13・67

著者 :
  • 文藝春秋
4.26
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本棚登録 : 624
レビュー : 99
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907154

作品紹介・あらすじ

華文(中国語)ミステリーの到達点を示す記念碑的傑作が、ついに日本上陸!現在(2013年)から1967年へ、1人の名刑事の警察人生を遡りながら、香港社会の変化(アイデンティティ、生活・風景、警察=権力)をたどる逆年代記(リバース・クロノロジー)形式の本格ミステリー。どの作品も結末に意外性があり、犯人との論戦やアクションもスピーディで迫力満点。本格ミステリーとしても傑作だが、雨傘革命(14年)を経た今、67年の左派勢力(中国側)による反英暴動から中国返還など、香港社会の節目ごとに物語を配する構成により、市民と権力のあいだで揺れ動く香港警察のアイデェンティティを問う社会派ミステリーとしても読み応え十分。2015年の台北国際ブックフェア賞など複数の文学賞を受賞。世界12カ国から翻訳オファーを受け、各国で刊行中。映画化件はウォン・カーウァイが取得した。著者は第2回島田荘司推理小説賞を受賞。本書は島田荘司賞受賞第1作でもある。〈目次紹介〉1.黑與白之間的真實 (黒と白のあいだの真実)2.囚徒道義 (任侠のジレンマ)3.最長的一日 The Longest Day (クワンのいちばん長い日)4.泰美斯的天秤 The Balance of Themis (テミスの天秤)5.Borrowed Place (借りた場所に)6.Borrowed Time (借りた時間に)

感想・レビュー・書評

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  • 「人の命が何よりも大切」という考えで結ばれた天眼クワンと弟子ロー。1967~2013年のアイデンティティが揺らいでいた香港で警察官として事件を解決していく。

    本作は6篇の連作中編形式で2013年から時代を遡り、クワンを中心に過去を解き明かしていく。さらにローや他の登場人物達を過去に繋がり持たせることで物語りに厚みを持たせ、それが読み応えとなっているところが面白い。

    香港といえば中国に返還されたものの言論統制が年々厳しく、政府を批判した書籍が置かれていた書店の店主が捕まったなどのニュースが聞こえてくる。

    作者はそんな香港社会の現在の切実さも併せて訴えたかったのだろうと思う。

  • 華文ミステリにこんな作品があるとは
     2013年から1967年へ遡りながら、香港警察の頭脳・クワンの人生と、香港社会の移り変わりを描く、本格×社会派ミステリ。本格ミステリの海外ランキングNo1の評判に相応しく、各中短編それぞれに様々な技巧を凝らしています。第1話から超展開ですが、それが真価を発揮するのは、"出発点"である第6話まで読み終えた時。思わず"最終地点"である第1話を読み返してしまうでしょう。
     ベストは「クワンのいちばん長い日」。これだけ詰め込んで中短編として纏めたのは見事としか言いようがありません。次点は「テミスの天秤」。

  • うーん、上手いなぁ。
    バッターボックスに立ち、見せかけのボール球を楽々見逃し。その後に来る変化球をこれだ!と思いフルスイングするも見事に空振り。そして、思いもよらないところから飛んでくる球を呆然と見逃してしまう。

    この小説は、6編から成り、1人の警察官の人生を遡りながら、香港の歴史をなぞっていく。私には香港の歴史のことはよくわからないが、それでも、単にミステリに留まることなく、本書に深みを与える役割を果たしている。

    この壮大な物語を読んで、まず思ったことは、なぜ短編集なのかということ。長編だったらどれだけ面白いのかと興味を持った。しかし、この構成は長編を読むよりも価値があることかもしれない。それだけ見事だ。
    そして、翻訳モノが嫌いなミステリ好きな方にも是非読んでいただきたい。損はしない一冊だ。

  • 香港社会と香港警察の時代を追いながら、主人公ローとクワンの歩みを綴る社会派ミステリーで連作短編集。

    オールタイムベスト級だらけ。横山秀夫+連城三紀彦のよう。完成された警察小説、超絶トリックスターである。

    「黒と白のあいだの真実」
    あらすじだけでもうワクワクが止まらない。設定を生かしたロジック。どこに向かうか見守っていると…前代未聞の超絶ギミック。「戻り川心中」クラスである。はじめから勿体ぶらず、いきなり感情が揺さぶられる衝撃。放心状態で次の短編へ。

    「任侠のジレンマ」
    正義感の塊ロー。彼のまっすぐな若い血は、正しい道へ進んでいるのか?悩む彼に告げるクワン。構図の逆転。もはや芸術か。

    「クワンのいちばん長い日」
    作者の全部収束させたわというドヤ顏がみえる。詰め込みすぎな事件を見事な構成力でまとめあげた。脱帽。行き着く先が全く想像外だった…

    「テミスの天秤」
    読者が予想するのは、案外簡単なものである。ただ、どこまで先見できるか?全てを知った先には、胸の痛みが収まらない。

    「借りた場所に」
    短編が進むごとに社会派の一面。特に香港警察の汚職濃度が増していく。誘拐犯対警察。コンゲームものとして、傑作に値する。さらにそれ以外の価値も…

    「借りた時間」
    冒険ミステリ。ほかの作品とはまた違った感覚で、堪能。こんな作風もできるのかぁと感嘆したのも束の間、ラストにおける破壊力。全体をとおした上での、この終わりに満点以外考えられない。

    完成度でいえば古今東西の名作と肩を並べる。今後、語り継がれる海外ミステリ。発売年に読めた事はツイッターに大感謝である。


  • 素晴らしい。
    香港警察の名探偵クワン警視が関わった6つの事件を描く連作短編集。
    最初の短編が2013年の出来事で、それから順に年代を遡って最後は1967年の物語で終わる。
    描かれる事件は犯罪グループとの銃撃戦や、囚人の脱走、誘拐、テロなどまさに警察小説だが、一つ一つが本格ミステリマインドに満ち溢れていて楽しい。
    そして通して読み進むことで、香港という特殊な歴史を持つ都市の年代記、クアンという警察官の半生記としても読み応えがあり、結末は深い余韻を残す。
    ウォン・カーウェイが映画化権を取得したらしいが、そちらも楽しみである。

  • まず、香港現代史を遡りつつ、同時にクワンとローという2人の主人公の関係も原点に向かっていく構造が面白い。
    香港と国家との関係を考えると、第一話と最終話に何処かー脈通じるものが感じられ、また物語自体もリンクしていて、最終話が第一話の解釈を書き換えるというのもよく練られている。これは謎ときが終わったと思ったら、最後でもう一つ意外な謎が解き明かさされるというミステリーの構成にも似ている。
    各話が本格ミステリーであり、それが連なることで、別の意味を持つという点で、いくつかの違った驚きを与えてくれる。

  • 香港作家のミステリー小説。長編ですが最後まで楽しめる。否、最後まで読めば面白さが倍増間違い無し!

  • ★構成と技術に脱帽★各章を読んでいてどんでん返しの本格派推理小説だなと思い、驚くことに慣れつつもテンポの良さと期待で引き込まれる。そのうえリバースクロニクルで時代を遡るにつれ、香港の歴史が読み手にものしかかってくる。最終章は語りの仕掛けは最初から分かるが、こんな落ちとは思わなかった。クワンの心情の根っこにうならされる。

    著者は後書きで、ミクロでは本格派、マクロでは社会派の推理小説を書いたとしている。意図通りの作品が極めて高い水準で完成しているのが信じられない。

  • このミス大賞ということで苦手な海外文学にも手を出した。ストーリーは日本の巨匠に負けず劣らずの出来栄え。でもなんで時代を遡るような章構成なんだろうと思っていたが、最後の最後で繋がった!

  • 2013年、香港。ある病室に容疑者が集められた。ロー警部は言う。「教官は今動けませんので、この病室で皆さんに証言をお願いしたいのです」と、昏睡状態に陥ったクワンを指して――。

    そして時代は遡る。クワンの定年退職の日、クワンとローの出会い、刑事として奔走していたクワン……それから。

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著者プロフィール

陳浩基(ちん こうき、サイモン・チェン、Chan Ho Kei)
1975年生まれの作家。香港中文大学計算機科学系を卒業。Webサイトのデザインやゲームの企画、脚本の執筆、漫画の編集者などを務める。
2009年、「藍鬍子的密室(青髭公の密室)」が台湾推理作家協会賞を受賞。2011年、『世界を売った男』が台湾の出版社が主催する公募の長編推理小説賞・第2回島田荘司推理小説賞を受賞。2015年、『13・67』で第6回ブクログ大賞、台北国際ブックフェア賞(小説部門)、第1回香港文学季推薦賞をそれぞれ受賞。

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