十二人の死にたい子どもたち

著者 :
  • 文藝春秋
3.26
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本棚登録 : 1917
感想 : 296
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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905419

作品紹介・あらすじ

廃業した病院にやってくる、十二人の子どもたち。建物に入り、金庫をあけると、中には1から12までの数字が並べられている。この場へ集う十二人は、一人ずつこの数字を手にとり、「集いの場」へおもむく決まりだった。
初対面同士の子どもたちの目的は、みなで安楽死をすること。十二人が集まり、すんなり「実行」できるはずだった。しかし、「集いの場」に用意されていたベッドには、すでに一人の少年が横たわっていた――。
彼は一体誰なのか。自殺か、他殺か。このまま「実行」してもよいのか。この集いの原則「全員一致」にのっとり、子どもたちは多数決を取る。不測の事態を前に、議論し、互いを観察し、状況から謎を推理していく。彼らが辿り着く結論は。そして、この集いの本当の目的は――。

性格も価値観も育った環境も違う十二人がぶつけ合う、それぞれの死にたい理由。俊英・冲方丁が描く、思春期の煌めきと切なさが詰まった傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 2020/12/19読了
    #このミス作品57冊目

    廃業した病院に12人の子どもが集う。
    しかし集まった部屋のベッドには
    13人目の見知らぬ少年が横たわる。
    簡単に死を選ぶ子どもたちは
    悩みや思いをぶつける相手に不足
    しているんだろうなあ。

  • 安楽死をするために集いに集まった12人の子。集まった場所に、すでに横たわっている子がいたことから、話し合いが始まる。それぞれの思惑の中、推理とともに、各自の理由も明らかになっていく。
    節の変わり目で、視点となる子が変わり、その内面が語られたり、他の子への見方も視点が変えられ、おかしな点を気づかせてくれたりする。それぞれがどういった意図や背景でそう考えるのかという点も類推していくのはおもしろい。なので、自分的には、すでに横たわっていた子=ゼロ番を連れてきたのが誰かという推理視点より、それぞれの心象を描いていく話という視点で読み進めた。
    各自の心境はうまく配置されていて、話はわかるけど、それほどではないとか、誤解に基づくとか、理解し難いとか、それぞれのパターンがある。繰り返される話し合いの中で、それぞれ心情が変わって行く感じがあるが、そこは心情ではなく、主に行為や他の人へのセリフだったりしていると思う。
    なぜ横たわっていたかという謎解きは、時間軸なども絡み、ちょっと理解がおいつかないところがあったが、それは説明不足ではなく、自分の理解力でしょう。
    オチのあたりの心情はもう少し詳しくてもいいかなと思った。オチに向かっていく雰囲気はよく出ているのですが。
    全体としてどう展開していくか興味を持って読んでいくことができて、よかったです。

  • タイトルからして、なんだかオドロオドロしいものだと
    思い、どんな話かなーとワクワクしながら読んだよー!!

    自殺願望のある12人の子どもたち。
    それぞれ、ネットでテストを受けて、受かった人が
    廃屋となった病院に集まる。
    12人だけのはずなのに、なぜか先に一人が死んでいて…。
    いったいこの人は誰なのか…。
    そして、誰が連れてきたのか…。
    死ぬ前に、それぞれが考え始める。

    12人も登場人物がいるから、分かりにくいかなーと
    思ったけど、それぞれの視点で話をすすめてくれて、
    結果、私は分かりやすかったなぁー。

    個人的には、もっといやーーな感じで終わるのを
    期待してしまった…。
    なんか、私的にはハッピーエンドに思えたよ。
    いや、ハッピーではないかもしれないけどさぁー。
    だから、途中までは☆5なんだけど、
    ☆4にしましたー。

    んんー、映画を見てみたいな!!
    映像になったときに、どんな感じか見てみたいー。

  • 結末が気になり一気に読みました。
    本で読むより映画を見た方が分かりやすいと思います。

  • 終わりが良かった。
    色んな環境の下で、色んなことを考えるのが当たり前だけれども、受け入れる事が出来れば、前を向けると思いました。

  • この方の本は初読みです!


    どういう展開になっていくのかドキドキしながら読んでいきました。ちょっと長くないか?って思う所もあったが最後まで読めた(^^) 1人ずつにスポットが当たる感じもまぁ良かった!


    バットエンドになったら嫌だなぁって思ってたけど、胸くそ悪く終わったわけじゃなかったので良かったかな?生きているってことを実感してね〜って思った>_<

  • 集団自殺するために集まった子どもたちりいろんなタイプがいて、参加者と一緒にイライラしながら読み進めたけど、ラストに向けてスルスルと糸が解けていく感じが気持ちいい。
    子どもが死にたくなるような社会への諦めと希望が両方ある。

  • 作者自身がテレビで語っていたように、物語の最後に希望があった(そのコメントが無ければ、手に取ってなかった)

    物語が限定された空間で繰り広げられてるので、物凄い閉塞感。途中まで読んで眠ると、毎度悪夢を見てしまい困るほど。
    ある出来事の検証の為に瞬間的に外に出たり屋上に出たりする度に、私もメンバーと一緒に新鮮な空気を吸い込んでいる気分だった。その分、ラストの開放感、爽快感が際立つ。そして読後はグッスリ寝られた。
    予想以上に物語に併せて追体験してしまった、、それだけ私には影響力が強かった。

    集いに集まったメンバーひとりひとりが、これまで自分の本当の気持ちをぶつける場が無く、まさに自分自身の心の中、という閉塞的な空間でグルグル思考し続けた結果が自殺。こころが痛い。

    ただ皮肉にも、最期の場で、集いに参加した個々の理由を聴いてる内に、それこそひとりひとりの心が動いていくのは本当に面白い。最初はお互いの理由は否定しない、尊重すべき、というより、理由はどうでもいいから早く実行したい、という意見が大半だった。ただ、ひとは話を聴くとどうしても自分の意見を言いたくなるもの。自分の理由こそ正当性が高い、と思ってるからだろう。自分と相容れない理由の人と一緒に"実行"したくない、なんて考えてしまうのもわからなくない。

    でもそういった、対立、衝突をも含んだ、心を交わす場こそ大切なのでは。相手の意見を尊重する、否定しちゃダメ、というアサーティブな姿勢より、まず議論の場を作る、議論を続けることが大切なのでは、と思えた。
    だってこの話では、それでみんなのこころが動いてるから。

    ネットのほうが自由に意見が言えるようで、受け取る側の理解が表層的だったり、意図しないポイントで非難されたりと、閉塞感あるんじゃないかな。この集いに参加したメンバーの年代考えると、ネットが普及して交際範囲が増えてるようで、生の付き合いしにくくなってるのかと少し切なくなる。

    自分の気持ちが受け入れられなくてもいい、批判されてもいい、吐きだす場が無いことが、人にとって一番辛いことなのかもしれない。

    最後、シンジロウを心の頼りに、みんなが帰っていくのを見て、心が温かくなった。そして、管理人サトシとアンリの会話が心に残る。サトシも絶対に"実行したくない"訳でもないのがミソ。アンリの対決宣言、でもいいよね。議論し尽くすことに意味がある。自分の考えを見直す大切な時間。
    自殺はダメ、与えられた命を自から投げ出すのはダメ、なんてモラルを言われても、死に取り憑かれた人には響かないだろうから。

    人と話すこと、わかってもらえなくてもそういう場があること、それがどんなに大切か、深く理解できた気がする一冊だった。
    理解できなくてもいい。非難しても否定してもいい。無関心が一番の罪だ。

  • 登場人物が多くて背景がつかみにくく、読み始めから読むことを断念したくなってしまいました。残念ですが入り込めませんでした。

  • 久しぶりの読書、初の冲方丁作品。
    初めは登場人物が多く把握が大変だったが、段々とキャラが立って来るので、中盤以降は難無く読めた。
    タイトルはこんなだが、結末はなんか救いのある感じで良かった。救いの無い女性もいたが。。。
    サトシは皆を思いとどまらせるために会を開いてるのかと思ったが、そうじゃないんやなぁ。
    それぞれの死にたくなる気持ちを抱えた彼らの話を聞いていると、いたたまれなくなる。
    でも似たような境遇の子って少なからずいるんだろうと思う、たまたま私が出会ってきてないと言うだけで。
    そんな子たちに今後もし出会ったら、私はちゃんと手を差し伸べられるだろうか。

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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