銀の猫

  • 文藝春秋 (2017年1月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784163905815

みんなの感想まとめ

老いと介護をテーマにしたこの物語は、江戸時代の介抱人・お咲の視点を通じて、家族や周囲の人々との関係性を深く掘り下げています。主人公は母親の借金を返すために介抱人として働きながら、老いることへの思いと向...

感想・レビュー・書評

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  • 2023年のベスト本です。
    しんみりしたり、心が乱れたりと……
    年寄りの介護をする介抱人・お咲の奮闘物語です。

    時は、天保七年(1836)。江戸は本郷の菊坂台町に住む、お咲25才は、6年前に嫁に行った先の舅・仁左衛門の介護をしていたが、母親・佐和が仁左衛門からお金を貰っていたのが亭主と姑に知られて離縁された。その時に佐和が貰った金として30両の借用書を書いて半年に一度返済している。江戸時代、親の介護をするのは当主の務めとなっていたが。なかなか出来るものではないので裕福な家では、介抱人を雇った。お咲は、4年前から口入屋「鳩屋」で介抱人を始めた。

    【銀の猫】
    見所は、お咲の義父への想い。口入屋「鳩屋」の主人・五郎蔵とお徳夫婦に見守られて誠心誠意働くお咲は、引っぱりだこですが、妾奉公を繰り返してきた美しい母親・佐和のだらしなさに振り回されて悩む日々です。お咲は、婚家を出る時に、舅・仁左衛門から小さな銀で出来た猫の置物を貰い御守にしている。あとの「春蘭」で白翁が、お咲の「銀の猫」を見て、これと同じものを一度だけ大奥で見たと言ったことが気にかかります。

    【隠居道楽】
    見所は、嫁が義母の金を心配して…。深川佐賀町で干鰯商を商う「相模屋」の嫁は、元気すぎる義母・おぶんに困って目付役として10日間、介抱人のお咲を雇った。おぶんは、隠居金を生きているうちに全て使い果たすために動き回って道楽をしている。隠居金は、隠居するにあたってまとまった金を店から持って来たかねです。

    【福来雀】
    見所は、母娘の確執。師走(12月)。お咲は、足の骨を折ったお蔦を介助して神社に入ると、お蔦が「ふくら雀だ、験がいい」と、「総身の羽をああして膨らませて丸くなっている雀を、福来雀(ふくらすずめ)と呼ぶと。福が来る雀と書いて福来雀だよと」言う。お蔦の娘・染吉は、お蔦を憎くなるのが怖いとお咲に漏らす。

    【春蘭】
    見所は、抑圧された心の内側から出たものは…。天保九年(1838)、二月。武家の隠居の介護に行くと。隠居・白翁が、ラン科の春蘭(しゅんらん)を指して、別名で爺婆草という。「まあ、蘭の花はいずれも淫靡な形をしているものでの、春蘭も男とおなご、その両方の形を持っているように見える。ほれ、ここの雄蕊(ゆうずい:一般的には「おしべ」といわれる)を男性器に、ここの唇のごとき花弁はおなごの物に見立てられよう」と言われる。白翁は、小さい時を大奥で女として育てられた。ために発作が起きると女になる、我が身を花にたとえた。

    【半化粧】
    見所は、美しい佐和の肌が男を惑わす。そこになんとも言えない…。日本橋は通油町で「杵屋」という貸本屋を営む佐分郎太は、お咲と一緒に介抱先に行って、介抱人の助手として働き、その現場で見たことを「介抱指南書」として出版しょうと考えた。そんな時に、鳥居の外で咲く半夏生(はんげしょう)を見た相模屋のおぶんは、「こうして白く化粧して、虫を呼ぶらしい。だから半化粧という二つ名がある」と、お咲は、佐和の白い胸を思い出して、顔おそむけた。

    【菊と秋刀魚】
    この物語は、姉妹のせめぎ合いが見所です。白翁の紹介で大奥で50年務めたお松の隠居屋敷に行ったお咲は、お松70才と妹・お梅68才の間のただならぬ関係に気が付く。白翁屋敷の用人・大野に調べてもらうと、三年前にお松が、お梅に黙って遠縁の若夫婦を養子に迎える話しを進めて。その若夫婦に全財産を騙し取られて丸裸になる。お梅は、この若夫婦が屋敷に入ったら自分はどうなったのか考えるとぞっとする。そして、いまはお梅が、お松を養っているが。お梅が、目で全てを仕切る。

    【狸寝入り】
    此度は、みな丸くまとまるきざし…。白翁のはからいでお松とお梅の老姉妹が穏やかに話し出した。ただ白翁を看取ると決めている用人の大野が悩んでいる。遠縁の者から白翁が養子に取った当主に対して、白鴎を介抱しないのは孝に悖(もと)ると非難していることだ。お咲は、当主と大野の二人で白翁を看取ってはと…。

    【今朝の春】
    天保十年(1839)正月。お咲は、小さな時から一度として母・佐和に抱かれたことがない。我が子の抱き方がわからなかった、おっ母さん。大丈夫だよ。おっ母さんがもっと歳を取っていつか床に臥すようになったら、わたしがあなたを抱きしめるから。だからそれまでは、いっぱい母娘喧嘩をしょう。と、佐和を見ながら、こころのなかで呟く。

    雑誌「オール讀物」2014年6月号~2016年3月号までに連載された連作短編8話。

    朝井まかてさんの本を読むのは始めてです。

    【読後】
    こうもいろんな家庭内の出来事の内側を書いてあると、私の心が洗われるように感じ、また、胸の中が騒がしくなってくる。そして物語が進むにつれてお咲の心のなかで、葛藤が…続いて行きます。字が小さくて本当に読むのに苦労しました。20ページぐらいを読んだら10分目を休めての繰り返しで読みましたが、長くかかりました。誠心誠意お年寄りに寄り添うお咲を見ていると、本当に頼りになります。もう少しすると、私もお咲に介抱人(介護人)をお願いしたいと思っています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    銀の猫《単行本》
    2017.01発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。
    2023.02.22~26読了。★★★★★
    銀の猫、隠居道楽、福来雀、春蘭、半化粧、
    菊と秋刀魚、狸寝入り、今朝の春、の短編連作8話。
    図書館から借りてくる2023.01.31
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • 江戸時代、平均寿命は50才くらいとか言われますが、50才を超えることができれば、その後は多くが長生きしたのだとか。歳をとって介護が必要になったら、庶民はたいてい、家族が仕事量を減らすなどして面倒をみることになるのですが、裕福な家は面倒を見てくれる介抱人を雇うこともあって、この小説の主人公・お咲は、その介抱人を生業にしています。理由は胸の内に秘めていますが、口では「母親の借金を返しているので、身入りのいい仕事しなきゃなんない」と答えています。

    介抱人の口入れ屋・鳩屋の主人夫婦や同僚、仕事で縁が結ばれた人々に囲まれながら、老いと向き合うお咲を通して、老いていく者、見守る者、それぞれの思いが描かれていて、身につまされました。

    お咲と同居する母親との間も、複雑で厄介です。私自身、若い頃は母親とはうまくいかなかったので、一日も早く家を出たかったことを思い出しました。(今は仲良しですけどね。)

    そして驚いたのですが、この本によると、江戸時代、親の介護を担うのは主だったんだそう。「主君に忠義、親には孝養を尽くすのが人の道」と説いて、親孝行を強いたのだとか。武士の場合は親の介護休暇が認められており、商人は番頭らにお店を託して介護に専心したのだそう。一方、主の妻女や孫は、家内を守るのが務めだったらしいです。いつの間に、嫁に押し付けるようになったんでしょうね?

    ちなみに、猫はタイトルになるくらいとても重要なポジションなんですが、本文中にはほとんど描かれていなかったです(名作『夏への扉』の猫的な感じ…)。

  • 朝井まかてさんの人情ものはいつだって心地好い。

    江戸で年寄りの介抱を助ける「介抱人」の仕事をしているお咲の物語。
    江戸時代に現代の介護士のような仕事があるとは知らなかった。
    江戸の町が長寿の町で、長生きする人が多かったことにも驚きだった。

    けれど江戸と平成、時代は違っても思うことは皆同じで、介抱する側もされる側も何かと大変だ。
    年寄りの症は一人一人異なる。生き方が違うように老い方もまたそれぞれ。
    若い頃から何かと苦労続きのお咲は気立ても良く気配りもできる女性で、そんな年寄り一人一人の気持ちに寄り添い、気遣いながらそっと手助けのできる素晴らしい介抱人。
    出来れば私も将来、こんな女性に介護を頼みたい。
    そしてお咲の周囲の人達の温かい繋がりにもほっとする。
    温かくて清々しくてしみじみ泣ける…そんなまかてさんらしい作品だった。

  • 介抱人という仕事があったこと、介護は嫁ではなく息子が請け負うのが常識だったこと、現代と同じように様々な理由で家庭内で対応しきれなくなった際に利用できるいわゆる派遣業があったこと、ちょっと驚いた。
    人間は老いる。昔も今も。当たり前だ。
    まさに今母とそんな関係性にあるだけに、
    お咲の存在を心に留めるだけで
    母への対応が違ってきた気がする。うれしい。

    『人の手を借りず、誰にも看取られずに、世話をかけずに逝きたいね。獣や草木みたいにさ、野山で行き倒れられたらとんなに安穏だろう』

    『自分の好きだったお菓子やお菜の名を忘れ、
    好みも忘れて、そうやって少しずつ己が積み重ねてきた人生が消えてゆく。
    老はかほどに容赦がないものだ』

    『衰えて、死に向かいかけた当人は、もう抗がっていないのだ。限りある寿命を生き抜いたものにとって、死は抗うものですらないのかもしれない。そんな往生を介抱する側も受け容れて、最期の日々を分かち合えたら、何かが変わるような気がした』

    『最期のその日まで、何度共に笑えるかを心得るが肝心。笑いこそが何よりの薬。介抱される側も介抱する側もそうだ』

    『身内は何とか死を遠ざけたい一心で、薬湯を煎じて無理にでも飲ませようとする。頑張ってと励まし続ける。もう頑張らなくていいのに。本人はゆっくりと、あの世に向かいつつあるのに』

    介護される側の言葉が沁みた
    介護する側の心の持ちようにしみじみ頷けた
    心に留め置こうと思った

    はじめてのまかてさん、
    読めて良かった一冊になりました

  • 時代小説で介護というのは珍しく感じ、それぞれの人の生活に引き込まれました。
    江戸時代、本当にこんな職業があったのか分かりませんが、とても興味深く読ませて頂きました。

  • すがすがしい!
    朝井まかてさんの小説の読後感はいつも
    そんな気分になってしまう。

    時代小説の設定ですが
    今も昔もありつづける
    介護の問題
    ここに書かれていることは
    そのまんま
    現代の問題でもある

    魅力的な主人公、介抱人・お咲。
    彼女を取り巻く
    魅力的な脇役たち
    スーパーマン、スーパーウーマンは
    誰一人出てこないけれども
    しみじみとした滋味があふれ出てくる

    あぁ 良かった
    そんな気分に浸りたい人に
    ぜひ!

  • 認知症の様子や介護の事を、とても聴きやすい言葉で表現しています。確かに辛い、臭い、面倒。腹も立つ。される側の辛さも。読み手の自分もいつか…。それを考えると凄く気重になる現実がありますが、この小説を読むと、自然に受け入れられる事ができるかもしれない。老母を支えていけるかも知れないと思えてきました。

  • 介護をする仕事が本当に江戸にあったのかは知らないが、舞台を江戸にしたことで重くなり過ぎずに済んでいるように思う。
    まかてさんお得意の江戸の人情もの、植物の話しもちょっと出てきて、まかてさん感満載。

  • 江戸時代版介護士ともいえる、“介抱人”として働く、お咲が主人公。
    気難しいお年寄りや、身勝手な身内等と真摯に向き合って仕事に励む一方で、美しい母親との確執で悩むお咲の心情が良く描かれています。
    江戸の介護事情も興味深く読めますし、爽やかな読後感が良いですね。

  • 世の中に 完璧な人などいない
    完璧な老後もないけれど
    それぞれの行く末を考える気持ちになります
    自分の最後を預けることが出来る人って
    なにがしかの縁がきっとあるんでしょうね
    しみじみとした よい小説でした

  • 朝井さんの本は、いつも時代小説ながら、主要人物が現代人的な考えを持つ。今回も介護についての話だが、昔の人も本当はこんなことを考えていたのかもしれないなと思う。
    とてもよく介護について考えられており、現代人にとっても「往生訓」であり、介護に携わる人への応援歌ですね。

  • いやいや予想外によかった!
    こんな切り口の時代物が出来るとは目からうろこがボロボロ落ちた。そして涙もポロポロ落とされた。星五つ です(^^;

  • 題名からは想像もつかない、まさかの「介護」小説だった。

    『忠孝の考えが厳しい武家では、家を継いだ当主が自身で介抱に臨むのが最良。届を出せば城での勤めを休める』
    武家がこうなら商家も当然同じ。
    跡継ぎ息子が介護している最中、嫁は亭主に代わって商売を切り盛り。

    えええ!!!
    そーだったの、江戸時代!

    家庭内で、女が、無償で(つまり嫁だったら相続権もなく)介護をするのが当たり前、と言う考えは戦後の日本からってことなのね。

    戦前の日本では、さほど裕福でない家でも女中さんを雇っていて、家庭内の介護はこの子たちがになっていた、と言う話を聞いたことがある。

    介護保険ができた頃、我が家の近辺(田舎です)では介護を他の人に委ねるのは家の恥、っていうか嫁がひどいヤツ、的な考えが横行し、制度を利用する人が少なかった。

    その頃この小説があったなら、自分を責めずに済んだ嫁がどれだけいただろう。

    内容にビックリだったが、人物の描き方が素晴らしく、さらに当時の介護指南まで書かれていて、内容の濃い一冊である。

  • 長寿の町江戸で、介抱人と呼ばれる現代のヘルパーさんのお仕事を生業にする佐和が主人公のお話。短編が8話あり、それぞれ介護される老人とのエピソードと佐和自身の母との軋轢を交えてお話が展開する。とても興味深く、作者の筆の巧みさで面白い。いつの時代にも人が年を取ることによる介護する人、介護される人が抱える問題は本質的には変わらないんだなあと切なくもなるが『子ども叱るな! いつか来た道。年寄り笑うな! いつか行く道』という言葉もあるようにこればかりは避けようがないんだよなあ。

  • 自分勝手な母親の借金を返すため、生活のために女中より給金の良い介抱人の世話をするという今で言えばホームヘルパーのような仕事をするお咲。いろんな家の中に入り世話をする当人と打ち解けるまで献身的に手助けをする。その家族とも関わらねばいけないがアドバイス的な事を言っただけで怒りを買う始末。親の介護は子供がするのが当たり前の時代だから他人に任せるなどどれだけ世間の風当たりが強かった事か。
    お咲に仕事を斡旋している口入屋の夫婦がいい。やり手のお徳は毒舌だが見放したりしない面倒見の良さがある。五郎蔵は急須を持つのが好きでお茶を勧めながら女中達の話し相手をする。このバランスの良い夫婦がお咲を仕事以上に支えているように見えた。悪い人ばかりじゃない。悪い事ばかりじゃない。お咲の日々の先にいつか母親と和解できる日が来るのだろうか。

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    お咲は、年寄りの介護をする「介抱人」。口入屋「鳩屋」の主人・五郎蔵とお徳夫婦に見守られ、誠心誠意働くお咲は引っぱりだこだが、妾奉公を繰り返してきた母親のだらしなさに振り回され、悩む日々―。そんな時、「誰もが楽になれる介抱指南の書」を作りたいという貸し本屋・佐分郎太から協力をもとめられた。「いっそ、ぎりぎりを攻めるってのはどうですかね、お咲さん」―「いいかも。そのぎりぎり」。長寿の町・江戸に生きる人々を描く傑作時代長編。

    令和5年12月22日~26日

  • 再読。嫌なキャラも朝井さんが描くと魅力的になる。一番好きな登場人物はおぶんさん。いい味を出してる。

  • 2021年8月16日
    一気読み。
    時代が違っても、介護やLGBTはあった…
    いろんな人がいろんな個性で、相手を知って折り合いをつけて楽しく暮らす。時代が違っても、毒親もいるんだ。
    我慢と諦めと運と矜持と気持ちの支え…
    これからのお咲の暮らしに思いを馳せる。
    お咲の色恋やときめきが少しも無かったのが、ちょっと残念。

  • 江戸時代の介護事情が分かって新鮮だった。しかし、二十代半ばのお咲は、私のその頃に比べて明らかに老成しているなぁ。
    良くも悪くも人間関係が太いこの時代を、切ないほどに羨ましいと思ったりもする。

  • 介護小説?母娘の確執小説?諸々の辛い人生のお話も、時代小説ならばそれ程辛くならずに読んでいける。ついでに江戸の風俗やしきたりのウンチクも織り込んで、読んで身につまされて知識欲も刺激されるお得な本でした。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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