2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906409

作品紹介・あらすじ

AI、自動車、バイオ、農業、医療、エネルギー、軍事、VR、拡張現実――。テクノロジー予測で全世界的な信頼を持つグローバルエリート誌が総力をあげて大胆予測!・自動運転車によって、都市の車両数は90%減少する。・人間の脳はインターネットに接続され、図書館やスーパーコンピュータと直接つながる。だが、同時にマルウエアやウイルスまで一緒に取り込んでしまう。・誰もがARグラスを使用するようになる。他言語を話す人との会話はリアルタイムで翻訳され、街からは看板や信号が撤去される。その技術はやがて眼球自体に組み込まれる。・プライバシーは、飛行機のビジネスクラスや別荘のように、富裕層だけの贅沢品になる。・すでに西側のスナイパーの狙撃距離は2475メートルを記録。今後は、空中で軌道を修正できる弾丸の開発で、照準線の向こうに隠れる敵を狙撃できるようになる。【目次】■はじめに 破壊的で大規模な技術の変化「メガテック」〈第一部 制約と可能性〉■第1章 日本のガラケーは未来を予測していた過去、現在、SFで描かれる未来。この3つが2050年を見通すための鍵になる。15年前、スマートフォンの登場を予測した人々は、日本の女子高生に注目した。■第2章 ムーアの法則の終わりの先に来るものチップの極小化によるコンピュータの高性能化(ムーアの法則)は、原子のレベルに近づき限界を迎えつつある。だが、そこからコンピュータの発展の未来が見えてくる。■第3章 第7の波、AIを制する者は誰か?メインフレーム型コンピュータの第一の波を制したのはIBM。第二の波はパソコン。その波を制したビル・ゲイツは、遥か未来のAIの登場について当時考えていた。■第4章 なぜデジタル革命では生産性向上がみられないか?経済学者のロバート・ゴードンは、産業革命と比べると、今日のデジタル革命では、生産性、労働賃金、生活水準はほとんど上がっていないと指摘したが、その盲点は?■第5章 宇宙エレベーターを生み出す方程式どんな技術が実現可能か。物理学者はその答えを導き出す方程式をすでに手に入れている。タイムマシンや光速を超える情報伝達は実現しないが、老化や疾病は克服できる。■第6章 政府が「脳」に侵入する人間の脳はインターネットに接続され、図書館、スーパーコンピュータ、宇宙望遠鏡と直結する。だが同時に、スパムやマルウエア、ウイルスも一緒に取り込んでしまう。■特別SF1 傷つく自由(アレステア・レナルズ)〈第二部 産業と生活〉■第7章 食卓に並ぶ人造ステーキ世界人口は約100億人に達するが、食糧危機は起こらない。細胞培養を通じて、多くの食品が工場で製造されるからだ。牛乳も卵も、生産に生身の動物は必要なくなる。■第8章 医療はこう変わる集中治療室での診断情報の解釈から難易度の高い外科手術まで、学習能力をもったAIが担うようになる。一方、糖尿病、癌などでは予防用ワクチンの開発が進むだろう。■第9章 太陽光と風力で全エネルギーの3割太陽電池は透明な軽量フィルムとなり、自宅の窓やカーテンはもちろん、衣服でも発電が可能になる。原発は先進国では廃炉が進み、中国、インド、ロシアのみに。■第10章 車は編まれ、住宅は印刷される3D印刷の市場規模はまだ67億ドル程度だが、2040年には1兆ドルを超える。その未来を見抜いた中国は、すでに大量生産ラインで活用。建物まで印刷している。■第11章 曲がる弾丸と戦争の未来すでに西側のスナイパーの狙撃距離は2475メートルを記録。今後は、空中で軌道を修正できる弾丸の開発で、照準線の向こうに隠れている敵を狙撃できるようになる。■第12章 ARを眼球に組み込む誰もがスマートフォンの代わりにARメガネを使いはじめる。街からは看板や信号が消え、他言語はリアルタイムで翻訳。その技術はやがて眼球自体に取り入れられる。■特別SF2 博士の救済(ナンシー・クレス)〈第三部 社会と経済〉■第13章 人工知能ができないことAIがわれわれを超える知性を持つことを心配する人は多い。しかし、アルファ碁は対局の最中に火災報知器が鳴り響いても、次の一手を探しつづけるだけだ。■第14章 プライバシーは富裕層だけの贅沢品にコンピュータはすでに医師よりも正確に乳癌の発症を予測できる。だが、その認識パターンは膨大かつ曖昧で、人間の理解を超えている。ゆえに因果関係の把握は不可能だ。■第15章 10億人の経済力が解き放たれるアフリカでは農民のほとんどが女性である。市場価格を知らない彼女たちは、業者の言い値で取引し、貧困状態にとどまっている。彼女たちを救うのはスマートフォンだ。■第16章 教育格差をこうして縮める中産階級の子供が最初の2年で親から語りかけられる言葉の数は、労働階級の子供と比べて数百万語多い。幼児教育から始まるこうした格差を、技術の力でいかに埋めるか。■第17章 働き方は創意を必要とされるようになる私たちは現在、毎日150回以上携帯電話を確認し、メッセージ等の通知に10.5秒に1回の割合で作業を中断させられている。こうした働き方はいつまで続くのか。■最終章 テクノロジーは進化を止めない「産業革命は蒸気電力の開発から始まった」。実は、これは誤解である。技術の誕生は革命の結果に過ぎず、原因ではない。今も昔も、テクノロジーに意思などないのだ。

感想・レビュー・書評

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  • 良書 現実に進行している事項をもとに”予測”している。
    ワードを拾っていくだけでも参考になるとおもいます。
    自分がハイライトした点は次のとおりです。
    ・ビックデータ(IOT,医療AI)
    ・スマホへの多くのセンサーの実装
    ・医療情報と創薬との連携
    ・新素材の開発から、CADCAMへの流れ
    ・ナノテクロノジーと、電池の改良
    ・教育のデジタル化と、コストの低減
    ・遺伝子組み換えによる、食料の生産性向上飢餓の解消 等

  • テクノロジーの未来を予測する際に目を向けるべき3つのこと。
    1.過去の類似事例
    歴史は繰り返す。
    2.現在の限界的事例
    特定の集団や国だけで広がりつつある事例のこと。
    3.SFに描かれた未来

    ムーアの法則はまもなく終焉を迎える。その後はプログラミングの質の向上や、専門性の高いチップの設計が進む。
    コンピューティング能力はクラウドに置かれ、必要に応じて使うようになる。
    音声で操作するコンピュータが普及する。また、ウエアラブル、電子コンタクトレンズが出現する。

    これまでコンピューティングテクノロジーには6つの波が訪れている。
    1.メインフレームとミニコンピュータ
    2.パソコン
    3.インターネット
    4.クラウドとモバイルコンピューティング
    5.ビッグデータ
    6.IoT
    そしていま7つ目の波はAI

    19世紀後半のイノベーション。電気、自動車、水道、近代医療はその後、1世紀に渡る急速な生産性向上をもたらした。新しいテクノロジーによる経済成長はこれから本番を迎える。
    また、経済指標をテクノロジーの変化に合わせる必要がある。

    人間の脳がインターネットと直接繋がる世界。また、人間の組織を3Dプリンターで作られたものと交換する世界など考えられる。

    人口増加に伴い、食料問題が起こる。それを解消するために、農場は機械化、自動化が進み、細胞培養による動物性食品の製造が進む。

    医療分野にAIが入り、診断だけでなく、難易度の高い手術まてわ行うようになる。また、ウエアラブル端末やスマートホームが健康上のデータを収集するので、医療機関へ通う必要がなくなる。

    脱化石燃料がこれから進む。

    製造現場に3Dプリンターが普及する。車は編まれ、住宅は印刷される。

    軍事にも当然技術の進歩は反映される。
    避けられない事実だが、恐ろしい。

    オンラインが普通になり、スマートフォンはARメガネになったり、スマートコンタクトレンズになる。
    こうしたテクノロジーは監視社会とトレードオフを逃れられない。

    人間が、スマートテクノロジーの使い方を誤ることこそが、重大なリスクである。
    AIの成功は、我々がAIに親和性の高い環境を作っていけるかにかかっている。つまり、世界がAIに合わせる。
    イエスかノーかを常に正確に判断するアルゴリズムは構築不可能であると証明されている。つまり、コンピュータの限界はいくつか研究で、示されている。
    AIは記憶と作業は得意。ただ、思考はできない。
    AIによる変化の恩恵は万人で共有されるべきであり、雇用破壊などのコストは社会全体が引き受けなければならない。

    プライバシーは富裕層だけの贅沢品になる。

    テクノロジーが経済や教育の格差を縮める。

    テクノロジーは進化を止めない。

    先を見据えた話はその分振れ幅も大きいと思うが、刺激になる。

  • 出版されてから数年経って読んでみても古さを感じない鋭い考察。テクノロジーが融合し、人間の能力を凌駕した時に、テクノロジーと人間の関係は。哲学的なニュアンスも少々。

  • Good read.

  • 興味深い未来像やその材料となる現在の技術開発の状況がわかった。
    ナノテクノロジーとバイオテクノロジーにおける革新が重要な影響を生む。脳とデジタルデバイスの直接接続により人の感覚と経験は理論上は宇宙空間にまで拡大し、食糧問題は人造肉と野菜工場で解決し、医療はカスタマイズされた幹細胞による治療とスマートデバイスとスマートホームによる健康管理が行き渡り、エネルギー問題には衣服やカーテンに実装可能な太陽電池の開発や家庭に分散配置される蓄電池によって再生可能エネルギーの不安定性を吸収する解決策が示され、軍事では曲がる弾丸や昆虫型スパイロボットや犬型攻撃ロボット(落ち葉や木材を燃料とする)の開発と兵器の無人化による変質があるほかサイバー空間で勝敗が決する次元の変革も訪れる。人々のあらゆる活動とデータが収集され記録され「監視」されると同時に必要なものや欲しいものが然るべきタイミングで届けられるという便利さも手に入れることになる。AIのインパクトとして、人にとって代わることはないが、多くの人の雇用に影響があることは間違いがなく、いかに使いこなし、新たな人間の仕事を見つけていくかが極めて重要である。
    技術はそれ自体意思をもつものではなく、人がそれを対症療法的に利用するものである以上、社会の仕組と人の認識をデザインする必要があるということが強いメッセージとして伝わってきた。

  • AIが思考することはない。

  • 基本的には楽観的な未来予測。

    テクノロジーの発展により
    ・食糧、エネルギーの供給
    ・個人のニーズに合った医療、教育、法務サービスの提供
    ・環境への配慮
    が行きわたる。

    AIの暴走は起きず、テロや独占企業による差別(選別?)など、人間が起こす問題の方が課題である。

    もちろん格差の拡大や既得権、論理ではなく倫理にもとづいた法整備等、解決が必要な課題は山積している。

    人類が希望を持ち、必要なインフラ(たとえば自動運転車とドローンに適した交通網、都市計画、法整備)への投資がなされ、経済が上向きになることで「普通の」人々が豊かになればそのとおりだろう。

    本書が信仰しているグローバリズムと小さな政府思想の正体が「今だけ、カネだけ、自分だけ」「利益は自分に、損失は社会に」「税金は、無能な大衆の救済ではなく優秀な『自分たち』のフトコロに還元すべき」の拝金主義だとバレた以上、トランプへの支持やイギリスの選択が「ポピュリズム」ではなく「正義」だったとしたらどうなるのか。

    荒木飛呂彦の「理系は人間を幸福にしていない」(だったか)という言葉が浮かんだ。

    弱い者、愚かな者、無力な者、貧しい者... 「悪」とされる部分を「自己責任」で切り捨て、問題のしわ寄せを弱者に押し付けてつじつまを合わせる世界なら、遠藤浩輝「EDEN」が未来像になるだろう。

  • 世界的に出版不況の時代にあって、部数を伸ばし続ける数少ないメディアの英Economist誌による2012年に出版された2050年の世界のテクノロジーの未来予測。別本となる2050年の世界に比べるとかなり刺激的。

    注目すべき要旨は下記。
    1. 人間の脳はインターネットと直接つながり、随時アップデートされるが、高機能な最新版は財力がある人間しか手に入らない。
    2. 病気になったり老朽化した組織は3Dプリンタで作られた組織と交換可能となる。
    3. 食卓には工場で細胞培養された人造ステーキが並ぶ。
    4. 3Dプリンタは進化し、車は編まれ、住宅は印刷される。
    5. プライバシーは富裕層だけの贅沢品となる。

    正直こんな世の中は来てほしくないと思った私は既に時代遅れ?

  • 購入者:野澤
    現在の所有者:岡山

  • ここから50年の世界はガラリと変わる。そして、より人間とは何かを問われる。

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