- 本 ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163907741
作品紹介・あらすじ
◆考古学ではわからなかった「世界史」の最先端◆
ヒトゲノム計画以降、急速な進化を遂げたDNA解読技術によって、
私たちは数万年前の人類のゲノムも抽出・分析できるようになった。
それにより、遺骨や遺跡の存在が不可欠だった従来の歴史学は一変。
ゲノムの痕跡を辿ることで、骨さえ見つかっていない太古の人類から
現在の私たちへと繋がる、祖先の知られざる物語が解き明かされた――
・ホモ・サピエンスはネアンデルタール人と何度も交配していた
・DNAにのみ痕跡を残す、知られざる「幻の人類」が発見された
・狩猟から農耕への移行を加速させたのは、二つの突然変異の出現だった
・現存する全人類の共通祖先は、わずか三五〇〇年前、アジアにいた
・ヨーロッパを二度襲ったペスト菌はどちらも中国からやってきた
【目次】
■序 章 人類の歴史はDNAに刻まれている
ヒトゲノム計画以降、急速な進化をとげているDNA解読技術によって、考古学
ではわからなかった祖先の物語が次々と明らかになっている。戦争、侵略、移動、
農耕、病、セックス……。本書は人類の旅路をゲノムで読み解く新たな歴史書だ。
〈第1部 人類の誕生から繁栄まで〉
■第一章 ネアンデルタール人との交配
四万年前のネアンデルタール人。その骨からDNAを抽出すると驚くべきことが
わかった。私たちの祖先は彼らと何度も交配し、子をなしていたのだ。だがそれ
だけではない。私たちのDNAには他にも、未知の人類集団の痕跡が残っている。
■第二章 農業革命と突然変異
長らく狩猟生活を送っていた人類は、一万年ほど前から突如として農耕・牧畜を
開始し、それは一気に世界中へとひろがった。そのきっかけは何だったのか?
実は、農業革命の時期には、ある二つの突然変異が人類のあいだに拡散していた。
■第三章 近親相姦の中世史
シェイクスピアの戯曲でも知られるリチャード三世。死後五〇〇年以上経って、
彼の遺体が駐車場の地下から発見された。だがそこから抽出されたDNAは、現
在生きている男系子孫のDNAとは一致しなかった。一体どういうことなのか?
〈第2部 世界はどこに向かうのか?〉
■第四章 人種が消滅する日
かつて遺伝学は、人種差別や優生学と繋がったこともある。しかし現在では、人
種間よりも人種内の方が、実は違いが大きいことがわかっている。突然変異によ
って白い肌の人間が現れたのも、歴史的にみればごく最近の話にすぎないのだ。
■第五章 遺伝学は病気を根絶できるか?
数々の遺伝子が発見されるにつれ、ゲノム・データから個人の病気を特定・治療
することへの期待が高まっている。患者のゲノムに潜む特異な変異を炙りだす手
法も開発されたが、そ
感想・レビュー・書評
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遺伝子から分かるいくつかのトピックスについての本。
もちろん、この手の本では定番になっているネアンデルタール人やデニソワ人との交配についても書かれている。
王族の遺伝子の話など、話題がヨーロッパに偏っているところは背景の理解が薄い日本人が読むにはつらいところだ。ただ、ヨーロッパには家系図の記録が豊富だという意味でアドバンテージがある。ハプスブルク家などで幼くして死んでしまう子供が多かったという事実は、ハプスブルク家がどれくらい重要な家系であったかよく理解していないながらも、遺伝的な問題がヨーロッパの歴史に影響を与えたということを教えてくれる。
また同じくヨーロッパの歴史的な部分での知識を欠くところでもあるが、最初の植民よりほぼ外部との交流がない四十万人程度の少数の国民という特殊な環境におけるアイスランド人の遺伝的特性の説明は歴史的背景が分からなくても面白い。
こういった遺伝の話をするときに、離れがたく課題になる人種や優生学の問題について、著者は人種というものはないという立場を取る。その意味では、一部で悪名が高いニコラス・ウェイドの『人類のやっかいな遺産』についても明確に反論をしているが、科学的な装いを取ることができるために同時にやっかいな問題である。これに対して、ルウォンティンの人種間の差異は人種内の差異よりも小さいという説を引いているが、これは『交雑する人類』でデイビッド・ライクが、個人のDNAを検査すれば明らかにどの人種のカテゴリーに入るのかをほぼ確実に当てることができることから、逆に科学的事実の解釈を我田引水する例として批判する。これらは微妙な話であるが、著者の姿勢もまた人種の話から逃げているように思われる。
遺伝子の話としてヒトの遺伝子数がまだわからなかったころに科学者の中で行われた数当ての賭けの話が紹介されている。結果、解読された遺伝子の数が想定していたよりもずいぶんと少なく(二万超)、これはカイチュウやバナナ、ミジンコよりも少ないことが大きな驚きをもって迎えられた。また、ゲノムのほとんどが遺伝子ではなく、「ジャンクDNA」だったことも同じく驚きであった。このジャンクDNAの領域がどのような影響を与えるのかについても新しい課題である。
最後に犯罪と遺伝子の関係が語られる。こちらも氏か育ちかや優生学の議論につながり、ナイーブな議論である。第二次世界大戦のオランダの飢餓状態のときに生まれた子供に関するエピジェネティックスの話も定番になりつつある。
広く遺伝子に関わる話が語られたが、『人類全史』と名付けるには少し包括さが不足している。ちなみに原題は”A Brief History of Everyone Who Ever Lived: The Stories in Our Gene”である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000058224
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/718495 -
2018.01.27 HONZより。人類進化の研究は、骨・歯・排泄物から、ゲノム解析に移行した。既に滅亡した未知の人類が見つかるかもしれない。
2018.01.27 予約
2018.02.04 2018年1月の読めなかった本 -
面白いけど難しかった
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冗長で読みにくい。
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DNA古人類学の最新の知見には驚いた。
ヒトの肌・髪・目の色の決定遺伝子は11個であり、それを調べるとヨーロッパでの白い肌は7700年前には確認されているという。
ということはヨーロッパには黒い肌のヒトが5万年前に進出し、その後1万年前までには白人化がなされたということか。
今後化石資料の研究が増えるとともに白人化がどこでいつ頃進んだのかも判明するかと思うと興奮さえ覚えた。
現代の白人至上主義者にぜひ教えてあげたい知識である。
しかし、本書はまだまだ資料が少ないせいか、歯切れの悪い文章で読みにくい。翻訳書のせいかもしれない。さらなる研究結果を読みたくなる本である。
2018年4月9日読了。 -
ゲノム・遺伝子を題材にした人類の歴史、ゲノムや遺伝子について最近の研究を踏まえた解説の2部構成。
人類がネアンデルタール人と混血していると判明したことは、かつて読んだことがあった。我々が直線的に進化してきたわけではなく、行きつ戻りつ、混血を繰り返しながら、ある者は途絶え、ある者は子孫を残し今を構成する。その壮大さは簡単な想像を許さない。1000年も遡れば、今の欧州に生きる人の共通祖先がいるという。俄かには信じがたい、驚くような話に満ちている。
一方、翻訳書ゆえか、原書に問題があるのか、読みづらく、意味の取れない箇所があったのが残念。読み易ければもっと楽しめたのに。 -
第1章途中 ミトコンドリアDNAで母系が、Y染色体で〜の前まで読了