偽装死で別の人生を生きる

  • 文藝春秋
3.08
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906508

作品紹介・あらすじ

詐欺罪で懲役二十二年を言い渡され、刑務所に出頭することになっていた日にハドソン川に架かる橋から飛び降りた男。フィリピンで賭博の最中にトラブルで刺殺されてしまった男。自宅付近の浜からカヌーで海に出て戻らず、死亡を認められたイギリス人の男性。彼らは皆、死亡を偽装し、その後も生きていた。はたしてそんなことが可能なのだろうか。著者自ら、偽装死の実体験者や失踪請負人、偽装の摘発者たちを取材すると共に、自身の死亡証明書を手に入れるため、海外に飛んだ――。目次プロローグ学資ローンの返済に困った私はある日、思いつきで「死亡偽装」をネットで検索してみた。監視カメラやGPS機能付きの携帯電話などが当たり前となった21世紀の世の中で、単に姿を消すことがはたして可能なのだろうか。1 失踪請負人自分が誰か別の人間だったら、という空想は誰もがすること。それが究極的に人生を消去して別の者に生まれ変わりたい願望に至る。顧客から料金を取って彼等の情報を隠蔽、攪乱し、そのアイデンティティを現実からもデジタル世界からも消し去ることを生業とする者がいる。2 偽装摘発請負人死亡偽装の最もありふれた動機は保険金詐欺だ。とはいえ、うまくいくことはまずない。成功には大災害が必要となる。9・11テロ直後、事実誤認も含め、実際の犠牲者数の倍以上の捜索願が出されたという。テロで死んだことにして義援金や保険金を騙し取ろうとしたのだ。3 カヌーマン2002年3月、イギリス北東部在住のジョン・ダーウィンは自宅付近の浜からカヌーで海に出て、そのまま戻らなかった。それからおよそ6年が経ち、記憶喪失だったと彼が警察に助けを求めると、メディアは奇跡の生還と大々的に取り上げる。だが間もなく嘘が露見。真実は驚くべきものだった。4 マイケル・ジャクソンとビリーバー2009年に早世したキング・オブ・ポップ。その生存を信じるファンは、あれは彼が仕掛けた史上最大の悪ふざけだということを示す証拠が山ほどあると言う。マイケルはなぜ偽装死する必要があったのか。取材を進めていくうちに、本人と匂わせる人物から携帯電話に連絡が入った。5 家族が受ける二次的ダメージ幼い頃にヘロインの過剰摂取で死んだと教えられた父親が後年まで生きていたことを知った娘。詐欺罪で捕まり逃亡する父から死亡偽装計画を聞かされていた男子中学生。実の父親に脅され、保険金詐欺の共犯となった20代の息子。関わり方に違いはあれども、3人とも犠牲者である。6 死亡証明書を手に入れる死亡偽装の現場を見たくて私はフィリピンに飛んだ。男二人の協力者と出会い、偽装遺体の購入こそあきらめたものの、彼らに依頼し、偽造した自らの死亡証明書を手に入れることになった。待たされた末、帰国予定日の前日に国家警察本部前で手渡された封筒を開けてみると――。エピローグ取材対象者一人一人から個々の事情を聞いてみると、彼等の立場に立って考え、理解できることもあった。それ以上に、彼等自身が語る物語、その語り口に私は興味を引かれた。そして自分自身が、自らの死亡証明書を手にした時に感じたこととは。謝辞訳者あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 学資ローンの返済に行き詰まりを感じた著者が「偽装死」について関心を持ち、偽装死を暴く探偵や失敗した人、ほう助人に取材するという驚くようなテーマのルポ。
    保険金目当てはあり得そうだが、自分の人生をリセットしたい、という人が多くいて、指南本まであるとは驚いた。
    結局、そんなリセットはうまくいかないもの。著者自身も感じた通り、人生に向き合って大切に生きることが、何よりも大事でありがたいことなのだ。

  • 東2法経図・開架 324.11A/G83g//K

  • 人生をリセットしたいと思ったとき、こんな手段もあるのか…という驚き。

    この方法なら確かに昔の自分は死ぬから全く新しくやり直せそう。

  • 学資ローンの返済を悲観して…とはなんたる不純、と最初は少々腹を立てながら読んだが、よくよく計算してみると相当な額。

    そして最後には、筆者の成長が見ることが出来てああよかった、とホッとした。

  • 「死亡偽装」は、実際できるものなのか⁉︎
    それを試みようと真剣に考える人は、相当追い詰められている人なわけで、内容もディープになるはず。
    でも、そこは著者のキャラクターなのか、軽く面白い読み物として読むことができる。
    学資ローンに悩む著者が体当たり取材。

    日本の貸与型奨学金も大変だけど、アメリカの学資ローンよりはマシなのか。どちらもひどいシステムだと思う。

  • 自分を「殺し」て新しい人生を始める、というまるで小説のような思考に取り憑かれた著者が、体当たりでその道のプロたちの懐に入り込み、とっておきの裏ネタを探り出す。
    斬新なのは、著者がうら若き女子大学院生であることと、その「自殺」の動機が十万ドルを超える学資ローンであること、そして「プロっぽくない」文体である。

    特に最後のものが出色で、言うなれば素人くさいのだが、逆に業界くささがないポップな文章ですらすら読ませる。ありがちな裏モノライターとは雲泥の差だ。本書は半ば以上、この文体の勝利という気がしている。

    展開としてはやや竜頭蛇尾というか、尻つぼみというか。どちらかというとがっかりオチなのだが、これはまあやむをえないだろう。読後感は「ゼロからトースターを作ってみた」に似ていた。

    2017/7/8〜7/9読了

  • 【あなたも一度死んだことにしてみませんか?】自ら死を装って金銭や暴力問題から逃れたい。だがそんなことができるのか。実行者や失踪請負人を取材し、著者自らも偽装死を実体験!

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