影裏 第157回芥川賞受賞

著者 : 沼田真佑
  • 文藝春秋 (2017年7月28日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907284

作品紹介

第157回芥川賞受賞作。大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが……。樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。〈著者略歴〉1978年北海道生まれ。西南学院大学卒業後、福岡市で塾講師を務める。現在、岩手県盛岡市在住。本作で第122回文學界新人賞受賞しデビュー。

影裏 第157回芥川賞受賞の感想・レビュー・書評

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  • 『電光影裏斬春風』…。良くも悪くも東北を描いていて共感する場面が多かった。東北って環境が厳しいせいか、自然と一体的な考えがあって、人情深くて温かい一面と、一度こじれるともう二度とは戻れない非情なところもあり、日浅の父なんかは「こじれた非情」が丸出しで、血を分けたわが子とはいえ突き放し方が容赦ないという…。わかるわ、その感じって思った。

    どこの一族に一人はこういう(日浅っぽい)のが存在しているんじゃないかな。「はんかくせぇ。あいつはダメなヤツ」というレッテル貼られて一度貼られると死んでも剥がされないラベルみたいな感じ。考え方も保守的だし。けっこう情け容赦ない酷な面があります。内容はわかりにくいところもあるけど面白かった。言ってしまうと悪いけど余所者だからこそ描けた東北感だと思う。(←ほめてます) 気のせいかもしれないけどさりげなく思わせぶりで官能的だったような…。

  • 自然描写の評判を聞いて読んでみました。
    うっそりとした、緑も影も濃い森。
    その中を流れる清流の白いきらめき。
    著者が描く東北の自然は確かに美しかったのですが、それ以上に気がかりを残す幕切れの印象が強かったです。

    東日本大震災で行方知れずになった友人の手がかりを求め、実家を訪ねた主人公に、友人の父親は「息子とは縁を切った、あれを捜すなど無益だ」と告げます。
    なぜそこまで…と戸惑っているところに、「息子なら死んではいませんよ」という父親の真意の読めない一言が加わり、もやもやとしたものがのどの奥にあるような感覚のまま読了。

    登場人物たちの乗っている車の種類、煙草やお酒の銘柄などは具体的な名前で描かれている一方で、ほのめかされたことがほのめかされたまま淡々と進んでいくぼんやりとした部分もあり。
    そのギャップがもやもや感をさらに膨らませているのかも…と、あとから考えてみたりもしたのでした。

  • 雑誌(『文學界』2017年5月号)で読んだ。
    久しぶりに難解な作品が来たか、という印象を受けたが、それはある種の文体から受けた印象で、作品の内容自体は実際読み終えてみると(これは文學界新人賞選考委員の松浦理英子氏も言っていたが)例えば何か謎が残るとか、わざと矛盾点があるとかそういったことはない非常なシンプルな構成になっている。ただやはり、筆力のある文体と言って良いのだろうが、ある種「凝りすぎている」印象が強かった。最近の若手で同様に筆力のある作家の高橋弘希氏などと比べると、力が入りすぎている感じがした。他の人はどうなのかわからないし、最近小説自体読むのが苦痛な状態にある自分の問題でもあるのだろうが、文芸誌で30p、単行本で100p弱の作品だが、読むのに非常に疲れた。
    ラストに関しては、うまいところに収めたと思う。
    また、震災が絡む、セクシャルマイノリティが絡む、という作品ということだけ聞いていたので、どんなどぎついのが来るのかと思っていたが、そこを収めた筆致はやはり評価されれるべきだろう。
    ただ、津波のシーンや震災直後のシーンの描写などは読むのが結構辛かった。
    しかし、芥川賞か…。いや、不満はさほどないんだけど、だったら高橋弘希にもやってくれよ、と思ってしまうのであった。

  • 小説、引いては本の良いところとは人に想像の隙間を与えることだと私は思う。
    ゆえに、文章ですべてを語ってしまい空想させてくれないと息苦しさを感じる作品がある。

    この作品、その隙間が感じられる。人によっては、隙間ばかりに感じて物足りなく感じるほどに。

    主人公の謎。
    友人である日浅の謎。
    日浅の父の謎。
    人にまつわる謎は多い。

    一方、自然には謎が無い。
    自然にまつわる描写は、事実以外の何物でない。

    この謎を、どのように埋めるか自由ではない。
    ヒントはいくつもちりばめられているから。
    この隙間に、私は楽しみを見出す。

  • 第157回芥川賞受賞。岩手の川での釣り、仕事の傍ら、シンプルないい川に通う。会社の釣り友だち、離職してセールス業、被災で行方不明、父親の語り。

    被災したのかどうかもわからないという状況がある、ということを知りました。

  • 芥川賞受賞作品…。今野は日浅の事が好きだったのか?とか、日浅の父親は何故、あそこまで息子を突き放したんだろう?とか、本に書かれていない事をグルグル考えてしまった。結局すべて???だった。こういうのが芥川賞か。

  • 芥川賞。フシギ人物の話。その友人も当人も。
    で、日常ホラーのカテゴリーに入れてしまったが。
    芥川賞選者の奥泉氏の選評の「これから日浅という謎の男を追う主人公の物語が始まるのではないか」という展開だとおもしろい。日浅という男の今後を見てみたい。もちろん生きてるんだろうなと確信。

  • とても面白い。オススメ✌️

  • 心理描写はなく場面の連なりかな。数少ない友達、日常、震災を通して、崩壊の予兆と崩壊を書いたもの? 短い物語。主人公の震災を書いたものかしら。私は、残念ながら、深いものを感じることができませんでした。ただ、全体的に重くならずに書けているのは良いんではないですか。

  • 終始漂う不穏さ、記憶が現在に追いついて畳み掛ける最終章と語り口。
    「親密なつき合い」「ある巨大なものの崩壊」

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