コンビニ人間

著者 :
  • 文藝春秋
3.61
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本棚登録 : 11469
レビュー : 1734
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906188

感想・レビュー・書評

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  • 世間一般の価値観、ムラの掟が分からずに、しかし、仲間はずれにならないように周囲を模倣し、コンビニのマニュアル通りの店員としてバイトとして働いてきた主人公への世間の風当たり。確かに主人公の感覚には理解不能なところもある。
    多様性をいいつつも、異分子は異分子として仲間とは見ない登場人物たちのなかで、自分らしく価値が発揮できる自分なりの生き方を自ら選ぶ主人公の吹っ切りが気持ちよかった。
    18-118

  • どうやって感想を書いたらいいかわからなかった。この本を読んで、いろんな軸の感想が溢れて、一本筋の通った感想に考えをまとめられなかったから。

    世の中の人たちはコンビニ人間を読んでどんな感想を抱くのだろう、が最初に思い浮かんだ感想。「普通」に対して、苦しんでる人は多いのだろうか?苦労はそれなりにあるけどさほど大きな問題でない人のほうが多いのだろうか?
    ・・・きっと、度合いこそ人それぞれであれ、共感を呼ぶからこの本が話題になるのだろうな。
    自分も共感する部分はたくさんあったし、「普通」の皮を被ろうと頑張ってる自分がいることも自覚してるし。社会の一員として認められることが必要だからそうしてるし、その根底には認められたい欲求や、自分の未来のための投資という側面や、ありたい姿に向けての手段だったり、いろいろあることを知りながら、そして知らない観点もあるだろうと思いながら。

    ・・・全部の感想に対して自分の返答を書いていったらものすごい量になりそうなので、あとは感想だけ連ねることにする。

    ・ケンカや子供が泣くことを止めるために物理的制裁(要は暴力)を加えることを、ゾッとするとか引くとかは、やはり感じるべきなのだろうか?それが法律だから?生命の繁栄と逆の行為だから?だとしたら、「普通」を強いることは精神的暴力ではないのか?言葉の暴力ではないのか?それらは同列には扱われないのか?
    ・世の中の人や自分は、主人公の古倉みたいにはなりたくないとやっぱり思うのだろうか?
    ・主人公みたいな一面を持っていることを認めて生きている人はどれくらいいるのだろうか?
    ・主人公が身近な人だったとしたら、許すことはできるだろうか?許すという言葉は、あえて「普通を説く人側」として書いたけど、つまり、何の指摘・指導・忠告・助言・諭すこともなく、多様性の一人として接することができるだろうか?受け入れられるだろうか?自分や「普通」の枠、「もっとこうしたほうがいいと思う」の枠に収めようとせずにいられるだろうか?もしくは、諭すのではなく干渉せずとも導くのがよいのだろうか?
    ・白羽に対して、どう感じるのだろうか?(さすがに極端な例の登場人物なのかもしれないけど、あんな人はごまんといる。普段あまり目にしないだけで)白羽も一人の人間の生き方だと認めるべきなのか?ムラとして、社会として排除すべきなのか?資本主義のために動いているかどうか(古倉は歯車だと認めながら動いており、白羽は動いていない)が基準なのだろうか?
    ・結婚、出産、就労、定職、社会に生きるための掟とは何なのか?掟なんてあるのか?
    ・主人公が最後、コンビニ店員である自分に存在意義を認めたことに対して、心からハッピーエンドと思うのだろうか?ハッピーとかバッドとかではなく、それも生き方だと考えるのだろうか?

  • コンビニでしか働けないという極端な状況を描いているが現代の我々にも通じる所はたくさんあった。
    何の為に生きていくのかという普遍的なテーマに向きあったものであり、考えさせられる点が多い。

  • 最近はこういう人が増えている気もする。

    相手の感情が分からなかったり、
    何をすればいいか決められなかったり、
    ロボットのように考えてしまう人。

    恵子さんほどの人はいないが、
    マニュアル通りに生きるのは楽だ。
    マニュアルを覚えて、それ通りにやって、
    仕事も人間関係もうまくいってたら、
    そんなに楽なことはない。
    でも、そこに甘んじていたら…。

    ロボットみたいな人間が増えて、
    科学が発達して人間より高性能なロボットが増えて、
    人間はどうなってしまうんだろう。
    何年後かの未来。

    個人的には、白羽さんが面白くて好き。
    恵子さんとは対照的で、人間としての浅ましさがてんこ盛りな人だなと思った。

    異物を排除して、安心しているひとたちも人間らしくて、そこらじゅうで見る風景だなと。

    コンビニという小さな世界が、大きな世界の縮図で、見ていて面白く、そして不安になる話だった。

  • 主人公程異質ではないけど、自分が『普通ではない』ことを理解して、周りを見て演技して疲れている人は沢山いると思うなー。
    とりあえず雀は雑菌が多いし食べるところも少ないから鶏の方が効率が良いし、人をスコップで殴ると死んでしまうことがあるから駄目だ、とか理屈で説明できるところはしてあげれば良かったのに。

    コンビニの声が聞こえるなら、コンビニ店長になれば正社員になれるし、良いのではないかと思った。仕事が忙しくて出会いが無いとか言えるし。でもバイトにコンビニのために生きるよう強要して、パワハラ店長として修正されるかな?

  • 30代後半でコンビニバイトで恋愛経験なしの女性という主人公の設定をみるだけで、うんざりするほどよくある「女の悩みとか葛藤の話」を読まされるのかとおもいきや、全く全部、覆された。

    主人公は、よくいえば、常に第三者的で俯瞰的で鳥瞰的なヒト。
    悪く言えば自分を持たない、持てない、感情がほとんどないヒト、という印象。

    けれどどうしても私は主人公の方に惹かれて、主人公の周りの出来事に、彼女の立場になって悲しんだり苛ついたりしてしまった。
    序盤、主人公の異常性がわかる小学生の頃のエピソードがあるのだけど、私はそのシーンに妙に親近感がわいてしまって、だから主人公の方に感情が寄ってしまったというのがあるかもしれない。

    主人公は大人になって、妹のアドバイスを参考に、ようやく世間の人々と同じような姿に擬態できていると思っても、読者から見ると、やっていることが所々異常だと思える。
    「こうすればみんなと同じにみられる」
    「これをしていれば世間にはふつうと思われる」
    そうやって取り繕っていても、やっぱりどこか異質であることは、周囲にはばれていたのかもしれない。
    妹が「どうして普通になれないの」と泣いてしまったシーンは、どちらに非があるわけでもなくて、とても悲しかった。

    でも逆に、感情に左右されないところは羨ましいと思った。
    「それは怒ることなんだな」「これは嫌だと思うものなんだな」「これはかわいいというべきものなんだ」
    何かを見て相手と同じ行動・感情を示せば、周りから同じだとみられること。
    「これをすると他人と同じように生きているように見てもらえる」行為。
    別にやらなくてもいいのに、他の人がやっているのだから、私もやっておかないと、って思うムラ社会から疎外されることへの恐怖観念が、彼女にはない。

    終わり方は、少しだけ救われるような、後味は悪くない印象でした。
    彼女があのコンビニで働けるといいなぁ。

  • 現代日本の真髄を描いている小説だと思った。30過ぎて結婚せずコンビニで働いている女は「おかしい」「負け組」と見なす日本。自分は自分で他人に迷惑をかけていなければ、自分にとってそれが一番良いなら良いじゃないかと主人公と同じように私も思う。
    まわりにとって「普通」であるようにつくろう主人公、わかる。ブランドやら流行にのることが「普通」である女子がたまに(いやいつもか)疎ましく感じる。
    特に日本はみんなが同じであることを通常、普通と見なす傾向にあるんだろうなー。
    生きづらい。
    20180521読了

  • コンビニ人間、社会にたくさんいると思う。〇〇人間、と名前を変えて。おそらくスペクトラムなのだろうな、と思うけれど、みんながみんな理解してくれるわけではないもんな。マニュアル化された中の方が生きやすい人もいっぱいいる。自分が生きやすいように生きることで、生きづらさを感じてしまう。なんだか切なくなってしまった。

  • 「皆、変なものには土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている。私にはそれが迷惑だったし、傲慢で鬱陶しかった」
     恋愛しなきゃ、正社員じゃなきゃ、結婚しなきゃ、子どもを産まなきゃ、「普通」じゃない。そういう目に見えない圧は、確かにある。
     大学1年から18年間、同じコンビニでバイトを続ける主人公・恵子は、コンビニでマニュアルに沿って働くことによって社会の一員として、世界の正常な部品として動作している。
     この小説にはもう一人、生きづらさを抱える白羽という人間が出てくる。生きづらさを解消するコンビニという場で満足していた恵子だが、自分の人生に干渉する人間の声を抱え込み逃げ惑う白羽と出会い…。二人が同棲や結婚をすることで、果たして世界に「正常」なものとして受け入れられるのだろうか?

     この小説を読んでると、わたしも子どものころ、「普通」を探すのにかなりの心血を注いでいたことを思い出す。みんなが面白いと口を揃えて言うテレビ番組を観て(何が面白いのかわからないことが多かった)、「あの子のこういうところがムカつく」って怒っている子がいればふんわりと同調する。1対1で友だちと対峙するのは少し緊張した。普通じゃないことを見破られる気がして。
     そんなことを思い出すと、主人公のことを「変な人」と一刀両断できなくなる。「伝染し合いながら、私たちは人間であることを保ち続けている」には思わず頷いてしまう。

    「多様性」が叫ばれる世の中だからこそ、この小説が世の中に広く受け入れられたんだろうなと。「普通はこう」「普通わかるでしょ」的な言葉を投げかけ、無自覚に人を生きづらくさせているんじゃないかと、自己を省みるきっかけになった。

  • 世の中を皮肉っているところが痛快だった。

    主人公・恵子は、コンビニのためにコンビニとともにコンビによって生きている人間。勤務が終わってからも明日の勤務のために食事・睡眠をとり自分の肉体を整える。働いていない時間も、コンビニのために生きているのだ。

    恵子はあまりにも極端な例だが、現代人の生活と変わらないのではないか。月曜から金曜まで仕事に行き、夜は明日の仕事に備えて寝る。週末は日頃のストレスを発散し、また来週からの仕事に備える。デフォルメすることによって、世の中のリアルを浮き彫りにしているのだと思う。

    世間からふつうだと思われている登場人物たち、コンビニで働いている人間をバカにする白羽。ふつうじゃない人間の方が、可愛そうなのか?生きづらいのか?世間からはふつうじゃないと思われていたとしても、生き甲斐を見つけて生きている恵子の方が幸せなのかもしれない…

  • この主人公に「狂気」という言葉をあてがう人は、これまでもこれからもきっと、マジョリティの世界からマイノリティを排除し続ける類の人間なのだと思う。

    何をもって人間を人間たらしめるのか、その基準はどこにあるのだろう。
    マジョリティの持つ「ふつう」の基準に必死に合わせようと生きる主人公は、努力の賜物であり賞賛の対象であり、決して、社会的悪ではない。

    「治療」しようとしたり、思考を矯正しようとしたりする世間の傲慢さ。
    登場する白羽は、主人公と対照的に、社会で生きていくために成長しなければならない人間である。しかし、主人公にいたっては、他人をトレースしながらそれをモデリングしながら、必死に世界と繋がろうとして生きてきたのではないだろうか。

    マジョリティには決して理解されないその努力をしてきた人間をそれでも否定する世界は、それこそ狂気に満ちている。

  • 違和感と恐怖を感じる、ホラー小説でないのにホラー小説みたいだった。
    36歳未婚の古倉恵子、ずっとコンビニバイトを続けていて小さい頃から周りから普通じゃない、と言われるが何が普通じゃないのか普通とは何か、違和感で訴えてくるお話だった。

  • 確かに驚くところもあるけど、結局は本人がそれがいいならいいと思う。しっくり落ちつく所があるならいいと思う。

  • 面白かったです。
    恵子さんが普通では無いとは感じましたが、それでは普通って何だろう?というのを最後までゆらゆらと考えた読書でした。
    コンビニ人間でも、生きていく場所があるのは良いことだと思います。白羽さんみたいに斜に構えて自分では何もしない人よりかはずっとまとも。
    恵子さんが最後に光が見えていたのが良かったです。
    村田さんって今でもコンビニ店員されてるのかな…?コンビニの声がリアルでした。
    「ねぇみんなが言う普通ってさ なんだかんだで実際は多分 真ん中じゃなく理想に近い だけど普通じゃ まだ物足りないの」と昔Perfumeが歌ってたのを思い出しました。

  • 「普通とは何か?」か、すごいな。
    何に喜びを感じ幸せと思えるかは個人によって異なるということ。
    自分に正直に生きたほうがいいよってメッセージも読み取れた気がする。

  • 「普通とは何か?」を考えさせられる作品ですね!
    某テレビ番組で取り上げられ、話題となった芥川賞作品です。
    「この世は多数派によって形成されている」と某国の某有名人が言っていました。この作品はこの言葉に対して訴えているような感じもしました!

    「私」の当たり前は他人からしたら当たり前ではない、それでは何が当たり前なのか⁇
    世の中の「普通」とは、何をもって「普通」と言えるのだろうか⁇
    それはあなた自身の「心」次第です・・・
    と言っているような感じです。少なくとも私にはそう感じ取りました!
    なかなか意味深い作品だと思います。
    単行本にして200ページにも満たさないので、移動時間などを利用して読むのにふさわしいと思います!
    まだ未読の方は是非ご覧になって下さい!

  • 先日読んだ白石一文氏の話をしていると、叔母が
    「この本もなんとも言えない本」
    と、言って貸してくれた。

    短い話なのでイッキ読みしたけれど、あー、確かに、この本も
    「読んでて疲れる本」
    やったなー、と、思った。

    特に「社会不適合者」の、あたりね。

    一口で言うと、36才で未婚、コンビニのバイトを18年も続けている女性の話。
    それを見る限りでは
    「あー、さすがに私もそこまで徹底してへんわー」
    と、思うし、白羽を住まわせるあたりは
    「ないわ。ないない」
    と、思ったけれど、最後に白羽の義妹に
    「社会不適合者」
    と、はっきりいわれるあたりに

    「えっ、私も大丈夫これ!?」

    と、ぞっとしたっていうね。

    41才、パート勤務、将来の展望なし。
    辛うじて子どもはいるけど、仕事がこの状態ではちょっとアカンやろう・・・。もっと働かないとあかんよね・・・。

    (結局私は仕事でいろんなことを判断するきらいがあるな)

    恵子さんはコンビニのバイトやけど、それでも自分の生計は自分でたててるもんね。
    どんな仕事であっても、自分が食べていくだけの稼ぎができてるなら私は立派やと思う・・・。

    今私は仮住まい状態なので、そこらへんをつかれると
    「ウッ」
    と、なるな・・・。(;^ω^)

    子どもたちが中学生になるまであと3年か・・・。お金、貯めないと・・・!

    コンビニにやたらこだわるところにこの本の妙があるんやろね。
    こうやって見ると、コンビニの店員さんも大変そうやなー、と、思った。恵子はめんどくさいところがあるけれど、ようは、何かに所属して、何かを作るものの一部分になりたい、と、いうのは、日本人ならわりと誰でもが持ってる根底の部分ちゃうやろか。

    だってそもそも、義妹があんなに吠えた、ちゃんとした仕事をしろ、だの、保険に入るべきだ、とか、そういうのもつきつめると
    「どこかの団体に所属する」
    ってことやと思うねん。

    この「どこかの団体に所属すると落ち着く」と、いう習性は、ひじょうによくわかる。
    会社に入っていれば落ち着く、結婚していれば落ち着く。人と違ったことをすると何のかのと言われるから、私はそんな人と変わったことはやってませんよー、みんなといっしょ、その他大勢ですよーって思えると落ち着くのは非常によくわかるよ。

    (ここまで振り切れた表現はせんでもええと思うけど。笑)

    みんなといっしょという前提で、
    「私は実はこんなことをしている」
    とか
    「私は実はこういう性格」
    とか、ちょっとだけ人と違う部分もあるよとにおわせたくなる、ちゅう小心者具合も、さらに持ち合わせております。

    本当に人と違う道なんて行くだけの勇気はないからね・・・。

    (とかいいつつ、現在はマイノリティな家庭環境にいるけどね・・・) とほほ


    読了後は確かに、しんどい。
    救いがあるような、ないような。いうてることも、わかるような、わからんような。
    これが「現代の若者」っていえば、そうなんだか、そうでないような。

    白羽のいうことも一理あるし、義妹なんて一番正論を唱えてるような気がする。
    みんな当たり前に、社会の一部として生活しているけれども、みんなそれなりに苦労もして、嫌な思いもしながら生きてるんですよってところかな。

    結局、白羽は文句ばっかり言って何一つ行動が伴っていないところがあかんねやろう。
    その点、恵子はちゃんと働いてるんやからえらいと思うけどな・・・。

    とにかく読了後にインパクトは確かにあった。とはいえ著者のほかのタイトルを読む体力はやっぱりないし、日常で疲れてるなら(もっとファンタジックでハッピーエンドな)違う本を読みたいと思うけど、
    「あー・・・、読んだわ・・・」
    とは、思える本。

    芥川賞の受賞作と、聞いて、さらに納得。
    芥川賞な・・・。
    納得・・・(笑)。

    ちなみに「火花」は途中で挫折しているので、あちらよりは読みやすいかもしれへん。(個人的には)

    (2017.05.06)

  • 読み始めは、主人公は変な考え方の人だなあと思っていたが、
    読み進めるうちに「主人公は別に異常な人じゃなくないか?」と感じるようになった。
    人間は別にあらゆる場面で社会的に正しい振る舞いができるわけではないと思う。
    昔学校の先生に、「社会人よりも社会に出る前の学生の方が社会一般の肌感覚を理解できている。社会人は『所属する会社の常識や論理』にしか接しなくなるから」と言われたことがある。
    彼女は「コンビニ」という社会でのみ正しい振る舞いができる。それだけなのではないか。

    面白かったです。

  • 村田沙耶香さんはオールナイトニッポンにゲスト出演したときに心わしづかみにされる人柄だと思った。読書中はついつい主人公と村田さんを被らせて想像しながら読んでしまったが、もちろんそれは正しくない。しかし、村田さんを想像しながら読んだため、終始、主人公に好意を抱きながら読んだ。ずっとずっと、主人公古倉さんの個性が失われずに、そうならない環境や社会であって欲しいと願いながら読んだ。
    作中の登場人物は少々、大げさすぎる感があり、そこまで他人を非難しないのではと感じることもあったが、実際にそういう人は存在する。また、小説などの登場人物は多くの人の心の中に存在する一部分を増幅させて1人の人間として描いていることが多いと思うから、登場する人々のどこかしらに自分や周りの実在する人を感じ、共感も多かった。
    特に、古倉さんの人への観察がとても好き。感情を起伏させている人の正直な心を目の色を観察して感じ取る。確かに、そういうことある。そして、自分の目の色もいろんな色をしているのかもしれない。
    もう一つ、他人が伝染して自分が形成されていく、という表現も納得した。口調などだけでなく、人は自分で考えたと思っていることでも、時代の流れや他人の発した論理に影響されていることがほとんどだと思う。
    ラストが思ったよりあっさりしていたと感じたが、古倉さん押しとしては良かったと思うし、さわやかだった。

  • コンビニでフリーターとして働く、すこし「普通じゃない」女性主人公。
    世の中はどうして、普通じゃないと、こんなにも生きづらいのか。
    周りがもとめる「普通」に、合わせたいけれど、できない。
    現代社会の、ムラ社会的な側面について考えさせられて面白い。

    そんな主人公の気持ちに寄り添いながら読み進めていくが、途中から登場する男性、白羽が、本当に「ひどい」性格で、読んでいてかなりイライラさせられた。
    身勝手で、卑屈で、社会を批判するが、自分には甘く努力はしない…
    こんな人間がいるんだろうか、いるんだろうなぁ…と残念な気持ちになる。

  • 生きづらさを抱えた人の側から見る世界。無意識に世の中に適応している人たちが、気づかないふりをしている歪さを、まっすぐ分析していく主人公。自分が「普通」からずれていると分かりながら、理由は分からなくて、でも周りを悲しませたくないから「普通」に見えるように努力している。でもその普通って、もしかしてとんでもなく気味の悪いものなんじゃないかと思わされた。
    私も「変じゃないって自分のことを思っている人」になってしまっていないか、いや、過去には確実にそうであったのだけど、未だにそんな言動をしていないかと省みてしまう。もしかしたらその言動は誰かを傷つけていたかもしれないから。

  • 正常な人間は異物を排除する。
    人間はいつの時代もムラのオトコとオンナ。
    この2つがこの小説の軸となっている。
    なんとなく感じていた生きづらさがここに起因するものではないかと感じた。結婚適齢期に独身男女に向けられる目。男女間の色恋沙汰になると途端に目を輝かせる人間の存在。恋愛至上主義。一昔前のように誰しもが当たり前のように就職や結婚がしづらくなってきた現代だからこそ成立する小説だと思う。それと同時に普通とは何か。なんのために就職、結婚をするのかを考えさせられる小説だった。

  • 「コンビニ人間」ってなんだろう、と思って読んだら「コンビニ人間」だった。

    あまりにもいろいろな所でプッシュされていたので、芥川賞受賞後もなんとなく読まずにいました。
    良くも悪くも万人受けする作品なのか、だとするとあまり期待はしないでおこうと思っていたけれど、読んでみるととても面白かったです。舞台設定がコンビニでのアルバイトなのと、文章が読みやすい。
    コンビニでのアルバイトの描写が結構細かく書かれていて、主人公・恵子のプロフェッショナルなコンビニバイトぶりが伝わってきて、楽しかった。バイトにここまで責任感を持って働ける人が世の中にどれだけいることだろうか!と感動さえしてしまった。
    そして自らがコンビニそのものとなってしまう、その異様なまでの没頭ぶり、常識から逸脱した価値観。
    気味が悪い部分も沢山あるけれど、淡々と進む会話がおかしくて、笑ってしまう。
    白羽もよっぽど気持ち悪いけれど恵子はそれをさらに越えて気味が悪い。
    一番おかしかったのが妹がアパートにのりこんで来たときの、妹と恵子の会話。狭いから風呂場に住まわせてる、とか餌、とか『ああああ…!もう…だめだ…!』と読んでいてゾワゾワする。でもあくまで恵子は淡々としているので、そのシュールさがおかしくて仕方がない。
    あとは白羽の態度や言動が「ネットで見る偏った価値観の人」で、こんな人周りにいたらと思うとゾッとしてしまう。でも実際には存在する。恵子のような人もきっと。
    そんな現代のリアルな描写が面白くて、この作品は人気なんだろうなと思いました。本当に面白かった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。

    まず、芥川賞作としてはトップクラスに面白かったです。正直芥川賞作はさほど好みではないので。これは良かった!
    この主人公の女性は発達障害なのでしょうね。普通の人の言う普通が理解出来ず、合理的に説明が付く事はつつがなく出来るが、情動的な事は一切理解出来ない為、普通と言われる表情や行動や慣習を学習するというなかなかにハードモードな人生を歩んでおります。
    マニュアル化されたコンビニ店員がまさに転職で、コンビニ店員で有るが為に生きているのであります。
    そんな中で年齢によって世間の普通から再び乖離していくのがなんとも痛ましく、ただただマニュアルに従っていたいのに・・・。という気持ちがひしひし伝わってきますね、架空の人物なのに。
    みんなほっといてやってくれよ!と読みながら思っておりましたが、自分の周りにいたとしたら同じような反応になってしまうだろうなあ・・・。
    とにかく面白かったし、普通ってなんぞやというのを考えさせられるいい本だと思います。誰も彼も就職結婚出産というルートを辿る必要はないであろうと、この本を読んだ人は思うのではないかな。

  • 落ち込んでいる時に読むべきじゃないんだろうな、と思いながら読んでいました。
    普通ではないという決めつけが、誰かのプライベートに踏み込む免罪符になっていなかっただろううかと、我が身を恥じるばかりです。

  • マイノリティには、生きづらい世の中だ。
    相手のためとよかれと思って助言する「まっとうな」人間たちのことばが痛い。自分も同じようなことを無意識にやっているのだろう。本当に、余計なお世話だと辟易する。
    多様性を受け入れる、ということばが薄っぺらく聞こえるくらい、リアルさを感じる。異物と出会ったときには、この小説のおかげでワンクッション置いて接することができそうだ。

    青いかわいい小鳥が死んでかわいそうと、泣きじゃくりながらその辺の花の茎を引きちぎって殺している子どもたちに対する矛盾の思い。花の死体。若干シュールで恐ろしさもあるけれど、これは金子みすゞさんの大漁の発想と似ている。発想は飛び抜けて斬新だし、とても賢いし、この能力を上手に昇華させることができたらとても有益なのにな、と思った。治すではなく、押し込めるでもなく、昇華。この主人公は、自力でコンビニ人間という、自分らしい生き方を見つけ出した。とても賢明な処世術だと思った。
    —————————————
    何かを見下している人は、特に目の形が面白くなる。そこに、反論に対する怯えや警戒、もしくは、反発してくるなら受けてたってやるぞという好戦的な光が宿っている場合もあれば、無意識に見下しているときは、優越感の混ざった恍惚とした快楽でできた液体に目玉が浸り、膜が張っている場合もある。
    —————————————
    正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく。そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人達に削除されるんだ。家族がどうしてあんなに私を治そうとしてくれているのか、やっとわかったような気がした。

  • 今更ながらコンビニ人間読みました!
    自分も5年間コンビニでバイトしていたし、装丁がかわいくて気になってました。なによりタイトルから中身が想像できなくてこれは読まねば、と!

    やっと見つけた生きる方法がコンビニで働くことで、それが生活となり、軸になり、いつの間に自分自身になり。どんなに世の中という形の一部にはまろうとしても、その自分そのものが失われそうになったとき、既に形成されて安心できる軸に戻るんだなあと、人間の本能みたいなものが凄くリアルに見えて、面白かったです。ロボットみたいだけど、実は超人間らしいとゆうところがたまらないとゆうか。

    古倉さん、私はめっちゃ好き。 

  • 面白かったけど、芥川賞らしくはなかったかも。読み手の想像力を必要としない。

  • 幼い頃から、家や学校での生活に馴染めない主人公古倉恵子がコンビニ店員となることで、自身の居場所、アイデンティティを見つけるまでの過程が描かれる。途中で何度も周りが期待する自分(アルバイトではなく正社員として職につく、恋人を作る、結婚をする等)に当てはめるため、元同僚の白羽と同棲するが、彼の望む自身の姿と自分の望む姿とのギャップに気がつき、一度辞めたコンビニ店員に帰っていく。

    社会に適応できない者を主人公にすると、同じような境遇の者との出会いや、関わり、共感によって、アイデンティティに気づいて、新しい生き方を見つけていくような気がするが、彼女は最後まで誰とも共感しあったりせず、独りで自身の生き方に気づいていくのが、すごいなあと感じた。

    しかし、周りの人間の「普通」を強要する描写はなんか怖い気がした。同じように社会に適応できない白羽でさえ普通を強要する存在として描かれる。主人公にとっては白羽も他のみんなも、同じ暴力的な存在なんだろうなあ。

  • 2016年上期、第155回芥川賞受賞作。
    コンビニに勤め続ける女性が主人公。

    古倉恵子は36歳、独身。
    子供の頃から変わっていて、周囲に驚愕されること度々。
    できるだけ普通のふりをしているのだけど、家族には心配されてきました。
    わかりやすい文章で、大げさなこともなく、読みやすいですね。
    変わっているエピソードと、普通のふりをする方法が芥川賞的かも。

    幸い、恵子はコンビニのバイトが性に合い、大学卒業後も就職せずにバイトを続けて、18年目になります。
    マニュアルが決まっているとはいえ、プロとして有能なので、読んでいて、いいじゃないの~何が悪いの?って気分に。
    発達障害というタイプに相当するのでしょうが‥
    そう一口に言っても、それぞれ個性が違うわけで。

    新入りの男性・白羽がやってきて、これがなんとも理屈っぽいけうえに、店員としては困ったやつ。
    あっさり切り捨てることなく、白羽の話を聞く恵子さん。
    恋愛経験のない恵子は、男性と暮らしていたら周りを安心させられるかと、同居することを思いつく‥
    おいおい?

    ここまで変わってはいないにしても、恋愛経験の少ない女性が見合いしたり、ふとしたきっかけで付き合い始める時ってねえ、周りからのプレッシャーやその場の成り行きかもしれない。
    自分だって、変わっている部分だけをより出して書いたら、けっこう通じるものがあるのだろうか?などと考えてみたり。いやタイプはぜんぜん違うけど。

    社会への同調圧力は、どこにでもあるだろうけど、おそらく日本は強い方なのでは。
    いろいろ考えさせられる、芯になる部分があり、どことなく仄かな明るさもあり。
    多くの人が読むことになる賞にふさわしい作品だと思います☆

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県印西市生まれ。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞しデビュー作となる。2009年『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補及び、第31回野間文芸新人賞受賞。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。2012年『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。2014年『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
2018年8月末、『地球星人』を刊行。

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