- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163907208
作品紹介・あらすじ
神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生の冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたものの、「あんたたちにはわかんない」と動機は全く語らない。なぜ、美少女ののぞみは殺されたのか。二人の刑事が捜査を開始すると、意外な事実が浮かび上がってくる。希望の「希」という漢字が「ねが(う)」と読むことから名づけられた、ネガ。現在は、母親の映子と川崎市登戸のボロアパートに暮らしている。母はあまり働かなくなり、生活保護も断られた。まわりに頼れる大人や友人がいないネガだったが、あるとき、運命的な出会いをした……。「キョウカンカク」でメフィスト賞を受賞し、『葬式組曲』が本格ミステリ大賞候補や日本推理作家協会賞(短編部門)候補となった著者による、社会派青春ミステリ。
感想・レビュー・書評
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14歳の女子中学生が、同級生を殺害した容疑で逮捕された。
少女は、自分が殺したのだと犯行を認めるが、動機は語らない。
誰にもわかるわけはないのだと…。
少女の間には何があったのか、捜査一課の真壁が、生活安全課少年係の仲田と共に少女・冬野ネガの身辺を捜査する。
そして、彼らが真相を突きとめたとき。
切なさしか残らない。
悔しくて仕方ない。
貧困家庭だから、なのか…
こんなにも辛くて苦しくて哀しい思いをするのは。
やりきれない思いだけが、心の中に錘となって沈んでいる。
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14歳の少女が絡む少年事件。その背景にあるものとは。現代社会の病理とも言える問題を巧みに盛り込んだ天祢ミステリー。
物語は警察側の捜査を追って描かれるが、時おり容疑者の少女の視点での描写が日記風に挿まれている。全4章からなる。
◇
神奈川県川崎市で、クラスメイトの少女を絞殺した容疑で14歳の少女が逮捕された。容疑者として取り調べを受けるのは冬野ネガという14歳の少女。だがネガは動機等の詳細について、「あんたたちにはわかんない」と言うのみで頑なに話そうとしなかった。
取り調べに当たった神奈川県警捜査一課の真壁警部補は、県警本部に異動後の初陣ということで、送検までにネガの口を割らそうと意気込む。だが、コンビを組む川崎署の仲田蛍巡査部長は、入念な鑑取り捜査と事件の背景を解明することを主張。24時間後の勾留期限に向け、奇妙なコンビの捜査が始まった。
* * * * *
現代社会の問題点がいくつも重なり合って生んだ悲劇。その被害者がネガとのぞみであることは疑いないでしょう。
貧困。ヤングケアラー。DV。虐待。さらに生活保護制度と、子どもたちを支援機関に繋ぐべき教師の多忙による疲弊。
貧困は昔からありましたが、正業につき地道に働くことで、そこから抜け出すことが、かつてはできました。
けれど富裕層をますます富ませる方向に政治が舵を切ったことで、非正規労働者が増えた結果として貧富格差が拡大。貧困から脱することは困難になってきています。
貧困は連鎖します。この負のスパイラルから子どもが逃れることは難しいでしょう。
物語の中で最も胸が痛んだのは、のぞみが死を決意した理由でした。
あれだけ前向きで明るかったのぞみを絶望させたのはフルートが続けられなくなるという生活保護の制約の壁です。
行政は「文化的な生活」を時代に合うように解釈していくべきだと思います。さもないと意欲と才能の芽を摘むばかりでしょう。
とにかく、深刻な社会問題について、いろいろ考えずにはいられない、優れた社会派小説だったと思います。
また、本作はミステリー小説としても上質でした。何より終盤の展開がみごとで読後の満足度を高めてくれています。
さらに、狂言回し役の2人の刑事が魅力的に描かれていたのも印象に残っています。特に仲田蛍巡査部長がステキで、彼女が主役のシリーズが読みたくなるほどでした。
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ブクログの先達として尊敬するかなさんオススメの天祢涼ミステリー1作目。期待以上のおもしろさでした。あと2作も楽しみです。かなさん、ありがとうございました。-
Funyaさん、こんばんは!
早速読んでもらえたのですね♪
しかも、尊敬するとか…照れちゃいますが(^^;)
でも嬉しいです、ありがと...Funyaさん、こんばんは!
早速読んでもらえたのですね♪
しかも、尊敬するとか…照れちゃいますが(^^;)
でも嬉しいです、ありがとうございます。
この作品読んで私すごく衝撃をうけたんですよ。
で、天祢涼さんの作品スゴいって思って
それからずっと注目してるんですよ(^^)
あと、2作のレビューも楽しみにしてますね♪2023/06/17
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レビューを読んで知った本。
14歳の女子中学生の冬野ネガは、同級生の春日井のぞみをなぜ殺害したのか?県警捜査一課真壁と所轄の生活安全課仲田の捜査により、辛い事件の真相が浮かび上がる。
子どもの貧困をテーマにした社会派ミステリー。
大人の都合で、大人の弱さと愚かさのために、ささやかな希望を殺されてしまう少女達の話。ひどい話。
子どもを絶望させる大人は最低だと思う。
読んでいてとても悲しくなった。
誰かもう少し賢くて心があたたかい大人が二人のそばにいれば、こんな悲しい結末にはならなかったのに。 -
なんとも切ない物語。
子供の貧困問題がよく報道されるが、日本の子供の貧困率は14%とか(ワースト19位)。1クラス40人としたら5〜6人はいる計算で、ネガやのぞみの様な思いをしている生徒も少なからずいるのが現実なのだろう。
多くの子供が普通に享受出来る学校生活、友人関係、趣味とか将来の夢を描く事が出来ない子供達が、現実に少なからず存在しているであろう事はなんとも辛い。
ラストの意外な展開など、引き込まれましたが、読後に残った思いはそんな事でした。 -
初読みの作家さん。
迂闊に「面白い。」
っとは言えないが、なかなか 衝撃的で考えさせる作品。
今の中~高校 生って本当に希望がなぃのかも知れないですね(泣)
著者も1978年 生まれ いわゆる「失われた世代」
自分が彼女達の親ならば……という視点からの描写も辛い。
本当に夜みたいに真っ暗な世の中…
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ミステリー小説としては面白いですが、特別共感したり引き込まれる感じがなかったです。
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図書館本。少女が殺され捕まったのは同級生の少女。犯行は認めたけど動機は語らず、真相をつきとめる捜査が始まる。衝撃のラストで犯人。切ない…。
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読んでいて、辛い気持ちがずーっとあって、
自分がその当事者だった場合、どうしてたか想像しようとしたけど、出来なかった。
みんなに読んでもらいたい。日本国内の貧困問題が増えてきていることにもっと全員が知ってほしいと思いました。 -
終盤のどんでん返しにつぐどんでん返しと怒涛の伏線回収が面白い。
貧困について書いているが、子供視点なのでどんよりしすぎないのがいい。
当たり前のように受け入れている日常が「普通」とズレていることや、母親の無神経さを悲壮感を漂わせすぎることなく描いている。
希望(フルート,凛子姉ちゃん)が死んだ夜に
のぞみが死んだ夜に
たったひとつの希望を胸に睡眠も食事も削ってがむしゃらに努力する彼女たちから、希望を取り上げてしまったら。生きていけないよ。