僕が殺した人と僕を殺した人

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 792
感想 : 96
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906430

作品紹介・あらすじ

直木賞受賞作『流』を経て生まれた、台湾が舞台の圧倒的青春小説!1984年。13歳だった。夏休みが終わる2日前、ぼくたちの人生はここから大きく狂いはじめたんだ。2015年冬、アメリカで連続殺人鬼「サックマン」が逮捕された。デトロイトの荒んだ街並みを見つめながら、「わたし」は、台湾で過ごした少年時代を想い出していく。三十年前、わたしはサックマンを知っていた――。1984年夏、台湾で、兄をなくしたばかりのユン、牛肉麺屋のアガンと弟のダーダー、喧嘩っ早くて正義感の強いジェイは友情を育んでいた。四人の少年たちは、ある計画を実行することに決めた……。サックマンとは誰なのか? その謎をめぐる青春ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 弁護士は殺人鬼サックマンの正体を知っていた。現在アメリカ:冒頭布袋劇の人形師が子供を連れ去る犯行場面
    過去13才台湾:布袋劇は人生で輝いた瞬間
    最後,ジェイとユンの出会いが瑞々しい。
    (少年は事故で死にかけた,壊れた脳が殺人鬼をつくり出す)

  • 引き込まれた。いろいろ抱えた少年達の30年後に驚いた。サックマンの正体に、途中「えっ⁈」となった。懐かしい描写がここかしこにあって、興味を惹かれた。1984年が一つのキーワードになっていて、3人にとって別の今に繋がる道はなかったのかと思った。エピローグで、この文章の意味が理解できました。

  • 初作家さん。
    複雑な家庭環境の中育ち、喧嘩しながらも芽生え行く少年三人の友情。あの夏に立てた継父殺害の計画は失敗に終わるがもっと悲惨な未来が待っていた。  
    サックマンの正体には驚いた。 
    ほんの数日の出来事が、時を経て尚、大人になった三人をまた繋いで行く。
    切なくて悲しくて懐かしいようなそんな話だった。

  • 舞台は1984年前後の台北とそれから30年ほど後のアメリカ。二つの時代が交互に描かれる本作は、過去では「僕」、現在では「わたし」という一人称により進んでいく。現在の「わたし」は弁護士として連続殺人犯「サックマン」を担当することになったらしい。さらに読み進めると、「わたし」と「サックマン」は小中学校時代を一緒に過ごす仲間だったらしい。1984年当時の「僕」は悪いこともやったが勉強もある程度できたらしい。そんな推測から「僕」は「わたし」だと信じて疑わなかった。ところが…

    タイトルが奇妙だ。語り手はいったい誰なのだ?後半を過ぎたころにそれは分かるのだが、サックマンの経緯については終盤まで謎のまま。

    4人の少年の過酷な現実と何とか乗り切ろうとする知恵、そして絆。歴史の渦の中、大人たちもその日を生きるのに精いっぱいで事件事故暴力沙汰は日常茶飯事。そんな過去と現在の弁護士の物腰は落差があって、してやられた!という感じ。ただ、サックマンについては終盤かなり説明的で、違和感があったが、最終章で少し納得できたかな。

    1980年代の台北は知らないが、不思議と光景が浮かんでくる。しかし映像は見たくない。疑問を抱えながら読み進め、謎解きできた今、改めて映像を見たいとは思わないから。

  • 1984年の台湾と2015年のアメリカを舞台に、4人の少年たちの運命を描いたミステリー。

    台湾にもアメリカにも行った事はありませんが、情景が目に浮かび、物語に入り込みました。
    冒頭で少年達が殺人鬼「サックマン」と結びつくのがわかります。それでも、少年時代の貧しくも満ち足りた日々を読むのは楽しく、ずっとこのまま続いて欲しいと願わずにいられません。他愛無い事で笑ったり、何かが燻っている日々は正に青春。でも不穏な空気は消える事なく徐々に濃くなり…. 明暗がはっきり分かれるだけに切なく苦しい。
    悲惨な中にも少し光を感じる、ラストに救われました。
    仕掛けにあっと驚き、展開に目が離せず、読み応えがありました。

  • 『流』に続いて2冊目。東山さんの文章は、金城一紀さんに似ていて好きだな。

    さて、今回もやっぱり台湾が舞台。現在の『私』と小学生から中学生までの『僕』とで、2つの時代の物語。

    現在では、「サックマン」なる連続児童殺人鬼が捕まり、その弁護士としての「私」の目線から一人称で語られる。
    また、1980年代には、悪ガキたちの瑞々しい日々を「僕」目線で一人称で語られる。

    現在と過去が交互に語られるわけだが、サックマンはあの男なんだろうなぁと思いながら読むも、終盤でえっ⁉︎となった。
    私が勝手に騙されたのか、全くの思い違いをしていることになる。

    この物語は、サックマンが誰かという点と、何故連続児童殺人鬼になったのかという点がメインになっている。誰かという点についてはすっかり騙されてしまったが、何故という点については、少し弱いような気も。
    でも、逆に納得できたかも。でも、切ない。

    それはさておき、この作者、悪ガキの日常を描かせると本当に上手い。痛いほど少年たちの心情が伝わって来るし、私自身、その少年たちの仲間になったような気持ちで読むことができた。
    ミステリとしても、青春ものとしても良い小説でした。

    • chie0305さん
      こんばんは!ひとしさんの本棚見て、この本予約してますよ。だいぶ先になりそうですが。ここ最近、ひとしさんの苦手分野を読んでいたので(!)お話で...
      こんばんは!ひとしさんの本棚見て、この本予約してますよ。だいぶ先になりそうですが。ここ最近、ひとしさんの苦手分野を読んでいたので(!)お話できませんでした。
      ひとしさんはいつも新しい本を読んでいて、うらやましいです。
      BOX、なんだかちょっと青春しちゃいました(笑)
      2017/10/05
    • chie0305さん
      前に「亡国のイージス」苦手分野だけど頑張って読んだって仰ってました(笑)
      前に「亡国のイージス」苦手分野だけど頑張って読んだって仰ってました(笑)
      2017/10/05
  • 著者初読み。
    直木賞を受賞した作家さんであることは知っていたけど、受賞作にはあまり興味がなく、この作品もネットニュースで取り上げられていたこと、タイトルからミステリーだと思い込んで読んでしまった…
    7人の少年を殺害したことで、アメリカで逮捕された「サックマン」この事件の謎を解く話かと思いきや、「サックマン」が犯罪に手を染めてしまった原因があったと思われる青春時代の話を描いている。
    「サックマン」の正体、この物語の書き手である「わたし」が分からないように、ストーリーが展開する。青春時代である1984年と、「サックマン」が逮捕された2015年を行ったり来たりする展開だが、主点が変わるので、私には読みにくかった。舞台が台湾なので、普通にカナ表記されるものを漢字で表しているのも、かなり苦戦した。
    友情の物語と称賛している意見も多いが、少なくても、私はこの4人に感情を移入することも出来ず…残念…

  • 両親と別れて過ごすことになったユン、幼馴染みのでぶのアガン、喧嘩っ早いジェイ。3人少年が出会い、かけがえのない日々をともに過ごす。30年の時を経て、彼らは連続殺人鬼、国際弁護士、成功した商売人となり再び人生が交錯する。
    それぞれが複雑な家庭環境のなかでもがき苦しみながらも精一杯生きていくが、同時に両親もまた日々の苦しみにもがき続けている様が綴られる。ミステリーというより、友情や孤独を描く青春小説。面白かった。

  • サックマンという連続殺人犯と台湾を舞台にした1984年の悪ガキ三人組.二つの重ならないはずの物語が交差した時,震えが来るほどの衝撃を受けた.どこで運命が狂ったのか,どこにも持って行きようのない運の悪さに,哀しみだけが残った.表紙の絵もどことなく不気味な予感がして,いい.

  • それぞれの家庭環境に悩むユン、ジェイ、アゴンの3人が登場する1987年の台湾と、連続殺人鬼サックマンが逮捕された2015年のアメリカがオーバーラップする小説。作者は台湾出身らしいのですが、行ったこともない台湾のリアルが伝わってくる。ティーンエイジャーの友情と死の匂いのする小説ということでは、たまたま昨日読んだオーダーメイド殺人クラブとかぶるが、こっちのほうがめちゃくちゃ入り込めた。
    犯罪小説としてもすこぶる面白いが、物語の途中でぐるっと世界が反転する仕掛けもあり、連続殺人鬼サックマンの少年殺しの動機の解明のシーンなど、ミステリとしても痺れる。ラストのカタルシスの余韻も含めて、やっぱり女の友情より男の友情ものだよなっていうのは、このご時世まずいのかな。

  • 「ノスタルジックな中に潜む危険な香り」
    過去は必ずしも「美しい」記憶ではない。

    冒頭、2015年アメリカ連続小児殺人事件のことで始まり、過去の台湾の少年三人、ユン、アガン、ジェイの話へ移る。

    1980年代台北、家庭の事情を抱えた三人は感情を発散するようにつるんでいた。
    「大人の事情」に揺さぶられながらもこらえていたことが、やがて溢れ出す。
    セピア色の中に潜む怪しい影が、徐々にエスカレートするさまは、不安定な少年期の心の情景そのもの。

    「記憶にふたをする」
    こんな“ドラマ”ではなくても、みんなきっとある。

    翅を取って遊んだあと埋めてしまった蝉のこと
    嘘をついて水泳記録会を休んだこと。
    返却しなかった図書室の本を、卒業後そっと捨てたこと。
    嫌なのは自分なのに、他人を追いつめたこと。

    「サックマンは誰か」が明らかになってからの終盤、30年間ふたをした記憶に徐々に光が当たっていく様子が、涙腺を熱くする。

    読み終えて「幸せな気持ち」にはなれないが、なにか一つ心が落ち着いた。
    これも「贖罪」なのか……。

  • いやー、年明け早々から面白い本を読ませてもらった。台湾が舞台ということで人物や地名、習慣なんかがなかなか馴染めなかったけど読んでいるうちにその文章力に引き込まれて気にならなくなった。
    台湾版スタンドバイミーを彷彿させるような14歳の思春期(恋愛はない)によるいろいろなわだかまりを持った3人の少年の生活がそしてその後の話が衝撃的だった。
    後半思ってた人物が、あ、そっちだったのね!ってやられてしまって一層作者やるなぁと感心した。
    文末にジョージ・オーウェルの『1984』が出てきて、あー読んだ読んだ、あの糞ったれな小説って思い出しながら、面白くなくても読んでいてよかったな、おかげで言っている意味がなんとなく分かったわってなれてよかった。やっぱり小説は和洋折衷織り交ぜてなんでも読んでおくものだね。
    それにしても牛肉麺、ちょっと食べたくなった

  • 最初はメインのユン達を知ってくような形で過去の台湾での青春劇がほとんどです。
    過去の青春劇とアメリカを舞台にした現在のサックマンについての話の両方が交錯するようになってから、トントン拍子で読みすすめられました。面白かったです。

    思わずウッとなるくらい、薄汚い空気や匂いが伝わってくる文章で世界へ引き込まれていきました。

    犯人が分かったときは「そっか」ってポロっと一人言を呟いて少し泣きました。その事実と向き合いたくなかったなって思えるくらい、ユン達を愛おしく感じてたんだなと...そのくらい彼らの青春は薄汚いけどキラキラしていて、みんながみんな苦労人で好きで愛しいです。

    読み終わったあとにすごく家族と学生の時の友人が恋しくなりました笑
    20代後半の自分と同じくらいの人が友達や周りの大切さをどこか再認識できるような作品なのかと。。
    ある程度本が読めて、暗いのもそんな気にしないよ!って方には、希望が全くないわけでもないのでオススメです。
    ただ、被害者のこと考えてよ!ってタイプは苦手かも。。

  • 最初に殺人鬼が捕まって、そもそもぼくはジェイの仲間でもなんでもなかったで単純にジェイを殺人鬼だと思い込んで読んだため、「あなたの弁護をさせていただくジェイソンシェンです」で10秒程フリーズしました。
    最後まで面白かったです。

  • 初東山彰良。一気に読めた。
    話は全然違うけど、ミスティック・リバーやワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカの雰囲気を纏う良い感じでした。
    読もう読もうと思っていたブラック・ライダーへの起爆剤になりそうです。

  • 20015年アメリカで7人の少年を殺した連続殺人鬼が逮捕された。犯人は台湾人…。というところで舞台は80年代の台湾に移る。兄を亡くし両親と別れて暮らすユン、牛肉麺屋のアガンとその弟、喧嘩っ早いジェイ。4人が過ごした少年時代が描かれる。その中の一人が後の殺人鬼に?!。牛肉麺屋で煮立つ八角とスープの香り、街の雑踏や、暑い夏の空気…。目の前にありありと浮かぶような描写の数々…。ストーリーは映画「スタンド・バイ・ミー」や「ミスティック・リバー」を思い出させます。青少年時代のノスタルジックで苦い思い出と現在の交錯する傑作小説!

  • とても良かった!兄を亡くし、両親と別れて過ごすことになったユン、でぶのアガン、喧嘩っ早いジェイ。3人が過ごした少年時代が描かれている。ページを開くと、一気に1984年の台湾に連れて行かれる。蒸し暑く、いろいろな匂いの入り混じった台湾の夏。ところどころで現在の殺人鬼サックマンの話が差し込まれるが、とにかく少年時代の濃密な日々に惹き寄せられる。彼らはどこかで決定的に間違えてしまった。「これから彼といっしょに、長い長い螺旋階段を降りていくことになる。楽園にたどり着けるとは思わない。ただ、いっしょに歩いていく」

  • まさかの結末。
    だんだん分かっていく、繋がっていく様子が面白い!

  • 台湾が舞台で、読みにくいかなと心配やったけど、一気に読んだ。

    スタンドバイミーみたいな感じ。

    連続殺人鬼と弁護士、逆だと思ってた。

  • 台北の風景が頭にどっと広がってく。
    途中からのどんでん返しで一気に引き込まれた。

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著者プロフィール

1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。

「2023年 『わたしはわたしで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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