- Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163905716
作品紹介・あらすじ
「忘れても忘れても、ふたりの世界は失われない」
新しい記憶を留めておけないこよみと、彼女の存在が全てだった行助の物語。
『羊と鋼の森』と対をなす、著者の原点にして本屋大賞受賞第一作。
〈著者プロフィール〉
宮下奈都(みやした・なつ)
一九六七年福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒。二〇〇四年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選、デビュー。〇七年に発表された長編『スコーレNo.4』が絶賛される。一五年に刊行された『羊と鋼の森』が本屋大賞、キノベス第一位、ブランチブックアワード大賞の三冠を受賞。その他の著書に『遠くの声に耳を澄ませて』『よろこびの歌』『太陽のパスタ、豆のスープ』『田舎の紳士服店のモデルの妻』『ふたつのしるし』『誰かが足りない』『たった、それだけ』など。
◯著者の言葉
「静かな雨」は、人の可能性について書きたかったのだと思う。少なくとも自分ではそのつもりだった。でも、どうだろう。可能性の話というよりは、可能性をなくしていく話だったかもしれない。人はどんなふうに生きることができるか。その選択肢をなくした先にたどり着く場所について。
(中略)
とりわけ、『羊と鋼の森』にはまっすぐにつながっていた。まったく違う物語なのに、根っこがしっかりとつながっていた。
読み返して一番感情を揺さぶられたのは、作者本人だったと思う。
(月刊文藝春秋1月号より)
感想・レビュー・書評
-
宮下奈都さんの小説。エッセイは散々読んだのに、小説は初めて。静かな、素敵なお話でした。こよみさんのたい焼き、食べてみたいなあ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
柔らかな文章と優しい言葉の数々。
ユキとこよみさんの少しだけ重なり合う世界が愛おしい。そんな作品でした。文字も大きくて読みやすかったです。こよみさんのたいやきは、食べたくなりますね! -
この一年で人気作家のデビュー作を立て続けに読んだ(高野秀行「幻獣ムベンベを追え」上橋菜穂子「精霊の木」メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」藤沢周平「無用の隠密」)。デビュー作には、作家の全てが備わっている、ということは、その度に思ったことである。2004年に文学界新人賞佳作に選ばれた本作も然りである。
宮下奈都の作品は未だ3作目だけど、「静かな雨」「スコーレNo.4」「羊と鋼の森」と見事に洗練されてきたのが、これを読んでわかる。
ボーイミーツガールものを装いながら冒頭こそは平凡な描写だったが、こよみと行助との会話のところで、おや、普通の恋愛譚とは違うと思った。行助はこよみから「(あなたの瞳の半分は)あきらめの色」と言われて、少年の頃の気持ちを思い出すのである。地球が高速で自転していると学んで少年は寝込んでしまう。でも、「(秒速463キロで突き進んでいる)地球が回るのを止めることはできない」「あきらめるしかない」と思ったら高熱もおさまったらしい。私は宮崎駿「風立ちぬ」にも出てきた良寛の「天上大風」の語句を思い出した。
途中でこよみさんが1日しか記憶がもたない女性になってしまうけど、それは難病ものにしたいわけではなく、2人の会話に変化をつけたいだけだった気がする。ある日、記憶力をなくした数学者を描いた本のエピソードが出てくる。調べると小川洋子「博士の愛した数式」は、この中編が書かれた一年前の発行だ。第1回本屋大賞にまでなって仕舞う著作を読んで、テーマもストーリーも全然違うけど、雰囲気がよく似た物語を書いた著者が、12年後に本屋大賞を獲るとは本人は想像していただろうか。 -
喧騒とは無縁の静かな物語。
流れていくような文体が心に沁み入る感じで良かった。
激しい感情がぶつかり合うことはない、ただ当たり前を受け止め、当たり前のように降る雨のように二人で過ごす静かな時間。
こよみさんの記憶はまるで儚いシャボン玉のよう。
一日が終わり行助に触れると静かにふわっと消えてなくなる。
でもいつか行助の永遠という大きなシャボン玉に記憶はもちろん何もかもすっぽり包まれる日が来るといい。
せつなくはあるけれどほのかな美しさ、優しさも感じられる世界。
そっと心に残りそうな作品。-
こんばんは(^-^)/
宮下さんはインスタでも人気。
表紙が可愛い本があったので読もうと思ったらエッセイだった。
私エッセイは苦...こんばんは(^-^)/
宮下さんはインスタでも人気。
表紙が可愛い本があったので読もうと思ったらエッセイだった。
私エッセイは苦手なのでまた探さなくちゃ。
この作品は初めて見るよ!勉強になります。2019/06/26 -
けいたん♪
私、実は宮下さん初読み(o´ェ`o)ゞエヘヘ
これはデビュー作らしいよ。
女性らしい文体が良かった♪
最近、可愛らしい表紙で文...けいたん♪
私、実は宮下さん初読み(o´ェ`o)ゞエヘヘ
これはデビュー作らしいよ。
女性らしい文体が良かった♪
最近、可愛らしい表紙で文庫が出たよね♪
私もエッセイは苦手〜。寝てしまう…2019/06/26
-
-
2004初出で作者30代半ばくらいの作品。たしかに佳作ですね。パチンコ屋の裏の駐輪場にあるたい焼き屋の鯛焼きが滅法美味しくて、焼いている女性も何故だかとても魅力的。そんな彼女との静かな暮らしの流れが心地よかった。後年の「羊と鋼の森」にも通じるような気がする作品でした。
-
デビューのきっかけとなった、宮下さんの原点ともいえる作品。
どこか痛いものを抱えて生きる人同士の優しいかかわりを描く、宮下世界がもう構築されている。
物語の中に出てくる本、こよみさんが2冊買ってしまった本のお話とずいぶんかぶっていると思うのだけれど、終わろうとしている人のお話ではなく、まだみずみずしく若い人のお話だ。
全部忘れてしまったわけではない。
こよみさんを作った「土台」は確かにそこにある。
その土台の上に、今は毎日テントの張りなおしだけれど、いつか家が建つかもしれない。
おいしいたい焼きが焼けるのなら、毎日焼いていけるのならそれでいいじゃない。
著者プロフィール
宮下奈都の作品





