くちなし

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 348
レビュー : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907390

感想・レビュー・書評

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  • 7編の短編集。なんともまあ、独特の不思議な世界。腕が取れたり、虫に体が乗っ取られていたり、化け物になったり。しかし、こういった世界をしっかりと綺麗に書き上げるから大したもの。最初読み始めて、腕が取れて…と予想外の展開に驚いたけれど、物語の世界へと引き込まれていった。愛がテーマかな。圧倒的な愛とか。愛・人間の本質とか。中でも印象に残ったのは「花虫」。読んでいると幽玄的な花が見えているように感じ、愛の苦しみもよく書けていた。「けだものたち」もよくこういった設定で書けるなあと驚き、こちらも想像が目に浮かび、印象的。

  • まるさんワールドの短編集。

    夢の中のような、異次元のような。
    架空のことなのに、そちらが真実のような。
    不思議な世界の隅っこに漂わせてもらった感じ。

    とにかく文章が美しく、
    人の恐ろしい部分も、汚い部分も
    全部がほんのりきれいなものに見えてしまう。
    それは錯覚なのだろうか。
    それとも…。

    知りたい、もっと知りたい。
    私の知りたいに、今一番近づけることの出来る作家さん。

    かなり現実とかけ離れたお話もあり、
    楽しめるかどうかは振り幅が大きいような気がします。
    こんどはどこへ?
    また楽しみになる一冊です。

  • 今まで読んだ彩瀬さんの本の中でも群を抜いて美しい。今年出会った作品の中でも一番好きだと言える、妖しさと美しさを兼ね備えている短編集。どれも幻想的で、一見感情移入できないようなありえない設定ばかりのようにも思えるけれど、読み進めていくうちに主人公の女性たちの感情が自分に流れ込んでくるような心地。人間の汚い塊をこの人はなんて綺麗に書き上げるんだろう、と何度ため息が出たことか。愛は美しいだけじゃない。おどろおどろしくもあり、醜くもあり、ときには人を怪物にしてしまうこともある。それでもそんな恐ろしい感情を繊細に綴っているのが『くちなし』のすごいところだと思う。
    『くちなし』や『薄布』は読んでいて、設定がどこか川端康成の『片腕』や『眠れる美女』に似ているなぁと思った。文章に現れる危うさを孕んだ冷たい愛情も、どこか似ていて好きだ。けれど七篇の中でもっともお気に入りなのは『愛のスカート』だった。七篇の中でももっともリアルで現実世界に近い。それぞれの登場人物の実ることのない、一方通行の愛情なのに、最後は読者の心すらも救ってくれるトキワのセリフが心にいつまでも残っている。

  • 「愛なんて言葉がなければよかった。そうしたら、きっと許してあげられたのに」
    ぽつりと呟く妻の寂しそうな横顔がいつまでも心に残る。
    例え心は離れても愛しい人の体の一部を保有したがる女達。
    そして愛は時に虫となり、また愛するが故に獣となり愛しい人を食す。
    彩瀬さんの愛は深く濃厚で、最初から最後まで圧倒された。
    自分の愛を貫く女達全てが愛しくて仕方がない短編集だった。

    この作品を読んでいて、昔読んだ新井素子さんの『ひとめあなたに…』を思い出した。
    愛する夫が自分を捨て愛人の元へ行こうとする。妻は夫の全てを自分のものにしようと夫を殺害し体を切り刻み、シチューにして食べようと料理をする。ユーミンを口ずさみながら…。
    愛する男を食す女は昔からいた。
    これぞ究極の「愛」なのかもしれない。

  • 初読み作家。短編集。全7編。
    第158回(2017年下半期)直木賞候補作品。
    不思議な世界観を織り交ぜ、愛を描く。ファンタジーとかSF的な要素も含め、幻想的な感じに仕上がっている。美しいことだけではなく、醜くもある感情を繊細に綴っていて、心の奥に問いかけてくる。現実的な設定ではないが、読み易かった。

  • 大好きな彩瀬まるさんの新刊ということで購入。
    帯を見て本作が今回の直木賞候補になっていることを知りました。

    初っ端から別れることになった不倫相手の腕を外して貰う、という場面があって面食らったのが正直な感想。
    ファンタジー系があまり好きではなかったから、読みきれるか不安になった。

    「愛のスカート」「茄子とゴーヤ」の二作が良かった。
    人生まだまだいろんなことがある。これからだ、と勇気づけられるような。
    そして共通してるのはこの二作は現実志向であるということ。
    独特の世界観にハマればきっとすごく評価できると思うけれど、私には少しズレていた。

    一番最後の「山の同窓会」は一生結婚もせず、子供も産まないと決めた自分のような人は異端、と言われているような…何とも言えない歯がゆさがあった。

  • だいぶ前に session22 で取り上げていた作品。

    不倫相手との別れ際に、彼の腕をもらう女。
    自分にしか見えない花を咲かせる運命の相手。
    片思いのデザイナーの変人男を、支える女。
    好きな相手を食べてしまう変化する生き物たち。
    難民の子をおもちゃにする夫人。
    不倫相手と夫との事故死から立ち直りつつある未亡人。
    自分のもつ遺伝子に忠実に、社会のために役割を果たそうとする女 ......

    どれも孤独で、でもその寂しさと共生する強さを持つ女たち。 その地味で目立たない深い愛にはぐっとくる。

    くるけど ......こんなのわからない男がほとんどだよな
    もうわからない連中は絶滅すればいいのにと思ったりもして(笑)

    綾瀬まる、読んでる人を見つけたら、唇の端でニンマリしてしまいそう。

  • 愛した男と別れるときその片腕をもらう。その腕を毎日愛でて暮らす。いやいや、そんなの自分にはありえないわ、ないない。身体の中にいる虫によって運命の花が咲き唯一無二の相手と結ばれる、って脳みそ乗っ取られてしまいますが!などと異形の者の、異常な恋愛を否定しながら読んでいるのだけど、ふと考える。連作の中にあるいわゆる普通の生活、普通の恋愛、それらも逆からみれば「異形」なのかもしれない、と。
    幻想的でグロテスクで、だけど美しい物語たち。自分からは遠い世界の物語だと思っていたけど、なぜか心地いい。どうしてだろう。どうしてだろう。

  • 異なる世界を生きている女の人が主人公。その世界観をうまく書き出していてすごいなと思った。

  • 初 彩瀬まる
    なかなか独特の世界だった。

    短編の一話ずつ それぞれが異次元で、主人公は人間の様なのに、その中に生きる人達の生活はなんか違う。

    愛しい人に腕をあげる。虫が体に寄生してつがいを探す。産卵をする女性、海獣となるクラスメート、昼と夜を住み分けている男と女・・・・

    普通に人としての会話をしてる登場人物が 説明もなくその世界の人として生きている様子に読んでる方はどぎまぎとして、その世界に引きずり込まれる。
    いろんな生き方や愛し方を見せられて、切ない。

    美しい描写がより その世界を浮かび上がらせているようだ。
    ちょっとグロめのファンタジーでした。

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