- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163906188
作品紹介・あらすじ
第155回芥川賞受賞作!36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。
感想・レビュー・書評
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読後、自分の立ち位置がぐらぐらと揺らぐような感覚に襲われた。淡々とした文章が読み易く、一気に読了したものの、何とも複雑な感情が渦巻いて、簡単に面白い/面白くないとジャッジできないような余韻を今も引きずっている。そういう意味では、これまで読んできた芥川賞受賞作ではインパクトの強い作品だと言える。
コンビニのバイトを18年続けている、未婚36歳の恵子。「普通」であることがわからないから、何とか世の普通に合わせようと振る舞う彼女の行動に、結構共感しながらもチリチリと痛みも感じた。完璧なマニュアルの存在するコンビニでの仕事に安らぎを感じる、というところにも。私自身コンビニ仕事の経験はないけれど、事細かに描写されるコンビニのシーンが一番好きで、職場が自分の居場所…のような感覚がすごく理解できる。
バイトの新入り男性・白羽が現れてから、恵子の歯車が狂っていくが、同時に自分の価値観も引っ掻き回され、何が正しくて何が間違っているのかがわからなくなっていく。白羽がなかなかに曲者で、彼と関わっていく後半は個人的には引く部分もあり。村田さんは初読みだったが、ここまで描いてしまうのかという彼女の思い切りの良さというかストレートさに戸惑いつつも、読むことを止められなかった。
色んな角度から心をえぐられたにもかかわらず、もっと村田さんの作品を読みたいなという気になっている。 -
読みやすくておもしろかったです。あっという間に読んでしまいました。
普通ってなんだろう?って考えさせられます。
亡くなってた小鳥を見つけお墓を作ってあげよう!でなくお父さんが焼き鳥大好きだから食べちゃおう!の発想やケンカを手っ取り早くやめさせるためにスコップで頭を殴って黙らせた。ちゃんと説明したのに職員会議...笑ってしまいましたが、言われてみればわからなくもない気がしてしまいました。 -
ずっと読みたいと思っていたが、芥川賞受賞作というのが自分にとってはハードルで、なかなか手に取れなかった。
心配したような難解な文章ではなかった(´∀`)
シュール。しかし、極めて真っ当な事実を突いている気がする。
主人公の古倉恵子と彼女に寄生しようとする白羽は、どちらも社会不適合者という枠組みに括られてしまう人達だ。
古倉は、自分のどこがおかしいのか分からず、なんとか世間に合わせ生きようと、自分を空っぽにし、コンビニ店員としてコンビニの一部となって生きようとする。
対する白羽は、世間に迎合しようとして受け入れられなかった反動か、世間に対する毒を吐き散らしながらも世間からは隠れて生きようとする。
白羽は、「ああ、こういう人いそうだなぁ」と思うのだが、古倉は、「うん?え?なんと⁉︎」と思わず言ってしまうほど、ちょっと想像の枠を超える。人の「情」の部分が読み取れない、人間の感情を勉強中のA Iみたいに見える。
しかし、終盤で、古倉と白羽が同居していることが古倉の職場であるコンビニの人達に知れ渡り、皆仕事そっちのけでゴシップに浸る場面で、古倉が思うことは至極至極真っ当なのだ。
この本は読み手によって様々な解釈がされそうだ。
読むたびに感想も変わりそうな、そんな色々な顔をもつ小説だった。2020.3.18 -
著者の作品は二作目。
初めましてだった『しろいろの街の、その骨の体温の 』で大打撃を受けたので、
恐る恐る読み始めたんですが、意外と読みやすかったです。
ただ、中盤からのお風呂場で餌~押し入れになったとき、やや危険信号。
なぜか吸い寄せられ、ページをめくってしまう感覚に、また振り回されそうになりました。
そして、主人公はこのままでいさせてあげればいいのに。
と思う反面、難しいんだろうな…とも。
何が普通で、何がそうじゃないのか、とか、
あちら側とこちら側、自分も知らず知らず区別してはいないだろうか…。とか、
頭の中がぐるぐる。
それでもやっぱり、彼女からコンビニを取り上げて欲しくはないかな。 -
社会の一員だと“認識”するためにコンビニで働く――少し癖のある36歳未婚女性の生き方。
企業に勤めて、恋人を作って、結婚して、子供を産んで…大多数が歩む、あるいは歩もうとする道を「普通」と呼ぶのであれば、そこから外れたら「普通じゃない」のでしょうか。
主人公の恵子は現状に満足しています。しかし周りがそれを認めようとしません。恵子の今を「変えるべきだ」と意見し、「変わりたいだろう」と決めつけ、「変わりたいのであれば」と勝手に手を差し伸べてきます。自分と周囲との考え方のギャップに板挟みになりながらも、どうにか周囲に、社会が良しとする「普通」に近づこうと模索する恵子をとても健気だと思うし愛おしくも感じました。
結末の幸か不幸かはさておき、進むべき方向を自ら見定めた人は強いと思います。そして思っていたよりあっさりとした平和的なラストだと思いました(個人的には掃除用具のモップを振り回しての警察沙汰もありうると予想していただけに…でもそこは流石「コンビニ人間」です)。
私自身も普段、何気なく“こちら側”と“あちら側”との境界を作ってはいないか。人の考えも生き方も十人十色。日頃の自分を振り返るきっかけになる本でした。 -
36歳未婚女性、古倉恵子はコンビニアルバイトを18年間続けている。
古倉は昔から変わった性格で、母親や同級生に異質の目で見られていた。
そのため社会にうまく馴染めず、友人と呼べる人もいなかった。
それがコンビニを介すことで「普通のニンゲン」を演じることができ、社会の一部に溶け込むことができた。
しかし、どこかやっぱり変な人で見られるのは、性格上変えられない部分が、違和感となって滲み出ているのだろう。
だれか古倉さんに優しい人間がいてくれたら良いのに、と思うと少し悲しい。
作中の登場人物はみなどこかクセがあって、誰にも感情移入はできなかったが、作品は読みやすかったと思う。
登場人物の変化や成長が見られないので、どんよりした終わり方になっているのが、少し残念かなと思います。
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最近読んだ芥川賞受賞作の中では、とても良かった。傑作と思う。
この主人公は、かなりヘンな人なのだが、実際のところ、主人公がヘンなのか、世の中がヘンなのかは定かではない。ただ、主人公をヘンな人だと思う人間が圧倒的多数なので、主人公がヘンなことになってしまう。そこに苦悩するのが従来の文学には多かったのが、あっけらかんとして、ユーモアさえあるのが新しいというか、オリジナルだなと感心した。
だいたい、かけがえのない人なんて、ごくごく一部の芸術的な天才だけで、殆どの人は交換可能な部品であるのだから、主人公のように生きて何が悪いのかわからない。こういう人を変人として扱う社会の方がおかしい気がする。テンプル・グランディンのことも思い出した。
つまらないことに一喜一憂し、下司の勘ぐりを楽しみに生きている所謂普通の人間に対する強烈な皮肉でもある。
孤高の主人公の潔さに美しささえ感じた。
著者プロフィール
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