サロメ

著者 :
  • 文藝春秋
3.74
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本棚登録 : 1625
レビュー : 209
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905891

作品紹介・あらすじ

現代のロンドン。日本からビクトリア・アルバート美術館に派遣されている客員学芸員の甲斐祐也は、ロンドン大学のジェーン・マクノイアから、未発表版「サロメ」についての相談を受ける。このオスカー・ワイルドの戯曲は、そのセンセーショナルな内容もさることながら、ある一人の画家を世に送り出したことでも有名だ。彼の名は、オーブリー・ビアズリー。保険会社の職員だったオーブリー・ビアズリーは、1890年、18歳のときに本格的に絵を描き始め、オスカー・ワイルドに見出されて「サロメ」の挿絵で一躍有名になった後、肺結核のため25歳で早逝した。当初はフランス語で出版された「サロメ」の、英語訳出版の裏には、彼の姉で女優のメイベル、男色家としても知られたワイルドとその恋人のアルフレッド・ダグラスの、四つどもえの愛憎関係があった……。退廃とデカダンスに彩られた、時代の寵児と夭折の天才画家、美術史の驚くべき謎に迫る傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 「あたしはお前の口に口づけするよ、ヨカナーン」

    新約聖書の聖マタイ伝を基にした、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』。
    義理の娘である自分に色目をつかうヘロデ王の前で、サロメは「七つのヴェールの踊り」を披露し、何でも褒美をとらせると王に言わせる。
    褒美としてサロメが望んだのは、恋する男、獄中の聖人であるヨカナーンの首だった。
    ついに銀の盆に乗って運ばれてきたヨカナーンの首に、サロメは口づけし陶然となるー。

    当時のタブーてんこもりだった『サロメ』英訳版が発売されるやイギリス中で大評判となる。しかし人々が驚嘆し恐れ慄いたのは、すでに注目作家であったワイルドではなく、挿絵を描いた無名の画家オーブリー・ビアズリーだった。

    この本を手に取った時、白黒なのに妖艶で蠱惑的、不思議に印象的な表紙だと思った。
    この表紙こそ、ビアズリーの描いたサロメの挿絵だった。
    男色家で知られたオスカー。そしてオスカーに見出されたオーブリー。オスカーの恋人であるダグラス。
    この本では、ビアズリーの姉メイベルの視点で戯曲サロメを巡る「真実」が語られる。絵画を軸とした歴史的な事実にフィクションを交える、原田マハさんの最も生き生きとする分野である。

    でも失意の底にある病床の弟を献身的に看護し支えながら、その実、失意の底に追いやったのは彼女なわけで…。途中までメイベルが何をしたいのかわからなくて。
    弟の類稀なる才能を世に知らしめたいのか?
    弟を利用してでもサラのような大女優になりたいのか?
    それとも弟を欲しているのか?

    そして最後にようやく合点がいった。あぁそうか。本当に狂気的なのは、オーブリーとワイルドではなかった。矛盾しているようにみえる愛情も憎悪も、もうひとつのサロメの物語だったのか…。
    でも欲張りな私は、もっとオーブリーへの偏愛というか狂気的な愛憎を強く書いて欲しかった気がする。

    読み終わって表紙を見て嘆息する。1世紀もの時を経てなお、なんと禍々しく美しい挿絵なのだろう…。サロメの他の挿絵も見てみたいと思った。

    • マリモさん
      mariさん
      あけましておめでとうございます。コメントをありがとうございますー。
      この挿絵ご存知だったんですね!さすがです( ´∀`)
      私は...
      mariさん
      あけましておめでとうございます。コメントをありがとうございますー。
      この挿絵ご存知だったんですね!さすがです( ´∀`)
      私はなんとなくあらすじだけ聞き覚えがあったのですが、ワイルドもビアズリーも知らなかったので、この時代にすごいもん書いたんだなーと驚きでした。多少なりとも2人のことを知っていると、こちらの本はずっと楽しめると思います!
      2020/01/04
  • <幸福な王子>という童話で知っていた、オスカー・ワイルドにこのような物語があったことに驚きました。
    <サロメ>という戯曲と、その挿絵画家のオーブリー・ビアズリーという18歳の青年、そしてそのひとつ年上の姉で女優のメイベル・ビアズリーの物語です。
    あっという間に、ストーリーに引き込まれました。

    父親のない貧しい家の姉弟で、病弱なオーブリーは挿絵を描くのが天才的に上手く、運をつかむやいなや、その才能を男色家の作家、ワイルドに見出されます。
    そして、ワイルドとの仲が発展し、ワイルドの戯曲<サロメ>の挿絵と英訳(フランス語で書かれていたため)を任されます。

    <サロメ>というのは、聖人の首を欲する狂気の女性です。狂おしい片恋を成就させるために、恋する男の命を奪うという倒錯。自らの思いを遂げるために、王に聖者殺害という究極のタブーを犯させます。
    メイベルは売れない女優でしたが<サロメ>を演じたいという野望を持ちます。
    またメイベルは、弟を心配して暗躍します。オーブリーはワイルドとの仲を引き裂かれ、失意のどん底に陥ります。

    そして、ラストに待っていたものは。
    愛憎に狂った者たちの狂気の物語です。
    どこまでが、事実で、どこまでが創作なのか全くわかりませんが、凄みのあるストーリーに感服しました。
    決してドロドロとしたテイストの話ではないのですが、<幸福の王子>からは全く想像のつかない物語でした。

    • くるたんさん
      まことさん♪こんばんは♪

      まことさんのレビューに惹かれて読んでみました。

      狂気が見事ににじみ出ている作品でしたね。サロメとの見事なブレン...
      まことさん♪こんばんは♪

      まことさんのレビューに惹かれて読んでみました。

      狂気が見事ににじみ出ている作品でしたね。サロメとの見事なブレンド、堪能しました♪

      マハさんのアート系作品は初だったので、こんなに楽しめてうれしいです。
      ご紹介ありがとうございました(*≧∀≦*)
      2019/07/24
  • 私と一緒に地獄に堕ちよう–––。

    あゝ!あたしはたうとうお前の口に口づけしたよ。
    ヨカナーン、お前に口づけしたよ。––サロメより

    燃える様な黒髪に眉間に深い皺を寄せた女性の身体は膝を曲げ泉から浮き上がっている。手にしているのは、硬く瞼を閉じた頭部。切断部分からだらりと帯の様に垂れ下がる血液。
    私がビアズリーの作品である『サロメ』を初めて目にしたのは雑誌であった。モノトーンなのに色鮮やかな色彩を感じるイラストは、今迄に目にした事がのない芸術作品だった。

    本書は、オーブリー・ビアズリー、オスカー・ワイルドの交流を軸にビアズリーの姉であるメイベリルの視点から語られる。当時ではタブーとされた聖者殺し、男色、近親相姦etc…退廃的、不道徳かつ優美な雰囲気を醸し出している。(実際、オーブリーとメイベルはケンブリッジ通りに家を購入し同居。2人は近親相姦が囁かれたらしい。Wiki参照)
    史実と虚構が巧みに入り混じり読者に『そうであったかもしれないと』思わせてしまう著者の巧さには感嘆せざるを得ない。読み進めてしまうのか勿体ない、オーブリー、ワイルドが織りなす物語に浸っていたいと感じた。

    著者、原田マハさんは早稲田大学で美術史を専攻され
    国内外の美術館にキュレーターとして務めた経歴の持ち主である。それ故に彼女は芸術への造形が深い。
    これを機に未読のワイルドの作品、特にサロメを読んで見たい。勿論、ビアズリーの挿絵が収録されているものを。

  • 「サロメ」を読んでるの?と、つぶやかれ、「知ってるの?」と聞くと、「うん。新約聖書の本で読んだよ。」という言葉を残して、消えてしまった。数分後、目の前に現れた1冊の本とともに「海外の小説なり、海外のことについて書かれているものを読むなら、聖書のことは知っておかないと、本当の意味がわからないよ。」とダメ出しされた。渡されたその本はカバーがボロボロで、かなり読み込んでいるようだ。「面白いから今もたまに読むんだ。」と一言。私の視線を感じたからか、ボロボロの説明があった。

    この作品は、オスカー・ワイルドの戯曲・妖姫「サロメ」を世に送り出された天才画家・オーブリーと姉・メイベル・ビアズリーの愛憎関係が渦巻く物語である。
     
    恥ずかしながら、今まで聖書に関心を持つようなきっかけがなかったため、聖書に関する知識がまったくなかった。
    それゆえ、宗教的な背景があるこのような作品では理解できないことや理解できていないことすらわからないことがあるということが今回よくわかった。
    例えば、異母兄弟の妻・ヘロディアスの美貌にほれ込み、兄から奪って自分の妻にし、自分とヘロデヤとの不倫を弾劾した洗礼者ヨハネ(ヨカナーン)を投獄するが、民衆に人気のある彼を処刑できない。民衆に人気というだけで、王はなぜヨハネを殺せなかったのか。それは王自身も民衆と同じようにヨハネを預言者と思っていたこと、また民衆の暴動を避けるためであったようだが、王を含む民たちが預言者を崇める理由が、当初は理解できていなかった。
    他にも、ワイルドのサロメは、ヨハネに恋慕していたという、耽美主義的な話になっているが、聖書で描かれている「サロメ」とワイルドの「サロメ」の違いがもたらすインパクトが当時に生きる人の中でどれほどのものであったかたも量ることができない。

    異端児のワイルドを納得させるあるいは超えは才能を知らしめるその挿絵画家オーブリーはそれ以上の狂人なのであろう。

    その狂人の姉・メイベルが弟を守ろうとしてアルフレッド・ダグラスと共謀し、フランス語「サロメ」の英語訳出版から弟を引き離した真実の裏事情があるのではないかと、勘繰ってしまう。例えば、メイベルがワイルドあるいはオーブリーに恋愛感情を持っているとか。

    精神に病んでいる時には避けたい本であるが、心に訴えかけるインパクトは大きい作品であった。

  • 表紙は予言者ヨカナーンの首に口づけをしようとするサロメを描いた一枚。
    本書はこの挿画を描いたオーブリー・ビアズリーと彼の姉・メイベル、そして戯曲「サロメ」を生み出したオスカー・ワイルドを巡る物語です。

    物語のはじまりから、ビアズリー姉弟が堕ちていく気配が満ち満ちているのです。
    誰かを想う気持ちと大きな成功への渇望に突き動かされるように、どんどんねじまがった方向に事が進んでいく様子は、怖いと思いつつ目が離せない魅力がありました。
    ラストシーンのどろりとまとわりつく蜜のような甘やかさにぞくりと鳥肌が立ちました。

    散りばめられた”禁忌”の気配に酔いしれながら読了。

  • 文句なしに惹き込まれる世界だった。

    芸術の世界は縁もなければ知識もない。
    もちろん、ワイルドも「サロメ」も耳にしたことがある程度。
    なのにひと目見たら忘れられないオーブリー・ビアズリーのペン画とマハさんの描く世界に瞬く間に心は鷲掴みにされた。
    妖しさも美しさも滲み出ているオーブリーの挿絵と心の奥底が疼くような戯曲の中の台詞が心を刺激してくる。

    モノトーンのペン画。なのに渦巻く想いが色へと姿を変え、何色も混ざり合った色に取り囲まれるような感覚と
    「あたしはおまえの口に口づけするよ、ヨカナーン」こんなシンプルな言葉なのに何倍もの感情の波が押し寄せてくる感覚に襲われた。

    この史実に基づいて描かれた世界と、ワイルドの「サロメ」の戯曲との見事なブレンド。

    あり得ない例えだけれど背骨に鳥肌が立つような読後感。


    こちらのサイトで出会えた作品。出会いに感謝です。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      マハさんは最近絵画系ばかりで他は読んでないなぁ(〃∀〃)ゞ
      これは芸術系?「サロメ」って聞いたことあるけど...
      こんばんは(^-^)/

      マハさんは最近絵画系ばかりで他は読んでないなぁ(〃∀〃)ゞ
      これは芸術系?「サロメ」って聞いたことあるけどどんな話かわからないなぁ。
      モノトーンのペン画素敵だね。
      私はマハさんの新刊が絵画系なので読もうと思っているよ(^o^)v
      2019/07/27
    • くるたんさん
      けいたん♪おはよう♪

      私は逆にアートのマハさんは初(*∩ω∩)
      これはスタートからひきこまれたよ♪
      サロメも聞いたことある程度、表紙の絵、...
      けいたん♪おはよう♪

      私は逆にアートのマハさんは初(*∩ω∩)
      これはスタートからひきこまれたよ♪
      サロメも聞いたことある程度、表紙の絵、なんとなく見たことあるような…程度だったけど見事にマハさんの世界に連れ込まれたよ♪
      愛と狂気が描かれた作品だった(*≧∀≦*)


      あ、新刊、タブロー?私も予約中だけど125番目(´□`; 三 ;´□`)気長に待つわ〜。
      2019/07/27
    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      そうなんだ!「サロメ」もよさげだね♪
      そうそう、タブロー。
      125番目(⊙⊙)‼ それはまだまだだね。
      ...
      こんばんは(^-^)/

      そうなんだ!「サロメ」もよさげだね♪
      そうそう、タブロー。
      125番目(⊙⊙)‼ それはまだまだだね。
      私はKindleだと安いので購入しようかなと思っているけど、「たゆたえども沈まず」の方がよかったって聞いて、ちょっと先送りになってる。
      「たゆたえども沈まず」が凄く好きでね…。
      まだ余韻に浸っていたい。
      くるたんより先に読むかなぁ。
      2019/07/27
  • これぞ原田マハさんの真骨頂ではありませんか!オスカー・ワイルド、オーブリーとメイベル、実在した稀代の天才を、事実をもとにフィクション化していく手法が毎回鮮やかで驚かされる。ほんとうにこの人達を目撃したような錯覚さえ覚えてしまう。また、マハさん作品は時代を絶妙に入れ替えながら話を同時進行させる所が素晴らしく、楽園のカンヴァス以来、とくに画家の話の作品には目を見張る構成力にうなされる。私は単行本で読んだのですが、表紙にオーブリーのサロメの挿絵が大きく描かれており、本を読みながら何度も何度も表紙の絵を眺めずにはいられませんでした。19世紀末とい時代にいかに衝撃的であったか、きっと現代の我々には想像がつかないぐらいでしょう。素晴らしい作品でした。これぞマハさんです。皆さまにも是非ともご一読をお勧めします。出来れば単行本で。

    • まことさん
      この本は『ゲルニカ』の次くらいに一度借りたのですが、難しそうだと思い一度返却して、再度借りました。
      読んでみたら、少しも難しくはなくとても...
      この本は『ゲルニカ』の次くらいに一度借りたのですが、難しそうだと思い一度返却して、再度借りました。
      読んでみたら、少しも難しくはなくとても面白かったです。
      夏の暑さをふきとばしてくれるかんじでした。
      マハさんは、やっぱり天才かもと思いました。
      ご紹介ありがとうございました!
      2019/07/18
    • kanegon69 さん
      良かったです!これからもマハさん一緒に応援しましょうね^_^
      良かったです!これからもマハさん一緒に応援しましょうね^_^
      2019/07/18
  • 「その淫靡さゆえ、邪悪さゆえ、目を逸らせなくなってしまうのだ。誰の心にも潜んでいる罪深きものへの興味、怖いもの見たさ、人間の原初的な感覚に、オーブリーのナイフはまっすぐに切り込んでくる。彼の<サロメ>をひと目でも見てしまったら、もう逃げられなかった。」

    オスカー・ワイルドの代表作の一つ戯曲「サロメ」の挿絵を描き、19世紀末のデカダン芸術の異端児にして天才と位置付けられたオーブリー・ビアズリーの愛憎に満ちた劇的なたった25年の人生を、彼の姉メイベルの視点から描いた原田マハさんの作品。

    正直、作中プロローグで設定された、21世紀を舞台にしたミステリー要素はかなり肩透かしだし、キーパーソンと設定されたのが女のメイベルであるためか、全体的にあまりにもメロドラマ的でちょっと食傷気味になってしまう。

    でも、マハさんの他の作品を考えても、この方のキュレーターとしての経歴的にも、こういう設定が本当に好きなんだろうなと思う。

    とはいえ、ビアズリーの作品の特色だけでなく、「サロメ」にとどまらない人生の転機も丁寧に捉えています。
    先に時代に名を馳せていたワイルドという奇抜な天才が、ひと世代下の異端の天才であるビアズリーの人生を絡め取ったようで、その実、ビアズリーの才がワイルドを踏み台に食ってしまったというのは興味深い。
    どちらも不幸になるのだけど…。

    ビアズリーの画集を眺めながらその人生を簡略に知る文芸書としては読みやすくていいと思います。

  • 未発表版「サロメ」の挿絵についての相談を受けた甲斐。
    彼の研究の対象は、その絵を描いたオーブリー・ビアズリー。
    場所はロンドン。そして過去に遡り、姉メイベルの目線で
    彼のセンセーショナルな半生が語られる。
    25歳で夭折した天才挿絵画家、オーブリー。
    姉で弟を溺愛する女優のメイベル。
    稀代の奔放な作家、オスカー・ワイルド。
    貴族の子弟でワイルドの恋人、アルフレッド・ダグラス。
    四人の愛憎劇の幕が上がる。それは「サロメ」の如く・・・。
    書棚から「画集ビアズリー」を引っ張り出し、
    絵を確認しながら読みました。
    ほんの5年の活動期間にあった出来事のフィクション化で、
    実在の人物を盛り込まれています。
    弟の才能のため、かつ、自分の女優への道のために奔走する
    姉メイベル。仲の良い姉弟の前に現れた“怪物”オスカー。
    彼と歩もうとし離れていくオーブリーへの想いが、
    メイベルを“運命の女”に変容させていく・・・その過程の怖さ。
    怪物は、怪物を生み、怪物を昇華させる。
    退廃とデカダンスに彩られた、それは劇。主役はメイベル。
    「あたしはおまえの口に口づけするよ」むぅ、ドラマチック!
    時空列が前後する中に盛り込まれたミステリー感が見事でした。

  • 読ませる、読ませる。
    なのに、★四つにしたのは、出来るならばもう少し長く、この作品の中に存在していたかったという、贅沢な物足りなさからである。

    『サロメ』を巡る、ワイルドとビアズリー姉弟の物語。

    今回は現代パートは限りなく省かれていて、ほとんどが姉メイベル・ビアズリーの視点で語られている。
    『サロメ』の話自体は知っていたけれど、ワイルドの『サロメ』と、ビアズリーの挿絵にそんな大きな関係があったとは知らなかった……。

    なのに、その二人をも凌駕してしまうメイベルの化け物感が凄すぎる。
    結局、誰が誰を愛し、憎しみに駆られたのか。
    もちろん原田マハの得意とする絶妙なフィクションが織り交ぜられているとはいえ、こんなドラマがあるのなら、ワイルドの『サロメ』を読まずにはいられないなぁ……。

    『楽園のカンヴァス』からずっと、驚かされている原田ドラマ。
    ああ。今回も素敵だった。


    20170817

    早いけれど、再読。

    クライマックス〜エンディングがパッと思い浮かんで来なかったので、自分のために詳しく残す。
    以下、ネタバレ注意。

    メイベルの執念。
    弟を愛することと、自らが光を得ることの両方を遂には肯定し、ワイルドとダグラスを舞台から引きずり降ろすことに成功する。

    彼女が求めたのはオーブリーの首だったのか。
    ダグラスに英訳を求めたと嘘を吐くことで、オーブリーが喀血をした際の口付けに由来する。

    そして、姉の計略によって遠からずオーブリーは亡くなってしまう。

    そのオーブリーが求めた首は、今回の核になっている「ワイルドの首」だった。
    エンディングでたった一夜、たった一人の観客を前にサロメを演じたメイベルは、その演技を以てワイルドの息の根を止める。
    そこに、絵を埋めて。

    手に入らない愛しき男の首を欲するファムファタル。
    幕間が非常に上手い。

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著者プロフィール

原田マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞。2019年『美しき愚かものたちのタブロー』で第161回直木賞候補に。

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