メガネと放蕩娘

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907505

作品紹介・あらすじ

とある地方都市で市役所勤めをしているタカコ。彼女の実家は商店街にあるウチダ書店だが、最近、客足は途絶えっぱなし。かつて栄えていたこの商店街は、いまやシャッター街も同然なのだ。そんな瀕死の商店街に、10代で家を出たタカコの妹、ショーコが突然帰ってきた。臨月のお腹を抱えて……。東京でカリスマ店員として働いていたショーコが、商店街再興を目指して動き始める。デイケアと保育所をあわせた施設の企画、商店街をあげてのファッションショー、大学生ステイ受け入れや、マンスリーショップの運営。商店街で生まれたショーコの娘、街子も商店街とともにすくすく育っていく。ショーコの活躍で一時的に賑わいを取り戻したかに見えた商店街だったが、それも束の間。個人の努力ではどうにもならない、思いもよらぬ結末が待ち受けていた。山内さんが地元、富山の商店街を徹底取材。なぜ商店街がさびれていくのか、それを止めるためにどんなことができるのかを真摯に考えながら書いた、社会派エンタメ小説です。

感想・レビュー・書評

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  • あいかわらず文章のテンポが軽快で、なおかつディティールが細かいのですごく読みやすい。

    かつてはにぎわっていたのに、いつの間にかシャッター街になってしまった生まれ育った商店街をなんとか再興しようと駆けずり回る姉妹の奮闘記。
    ショーコのキャラいいわあ〜、友達にいたら楽しそう。でも姉妹だったらコンプレックス刺激されまくりそうでしんどいキャラだ。ぽんぽん出てくる発想とめげない根性あこがれる。
    地元から出たことがなく、そしてそれがコンプレックスでもあったタカコが最終的に上京通りこしてアフリカ行ってるのビックリ。いくら理由が理由でもすごい勇気だ。
    キャラクター的にどうしてもショーコがお気に入り なので、最終章の成長した様子には感動した。天性の才覚と体当たり学習の成果すごい!

    現実の再開発はこんなにうまくいかないだろうけど、物語としてはご都合主義でもハッピーエンドが見られてよかった。
    託児所とデイサービスの兼用は、イメージする分には理想的だけど現実では難しいだろうなあ。

  • わが町でも課題となっている商店街の活性化問題。やっぱり難しいです。

  • 地元から出たことがない市役所勤めの「メガネ」の姉と、家出をしたきり10年間疎遠になっていた「放蕩娘」の妹。ともに商店街に育てられたふたりが、寂れていく商店街を再興させようと、周囲を巻き込みながら奮起する物語。シャッター街と化す商店街の理由と活性化が進まない現状は、どこの商店街にも当てはまるのだろう。この物語のように、小さな街の商店街が再び活き活きした姿を見てみたいと思った。

  • タイトルと表紙に惹かれて借りてみた。
    中身は、シャッター商店街の話。
    今はどの地方でもきっとあるあるの内容。
    それこそ、私の住む街も同じようなもの。
    商店街の方々や役所の方々が悪戦苦闘してる。

    商店街の中にある本屋さんの娘2人。
    メガネが役所勤めのお姉ちゃん。
    放蕩娘が家出して帰ってきたら即出産の妹。
    2人と一緒に近くの大学関係者やらで奮闘しまくり。
    結果再開発されていく、今の地方都市の状況にドンピシャな内容で面白かったかも。

  • 山内さんの本の中で一番よかった。地元特有の商店街の文化というかルールを垣間見れたのが新鮮だった。

    ここまで強い地元愛を感じたことないからいいなと思う。特にイベント発案から大学生のレポートまでの件は好きだった。あのレポートに全て詰まってるなぁ…

    街づくりについて知れる本。参考文献も読んでみたくなった。

  • 光輝いていた頃の商店街を私は知らない。
    物心ついた頃からシャッターの降ろされた店ばかりで、目当ての店を渡り歩く間も裏寂しく早くこの場所から抜け出したいような気さえしてしまう。
    でも私は商店街が嫌いなわけではないのだ。
    夏祭りや隔週で開かれる朝市なんかへ行けば人が行き交い賑わう様子にわくわくする。
    この姿がが日常になればと強く思う。

    この小説を読んでいると乱暴に手を掴んであっちもこっちもとぐいぐい引っ張り回されるような感覚を覚える。
    そのどれもが楽しい発見に満ちていて熱の凄まじさにあてられて目眩がしそうなくらいに。



  • かつては栄えた商店街のアーケードも、今となっては寂しいシャッター通り。
    ウチダ書店の長女・タカコ(市役所勤め)と十年ぶりに戻ってきた次女・ショーコ(元ショップ店員)が商店街を盛り上げるために奔走すっしょ

    ---------------------------------------

    ”商店街を盛り上げるためにイベントをやりたい!
    でもお金はないから学生をタダで使おう。店舗を管理している不動産屋にも無償で協力してもらおう。
    なんの利益も生み出さないイベントだったけど楽しかった!感動して泣けてきちゃう!
    うちらに文句を言ってくるやつは皆クレーマーっしょ!”

    こんな姉妹の思考についていけず、違和感だけが積み重なっていった。
    商店街のことを考えているはずなのに、商栄会の事務局長が変わったことも再開発のマンション計画も知らないなんて、いったいどういうことだったんだろう。

    この姉妹は商店街のためではなく、自分たちが楽しむために動いていただけじゃないか。内輪ノリで当事者たちだけが勝手に盛り上がっているのが、どうにもこうにも歯がゆかった。

    有名な漫画のセリフ”「滅びろ商店街!!」”を思い出さずにはいられない。

  • 首都圏に住んでいるけれど、20~30年ほど前にはあった近所の小さな商店街が2つとも、今は無くなっている。多くの店が普通の住宅と差し代わり、ところどころに店のある住宅街の道といった感じ。私の小学生時代には夏祭りや七夕祭りなどが結構盛大に開催されていて、友達と行くのが楽しみだった場所だ。駅前にデパートやスーパー・商業ビルなどができて、寂れてしまった印象がある。そのデパートも今は撤退しちゃったけど。そんなことを思いながら読んだ。
    似たようなことが日本中の商店街で起きているんだろうし、今、日本の社会全体も商店街のように縮小しているように思う。色々、示唆に富んだ内容に思えた。

  • 私の家の近所にも、寂れた商店街がある
    お洒落な雑貨屋とかがあれば人も来るのに、と思っていたけど
    家賃、持家の事情、競争意識の低下、売れなくてもいい気持ち、保守的な姿勢と
    商店街には新しいモノが入りにくい沢山の事情があるんだ…とすごく勉強になった

    性別年齢に関わらず、1つのことに夢中になっている登場人物がみんなキラキラしていて
    一気見してしまった。すごく満足した気持ち。

  • 最高でしたね、今公開中の『あのこは貴族』に通じるところも

  • 商店街で育った姉妹がシャッター商店街を再生していく物語。
    軽いタッチの文章ながら、なるほどそんな事情があるのかと唸らされるところもあり。
    なかなか考えさせられる話でした。
    そして温かい終わり方!

  • 商店街の再生。
    本屋の姉妹がもがく。
    終着は再開発。
    これもまた真実かも。
    何が正しいのかは分からない。

  • 楽しかった。軽い読み物なのにグイグイ引っ張られる感じがすき。

  • リアリティがあるようなないような。

    しかし、バイタリティが有り余っているわけではないが、どこかに問題意識を持っていて、何かを変えたい、と思っている人の背中を押してくれそうな本。

    ただ、「放蕩娘」という他力本願がきっかけとなっているので、背中を押し切ってはくれない(-_-;)

    楽しんで読めた。

    払ってもいい金額:800円

  • 地方都市の市役所勤めのタカコ
    かつて栄えていた商店街は今はシャッターが増え
    父の経営する書店も売り上げが少ない
    ある日、家を出ていき所在不明だった
    妹のショーコが突然妊娠して実家に帰ってきた

    商店街でのファッションショーや憩いの場作り
    大学生の商店街ステイなどたくさんの企画を考え
    ショーコがリーダーになり商店街を大きく変えていく

    今までの山内さんの作品とは違うコメディタッチな作品で
    お気に入りにはなりませんでしたが読んでよかった

  • 図書館で借りて。
    田舎の寂れた商店街の活性化。商店街について新しく知ることが多かったが、小説としては特に刺さらず。

  • シャッター街となった地方小都市の商店街。そこで細々と続く本屋の姉妹。地元の市役所に勤める姉のタカコと両親の元に、高校を中退して東京へ行っていた妹のショーコがシングルマザーになって帰ってきた。商店街をもう一度地域の話題の場所にしたいと姉妹の奮闘が始まる。

    シャッター街の復興の前に横たわる様々な障害を、小説のなかでわかりやすく描いている。通り一辺の良かった良かったになっていないところが、面白かった。

  • 廃れた商店街を内田姉妹が建て直し計画!
    題名がイマイチ降りてきてないのですが、メガネはなんでしょう??読み取れませんでした、残念。。
    地方都市のセピア感が透けて見えるようで良かったです。他にも地方都市の小説を書いてるみたいなので是非読みたいです。

  • 富山県出身の山内マリコさんの小説、初めて読む。
    地方の商店街活性化をテーマに、シャッター街と化した商店街の本屋さんの娘が、悩みながらもなんとかしようと奮闘する姿が描かれている。
    多分モデルとなった富山の商店街を想像しながら読んで、親近感があった。
    でも結局再生は難しいかな…

  • 地方に故郷がある私にとっては、あー地元戻りたいなーって思う話。

    山内マリコさんは、地方で暮らす女性の葛藤がテーマでもあるけど、これは地方、地元の良さをテーマにしたような、前向きな本。

  • 地方の商店街の実態を鋭く描いてて興味深かった!
    山内さんはただ面白いだけじゃない、リサーチもしっかりされていて流石です!

  • この国はどうなるのか

  • タイトルからは想像がつかない内容だったが、シャッター通りと化した地方の商店街の再生をめぐる話とまとめてしまうと短絡的過ぎるだろうか。でも、巻末の参考文献を見ると、作者が商店街再生についてかなり勉強したことが見て取れる。物語の中にも「よそ者、若者、バカ者」という変革をもたらす者たちが登場し、また、シャッター通りがなぜそのままなのかについてのお店・地権者側からの反応も見て取れ、中々ためになる。もちろん、小説としても面白い。

  • 地方都市のアーケード商店街。昔はにぎわっていたのに、いまやシャッターを下ろした店が目立つ閑古鳥のなく商店街となってしまっている。

    そんな商店街の中にある「ウチダ書店」で生まれ育ったタカコは、出奔していた妹のショーコが帰ってきたことをきっかけに、商店街の再生に乗り出そうとする。

    地方創生のイベント、町おこしの物語・・・というと、ありがちな印象を受けるけれど、この物語が面白いことは安易な成功譚や失敗譚にしていないところだ。
    寂れている商店街の、「寂れる」本当の理由はどこにあるのか。商店の店主たちはなにを望み、生きているのか。

    個性的なキャラクターたちも楽しく、さらりと読んだ。

  • 潰れかけた商店街を活性化しようとする若者は勢いと愛情を持ってるんだけど、様々な人が住んでいる分、考え方も色々。
    愛着を持っているから正しいって訳ではもちろんなくて、どれが正解ってこともないので、実生活らしく混沌としてる。
    分かり易く解決はしないけど、良い結果になって良かったなと思います。

  • 商店街の老舗書店の長女タカコと放蕩娘の次女ショーコが商店街の活性化に挑む。いま日本のどこの街でも起こっているシャッター通りと化した商店街に活気は戻るのか?

  • 中心市街地に関わる人たちが語る言葉たちの意味はこういうことだったのかと気付かされました。
    この描かれている場所はあそこかな?と想像を膨らませながら読み進みました。
    まちなかは、住処でもあり商店でもあるんだよな。

  • 市役所勤めのタカコと突然臨月で帰って来た元東京のカリスマアパレル店員のショーコという老舗書店の姉妹と、シャッター街と化した商店街の、二〇一三年から二〇二二年。ファッションショーや出店スペースの提供等、若者を呼ぶ再興への奮闘が具体的でリアル。商店街と共にすくすくと育つ街子のちょっとした様子に癒される。

  • 商店街。シャッター街。
    地方でシャッター街に向き合う姉妹の記録。ユニークな登場人物の個性が光る。

  • どこにでもあるんだろうな、シャッター商店街。
    地元に住んでいるわけではないが、そういうわが家の近所にもあるもん。アーケードの老朽化で撤去したというようなニュースを新聞で読んだくらい。残念ながら、思い入れがないため商店街自体に行ったことがないという。引っ越してきて10年にもなるというのにね。
    ま、1番行きづらいのは、田舎で車生活なのに商店街となると駐車場に困ること。後は、魅力的なお店があるかどうかだなぁ。魅力的なお店があると、駐車場のことはなんとかしてでも行こうと思うもん。隣町の魅力的なお店には駐車場問題があっても行ったことあるし……。
    大型店舗も便利なんだけどさ、どこの街に行っても同じ風景にうんざりなんだな。そうならないためにも、個人商店を利用しないとね〜。

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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