人間タワー

  • 文藝春秋
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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907406

作品紹介・あらすじ

朝比奈あすかさんは群像新人文学賞を受賞して小説家デビューしましたが、純文学の枠にはまりきらない活躍を続けてきました。いつも現実社会の動きの中にテーマを見つけている作家であるといえるかもしれません。この「人間タワー」で描かれる組体操は小学校の運動会の花形であり、その危険性がマスコミを一時騒がせたことは記憶に新しいです。親、子供、教師などの複数の視点から幾何学のように描かれていますが、この人間タワーをめぐる動き、思いを描くことで、世界のあり方まで筆がおよぶのが朝比奈さんという作家の鋭敏さではないでしょうか。人間の負の面や不穏な空気を扱いながらも、いつも爽快さを失わないところがこの小説の稀有の魅力でしょう。

感想・レビュー・書評

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  • 小学校の運動会での組体操にたいするみんなの思い。

    夫と離婚したことに迷いを感じていた妻が、運動会でいずれ自分の子もやるであろう組体操を見て決心したこと。

    小学校の運動会の組体操の演技を楽しみにしている認知症の老人ホームの入居者。

    自分のキラキラネームにコンプレックスを感じる学年主任の珠愛月先生【じゅえる】の組体操にたいする熱い気持ち。

    反対派と賛成派に分かれる6年生たちや担任のそれぞれの気持ち。

    かつてそこの卒業生だったネットニュースの会社に就職した男のよみがえる過去。

    著者の本にはちょいちょいキラキラネームが出てくるけど、なにか意味があるのかな。

    じゅえる先生、真面目だなあ。
    認知症のおじいさんも切なく、じゅえる先生とそこが印象的。

    組体操にそこまで熱い気持ちがあると、そう簡単に廃止することもできないしね。
    自分たちが納得した最後で、よかった。
    人間タワーをやるのは反対だけど、やらないことにも反対っていう、矛盾した気持ち、読んでいて伝わった。

  • 人間ピラミッドならぬ「人間タワー」を、シングルマザー、おじいさん、生徒、タワーを成功させたい先生とどうとも思っていない先生、そして卒業生の視点から描いた作品。見るものに対して勇気・感動を与えるが、実際にやる児童にとっては苦痛でしかない。世論というのが変わりゆく中、そのタワーというのをどのように成立させるのか、というのが一つの主題であるように感じられる。惜しむらくは、最後のタワーがどのようにしてああいうふうになったのかという過程を聞かせてほしかった。タワーから力をもらったはずの先生は、果たしてそれで満足か。

  • 人間タワーにまつわる人達の話しだけど、それだけじゃない心模様も描かれていた。
    例年と違う桜丘タワーを考えだしたのは生徒だったのか先生だったのかが気になる。

  • 市立桜丘小学校の運動会で、組体操の一つとして25年前から行われ続けている「人間タワー」。6年生全員による圧巻の種目を軸に、桜丘小学校に関わる人たちそれぞれの目線で描かれた6つの短篇。
    緩くつながるそれぞれの物語がひとつの大きな群像劇をなす。それぞれの物語はまとまっていて終わり方も悪くないが、小説全体として見たときに、「人間タワー」の解決策がう~ん、こんなものかな~といった印象。

    筆者は、本作を「人間タワー」の是非を社会問題としてとらえた作品にはしていなくて、ひとつひとつの物語の主人公の心のありようを丁寧に描写することに重点を置いていて、タワー問題はその契機でしかない。
    だから、このテーマを選んだのに・・・っていう肩透かし感があるのかな。
    今時だれも土台になりたくないという事実の前に、全員で大きな土台を作ることに解決策を見出した学校。その演技に感動した男。う~ん、それでいいのか悪いのかよくわからない。

    ただ、この作者の作品はもっと読んでみたいと思わせてくれるほどには面白かったです。

  • 桜丘小学校の運動会で行われる組体操のメインのシーン、人間タワーで繋がる連作短編。

    息子が桜丘小学校に転入した離婚したばかりの雪子。
    人間タワーに感動し投書をしたことのあるホームで暮らす伊佐夫。
    桜丘小学校の教員、自分の名にコンプレックスのある沖田。
    母の過度の学歴意識に振り回される桜丘小学校の生徒澪。
    自分は子供に好かれるいい教師だと信じていた桜丘小学校の教員島倉。
    桜丘小学校の卒業生で、いじめにあった過去から、小学校にいい思い出がなかった高田。

    立場の違う登場人物のそれぞれの立場での思いや気持ちがリアルで、興味深く読みました。
    好感の持てる登場人物はあまりいませんが、ブラックな部分を描くのが上手い作家さんだなといつも思います。
    雪子、島倉、高田の章の、一歩進んだ終わり方が良かったです。

  • 妻が朝比奈氏の本にハマっており、勧められ読んでみる。
    少し問題になっている体育祭の「人間ピラミッド」を中心に母、児童、先生と視点を変えて学校模様が語られる。
    感想としては女性や母は好きなんだろうかね。と言う感じ。私も父として学校模様には興味があるが、ゴシックと言うか話題が小さい感。また著者独特の本質には突っ込まず、堀を攻めて終わっていく感にも少しモヤモヤ。

  • 久しぶりに彼女の本読んだけど
    全編通して、息苦しい感じがした。
    読んでる時も辛さが先に来る

  • ある小学校で、伝統的に行われている巨大な組み体操「人間タワー」をめぐる作品集。
    教師、生徒、父兄、OBと立場と視点を変えつつ巨大なタワーが組み立てられていく経緯を描く。
    社会問題をつくのではなく、また、闇雲に推進することを是ともせず。
    よくできた物語で、エンディングまで読ませ切ってくれた。か

  • 私、朝比奈あすかさんは結構好きな作家さんなのだけど、これはだめだった。世界に入れなくて読み進めるのが苦痛だった。しんどい小説だったなぁ。

  • 小学校の体育祭で伝統的に行われてきた「人間タワー」。問題視する声も最近聞くこの行事を指導する教師、参加する児童、その親などの視点からその行事の是非を問う…わけではもちろんなく(作者の作品をほかに知っていればわかると思うのですが)…、いやまったくないわけでもないですが、かかわる人々のそれぞれの置かれた環境における心理描写に重きを置いた連作短編集です。

    印象的だったのが介護施設に入居している一人の老人の日常を描いた短編でした。今となっては物悲しいといえる状況なのだけれど、確かな幸せな日々があったとじわりと暖かくなる描写がとても胸を打ったのでした。輪郭を無くしていきながら、心のどこかに存在しつづける「支え」があることは、やはり幸せといえるのだろう、とそう思いました。

    題材こそ人間タワーと結構タイムリー?なものを扱ってますが、丁寧な心理描写と弱くもいとおしい人々の描きかたがとても細やかで、作者らしい読み心地のある話でした。

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著者プロフィール

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー。その他の著書に『彼女のしあわせ』『憧れの女の子』『不自由な絆』『あの子が欲しい』『自画像』『少女は花の肌をむく』など多数。

「2019年 『君たちは今が世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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