影裏 第157回芥川賞受賞

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 711
レビュー : 117
  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907284

作品紹介・あらすじ

第157回芥川賞受賞作。大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが……。樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。〈著者略歴〉1978年北海道生まれ。西南学院大学卒業後、福岡市で塾講師を務める。現在、岩手県盛岡市在住。本作で第122回文學界新人賞受賞しデビュー。

感想・レビュー・書評

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  • 『電光影裏斬春風』…。良くも悪くも東北を描いていて共感する場面が多かった。東北って環境が厳しいせいか、自然と一体的な考えがあって、人情深くて温かい一面と、一度こじれるともう二度とは戻れない非情なところもあり、日浅の父なんかは「こじれた非情」が丸出しで、血を分けたわが子とはいえ突き放し方が容赦ないという…。わかるわ、その感じって思った。

    どこの一族に一人はこういう(日浅っぽい)のが存在しているんじゃないかな。「はんかくせぇ。あいつはダメなヤツ」というレッテル貼られて一度貼られると死んでも剥がされないラベルみたいな感じ。考え方も保守的だし。けっこう情け容赦ない酷な面があります。内容はわかりにくいところもあるけど面白かった。言ってしまうと悪いけど余所者だからこそ描けた東北感だと思う。(←ほめてます) 気のせいかもしれないけどさりげなく思わせぶりで官能的だったような…。

  • 自然描写の評判を聞いて読んでみました。
    うっそりとした、緑も影も濃い森。
    その中を流れる清流の白いきらめき。
    著者が描く東北の自然は確かに美しかったのですが、それ以上に気がかりを残す幕切れの印象が強かったです。

    東日本大震災で行方知れずになった友人の手がかりを求め、実家を訪ねた主人公に、友人の父親は「息子とは縁を切った、あれを捜すなど無益だ」と告げます。
    なぜそこまで…と戸惑っているところに、「息子なら死んではいませんよ」という父親の真意の読めない一言が加わり、もやもやとしたものがのどの奥にあるような感覚のまま読了。

    登場人物たちの乗っている車の種類、煙草やお酒の銘柄などは具体的な名前で描かれている一方で、ほのめかされたことがほのめかされたまま淡々と進んでいくぼんやりとした部分もあり。
    そのギャップがもやもや感をさらに膨らませているのかも…と、あとから考えてみたりもしたのでした。

  • 電光影裏斬春風。これに尽きるのかな。
    よくわからないままに読み進めるうちに、いきなり震災のことが出てくる。そして世界は反転する。
    感受性も表現も、使用される言葉も、読後に著者の年齢を見て、その老成さに驚いた。

    一切は空。の境地に憧れながらも、僕はまだそれを欲しくはない。

    和哉のエピソードには違和感しか感じなかったのだけれど、あれは必要だったのかな?

  • 雑誌(『文學界』2017年5月号)で読んだ。
    久しぶりに難解な作品が来たか、という印象を受けたが、それはある種の文体から受けた印象で、作品の内容自体は実際読み終えてみると(これは文學界新人賞選考委員の松浦理英子氏も言っていたが)例えば何か謎が残るとか、わざと矛盾点があるとかそういったことはない非常なシンプルな構成になっている。ただやはり、筆力のある文体と言って良いのだろうが、ある種「凝りすぎている」印象が強かった。最近の若手で同様に筆力のある作家の高橋弘希氏などと比べると、力が入りすぎている感じがした。他の人はどうなのかわからないし、最近小説自体読むのが苦痛な状態にある自分の問題でもあるのだろうが、文芸誌で30p、単行本で100p弱の作品だが、読むのに非常に疲れた。
    ラストに関しては、うまいところに収めたと思う。
    また、震災が絡む、セクシャルマイノリティが絡む、という作品ということだけ聞いていたので、どんなどぎついのが来るのかと思っていたが、そこを収めた筆致はやはり評価されれるべきだろう。
    ただ、津波のシーンや震災直後のシーンの描写などは読むのが結構辛かった。
    しかし、芥川賞か…。いや、不満はさほどないんだけど、だったら高橋弘希にもやってくれよ、と思ってしまうのであった。

  • 「影裏」
    公開日:2020年
    今野は岩手に転勤し、同僚・日浅と交友し親しくなる。しかし、ある日突然日浅が会社を退職。再会したあとも、どことなく溝ができていることを感じる。そしてある日、日浅が行方不明になったという知らせを聞く……。
    キャスト:綾野剛、松田龍平
    監督:大友啓史

  • 芥川賞受賞の本作、なんとも不思議な小説だった。リアルなんだか幻想的なんだか、美しさと暗さが共存し、時間軸もゆらゆらしている。著者はまた、意図的に読み方が難しい漢字を用いて読み仮名をふらず、読者に想像させているようだ。
    あらすじは、本社から盛岡市に転勤になった30代前半の独身会社員が主人公で、転勤先で同僚となった男性との交流。共通の趣味である釣りに一緒に出掛けるが、その同僚が転職してから、どうも行動が怪しい。本当のところは…、という内容。
    この本は賛否がはっきりと分かれるようだ。謎の複線の回収もなく消化不良になり、何がテーマなのかイマイチわからなかった。

  • よくわからなかった。
    なんで予約したのかもよく覚えていないです。
    賞を獲ったのはわかってるんですけどね。
    書評か何かで面白そう、と思ったんだろうなぁ…
    読み始めから難しい漢字が多い。
    不勉強だと言われればそうなんでしょうけど、
    辞書引きながら読めばいいんでしょうけど
    詰まりながら飛ばしながら読み進めました。
    結局どういう話なのかはよくわからなかったです。

  • 小説、引いては本の良いところとは人に想像の隙間を与えることだと私は思う。
    ゆえに、文章ですべてを語ってしまい空想させてくれないと息苦しさを感じる作品がある。

    この作品、その隙間が感じられる。人によっては、隙間ばかりに感じて物足りなく感じるほどに。

    主人公の謎。
    友人である日浅の謎。
    日浅の父の謎。
    人にまつわる謎は多い。

    一方、自然には謎が無い。
    自然にまつわる描写は、事実以外の何物でない。

    この謎を、どのように埋めるか自由ではない。
    ヒントはいくつもちりばめられているから。
    この隙間に、私は楽しみを見出す。

  • 一人称が「わたし」で、前置きもなしにゲイ設定は流石に主人公の性別で混乱する。

    行間を読めといえばそれまでだが、やや説明がしきれていない感じがあって、「その夜」っていつの夜?のような箇所が多かった。

    LGBTについて細かい説明もなしに出てくるので、みんなそれに混乱する。

    一つ感じたのは、私たちはLGBTが無いという前提で読んでおり、固定観念のもとに読書しているのだなと感じた。

    当たり前に主人公は男だと思っていたが、そういえばLGBTの描写以前に、男であるという描写はなかった。

  • 第157回芥川賞受賞。岩手の川での釣り、仕事の傍ら、シンプルないい川に通う。会社の釣り友だち、離職してセールス業、被災で行方不明、父親の語り。

    被災したのかどうかもわからないという状況がある、ということを知りました。

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