Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906737

感想・レビュー・書評

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  •  著者はNHKのディレクター。NHKのテレビ番組『ケンボー先生と山田先生~辞書に人生を捧げた二人の男~』の取材をもとに書かれた『辞書になった男』がたいへんおもしろかった。同様に本書も先にテレビ番組『Mr.トルネードから気象学で世界を救った男~』が先行していて、その取材をもとに書かれたものだ。
     竜巻という自然現象の発生が北米に集中していることから日本では知名度がないが、藤田哲也博士はアメリカでは気象学の分野で非常に有名だということだ。著者はその姿を立体的に描くために、日米に散らばる関係者の多くにていねいに取材している。「理論家」というより「観察者」だったという藤田博士の姿勢につながるかのようだ。
     幼少時のエピソードがおもしろい。中学三年のとき学校のイベントで、江戸時代に和尚がノミと槌だけで掘ったトンネルで有名な大分県の「青の洞門」を訪れた。感想文としてクラスメイトが「和尚はすごいことをしました。見習うべきです」とか書いているなかで、「自分なら道具を作ってから穴を掘る、そうすればトンネルと道具の両方を残すことができる」と書いたという。藤田は研究に使う道具を自分の手作りで作ることで有名だったそうである。
     航空機が着陸時に急に制御を失い墜落してしまう現象。その原因は、藤田が発見し「ダウンバースト」と名付けた、地表近くに局所的に発生する強い下降気流だった。藤田がその存在を信じることができたのは、長崎に落とされた原子爆弾の調査にあったという挿話も興味深い。
     藤田のおかげで、以前は「1年半に1回」起こっていたという墜落事故が、劇的に少なくなったという。そのことは今後飛行機にのるたびに、思い出すことだろう。

  • 藤田スケール。この有名な指標はどんな人が作ったのか?人となりがよくわかる本になっている。世界で活躍する(した)日本人に敬意。

  • 研究は情熱が大事なのだと実感した。査読を排除して批判も恐れず、でも人間くさい藤田博士。面白かった。

  • 気象学の面から無数の人達への、"意識されない大きな安全"を与えてくれた天才の話。
    自伝的な記録からの引用もあるが、敢えて少ない。
    実績を上げる為に必須だったと思われる、”アメリカ”という場所と文化。
    憑かれたような研究欲、呼吸するがごとく研究に沈溺しながらも、謎の不調に激しく苦悩しながらの晩年。
    日本人として、もっと日本で過ごしたかったと思う、自身の人間的な本能。
    天才を理解し受け容れ、支えるアメリカ人達の深い思いやり。
    書籍としても読み応えが有った。
    同時に、自身の行動を一切伴わないで得ている恩恵というのは、認識する機会も無く、教科書にも載らない...、そんな切なさが痛く感じた。

  • うーーーん… ほぼ在野で物理学から竜巻研究へ転じアメリカで成功、さらに航空事故を大きく減らす発見をしたという題材としては面白そうだったんだけど… 抽象的な説明に留まってて、もっと掘り下げて欲しかった。没後しばらく経っているからだろうか。

  • 謎の飛行機事故の原因、ダウンバーストを発見した研究者。空の旅を安全なものにしたその偉業は日本ではほとんど知られていなかった。彼の幼少期からのエピソードを読むと、あまりの天才さに驚く。周りの誰もついて行けない思考と行動力。自分の説に自信があり、批判されることを好まず、査読審査のある雑誌などには論文を出さなかった。どんなときでも研究のことを考え、研究だけが人生だった。こんな人がいたんだなぁ。偉人の話は面白い。

  • 本当に研究観察一筋の人生だったのだと驚きました.私生活についてはほとんど触れられてなかったですが,それは少し淋しい感じで,でもそれがあってのダウンバーストだったのかもしれないとも感じました.日本でもっと知られてもいいと,この本で広まることを願っています.

著者プロフィール

佐々木健一

1943年,東京都生まれ.東京大学文学部卒業.同大学院人文科学研究科修了.東京大学文学部助手,埼玉大学助教授,東京大学文学部助教授,同大学大学院人文社会系研究科教授,日本大学文理学部教授を経て,現在,東京大学名誉教授.美学会会長,国際美学連盟会長,日本18世紀学会代表幹事を歴任.専攻,美学,フランス思想史.

「2019年 『美学への招待 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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