コンビニ人間

著者 :
  • 文藝春秋
3.61
  • (636)
  • (1487)
  • (1283)
  • (287)
  • (87)
本棚登録 : 11335
レビュー : 1713
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906188

作品紹介・あらすじ

第155回芥川賞受賞作!36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。

感想・レビュー・書評

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  • 『普通』って『常識』とおんなじように学ぶものだと思っていた。
    『みんな』のやっていること、感じていることを学びとり、それを実行する。
    『みんな』が引いたこと、やってないことはやらない。
    昔からずれてるとか言われていたので、それが『常識』かと思っていた。
    この小説が売れたのはそういう人が多数派だからだと思って
    たんだけど、そうでもないみたい(笑)

    そういう自分なので、主人公に感情移入というか肩入れして読んだ。
    ときおり突っ込みを入れながら。嬉々として。
    大人になって『ちゃんと普通にやってる』つもりでも
    「(嫌われものの)白羽さんとお似合いじゃん」
    と言われたり、飲み会に誘ってもらえなかったり...
    ばれてんじゃん、主人公。

    ヒーロー(?)の白羽さんは破壊力が強いな。
    かれの言ってることも分からんでもない。
    むしろ振りきれてるところが眩しい(笑)

    最後は余韻を残したハッピーエンドかなと思った。
    いろんな意味で『やべえ』小説でした。

  • 読後、自分の立ち位置がぐらぐらと揺らぐような感覚に襲われた。淡々とした文章が読み易く、一気に読了したものの、何とも複雑な感情が渦巻いて、簡単に面白い/面白くないとジャッジできないような余韻を今も引きずっている。そういう意味では、これまで読んできた芥川賞受賞作ではインパクトの強い作品だと言える。
    コンビニのバイトを18年続けている、未婚36歳の恵子。「普通」であることがわからないから、何とか世の普通に合わせようと振る舞う彼女の行動に、結構共感しながらもチリチリと痛みも感じた。完璧なマニュアルの存在するコンビニでの仕事に安らぎを感じる、というところにも。私自身コンビニ仕事の経験はないけれど、事細かに描写されるコンビニのシーンが一番好きで、職場が自分の居場所…のような感覚がすごく理解できる。
    バイトの新入り男性・白羽が現れてから、恵子の歯車が狂っていくが、同時に自分の価値観も引っ掻き回され、何が正しくて何が間違っているのかがわからなくなっていく。白羽がなかなかに曲者で、彼と関わっていく後半は個人的には引く部分もあり。村田さんは初読みだったが、ここまで描いてしまうのかという彼女の思い切りの良さというかストレートさに戸惑いつつも、読むことを止められなかった。
    色んな角度から心をえぐられたにもかかわらず、もっと村田さんの作品を読みたいなという気になっている。

  • 著者の作品は二作目。
    初めましてだった『しろいろの街の、その骨の体温の 』で大打撃を受けたので、
    恐る恐る読み始めたんですが、意外と読みやすかったです。

    ただ、中盤からのお風呂場で餌~押し入れになったとき、やや危険信号。
    なぜか吸い寄せられ、ページをめくってしまう感覚に、また振り回されそうになりました。

    そして、主人公はこのままでいさせてあげればいいのに。
    と思う反面、難しいんだろうな…とも。
    何が普通で、何がそうじゃないのか、とか、
    あちら側とこちら側、自分も知らず知らず区別してはいないだろうか…。とか、
    頭の中がぐるぐる。

    それでもやっぱり、彼女からコンビニを取り上げて欲しくはないかな。

  • ★3.5

    36歳未婚の古倉恵子。
    大学一年の時から始めたコンビニのバイト。
    大学卒業後も就職せずに、コンビニのバイトは18年目。
    日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニの仕事をしている。
    完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な
    「部品」にしてくれ、安らかな日々を過ごさせてくれていると思っている。
    ある日、婚活目的の新人、白羽君がやってきて…。

    芥川賞受賞作は面白くないという偏見をもっていました。
    この本は、軽快で面白くとっても読み易かったです。
    主人公の恵子はまさにとっても「変わった人」
    喜怒哀楽という感情が乏しく、他人の感情や心理理解も不得手。
    そして、目的を達成するためにとる行動が非常識に思われる。
    子供の頃から普通でない考えと、行動をする恵子。
    自分の何処が変なのかわからないものの、
    親に迷惑を掛けないため、無口を通す。
    コンビニでも細心の注意を払って言葉を紡ぎ、顔の筋肉を動かし続けている。
    とっても生き辛いだろうなぁ。苦しいだろうなぁって思った。
    しかし、甥っ子も他の赤ん坊も「赤ん坊」という種類の同じ動物にしか見えない。
    その甥っ子が泣いて、妹が慌ててあやして静かにさせようとしているのを見て、
    小さなナイフを見ながら静かにさせるだけならとても簡単なのにって、
    思っている姿はゾッとした。
    白羽くんは、最低最悪のとんでもなくクズ。
    もーーー読んでて凄く嫌で、モヤモヤした~(*T^T)
    彼に取り込まれ、世界との葛藤の中良かれと思ってした一つの選択がきっかけで、
    彼女の世界が崩れてしまう…。
    その混乱した様子が凄まじい。どうなってしまうのか凄く心配した。
    でも、彼女は逞しかった。失ってしまったものをもう一度選ぶ。
    それこそが存在する意味で、生きてゆく理由だと。
    本当に良かったです。

    普通から外れている彼女の生き辛さが随所から伝わってきた。
    100人いれば、100の個性、それぞれ一人ずつ違ってて「普通」って何だろうって思った。
    普通に生きるってどういうことかについて、考えさせられた作品でした。
    社会性がなく不器用で、他者の心理状態が読み取れない人は、
    現代社会の中で沢山いらっしゃると思います。
    一人でも多くの人がこの問題に興味を抱き、
    ムラが全ての異質を飽和できる社会になると良いんだけどなぁ…。

  • 芥川賞受賞作品。クレイジーじゃなくって読みやすかった。読みやすすぎて肩透かしを食らった。

    白羽を風呂場で飼って餌をやって…というあたりで、ぞわっとしたけど違う方向に進んで行ったのでホッとした。(けど正直物足りなかった…狂気が足りない)

    「白羽さん!今は現代ですよ!」で、思わず吹き出してしまったし恵子と白羽のやりとりが他人事とは思えず、共感したしホッともしたけど客観的に見るとやっぱり普通じゃないという怖さも感じた。

    アンソロジー『ラブレターズ』に収録されている村田さんの「コンビニエンスストア様」も読むとさらに楽しめると思う。

  • 社会の一員だと“認識”するためにコンビニで働く――少し癖のある36歳未婚女性の生き方。

    企業に勤めて、恋人を作って、結婚して、子供を産んで…大多数が歩む、あるいは歩もうとする道を「普通」と呼ぶのであれば、そこから外れたら「普通じゃない」のでしょうか。
    主人公の恵子は現状に満足しています。しかし周りがそれを認めようとしません。恵子の今を「変えるべきだ」と意見し、「変わりたいだろう」と決めつけ、「変わりたいのであれば」と勝手に手を差し伸べてきます。自分と周囲との考え方のギャップに板挟みになりながらも、どうにか周囲に、社会が良しとする「普通」に近づこうと模索する恵子をとても健気だと思うし愛おしくも感じました。
    結末の幸か不幸かはさておき、進むべき方向を自ら見定めた人は強いと思います。そして思っていたよりあっさりとした平和的なラストだと思いました(個人的には掃除用具のモップを振り回しての警察沙汰もありうると予想していただけに…でもそこは流石「コンビニ人間」です)。

    私自身も普段、何気なく“こちら側”と“あちら側”との境界を作ってはいないか。人の考えも生き方も十人十色。日頃の自分を振り返るきっかけになる本でした。

  • 冒頭、コンビニの圧倒的な描写に息を呑む。同時にそこには古倉の異質性も描き出されていて、ぐいぐい引き込まれてしまった。

    本作は、単なる古倉という異質な人間の異端な物語ではない。描かれているのは「あちら側の世界」と「こちら側の世界」のまごうことなき断絶である。
    社会はあちら側の理論でできており、いくらすり寄って「マニュアル」通りに動こうと、そもそもが誤りだ。そんな結論に至る古倉を通じて、本作は痛烈な社会批判を展開している、あるいは現代にある、とあるマイノリティの存在を悲痛なまでに描き出しているとも読める。

    古倉は本著において、あちら側=いまの私たちの社会における「通常」に対する異端として描き出されている。
    しかし、「あちら側のマニュアルに添えたら楽なのに、全て指示してもらえたらその通りにするのに」「私は周囲の人たちをコピーすることでできていて、周囲が変われば私は全く変わってしまう」といった古倉の内省には、「あちら側」への同調圧力をうっすらとでも違和感を持って受け止めたことがある人なら、共感を抱く人は決して少なくないだろう。

    その意味で、実は私たちの多くが、自身のなかに「古倉性」を保持しているはずだ。あるいは古倉の姿は、こうした「いまの社会における異端」であるこちら側、である私たちに対する、ひとつのメッセージであるようにも思える。いるんだろ、そこにも。君も古倉じゃないか。「あちら側」の人間だらけの世界で生きづらさを感じる私たちのための、これは聖典だ。

  • 最近読んだ芥川賞受賞作の中では、とても良かった。傑作と思う。
    この主人公は、かなりヘンな人なのだが、実際のところ、主人公がヘンなのか、世の中がヘンなのかは定かではない。ただ、主人公をヘンな人だと思う人間が圧倒的多数なので、主人公がヘンなことになってしまう。そこに苦悩するのが従来の文学には多かったのが、あっけらかんとして、ユーモアさえあるのが新しいというか、オリジナルだなと感心した。
    だいたい、かけがえのない人なんて、ごくごく一部の芸術的な天才だけで、殆どの人は交換可能な部品であるのだから、主人公のように生きて何が悪いのかわからない。こういう人を変人として扱う社会の方がおかしい気がする。テンプル・グランディンのことも思い出した。
    つまらないことに一喜一憂し、下司の勘ぐりを楽しみに生きている所謂普通の人間に対する強烈な皮肉でもある。
    孤高の主人公の潔さに美しささえ感じた。

  • 「治る」って言葉がとても気持ち悪いですね。
    その人の特性を異常なものだと捉えているから、それはつまり「治る」ものだと思ってしまう。正常がどこかにあると思ってしまう。
    しかしその人にとっては、特性ごと自分なのだから、それを「治せ」と言われるのはつまり、自分を自分ではなくしてしまえと言われているのと変わらない。
    理解がないことの不幸。白羽氏もまたその不幸を身に受けてる人間の一人なんだけど、二人の特性は違うものだから、交わらない。コーディネーターがいないのだ。

    世界は異物の塊なのに、異物を認めない。
    不幸だな。

  • 純文学は普段ほとんど読まないのですが、タイトルが面白いなと思って手にとりました。
    芥川賞か、と思って少し身構えて読んだのですが、淡々とした文章でスッキリと読みやすかったです。

    コンビニで18年間アルバイトを続ける古倉恵子という女性は、いわゆる「普通」が解らず、人の真似をして「普通」のふりをして生活しています。
    そこへやって来た婚活目的でアルバイトをするという変わり者の新人との出会いによって、彼女の生活が変わりだすというお話です。

    主人公は結婚や出産に興味がないのに、周りは彼女の人生に口を出します。
    少子化や晩婚化が進み、生涯未婚率がこれだけ上がってもなお、人は結婚して子どもを産むのが普通だと考えていて、そこから逸れる人を「変わり者」扱いします。
    年頃で未婚の女性には「結婚しないの?」と、既婚の夫婦に子どもがいなければ「子どもは作らないの?」と聞いてくるのが世間です。

    別に結婚や出産に限らず、日本で暮らしていて「普通への同調」を感じたことのない人はいないんじゃないかなと思います。
    「普通」でないと周りから受け入れてもらえないし、「普通」でない人といるのは大変だとどこかで皆感じています。学生時代のクラスの雰囲気もそうだし、職場だってそうです。
    「普通」でいるのが最も楽で幸せで、だから皆「普通」でいることに一生懸命です。

    本当は誰にも口出しされる必要のないことなのに、当然のように「普通への同調」を求める世間へ一石を投じる本だと思います。
    「普通」って何だっけと考えるきっかけになります。
    中村文則さんの解説も面白いので、ぜひそこまで読んでもらいたいなと思います。

  • 読みながら途中から終始ゾワゾワした。私も社会の異物の一員だからか。普通とか常識とか何さ。最後の恵子にもゾワゾワ。この後どうなるのだろうか。コンビニ人間として生きれるのか。他の村田作品も読みたい。

  • 面白かった。
    初めは風変わりな彼女に少々戸惑ったけれど、読み進めるにつれ、彼女の考えに共感し物語にどんどんハマっていく。
    幼い頃からなかなか社会に溶け込めない彼女も、明確なマニュアルがあれば「店員」という立場で社会参加できる。
    彼女の仕事っぷりにはつくづく感心する。
    マニュアル以上で、お客は勿論、商品や同僚達の動きを冷静に察知し然り気無く適切に動く。
    こんな人が会社に居てくれたら随分と助かる。
    「コンビニ店員はみんな男でも女でもなく店員です!」
    人間である以上にコンビニ店員だ、ときっぱり言い切る彼女に好感が持てた。

  • 思ってたより短くて、面白かった。買ったのは1年くらい前で、そのときにイメージしていた話とだいぶ違ったけれど、すごく興味深かった。自分以外の人間が自分と違うことに対して、どうしてあんなに怒れるんだろう?と私も不思議になった。

    たとえば、不倫してる芸能人に怒るのは『コンビニ人間』に出てくる「普通の人間」の考え方に似てると思った。

    自分の世界であってはならないことだから怒るのかな? 自分の配偶者にされたときを想像して怒るのかな?

  • 読後、振り返るのが怖くてなかなか感想を書けなかった。
    なんだか身につまされるというか…
    私自身も、恵子のようだったり白羽のようだったりするのだ。
    世間基準では成人未満といえる。
    自分のわかるものしかわからず、思想だけは一丁前風で、ちょっと差別の意識があることも自覚してる。自分のことは棚に上げつつ。
    自分の精神が未成熟もしくは異質なことが、世間の枠から外れているかもしれないことが、周囲にバレてしまったら、きっと排除されてしまう…と思っているのは自分だけで、周囲はちゃあんと見てる、知ってる、私の未熟さ異質さを。
    そういうことをズバリと表現されてしまっている作品だ。

    恵子の自己肯定に至る物語と思えば少しは気楽に思えるけど、特に状況の解決にもなっていないし、恐らく周囲の人々の見方も変わらない。
    いや、もしかしたら恵子が自己肯定したことで、周囲との関係も変わるのかもしれない。そう思わないと救われないし、やりきれない。

    マジョリティはマイノリティを矯正する。治すともいう。
    マジョリティになれなければ、排除される。
    世間は「我こそはマジョリティ」と覇権争いを繰り返している。
    マイノリティはもちろん、マジョリティに属している人も、いつ排除されるのかと怯えている人はいるに違いない。
    救われるには、自己肯定しか道はないということなのだろうか。

  • ずっとアルバイトだろうと、独身であろうと、たとえ無職で独身であろうとも、本人がそれで良くて、その人のことを大切に想う近くの存在が、同じようにそれでいいと思っているのなら本当にそれでいいんだと思う。人生の何をゴールにするか。もしすべての人に平等に訪れる死がゴールだとすれば、そこに至るまでの道のりや進む速さも人それぞれで、だけどゴールは誰でも同じなのだから、走ったり、止まったり、寄り道したり、頑張ったり、怠けたり、笑ったり、泣いたり、好きなやり方でいいよっていう考え方の世の中にはきっとならないんだろうな。なにしろ縄文時代から人間の考え方は変わってないらしいから。

    コンビニ人間の恵子の、所々で描かれる働き方がとてもテキパキと気持ちよく、コンビニ店員のすごく奥深い仕事に感心した。

  • 面白かったですね。久しぶりの一気読みでした。
    私自身がきっと「少数派」だから余計になのかも。

    コンビニで働いたことがないので、
    マニュアルなるものがどれだけ細かく具体的に
    書かれているのかはわからないのですが
    (ムラの)方針に従って生きる者だけが
    果たしてノーマルってことなんでしょうか?

    歯車になりたくないと何かと抵抗してしまう私。
    主人公の言う歯車の安心感を求める私。
    どちらもあるのに、受け入れられるのは
    歯車になり回転し続ける私のほう。

    マニュアルに沿ったコンビニの仮面を被らないと
    受け入れてもらえない主人公って…
    真似て努力している主人公が異端で
    (ムラ)の好奇の目の方が正常?
    なんだかとても切なくなりました。

    いろいろ言葉が刺さり、
    自分の考えと違う人をなかなか受け入れられない私が
    やっていた「上から目線」は改めようと思います。

    一気に読んでしまったから、
    気持ちが追いつかないですね。
    何年か後にゆっくり再読したいです。

  • 村田沙耶香の本はぜんぶそうだけど、これもホラーだよホラー。

    白羽さんみたいなこと言う人、ネットでよく見るけど まだ現実でお目にかかったことないや。けど普通にいるんだろうなあ。
    毒をもって毒を制すみたいな妖怪大戦争。
    でも誰が、主人公の友達やその旦那みたく、他人を勝手に見下してないって言えるんだろうなあ。言えねえよなあ。

  • 徹底して変人を描きぬいた作品

    変人だと認識してるし普通に振舞わなければと努力するが、結局自分に合った生き方をしたほうがすごしやすいねという内容でしたね。あれ、2行で終わってしまった。この内容を一冊にした努力と才能に芥川賞をば。

  • 一度レールから外れた人間、普通ではない人間には住みづらい。そんな縄文時代から変わらない社会の闇についてコンビニ店員をテーマに読みやすく描かれている。
    結婚と就職はしないとおかしい。という常識から外れた人間は普通に暮らしていても底辺に見られてしまう。
    常識とは何なのか考えさせられる。多数派の意見?
    何が正解で何が不正解か誰にも決めることは出来ないはずなのに。

  • 小谷野敦という評論家が、歴代の芥川賞受賞作の中でこの「コンビニ人間」が一番面白い作品と自身の歴代芥川賞作品の偏差値をつけた書籍で書いている。たまたま村田氏を映像で見たとき、かなり変わった人であることは確かだという印象を受けた。また、新聞の俳句欄で、著者村田氏の作品の、段違いの出来栄え。どうやら彼女は自身の変わり具合を客観的に分析できているということがわかる。またこの本のテーマでもあるが、多くの人が多数派から外れてしまうことに恐怖を感じるようなのだ。私も多数派から外れたようなものだが苦行したことで人生を謳歌している。

    下記引用、数字はページ数

    6世界が目を覚まし、世の中の歯車が回転し始める時間。その歯車の一つになって廻り続けている自分。私は世界の部品になって、この「朝」という時間の中で回転し続けている。

    20そのとき、私は、初めて世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。

    22朝になれば、また私は店員になり、世界の歯車になれる。そのことだけが、私を正常な人間にしているのだった。

    26今の「私」を形成しているのはほとんど私のそばにいる人たちだ。

    26こうして伝染し合いながら、私たちは人間であることを保ち続けているのだと思う。

    63何かを見下している人は、特に目の形が面白くなる。そこに反論に対する怯えや警戒、もしくは、反発してくるなら受けてたってやるぞという好戦的な光りが宿っている場合もあれば、無意識に見下しているときは、優越感の混ざった恍惚とした快楽でできた液体に目玉が浸り、膜が張っている場合もある。

    64差別する人には私から見ると二種類あって、差別への衝撃や欲望を内部に持っている人と、どこかで聞いたことを受け売りして、何も考えずに差別用語を連発しているだけの人だ。白羽さんは後者のようだった。

    66大体、縄文時代から女はそうなんだ。若くて可愛い村一番の娘は、力が強くて狩りが上手い男のものになっていく。強い遺伝子が残っていって、残り物は残り物同士で慰め合う道しか残されていない。

    77正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでなき人間は処理されていく。
    そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人達に削除されるんだ。

    79店長は、使える、という言葉をよく使うので、自分が使えるか使えないか考えてしまう。使える道具になりたくて働いているのかもしれない。

    82「皆が足並みを揃えていないと駄目なんだ。何で三十代半ばなのにバイトなのか。何で一回も恋愛をしたことがないのか。性行為の経験の有無まで平然と聞いてくる。『ああ、風俗は数に入れないでくださいね』なんてことまで、笑いながら言うんだ、あいつらは!誰にも迷惑かけていないのに、ただ、少数派だというだけで、皆が僕の人生を簡単に強姦する」

    83「え、自分の人生に干渉してくる人たちを嫌っているのに、わざわざ、その人たちに文句を言われないために生き方を選択するんですか?」

    85大きな獲物を捕ってくる、力の強い男に女が群がり、村一番の美女が嫁いでいく。狩りに参加しなかったり、参加しても力が弱くて役立たないような男は見下される。構図はまったく変わってないんだ」

    88そうですよね、真っ向から世界と戦い、自由を獲得するために一生を捧げる方が、多分苦しみに対して誠実なのだと思います」

    92その興奮した様子に、現代社会の皮を被っていても今は縄文だというのも、あながち的外れではないような気がしてきた。
    そうか、もうとっくにマニュアルはあったんだ。皆の頭の中にこびりついているから、わざわざ書面化する必要がないと思われているだけで、「普通の人間」というものの定型は、縄文時代から変わらずずっとあったのだと、今更私は思った。

    115「普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ。

    124叱るのは、「こちら側」の人間だと思っているからなんだ。だから何も問題は起きていないのに「あちら側」にいる姉より、問題だらけでも「こちら側」に姉がいるほうが、妹はずっと嬉しいのだ。そのほうがずっと妹にとって理解可能な、正常な世界なのだ。

    128「ある意味お似合いって感じですけど……あの、赤の他人の私がいうのもなんですけど、就職か結婚、どちらかしたほうがいいですよ、これ本気で。というか、両方したほうがいいですよ。いつか餓死しますよ、いいかげんな生き方に甘えてると」

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県印西市生まれ。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞しデビュー作となる。2009年『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補及び、第31回野間文芸新人賞受賞。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。2012年『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。2014年『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
2018年8月末、『地球星人』を刊行。

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