コンビニ人間

著者 :
  • 文藝春秋
3.61
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本棚登録 : 11348
レビュー : 1714
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906188

感想・レビュー・書評

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  • タイトルからのイメージ&ページ数も多くないことからサラリと読めてしまうような軽いものを想像していたけれど、中身は濃く重たかった。
    主人公と白羽は、タイプは違うけれどどちらも一般的に「普通」と言われている人間とはかけ離れており、一般社会の中では生き辛いタイプの人間である(本人たちがどこまで認識しているかはさておき)。
    彼女たちの心情や行動などはもちろんのこと、周りの(彼女らよりは)普通の人間たちの言動なども妙にリアルで、まさに今の時代の小説という感じがした。
    もし現実に主人公のような人がいたとしたら、本人にとって幸せとはどういう形なんだろう。
    そもそも幸せという概念すら意味をなさないのかな。
    などと考えたりしました。
    今まで読んだことのない雰囲気の小説で、著者の他の作品も読んでみたいと思いました。
    でも、白羽は嫌いです 笑

  • 読んだ後の虚無感が凄まじい本であった。自分はいわゆる「普通の人間」であると思って生きてきたし、周りからもそう思われていると思うが、これを読んだ後に、自分にも古倉さんの一面がどこかあるんじゃないかとギクリとさせられた。

  • 主人公は発達障害なんだろうなぁ。だから分かりやすく周りから気味悪がられる場面が出てくる。例えば喧嘩を終わらせるためにスコップを取り出して1人ずつ頭を殴るなど。

    でも途中で出てくる白羽が狂ったように話し始める縄文時代から世の中は変わっていないんだ主張から様相が変わって見える。結局役に立たない人間は村から淘汰される。結婚していない独身の女、働かない男。子供を作らない人間。自由だ、男女平等だと言ってもそうではない。底辺が感じる不平等。

    それらの人間を排除し続け、「普通」の人間は普通でない人間について叱ったり注意する事に嬉々となる。分かる気がする。怒ったふりをするとこちら側の人間として受け止められる気がした。関心がないから怒るという事がない。なるほど…!と思った。

  • 「皆、変なものには土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている。私にはそれが迷惑だったし、傲慢で鬱陶しかった。」

    今まで読んだ村田作品で一番読みやすかった。
    最後も綺麗に(と言っていいか迷うところだけど、でもやっぱり綺麗だと思う)まとまっているし。
    最後にドアを閉めて終わる代わりにドアをぶち壊して終わるような他の作品も良いし、こういうのも良いなぁ。
    ヒリヒリするけど滑稽で、吐き気がするけど不快じゃない。
    心の底のすくって欲しかった泥をすくい上げてくれる感じだった。

  • 一気に読める読みやすい文章と量。
    内容は、この主人公ほどではないけど、共感させられ、考えさせられた。社会にとけ込めるように振る舞うとか、周りの人の話し方や服装にだんだん似てくるとか。主人公は極端だけど、少なからずみんなそうして生きてるんでは?
    生きづらさを感じてそうな人や周りにそういう人がいそうな人にすすめてみよう。

  • ‪子供の頃から周囲の常識になじめない主人公が、コンビニで働いているときだけは、「世界の正常な部品」になったと安心することができるー‬

    ‪登場人物が全く理解できないタイプであっても私達はそこに何かしらの共感や解釈を与えようとする。‬
    ‪その点で言うと仕事や職場の人間関係は、多かれ少なかれ生活や人格形成に影響を与え、社会や職場での少数派は他の価値観や評価による生きづらさを感じる事は多々ある。多数派と思われている人々の「常識的な」範囲を超えると矯正もしくは排除する雰囲気もあるのは確か。‬
    ‪個体の自由に対する不寛容さと多様性への挑戦を描くにはよいテーマ。‬
    ‪しかし個人の自由を描くにはその生活描写はグロテスクでありすぎるし、狂気じみていて、主人公にとって祈りであるはずの光の箱であるコンビニーー社会の縮図としてのーーが、一枚めくると危険な場所のように描かれているのは本意でないように感じられた。‬
    ‪周囲の声に合わせて自分を失いかけ、仕事によって再生していく生き生きしさをもっと描いてもよかったのではないか、と思う。‬

    ‪「コンビニというよりは、むしろ普通の人間の、コンビニというものを脱いだ普通の生身の人間のグロテスクさみたいな部分に、目が行くようになりました。‬
    ‪小説を書くに当たっては嫌な部分も描きたくて、嫌な人間、人間の嫌な側面も書きました。」‬
    ‪登場人物たちの噂好きなところだとか、グロテスクなところ「そういう生々しさを書くのが、小説を書いている中で喜びでもあります。」‬
    ‪と著者が言うように、グロテスクな生々しさを描くことに引っ張られて安易で、示唆のないドキュメンタリーのような印象を感じた。‬

  • 小鳥の死骸を見て→父親が好きだから持って帰って焼き鳥にしよう。
    喧嘩を止めてと言われて→スコップで二人を殴って止めよう。

    感情の欠落した合理的な思考回路から、幼少期より「異常」として扱われてきた主人公 恵子。彼女はなにがおかしいのかわからないけれど、両親や妹の悲しむ姿は見たくなくて、その「異常」を「治さなければ」と考えてきた。

    大学生になり、コンビニでのアルバイトをはじめた恵子は、 コンビニ店員としてマニュアル通りに動くことで、社会の一部として自分が「正常」に機能できていることを実感する。「治った」ように見せかけられていることに満足する恵子。しかし、 36歳を迎えてくると、今度はコンビニでアルバイトを続けていることや結婚していないことで、また周囲から「異常」として扱われだす。

    そんな中で恵子は同じコンビニに婚活目的で働き始めた男性 白羽と出会い、同じく周囲から「異常」とされる存在である彼との奇妙なやり取りがはじまるーー。


    異常と正常の対比を主題とした作品などは好んで読むのですが、多くは「異常」とされる人が自分を排除しようとする世界に抗っていたり、逆に無関心に自身をまっとうしたりというもの。

    一方で、この作品の「異常」な主人公は、抗うでも無関心でもなく、 社会適合へのプレッシャーを淡々と受け止め、周囲の「正常」な人のしゃべり方や表情を模倣して溶け込んでいるようにみせかけていきます。 「正常」側の人間に「常識」を押し付けられることには、煩わしさをかんじながらも憤ることはありません。

    そんな主人公のスタンスに自己防衛的無機質さを見ますが、そこに波紋を広げるのが白羽。途中から登場する彼の社会への好戦的な発言にエグみある対比を感じます。

    コンビニ人間として無感情に社会に溶けようとする主人公と、社会に敵対しながらも「正常」とされたいとあがく白羽、そして自分を「正常」として「異常者」を矯正しようとする周囲。このコントラストが非常に気持ち悪い。見たくないものを暴かれていく感覚でした。

    • tadtantanさん
      突然のコメント失礼致します。

      ご感想、興味深く拝読しました。正常と異常、周囲と主人公、白羽の対比に着目される読み方、共感しました。

      そこ...
      突然のコメント失礼致します。

      ご感想、興味深く拝読しました。正常と異常、周囲と主人公、白羽の対比に着目される読み方、共感しました。

      そこで、一点。mizukisekiyaさんが、コントラストについて、どのような点が「気持ち悪い」と思われたのか、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。
      2019/01/21
    • mizukisekiyaさん
      @tadtantan さんコメントありがとうございます!(返信機能ってないんですかね;コメントの使い方わかっていなかったらすみません。)
      ...
      @tadtantan さんコメントありがとうございます!(返信機能ってないんですかね;コメントの使い方わかっていなかったらすみません。)

      「気持ち悪い」というのはその後に続く「見たくないものを暴かれていく感覚」なんですよね。
      実際社会では多様性を認めることが正義とされているにも関わらず、正常と異常のレッテル貼りがあまりに無意識に悪気なくなされている。
      それがこの作品で突き付けられたなと。もちろん自分自身含めて……。

      tadtantanさんのレビューも拝読しました!まさに共感の嵐です。しかも細やかに読後の感情が言語化されていて腹落ち感ありました。
      言葉をお借りすれば、私の気持ち悪さはtadtantanさんの言う「居心地の悪さ」かな。
      2019/01/22
    • tadtantanさん
      @mizukisekiya さん

      「多様性を認める」という理想と、一様の「正常」が幅を利かせる現実の不一致。しかも、mizukisekiy...
      @mizukisekiya さん

      「多様性を認める」という理想と、一様の「正常」が幅を利かせる現実の不一致。しかも、mizukisekiyaさんの仰るレッテル貼りが「無意識に」なされてる点、確かにモヤモヤしますね。(問題が錯綜してる感じもします…)

      お忙しい中ご返信いただき有難うございました。(返信機能、見当たりませんね&私のレビューもご覧いただきありがとうございました!)
      2019/01/22
  • どうしても仕事モードで読んでしまう。
    主人公のような生きづらさを感じながら生きている人は少なくない。
    そんな人たちに対して私たちは「◯◯障害」だとかなんだとか、すぐにカテゴライズして「合理的配慮」をしようとするけれど、その人たちからこの世界がどう見えているのか少しでも解ろうとできているか。
    読み進めながら、自分の傲慢さやいい加減さに向き合わざるを得なかった。

  • ずっと気になっていてやっと読んだ。予備知識なしで読んでみたかった。おもしろくもある一方、チクチク痛い。登場人物の痛さが痛い。登場人物が感じている痛さが痛い。自分はそっち側なのではないか、という疑いを持っているから自分に引き付けて読んでしまう。叱られたくない。幸いなことに(?)、主人公は社会の価値観を全く内面化していないどころか価値観というものを殆ど持たず、痛みを感じてないように見える。欲望も持っていないように見える。欲望がなければ価値観とぶつかることもない。これも一つの自由の形かもしれない。

    凡庸な物語だったら同棲から愛が芽生えて、メデタシメデタシ、となるところだろう。だけどまったくそうならず、最終的にコンビニ人間へと還っていくところが良かった。妹が実態を目の当たりにして茫然としているところが、ちょっと好き。やってやったぞ!というか、おまえらの思い通りにはならんぞ!みたいな。コンビニ人間として再覚醒するところはカッコイイとすら思った。

    それにしても、自然な人間ってどういう人間なんだろう。自然なままで人間になることはできるのだろうか。主人公はコンビニという枠によって(コンビニ)人間になることができた。一方、主人公の周りの人は社会的価値や規範の枠によって人間になった。そう考えると、どちらも何らかの枠によって人間になったのであり、社会の異物として描かれる主人公と、周りの社会的に普通(?)の人は相似形なのかもしれない。

  • 本作が芥川賞を受賞した時から気になっていた。遠住みの姪っ子とは年に2、3回しか会えないのだが、幼い頃から癇の強い子だとは思っていた。登校拒否になりながら何とか高校を卒業。仕事に長続きしなかったが、コンビニバイトを始めて10年近く落ち着いている。店長から接客コンテストに推薦され優良成績を納めた。本採用の話を断り今もバイト勤務で続行中。
    姪っ子はコンビニに救ってもらったような気がしていた。読んで、コンビニはあらゆる人々を受け入れる場所なのかもしれないと更に思った。出来立て当時は若者の姿が多かったのに、最近は老若男女が訪れる場所となっている。
    色んな人と接する中で価値観が合致する人としない人は自ずとわかって来て、生き易い方に属していく。けれど、許容範囲の『普通』とかけ離れた物差しを持っていたらさぞ生き難いだろう。常識的で『普通』を意識せずに暮らしている人には、到底彼らが理解できるはずがないだろう。私はといえば、彼らに興味深く好奇心がそそられ観察したくなる人。

    主人公は18年間コンビニのアルバイト店員を続けている36歳の未婚女性で、就職や結婚といった「普通」の価値観を押しつけてくる世間と格闘しながらも、それに合わせようと努力しながら生活している。
    姪っ子は感情が激しく強烈な個性でぶつかって来る。同棲した時も2週間で帰って来たらしい。
    姪っ子も気ままに生きているように見えて、案外格闘しているのかもしれないなぁ。
    村田さんは『消滅世界』で夫婦間のセックスがタブー視され、人工授精で出産することがスタンダードとされるた近未来を描いている。
    肯定はしたくないが簡単に『ありえない話』だと一蹴できない。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県印西市生まれ。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞しデビュー作となる。2009年『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補及び、第31回野間文芸新人賞受賞。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。2012年『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。2014年『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
2018年8月末、『地球星人』を刊行。

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