熱帯

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907574

作品紹介・あらすじ

世紀の奇書『熱帯』に惹かれ、秘密を解き明かさんと集まった“学団”によるソウダイなる追跡劇。世界の中心に横たわる謎、その正体は――? 読み出したら止まらない、ロマン溢れる冒険譚。

感想・レビュー・書評

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  • デビュー作『太陽の塔』以来の森見作品。
    めくるめく世界を堪能させていただきました。

    ページをめくる毎に深く深く潜っていく感覚。
    謎が謎を呼び、誰かの語りが次の語りを呼ぶ。

    創作作業というのは潜水作業と似ている、と書いてあったのはどの本だったのか。

    あの世界でみた二両編成の電車にはきっと、長い長い失恋を終えた“彼”が乗っているんだろうと思った。

    • やまさん
      5552さん
      おはようございます。
      いいね!ありがとうございます。
      5552さんが1番です。
      ありがとうございます。
      きょうは、朝...
      5552さん
      おはようございます。
      いいね!ありがとうございます。
      5552さんが1番です。
      ありがとうございます。
      きょうは、朝から快晴です。
      私は体を動かさなくては。
      今日は、町まで往復4キロほど歩いてこようと思います。
      やま
      2019/11/12
    • 5552さん
      やまさん、こんにちは。
      こちらこそいいねとコメントありがとうございます♪
      暖かい太陽の光と、涼やかな風を浴びながら外を歩くのも気持ち良さ...
      やまさん、こんにちは。
      こちらこそいいねとコメントありがとうございます♪
      暖かい太陽の光と、涼やかな風を浴びながら外を歩くのも気持ち良さそうですねー。
      いい汗を流されましたか?
      2019/11/12
  • ひょっとして…という予感は、途中からありました。第四章の〈僕〉の夢に龍の根付が出てきたところで、予感は確信に変わりました。なんてこと! まさか、こんなカタチであのひとが主人公の小説が読めるなんてーー

    『熱帯』は2018年度直木賞候補になった小説です。きっと文学的に難しく語ることもできる作品なんだと思います。物語の入れ子構造は『千一夜物語』と同じだし、「本についての本」というコンセプトは『はてしない物語』に似ています。読みごこちは『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』に近い気もするし、閉じた円環構造は『フィネガンズ・ウェイク』や『ドグラ・マグラ』のようです。

    でも、そんなことはどうでもいいのです。
    私にとって『熱帯』は純粋なキャラ萌え小説でした。

    森見作品の萌えキャラといえば、黒髪の乙女やアオヤマくんを挙げる人が多いでしょう。樋口さんや芽野と芹名も意外といい線いってるかも。でも、私にはひそかに愛する別のキャラがいます。初期の短編に一度出てきたきりの、名前もわからない青年。たくさんの奇妙な物語を語って人々を魅了しながら、本当の自分については語ることなく姿を消してしまった〈先輩〉ーー

    幻想小説の謎に答えなどありませんが、私には『果実の中の龍』(@きつねのはなし)の〈先輩〉こそ佐山尚一だと思えてならないのです。『熱帯』は、物語を創ることに取り憑かれた青年(先輩=佐山=森見)が、「物語とは何か」「創造するとはどういうことか」について、初めて本気で向き合った物語じゃないでしょうか。虚構の城に閉じこもることで自分を守ってきた男が、プロのクリエイターとして初めて、殻を打ち破って内面を晒け出した物語だと思うのです。彼らしく、複雑怪奇なフィクションの形をとりながら。

    だとすれば、『熱帯』は〈僕〉の成長物語とみることもできるでしょう。
    「僕はつまらない、空っぽの男だ。語られた話以外、いったい、僕そのものに何の価値があるんだろう」
    そう自嘲した物憂げな青年が、紆余曲折を経て、海に向かって両腕を広げ、
    「〈創造の魔術〉とは思いだすことなんだ」
    と過去を肯定できるようになるまで、生きる力を取り戻すまでの、長い放浪の物語だったのかもしれません。
    生き延びるために語り続ける、シャハラザードの末裔の物語ーー

    森見先生は「そんな風に書いたつもりはない」と仰られるかもしれません。「妄想もタイガイにしたまえ」と。しかし敬愛する先生の言うことでも、ここはゆずる訳にはいきません。異論はことごとく却下です。もし先生の意図が私の解釈と異なるというのなら、それは先生の意図の方が間違っているのです。

    私の『熱帯』だけが本物なのですから。

    • 佐藤史緒さん
      地球っこさん、いらっしゃいませ。
      こちらこそレビュー楽しく読ませてていただいております!

      うふふ、「きつねのはなし」読んでいただけま...
      地球っこさん、いらっしゃいませ。
      こちらこそレビュー楽しく読ませてていただいております!

      うふふ、「きつねのはなし」読んでいただけましたか! 最新作が最初期の作品とつながってて面白いと思ったのですが、同じ意見の人がいなかったので、地球っこさんにご賛同いただけて嬉しいですー
      (*´∀`*)
      2019/03/05
    • kuma0504さん
      佐藤史緒さん
      つい、佐山尚一「熱帯」のレビューを読んだものだから、いろいろ彷徨い歩いて、まさかの〈創造の魔術〉に遭っていたと気がつくまでかな...
      佐藤史緒さん
      つい、佐山尚一「熱帯」のレビューを読んだものだから、いろいろ彷徨い歩いて、まさかの〈創造の魔術〉に遭っていたと気がつくまでかなりかかりました。

      素晴らしかったです。
      私は既に「きつねのはなし」を読んでいるので、
      森見登美彦「熱帯」を読むのが楽しみです。
      2021/03/21
    • 佐藤史緒さん
      kuna0504さん、こんにちは。
      そうなんです、これは創造の魔術なんですよ。どこまでが事実でどこからがフィクションなのかは〈魔王〉しかわか...
      kuna0504さん、こんにちは。
      そうなんです、これは創造の魔術なんですよ。どこまでが事実でどこからがフィクションなのかは〈魔王〉しかわからないのです。

      これから読まれるのですね。
      良い読書体験となりますよう!
      2021/03/21
  • 文庫になるのを待ちきれず、単行本を手に入れました。
    森見さん、よくぞこんな遠い処まで私を連れてきてくださいました。読み終えたあと暫く現実に戻ることが出来ませんでした。
    内容に触れたくても触れられない。言葉にするとこの幻想的で摩訶不思議な世界がわたしの中から消えてなくなってしまいそう。そんな充足感と不安感がこんがらがったままの状態です。
    もうね、気になる人は読んでみて!なんて、無責任な感想しか書けません。
    でも、これだけは言っておきますね。
    滅多に出逢うことの出来ない物語。
    物語の重力に引き込まれ戻ってきた世界は、もしかしたら似て非なる世界かもしれませんよ……と。

    『この世界のどこかに穴が開いていて、その向こうには不思議な世界が広がっているという感覚。つねに「神隠し」が我が身に迫っているという感覚。それは不気味なものであり、なおかつ甘美なものだった。』
    登場人物の1人である佐山の言葉なのですが、きっと常々、森見さんも感じておられることなのでしょう。この作品から此方側へと、今まで以上にその感覚が色濃く伝わってきました。

    「物語ることによって救われる」のって、人間だけじゃなくて、きっと何十年、何百年、何千年……語り継がれていく物語自体もなんだろうなと思いました。

  • 誰も結末を知らない謎の本を追う不思議な旅。

    遭難しかけて何とか戻ってきた…

    この本の感想を一言で言うとそうなる。
    僕にとってはなかなか難しい本だった。
    脈絡があるのかないのかわからないストーリーの中を、読みやすい文体なので迂闊にもフワフワと歩いてしまったため、途中で不安で不安で仕方がなくなる。

    あれ?道間違えたかな?って。

    でも、戻ることは既に不可能。
    「大丈夫!」って自分に言い聞かせ、騙し騙しなんとか歩いて、やっと帰ってきました…
    523ページの不思議な旅。奇妙な読書体験。

    森見ワールドは初めてだけど、恐ろしいです…

    旅をしながら僕の頭の中で鳴っていたのは、亡くなった本田美奈子さんの「あなたと、熱帯」。
    あの曲もこの本と同じように、どこに連れて行ってくれるのか、とても不安にさせてくれる曲。
    よって、この本を読むときのBGMにオススメです(笑)

    • くるたんさん
      たけさん♪熱帯からおかえりなさい♪心からおつかれさまでした!
      たしかにこの熱帯は摩訶不思議、ぐるぐる彷徨い必死に出口を求める感覚でしたね。
      ...
      たけさん♪熱帯からおかえりなさい♪心からおつかれさまでした!
      たしかにこの熱帯は摩訶不思議、ぐるぐる彷徨い必死に出口を求める感覚でしたね。
      結局、何一つわからなかった私ですが(笑)なんか楽しい時間でもありました(*´ー`*)

      「夜行」もこれ系、不思議な感覚でした♪



      2019/11/29
    • やまさん
      たけさん
      こんばんは。
      いいね!有難うございます。
      やま
      たけさん
      こんばんは。
      いいね!有難うございます。
      やま
      2019/12/01
    • たけさん
      くるたんさん!
      やまさん!
      コメントありがとうございます!
      くるたんさん!
      やまさん!
      コメントありがとうございます!
      2019/12/01
  • 読み終わる前に何故か手元から消えてしまうため誰も読み終えた事がない本「熱帯」作者森見登美彦を先頭にその謎の結末を追う人々が次々に現れ、本に纏わる自分のエピソードを語っていく。未読者で構成された読書会「学団」での検討辺りまでは現実的だが作者を知る人物が失踪し、読書会の一人が後を追う辺りから幻想が混じり始める。そして「熱帯」の世界にシフトしたかと思うと今度は現実が裏に迫ってくる。最終的に到達した結末は裏か表か。そもそも現実と幻想どちらが表か裏か。煙に巻かれてぼんやり微妙に終わるのが少し物足りないがそれも狙いかな。前の話に被せるように語られていく千一夜物語がモチーフの様々な不思議な話が魅力的。昔ネタ元の千一夜物語読んだけど結構どうでもいい話があった印象。今読み返すと違う感想になるかなぁ。

  • 千一夜物語が多く出てきますが、不思議なふしぎな物語。
    最後の2ページで・・・
    森見さんらしい面白い本でした。

  • 森見登美彦さんの作品を読んだのは3作目です。
    あらすじの紹介がとても面白くて、「これは絶対、読まなくちゃ」と思いました。

    第一章の「沈黙読書会」の小説家の森見の語り、第二章の「楽団の男」の白石さんのお話し、第三章の「満月の魔女」の池内氏の手記までは、非常にわかりやすく、誰も最後まで読んだことのない幻の小説『熱帯』とは何か、めぐる物語が本当に面白くて、最近読んだ小説の中で一番引き込まれました。
    ただ、第四章の「不可視の群島」から出てくる「僕」といういう一人称が誰なのか、私は読めば読むほどわからなくなっていき、理解力が足りないのか、物語も理解不能なところが多くなってしまいました。
    最後の「後記」を読むと、また、第一章、二章の記憶がよみがえり、こういう結末なのかとストンと納得しました。

    個人的に、昔住んでいた。京都の街の描写が多く、よく利用した、叡山電鉄の修学院駅、京大の前の「進々堂」のカフェなどはとても懐かしかったです。

  • 自分好みの世界観とそうじゃない世界観、どちらもブレンドされたような物語。幻想的な雰囲気バッチリにそそられるも途中から一気に好みではない展開に置いてけぼり感。それでも垣間見える幻想さに惹かれ最後まで読まずにはいられなかった。今、一体どこの世界でどこにいるのか、まるで永遠に無限の迷路を彷徨っている感覚が終始つきまとう。そして本を閉じ真っ先に「熱帯とは?」と、こちらが問いかけたくなる摩訶不思議な物語。でも嫌じゃない。むしろこの世界、理屈抜きに好き。

    • くるたんさん
      たけさん♪
      おはようございます♪
      熱帯は 黒と白の中間、グレーなのかな。

      夜行(黒)と夜は短かし…(白)がブレンドされている印象でした。
      ...
      たけさん♪
      おはようございます♪
      熱帯は 黒と白の中間、グレーなのかな。

      夜行(黒)と夜は短かし…(白)がブレンドされている印象でした。
      黒があったから読み進められた私です(笑)

      ほんと、本って相性がありますよね。

      相性が合う作品に出会えると幸せですよね(*´ー`*)
      2019/11/30
    • たけさん
      ということは、くるたんさんは「夜行」の方がお好みなんですね。
      「夜行」もそのうち挑戦したいです。
      ということは、くるたんさんは「夜行」の方がお好みなんですね。
      「夜行」もそのうち挑戦したいです。
      2019/12/01
    • くるたんさん
      たけさん♪

      はい( ´ω`)و
      たけさん♪

      はい( ´ω`)و
      2019/12/01
  • 物語を読んでいる人が物語を創り出すらしいということで、「熱帯」を読みたいと思った時、その前にエンデの「はてしない物語」を読んでからと決めた。
    「はてしない物語」は欲望が作り出す世界だったが、「熱帯」は正体不明・支離滅裂の夢の世界のようだった。

    「見ようとしなくては見えるものも見えない」
    「何もないってことは何でもあるってことだ」
    「水平線は目に見える。が、存在しているか?」

    いったい何を読者に見せ感じさせたかったのか。
    とうとう最後まで訳が分からないまま単純にストーリーを楽しみました。

  • 登美彦氏版の『千一夜物語』…おもしろくないわけないではないか!

    物語は『熱帯』という名の1冊の本から始まります。
    誰も読み終えたことがないという不思議な本。
    この本のことを語り始めた1人の女性の話は、やがて次々と語り手を変えながら読者を物語の奥底へと深く深く導いていきます。
    入れ子になった物語の中の物語…それはシャハラザードの語る寝物語のよう!
    毎晩こんな風に語られたら、そりゃ続きが気になって殺せないよな…とシャハリヤール王の気持ちを味わったのでした。

    謎に次ぐ謎、不条理で不気味な出来事…理屈では説明できない物語なのだから、もう語り手に誘われるままに流されていくしかないじゃない。
    物語に深く深く潜った先で胸躍る冒険を味わい、最後のページを閉じて一息ついたとき、これまでいた場所によく似た違う場所に来てしまったような感覚にどきどきしました。

    ううむ、やはり登美彦氏が好きだ…と想いを新たにした読後でした。
    これからも登美彦氏が導いてくれる世界に、諸手を挙げて飛び込んでいく所存です。

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著者プロフィール

1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる。著書に『きつねのはなし』『有頂天家族』など。

「2022年 『四畳半タイムマシンブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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