御所漫画家に留めを刺すわ、覆面作家の謎を暴くは、チラエロコミック作家に惚れられるわ…。

    ちょっとした謎解きもあったり、意外なドンデン返しもあったり、退屈させない展開で、これぞエンタメ。肩肘張らずに楽しめる快作。

    しかし、コミック界出版社ってとこは、ある意味変態だったりパワハラだったりの温床やな、小説だから笑ってられるが、電通や朝日新聞のブラックぶり観てると現実にこんなんやってると思うと、ちょっと胸が痛む

  • マンガをまったく読まない文学少女が新卒で入った出版社の青年マンガ誌の編集者になるお話。とりあえずひとつ思うのは、このタイトルだとマンガ編集部が舞台のお仕事ものであることが伝わってこないので損をしているのではないかということ。内容はこんなもんかなと思う。

    装幀がいいですね。女の子(西村ツチカさんのイラスト、かわいい)の部分を白ヌキではなくわざわざ白インクを載せることで白色をうっすらさせているのは、キヨというキャラクターの特性をふまえたものなのだろう。

  • マンガは読まない文学少女が念願かなって出版社に就職。ところが、配属先はマンガ雑誌の編集部。その上唯一の女子。文芸誌の編集にあこがれながらも、マンガ雑誌の編集に励む。

    お仕事ものと思っていたのが、ちょっと違ったかなぁ?

  • 青年漫画誌に配属された新人編集者の成長物語。
    なんか不思議な感じも有るが楽し。2018.1.17

  • 主人公の出だしの冷めた感じからは、この熱さは想像できなかったな。
    伏線も謎もあったりで一気読み。
    好きだな、熱のあるお仕事小説!

  • 漫画を読まない文学少女が配属されたのは青年漫画誌。ちょっとファンタジーありのお仕事小説。大御所先生との関係が面白かった。

  • 小説を愛し、文芸誌を希望していたのに、配属先は青年漫画誌。しかもいきなり大御所を怒らせてしまい……。
    誰もかれも口が悪く、激しいセリフの応酬と、青年誌ならではの濃さで、テンポよく楽しめる。自分で考えたり、努力しない前半は共感しづらいが、後半はよく、じーんとくるところも。
    『重版出来!』と『校閲ガール』を連想させる。

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著者プロフィール

1991年長野県生まれ。信州大学人文学部中退。2014年『気障でけっこうです』で第16回ボイルドエッグズ新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『今夜、きみは火星にもどる』『おとめの流儀。』『こちら文学少女になります』『ぼくのとなりにきみ』『ぼくらはその日まで』『悲しい話は終わりにしよう』『放課後ひとり同盟』『友情だねって感動してよ』がある。

「2019年 『行きたくない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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