賢者の石、売ります

  • 文藝春秋 (2016年11月22日発売)
3.38
  • (10)
  • (32)
  • (50)
  • (9)
  • (2)
本棚登録 : 319
感想 : 52
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784163905600

みんなの感想まとめ

科学の正しさを信じる青年の成長を描いた物語は、主人公の賢児が孤立しながらも人との関わりを見つめ直す姿を追います。美容家電の商品企画部に異動した賢児は、似非科学に大金をつぎ込む家族との対立や、職場での孤...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 似非科学を嫌う賢児の異動先は、よりにもよって美容家電の商品企画部で……。

    似非科学に大金をつぎ込む母と姉はもちろん、そういう人間を〈未開人〉と呼び、科学の正しさのみを信じて他人の心を顧みない主人公。
    どちらも最初は共感しづらかった。

    歩み寄れるところはないのではという状況だったが、難しい現実の中、少しずつ変わっていくラストに、ぐっときた。

  • 疑似科学をテーマに科学の魅力と、科学の現実、人の騙されやすさを描いている。
    賢児の物の言い方は確かに人のことを考えない、理論や理屈ばかりの言い方だけれど私からすると、譲と同じで言っていることは正しいので何をそこまで虐げられているのだろうという印象を受けた。
    子どものころからきっと小難しいことを話し、子どもらしくない、可愛らしくないガキ、だったにせよ、お母さんや姉・美空の態度はさすがに納得のいかないものがある。(姉として彼氏から弟を守ったところは安心した)
    なんで子どもがここまでこういう行動をするのか、ということを寄り添って考えられてないあたりが思慮浅い。
    私もどちらかというと科学的な話は好きだし、効きもしない健康グッズや美容グッズを盲信している人はなんだかなぁと思う。
    理系の友人も言っていたけれど水素水だとか。
    ただ、宗教と同じで何かを信じたい、すがりたいという気持ちを否定しようとは思わないので賢児のように疑似科学根絶!とまでは言わないけれど。
    助産院のシーンのミルク・牛乳は飲ませないという話は以前ネットで読んだことがあり、賢児ではないけれど頭がくらくらしたことがあったので覚えていた。
    あれで牛の遺伝子が感染るというなら、牛乳好きの私はとっくの昔に牛にでもなっていると思う。
    賢児の「未開人」という言葉を見て少し前にネットで話題になっていた自然派ママを思い出した。冷静な人たちは「自然派ママじゃなくて、ジャングルママとか野生ママなんじゃないの?」という声が多く、そういう意味では賢児の言う「未開人」という言葉もしっくりくる笑

    美容も出産も健康も、あっていそうで間違えたトンデモな情報があふれている。
    情報がたくさん入る今だからこういうあり得ない話も飛び交うのかもしれない。
    情報を見極めるということは簡単なようでいて難しい。
    賢児や譲以外の登場人物がだいたい疑似科学という宗教にハマってしまっていたように、ある意味では賢児も科学という宗教にハマっていると考えられなくもないとふと思った。

    全ては家族を守りたいという賢児の小さなころからの想いでここまで来ているのに、大事なことは言葉が足らず、辛辣な言葉ばかりが多いので家族にはその想いがなかなか伝わっていないところが切ない。
    美空が途中ではっと気が付くシーンがあったけれど、まだ部分的の様な気がして、この先に賢児の想いが伝わる日が来ればいいなと思う。

  • 科学の正しさが人を幸せにする…。大手電器
    メーカーに勤める科学マニアの羽嶋賢児は、
    その信念ゆえに会社や家庭で孤立を深めるが…。
    人間関係に不器用な青年の成長物語。

  • +++
    科学の正しさが人を幸せにする。その信念ゆえに、賢児は会社や家庭で孤立を深めるが……。人間関係に不器用な青年の成長物語。
    +++

    科学を愛する少年だった賢児は、親友の譲と科学館に入り浸り、夢を語った。科学者になることにあこがれたが、現実はなかなか思い通りにならず、「商人」になる。だが、世の中には似非科学に騙され、それを利用するような似非科学商品を作って売る人がいる。そんな部署に異動させられ、似非科学製品を排除することに心を傾けるようになる。当然会社では変人扱いであり、孤立することになる。家に帰れば、未開人の代表のような姉の美空にいらいらさせられ、母との関係もうまくいかない。科学とは、正義とは、さらには人との関わりに大切なものとは何かを考えさせられる。科学絶対主義に凝り固まっていた賢児の視野がほんの少し広がって、これからの行動の仕方に変化がありそうな兆しが見えて、応援したくなる。数年後の賢児を見てみたいと思わされる一冊である。

  • 似非科学を嫌悪する弟とパワーストーンのお店を繁盛させてる姉。
    なんだかんだ姉弟仲が良くていいなぁ。

  •  人間は夢を持つ。そしてその大小に関わらずそれを叶えたいと誰もが願う。
     ただ、夢の成就に向けたアプローチは人によって異なるということは確かです。

     「マイナスイオン」「パワーストーン」などのような荒唐無稽なものを信じることで、気休めの希望に縋る者もいれば、科学的な根拠に裏打ちされたもののみを信じ、窮屈な希望を追求する者もいるでしょう。

     主人公の賢児は、後者の「窮屈」な道を行く人物です。人は悪くないのですが、偏屈で融通が利きません。けれど、効果がきちんと実証された製品を売りたいと思い、科学に夢を託したいと願う誠実な男でもあります。そこは実に好もしいと思いました。 ( 対照的な存在として賢児の母と姉が登場するが、やや極端な設定だとは思う。) 

     古来から人々は、夢を叶えてくれる「賢者の石」を求めてきました。
     他力本願で臨み何にでも飛びつくのか、納得できるものが見つかるまで自力で頑張るのか。その姿勢は人としての生き方を左右します。それは現代でも同じなんだろうと思いました。

     科学では解明できないものは多く、そういうものを排除しては生きていけません。 ( 愛情などその最たるものでしょう。)
     そこに気づいて受け入れた賢児なら、いつかきっと賢者の石を売ることができる日がくるに違いない。そんな未来が見えるようないいラストでした。

  • 科学的であることが正義と妄信して人の気持ちを汲み取れず家族とも対立し続けてきた主人公。崇拝する科学者の幼馴染みとか、似非科学?を売りにした家電品のマーケティングとかに関わる中で、極端に狭い価値観が解放されていく過程が面白かった。科学リテラシーがなく怪しい情報に翻弄される母と姉とか、科学の世界で顕在化している問題とかがストーリーの中で上手く組み込まれてる。前半は主人公に寄り添えないけど、中盤からそういうことかとなって、後半で応援したくなる。

  • またまた矢野帰子さんの作品。

    表紙とタイトルを見て興味がそそられたため。

    化学が好きなサラリーマン、賢治は中途で大手電機メーカーに入社して早々、難題に立ち向かうことになる。
    賢治、賢治の姉の美冬、賢治の同僚の梨花。この3人の視点がメインで、ストーリーが進行していく。

    賢治は鉱物を愛する父の影響で、化学と宇宙に想いを馳せるようになるものの、
    過去に父が病気で倒れ、家も困窮し、母との関係もこじれてしまう。

    コミュニケーションが苦手な賢治は、家族や親友、同僚、他者との関係に四苦八苦しながら、生き方を考える。

    個人的には、もう一山盛り上がりが欲しかったかなぁ。

    矢野帰子さんのことを調べてみた。
    79年生まれ。辻村深月さんと同世代なのですね。
    マーケティング会社と製粉会社に勤めたこともあり、それらの会社員の経験が「わたし定時に帰ります」や「会社を綴る人」を書くヒントになったのだろう。

    私自身も会社員生活が長いため、リアリティのある企業小説に惹かれる。

    これからも矢野さんの作品を読んでみたい。

  • 似非科学と闘う主人公、その周辺のドラマは普遍的で楽しかった。
    ただ、読み終わっても絶望が多いのはなぜだろうか...

  • 3.5 まずまず。マイナスイオンドライヤー、似たようなの最近買ったばっかり(^-^;
    お仕事小説+科学オタ、最強の組み合わせかも。

  • いろんな とんでも科学が解明されるのかと思っていた。全体的に冗長に感じられて読み飛ばしてしまった。

  • 大事な人を守っているつもりの正義が
    誰かを傷つけてしまう。
    自分の信じる自分はとても怖い。
    そんな不安があるからこそ正義は誰かを救うことも傷つけることもある。
    賢司のやり方は強引ではあるけれど、
    自分の正義と同じように相手のことも信じている。

  • マイナスイオンドライヤー、へへ、買っちゃいそう。値段高い=効果ありそう、だもんね(笑)。
    なんかよくわからないけど、効果ありそう、期待できそうってやつ、ほんとたくさんあるんだもん。気分的なものだよな。あまり、明らかにされると夢がないような気もするし。

  • 読後感は悪くないけど、面白くなかった。

  • 15:科学の正しさを信奉する主人公が美容家電(マイナスイオンドライヤーとか)の企画部に異動になって……という、想像するだけで悶えるやつ。正しさだけじゃモノは売れないだろうけど、どう転がるのか……と思わせて、実に直球の展開でした。いい話じゃった( ;∀;)朱野さんのお仕事小説めっちゃ好き。
    客は必ずしも正しさを求めているわけではなく、潜在的な願望は簡単に白を黒にする。科学的アプローチにはカネが必要で、そのカネはすぐ目に見える結果を出さないと下りてこない。ままならない。そのままならない現実の中で打ち上げられるロケットの、圧倒的な噴射炎と光。打ち上げられた探査機がまた科学の歩みを進める。うう……好き……。
    主人公のお姉ちゃんが妊娠→出産して、母乳至上主義の助産師さんに引っかかったり、なんかもうすごい(語彙)

  • 派手さはない、とても身近な話なのに、込められたメッセージは熱い
    科学の力を信じるあまりに頑なになってしまう賢児が、再び科学を支える商人として、中長期計画案に向き合ってからの展開に引き込まれる
    桜川のような上司は魅力的だ

  • とりあえずコラーゲンの美容液を使ってるのは意味がないらしいのでショックだった(笑)

  • 主人公は、いわゆる科学教の信者である。そのうえ他人と上手にコミュニケーションが取れない。正しいことを言うにしても言い方に問題があり、相手の立場を理解できない。その矛先が向かうのが似非科学なのだけれど、なぜか主人公の周りには似非科学の信者のほうが多い。お互いに不幸な状況だが、主人公がもう少し穏やかな言い方をすればいいのにと、読者の立場としては忠告したくなる。忠告しても聞かなさそうだが。登場人物の中では、姉との関係が面白かった。姉弟って、こういうところがあるよなぁと思いながら読んだ。

  • 文句なく面白い
    いい奴なんよね
    なのに・・・
    よかった

  • 朱野帰子、2冊目。相変わらず不愉快なまでに現実の生活が思い出される。主人公は科学が好きだが、家電メーカーでマイナスイオンドライヤーの企画をしており、商人たろうとしていて、疑似科学が大嫌い。周りの登場人物は、科学の研究者、家電メーカでマイナスイオンドライヤを企画してヒットした人、事業部長、疑似科学が大好きな家族。ぐらいまでは書いてもネタバレではないだろう。疑似科学に対してキレすぎな点、STAP細胞という時事ネタ、描写や最後の風呂敷の畳み方は改善して欲しいが、筆者が書きたかっただろう話題に対しては、自分も考えるところがある。
    マイナスイオンが人気ならばマイナスイオンドライヤーを売っていいのか?水素水が人気ならば売っていいのか?癌患者に対して病院を否定して安心と疑似科学を売りつけてよいのか?

全41件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

東京都中野区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2009年、『マタタビ潔子の猫魂』(「ゴボウ潔子の猫魂」を改題)でメディアファクトリーが主催する第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞し、作家デビュー。13年、『駅物語』が大ヒットに。15年、『海に降る』が連続ドラマ化された。現代の働く女性、子育て中の女性たちの支持をうける。主な作品に『賢者の石、売ります』『超聴覚者 七川小春 真実への潜入』『真壁家の相続』『わたし、定時で帰ります。』など。

「2022年 『くらやみガールズトーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朱野帰子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×