静かな雨

著者 :
  • 文藝春秋
3.48
  • (32)
  • (128)
  • (173)
  • (14)
  • (4)
本棚登録 : 997
レビュー : 177
  • Amazon.co.jp ・本 (107ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905716

作品紹介・あらすじ

「忘れても忘れても、ふたりの世界は失われない」新しい記憶を留めておけないこよみと、彼女の存在が全てだった行助の物語。『羊と鋼の森』と対をなす、著者の原点にして本屋大賞受賞第一作。〈著者プロフィール〉宮下奈都(みやした・なつ)一九六七年福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒。二〇〇四年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選、デビュー。〇七年に発表された長編『スコーレNo.4』が絶賛される。一五年に刊行された『羊と鋼の森』が本屋大賞、キノベス第一位、ブランチブックアワード大賞の三冠を受賞。その他の著書に『遠くの声に耳を澄ませて』『よろこびの歌』『太陽のパスタ、豆のスープ』『田舎の紳士服店のモデルの妻』『ふたつのしるし』『誰かが足りない』『たった、それだけ』など。◯著者の言葉「静かな雨」は、人の可能性について書きたかったのだと思う。少なくとも自分ではそのつもりだった。でも、どうだろう。可能性の話というよりは、可能性をなくしていく話だったかもしれない。人はどんなふうに生きることができるか。その選択肢をなくした先にたどり着く場所について。(中略)とりわけ、『羊と鋼の森』にはまっすぐにつながっていた。まったく違う物語なのに、根っこがしっかりとつながっていた。読み返して一番感情を揺さぶられたのは、作者本人だったと思う。(月刊文藝春秋1月号より)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 喧騒とは無縁の静かな物語。

    流れていくような文体が心に沁み入る感じで良かった。

    激しい感情がぶつかり合うことはない、ただ当たり前を受け止め、当たり前のように降る雨のように二人で過ごす静かな時間。

    こよみさんの記憶はまるで儚いシャボン玉のよう。
    一日が終わり行助に触れると静かにふわっと消えてなくなる。
    でもいつか行助の永遠という大きなシャボン玉に記憶はもちろん何もかもすっぽり包まれる日が来るといい。

    せつなくはあるけれどほのかな美しさ、優しさも感じられる世界。
    そっと心に残りそうな作品。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      宮下さんはインスタでも人気。
      表紙が可愛い本があったので読もうと思ったらエッセイだった。
      私エッセイは苦...
      こんばんは(^-^)/

      宮下さんはインスタでも人気。
      表紙が可愛い本があったので読もうと思ったらエッセイだった。
      私エッセイは苦手なのでまた探さなくちゃ。
      この作品は初めて見るよ!勉強になります。
      2019/06/26
    • くるたんさん
      けいたん♪

      私、実は宮下さん初読み(o´ェ`o)ゞエヘヘ
      これはデビュー作らしいよ。
      女性らしい文体が良かった♪
      最近、可愛らしい表紙で文...
      けいたん♪

      私、実は宮下さん初読み(o´ェ`o)ゞエヘヘ
      これはデビュー作らしいよ。
      女性らしい文体が良かった♪
      最近、可愛らしい表紙で文庫が出たよね♪

      私もエッセイは苦手〜。寝てしまう…
      2019/06/26
  • この一年で人気作家のデビュー作を立て続けに読んだ(高野秀行「幻獣ムベンベを追え」上橋菜穂子「精霊の木」メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」藤沢周平「無用の隠密」)。デビュー作には、作家の全てが備わっている、ということは、その度に思ったことである。2004年に文学界新人賞佳作に選ばれた本作も然りである。

    宮下奈都の作品は未だ3作目だけど、「静かな雨」「スコーレNo.4」「羊と鋼の森」と見事に洗練されてきたのが、これを読んでわかる。

    ボーイミーツガールものを装いながら冒頭こそは平凡な描写だったが、こよみと行助との会話のところで、おや、普通の恋愛譚とは違うと思った。行助はこよみから「(あなたの瞳の半分は)あきらめの色」と言われて、少年の頃の気持ちを思い出すのである。地球が高速で自転していると学んで少年は寝込んでしまう。でも、「(秒速463キロで突き進んでいる)地球が回るのを止めることはできない」「あきらめるしかない」と思ったら高熱もおさまったらしい。私は宮崎駿「風立ちぬ」にも出てきた良寛の「天上大風」の語句を思い出した。

    途中でこよみさんが1日しか記憶がもたない女性になってしまうけど、それは難病ものにしたいわけではなく、2人の会話に変化をつけたいだけだった気がする。ある日、記憶力をなくした数学者を描いた本のエピソードが出てくる。調べると小川洋子「博士の愛した数式」は、この中編が書かれた一年前の発行だ。第1回本屋大賞にまでなって仕舞う著作を読んで、テーマもストーリーも全然違うけど、雰囲気がよく似た物語を書いた著者が、12年後に本屋大賞を獲るとは本人は想像していただろうか。

  • あらすじを読んで重く暗い話なのかな…と思っていたけど違った。
    読み終えたときには、少し寂しくて、でもだからこそ十分に幸せを感じさせてくれる宮下ワールドの中にどっぷり浸ってた。
    100ページちょっとの短めの物語だけど、浅い話では決してないし、物語の日常の中にハッとさせられるような言葉も散りばめられてる。

    そのなかでも、
    「忘れても忘れても育っていく。記憶からこぼれても、どこかに残って育つものがあるのだ」
    という言葉が印象的だった。
    認知症だった曾祖母を在宅介護していた時のことを思いだして、本当にその通りだと思った。
    忘れられても忘れられても、愛しかったよ。
    大変なときもあったけど、愛しかった。
    それが「毎日の生活の中での思いで人はできている」ってことなんだろうなあ。
    もう15年近く前のことだけど、今、答え合わせできた気がする。

    あと、本についてるスピンがシャンパンゴールド色で綺麗!物語や装丁とも合ってて良かった(*^^*)

  • 「忘れても忘れても、ふたりの世界は失われない」

    駅のそばのパチンコ屋の裏の駐輪場にたいやき屋があった。
    とっても美味しいたいやきを焼くこよみさん。
    こよみさんに憧れ、生まれつき足に麻痺があり松葉杖を使っていて、
    高嶺の花と思っている僕・行助。
    ある日、こよみさんは事故にあってしまい眠り続けている…。

    毎日病院に通い見守る事しかできない行助。
    三月と三日眠り続けたあと目覚めたこよみさん。
    高次脳機能障害で、短期間しか新しい記憶を留めておけない…。

    主人公の行助の一人称による文章は、気持ちの揺らぎや感情が
    とても静かに静かにシンプルに描かれている。
    ゆったりとした日常の描き方がとても好きです。
    静かで優しい世界が広がっていくのを感じます。
    人間って何で出来てるかという事を、毎日の生活の中での思いで
    人は出来てるって考え良かったなぁ。
    記憶を毎日失くしながら生きてゆくって…とても苦しくて辛いって思う。
    そんなこよみさんがとっても素敵。
    こよみさんが語る言葉の数々が彼女かこれまで歩んできた道や、
    考えや根っこの部分を感じさせられ、とても惹きつけられた。
    魅力的な人でした。
    行助の家族もとても素敵な人達だった。

    色々考えさせられるテーマでした。
    でも、美しい旋律のような文章で心地よく心に染み入りました。
    決して暗くならずに、清々しい気持ちになれました。
    諦める事は、受け入れて前に進むという事というメッセージが込められている気がしました。
    本当に短い作品でしたが、まさに宮下さんの原点という感じの作品でした。

  • デビューのきっかけとなった、宮下さんの原点ともいえる作品。
    どこか痛いものを抱えて生きる人同士の優しいかかわりを描く、宮下世界がもう構築されている。

    物語の中に出てくる本、こよみさんが2冊買ってしまった本のお話とずいぶんかぶっていると思うのだけれど、終わろうとしている人のお話ではなく、まだみずみずしく若い人のお話だ。

    全部忘れてしまったわけではない。
    こよみさんを作った「土台」は確かにそこにある。
    その土台の上に、今は毎日テントの張りなおしだけれど、いつか家が建つかもしれない。
    おいしいたい焼きが焼けるのなら、毎日焼いていけるのならそれでいいじゃない。

  • ここから始まったのだな、としみじみと思う。透明で繊細で優しくてしなやかで優しくて、だけどまんなかにしっかりとした芯のある宮下さんが紡いできた物語たちの源がここにある。
    世間から見ると少しだけ横に押し出されてしまった人たちの、普段の生活のなかにある小さなできごとが、どうしてこんなにもきらめいて見えるのだろうか。
    毎日たい焼きをやいているこよみさんが、ずっと松葉杖をついてきた行助の隣りで明日の夜には静かな涙を流さずにいられますように、とただそれだけを祈ってしまう。

  • なんて静かで穏やかな世界だろう。
    主人公ユキの気持ちの揺らぎが詩のような美しい文章でそっと綴られていき、読み手の想像力が掻き立てられる。

    美味しいたいやきを焼く「高嶺の花」のこよみさんと一緒に暮らすことになったユキ。
    記憶がするりと消えて、どうしてもあの日に戻って足踏みしてしまう…そんなこよみさんの存在が人生の全てのユキ。
    二人は「今」という時間の中で、二つの世界のほんの少しの重なりを頼りに、二人だけの記憶を創っていく。

    ユキのささやかな願いがどうか叶いますように。
    短い物語なのに余韻がいつまでも続く。
    これが宮下さんのデビュー作。

  • ずっと穏やかな時間が流れる文章だった。
    こよみさんが、事故の巻き添えにあっても、
    店に若者がいちゃもんつけに来ても。

    ただ行助がブロッコリをきっかけに、こよみさんに覚えてないの?と言ってしまうシーンは動だった。それまでが静だったから。

    宮下さんの文章は心地いいな。まだ2冊しか読んでないから、早く他のも読まなきゃ。

    一丁焼きだったら、そりゃ美味しいよね。

  • 宮下奈都「静かな雨」を読みました。2004年に発表されたデビュー作を加筆修正して昨年末に発行された新刊です。表紙は立派で格調高いですが100ページ程度で1200円と少し高いです。

    昨年の4月に娘から借りて読んだ「羊と鋼の森」に感動し、その弾みで「誰かが足りない」「スコーレNO.4」と連続で読みました。そして本日、最新刊である「静かな雨」を読んだ次第です。

    何気ない日常を描いたたった100ページの作品ですが、せつなさが凝縮している傑作だと思います。もう一回読もう。

  • 渾身で焼く10匹のたい焼き。
    そういえば、渾身の力で一回通してからやってたな、あのころ。

全177件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月映画化。『静かな雨』が2020年新春映画化が決まり、2019年6月6日文庫化される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

静かな雨のその他の作品

静かな雨 Audible版 静かな雨 宮下奈都

宮下奈都の作品

静かな雨を本棚に登録しているひと

ツイートする