十二人の死にたい子どもたち

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 175
  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905419

作品紹介・あらすじ

廃業した病院にやってくる、十二人の子どもたち。建物に入り、金庫をあけると、中には1から12までの数字が並べられている。この場へ集う十二人は、一人ずつこの数字を手にとり、「集いの場」へおもむく決まりだった。
初対面同士の子どもたちの目的は、みなで安楽死をすること。十二人が集まり、すんなり「実行」できるはずだった。しかし、「集いの場」に用意されていたベッドには、すでに一人の少年が横たわっていた――。
彼は一体誰なのか。自殺か、他殺か。このまま「実行」してもよいのか。この集いの原則「全員一致」にのっとり、子どもたちは多数決を取る。不測の事態を前に、議論し、互いを観察し、状況から謎を推理していく。彼らが辿り着く結論は。そして、この集いの本当の目的は――。

性格も価値観も育った環境も違う十二人がぶつけ合う、それぞれの死にたい理由。俊英・冲方丁が描く、思春期の煌めきと切なさが詰まった傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 2016年下半期直木賞候補作品(読了時)
    廃院した病院に集まってきた十二人の子どもたち。彼らの目的は、「集いの場」で集団自殺すること。ところが用意されたベッドの1つに、既に子どもが横たわっていた。彼は他殺と考えられる。自分たちはこのまま自殺をするべきか、犯人を捜すべきか?子どもたちは議論を続けるが、果たして結論は・・・
    犯人探しをしながら互いの胸のうちや生活環境などが明らかになる。自ら死を選ぶ理由はそれぞれだが、そこにどこまで他人が介入できるのか?ミステリーとなっているものの安楽死など、生命の倫理観を問いかける作品。

  • 作者自身がテレビで語っていたように、物語の最後に希望があった(そのコメントが無ければ、手に取ってなかった)

    物語が限定された空間で繰り広げられてるので、物凄い閉塞感。途中まで読んで眠ると、毎度悪夢を見てしまい困るほど。
    ある出来事の検証の為に瞬間的に外に出たり屋上に出たりする度に、私もメンバーと一緒に新鮮な空気を吸い込んでいる気分だった。その分、ラストの開放感、爽快感が際立つ。そして読後はグッスリ寝られた。
    予想以上に物語に併せて追体験してしまった、、それだけ私には影響力が強かった。

    集いに集まったメンバーひとりひとりが、これまで自分の本当の気持ちをぶつける場が無く、まさに自分自身の心の中、という閉塞的な空間でグルグル思考し続けた結果が自殺。こころが痛い。

    ただ皮肉にも、最期の場で、集いに参加した個々の理由を聴いてる内に、それこそひとりひとりの心が動いていくのは本当に面白い。最初はお互いの理由は否定しない、尊重すべき、というより、理由はどうでもいいから早く実行したい、という意見が大半だった。ただ、ひとは話を聴くとどうしても自分の意見を言いたくなるもの。自分の理由こそ正当性が高い、と思ってるからだろう。自分と相容れない理由の人と一緒に"実行"したくない、なんて考えてしまうのもわからなくない。

    でもそういった、対立、衝突をも含んだ、心を交わす場こそ大切なのでは。相手の意見を尊重する、否定しちゃダメ、というアサーティブな姿勢より、まず議論の場を作る、議論を続けることが大切なのでは、と思えた。
    だってこの話では、それでみんなのこころが動いてるから。

    ネットのほうが自由に意見が言えるようで、受け取る側の理解が表層的だったり、意図しないポイントで非難されたりと、閉塞感あるんじゃないかな。この集いに参加したメンバーの年代考えると、ネットが普及して交際範囲が増えてるようで、生の付き合いしにくくなってるのかと少し切なくなる。

    自分の気持ちが受け入れられなくてもいい、批判されてもいい、吐きだす場が無いことが、人にとって一番辛いことなのかもしれない。

    最後、シンジロウを心の頼りに、みんなが帰っていくのを見て、心が温かくなった。そして、管理人サトシとアンリの会話が心に残る。サトシも絶対に"実行したくない"訳でもないのがミソ。アンリの対決宣言、でもいいよね。議論し尽くすことに意味がある。自分の考えを見直す大切な時間。
    自殺はダメ、与えられた命を自から投げ出すのはダメ、なんてモラルを言われても、死に取り憑かれた人には響かないだろうから。

    人と話すこと、わかってもらえなくてもそういう場があること、それがどんなに大切か、深く理解できた気がする一冊だった。
    理解できなくてもいい。非難しても否定してもいい。無関心が一番の罪だ。

  • 少し前ではありますが、「王様のブランチ」で紹介されていました。
    タイトルからもわかる通り、「十二人の怒れる男」のパロディです。

    「大きな決断(=自殺)」をするために集まった12人の子どもたち。集合場所では既に1人が死んでおり、"管理人"が先に旅立ったのだと判断して、準備にかかろうとした11人の子どもたちの前に、13人目が現れます。
    イレギュラーな事態を無視して当初の目的を達成しようとする雰囲気の中、1人が異議を唱えます。このまま疑問を抱えて死ぬのは嫌だ、と。
    賛成11、反対1から始まった「話し合い」。

    最初からベッドに寝ている、いわば「0番目」の子どもは誰なのか、どのようにこの会場へやってきたのか。

    謎を解き明かすために話し合い、採決を行っていきますが時間をかける度にその結果は変動して……。


    ストーリーも、それぞれの登場人物の心理描写も、謎解きの展開も、物足りない印象でした。
    強硬に実行を主張する人達の動機も理解しにくかったですし、互いにさらけ出し合うというほど感情的になるでもなく、かと言って論理的な議論ができるわけでもなく、延々と話し合いの場面が描かれ続けるのも冗長であったように思います。

  • 昔見た映画「12人の優しい日本人」を
    思い出してしまった。(展開が同じ)

    なるほど、死にたい子どもが集まって
    議論するときっとこういう結末になんだろうね。
    基本、人間生きていたいものだと信じたいし
    そういう力を持っていると思う。

  • 自分の心の中身、痛み苦しみは自分にしかわからない。他人から見て、そんなことで...と大袈裟に感じることが、当人にとっては死にたい理由になるほどのことでした。病院の廃墟、ゼロ番の少年、殺人...いつの間にか彼等は謎を解くこと、他の人の痛みを感じることを知ります。死ぬ為に集ってきた、それだけ。だけれど議論を重ねるうち、彼等は死ぬことではなく生きるということを考えるようになっていったのだと思います。少年少女の苦悩はこれで終わりでなく、この先も続くのでしょう。それでもあの日、その足が生きる道を歩いて行ったこと、忘れないのだと思います。

  • よくできた心理劇を見たような読後感。

  • 『「うーん、どうしてそうなるかな」
    ノブオは首をかしげ、困惑と呆れ顔を半々にしたような笑みを浮かべてそこら辺の宙に目を向けた。本気で反論する気もなく、どこか面白がっている、というような態度だ。
    その方が変に正面切って違うと叫ぶより、よっぽど効果があることをノブオは知っていた。質問そのものの価値を疑う態度。おかしな質問をした相手の理性や正気や頭の出来を疑いたいところだが、かといって馬鹿にしたいわけじゃないので、それなりに気を遣わなければならないことに困ってしまっている、という優越的な雰囲気をまとおうとしていた。』

    「みんなに夢とか愛とか届ける役目を捨てないで!」
    「これ以上、私に下らない幻想を押しつけないで!」

    「否定する人に逆に訊きたいわ。どんな理由があれば、こうした選択が肯定されるのかしらって。重要なのは、選んだという事実なのよ。そしてここでもっとも重要なのは、全員がそれぞれ異なる理由を持ちながら、一つの選択をしたということよ」

    『差別はいけないとか、みんな仲良くすべきだといった下らない建前は、人間の正直な嫌悪感というものの前では、いつだって無力なのだから。』

    『それはメイコが自ら獲得した人生訓というようなものではなく、単に悲惨な家庭生活によって刻み込まれたものだろうと容易に想像がつく。だからこそ救いがない。奪い取ろうとすればするほど自他を貶めることになるし、そもそもその椅子にどんな価値があるのかと問うたところでメイコには何を言われているのかもわからないだろう。親の行動原理を模倣しているだけで自分が何をしているのかも理解していない。見ていて不愉快なほど哀れだ。』

  • それなりに楽しめたけど、謎自体がどうでもいいというか、謎のための謎であり、パズルめいた面白さ以上のものは僕には感じにくかった。

  • 謎解き部分がちょっとわかりにくかったけど、するすると読めた。面白い。自殺の動機については、理解できたりナニ言ってるんだコイツは、ってのもあったりで。皆それぞれ病んでるなぁ、っていう。でもなぜか憂鬱にはならない。これだけ議論されながら、途中まで、それでも最後は実行するんじゃないか、と思わされた。最期は社会や大義のためなんかではなく、自分の死を死にたい(ブルハ)ものです。

  • これは、命の議論、なのかな。

    名作「十二人の怒れる男」へのオマージュ作品であろう本作も、きっちりそのメソッドに沿った密室議論もの。ただ、モチーフは法廷ものではなく、思春期の自殺志願者たちが遭遇した思わぬ死体を巡るミステリーだった。

    予定調和から外れていく事態を、登場人物たちのキャラ性を打ち出しつつ、会話劇によって流転させていく構成はやはり面白く、特に各々の自殺への動機が語られる箇所からは感慨深い。こうして生まれる絆的なものもあるんだろうなぁ。

    ミステリーの解決はワシには難しかったが、群像劇として楽しめた。

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プロフィール

冲方丁(うぶかたとう)。1977年、岐阜県生まれ。4歳から9歳までシンガポール、10歳から14歳までネパールで過ごす。早稲田大学第一文学部中退。小説のみならずメディアを限定せず幅広く活動を展開する。
『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、北東文芸賞を受賞し、第143回直木賞にノミネートされた。『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。

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