- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163907581
作品紹介・あらすじ
大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨(ゆり)はある時、かつての親友・里子(さとこ)が無邪気に語っていた言葉の意味に気付き、衝撃を受ける。胸に重いものを抱えたまま中学生になった友梨。憧れの存在だった真帆(まほ)と友達になれて喜んだのも束の間、暴漢に襲われそうになった真帆を助けようとして男をナイフで刺してしまう。だが、翌日、警察に逮捕されたのは何故か里子だった――幼い頃のわずかな違和感が、次第に人生を侵食し、かたちを決めていく。深い孤独に陥らざるをえなかった女性が、二十年後に決断したこととは何だったのか?社会に満ちる見えない罪、からまった謎、緻密な心理サスペンス。「読者を引っ張らずにおかない独特の謎」「行間からにじみ出る緊張感がすごい」「自分にもなじみのあるこの関係性と舞台に引き込まれた」雑誌連載中から反響続々。「サクリファイス」の著者が女たちの焦燥と決意を描く、傑作長編!!
感想・レビュー・書評
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読み始めた瞬間から不穏な雰囲気で進んでく。
さすが近藤さん作品で読みやすいし分かりやすいから、2時間位で一気読みした。
お互いの殺人の肩代わりで成り立つ関係かと思ったけど、紐解いていくとそこには確かに友情も存在していて、一言では語れないような3人の40年。
小学生から高校生ぐらいにかけての女の子特有の友情の感覚が分かるなと思った。最後の最後で言われていたこの時期の友達はある意味恋愛に近い、自分の親友が誰かの為に尽くす事が許せないみたいなのってちょっとわかる気がするな…。
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子どもの頃は友達関係が人生や生活の全てで、その小さな世界は独占欲や嫉妬などの複雑な感情で揺れ動きもがいている。同じ団地に住んでいた三人の少女の40年。運命が交差しながら新たな事件が引き起こされていく。繊細な心理サスペンス。とても面白かった。
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幼い頃に友達を見放してしまった、という罪の意識が鎖となり登場人物達をくくりつけ解こうともがくも解けないまま、鎖は根本から千切れてしまった。その鎖を残された者は今も囚われ引きづられながら生きている、そんな感じがした。
ふいに空いたその穴を闇雲に塞ごうと何故かしてしまう。もしその穴があのままならここまでこじれなかったかもしれない。
でも塞がなきゃいけなかった。漏れてはいけない。覗かれてもいけない。そこには誰にも見られてはならないものが隠されているから。
そんな傷は誰しもが少なからず抱えている。傍目にはそんなもの持っていないように見せて表の顔で誤魔化すことでそれを守れるから。でも守ろうとしたのに守りきれなかった。
それは同じ穴をみなが隠したのではなく、其々が別々に穴を隠そうとしたから。塞ごうとしたから。
鎖は彼女たちを繋げた。鎖が絡まっている間はどこで会えると安心できた。だから誰もその鎖を断ち切らなかった。
不安と安心と繫がる限り裏切らないだろうという呪詛をこめて。
読了感はざわざわする。同じ場所に同じ時期住み暮らしていた繋がりがもたらしたもののひとつと言えるような気がした。 -
三人の重く奇妙な関係性を軸に、じわじわと話が展開していく。
「結局、誰かの人生を本当に変えることなんて、他人にはできないんだよ。」という言葉が印象に残った。このことにもっと早く気づいてれば、罪が繰り返されることはなかったのかもしれない。 -
近藤先生は「食事描写がとてもうまい作家さん(ビストロ・パ・マルシリーズの印象)」というイメージだったが、それ抜きでもどえらい作品を書くのか…とびっくりした。
終始淡々とした書き味なのに飽きが来ない文章力で、一気に読んだ。
レベルが違うが、小学生の頃の苦い思い出が蘇ってきて、自分にもダメージが来たりした。