美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道

  • 文藝春秋 (2018年2月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784163907789

作品紹介・あらすじ

2018年が女優生活60周年となる岩下志麻さんが自らが出演してきた数々の作品について詳細に語り下ろしました。岩下さんほど多彩なフィルモグラフィーを持つ女優はなかなかいません。60年代前半は巨匠・小津安二郎監督の「秋刀魚の味」に主演し、「古都」「雪国」など川端康成原作の作品では可憐な演技を見せて松竹の清純派看板女優として活躍。順風満帆の女優生活でしたが、67年、篠田正浩監督と当時タブーとされていた主演女優を続けながらの結婚に踏み切り、独立プロ「表現社」を立ち上げて新たな道を切り拓きました。「結婚したからダメになったと言われたくない」との思いを抱いて篠田監督と二人三脚で「心中天網島」「はなれ瞽女おりん」といった名作を生み出します。74年に出産から復帰すると松竹を退社、「鬼畜」「疑惑」といった松本清張原作・野村芳太郎監督の一連の作品で情念の女を演じ、新たな一面を披露します。80年代~90年代はなんといっても「極道の女たち」シリーズ。こうした作品についてはもちろん、「五瓣の椿」「卑弥呼」「悪霊島」「鬼龍院花子の生涯」「瀬戸内少年野球団」といった記憶に残る作品、さらに大河ドラマ「草燃える」「独眼竜政宗」「葵 徳川三代」に関する秘話も満載です。今でこそ「大女優」のイメージが強いですが、岩下さんは、主演女優をつとめながらの結婚、出産、独立プロでの映画製作などタブーの打破、新しいことへの挑戦を続けてきた反骨の人です。また「普通の人の役はやりたくない」と言い、悪女、狂女でこそ輝きを発揮してきました。インタビュー・構成は「あかんやつら」「天才 勝新太郎」など映画愛溢れる作品でお馴染みの春日太一さん。岩下さんの言葉から、医者志望で女優に興味がなかった高校生が、徐々に女優という仕事に憑りつかれていく様子を浮かびあがらせます。女優の年代記であり、仕事論であり、同時に美の下に隠す狂気を語った濃厚な一冊です。

みんなの感想まとめ

多彩なフィルモグラフィーを持つ女優の人生と演技に迫る一冊で、岩下志麻が自らのキャリアを振り返りながら、役作りや演技論を真摯に語ります。著者との対談では、彼女の記憶力や役への情熱が際立ち、サバサバした性...

感想・レビュー・書評

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  • かれこれ10年ほど前の話だが、小津安二郎作品集を大人買いしたことがある。
    監督最後の作品が「秋刀魚の味」で、登場する岩下志麻さんの綺麗さにそれはもう驚いてしまった。そこはかとない品があり、立ち姿も美しく声も張りがあり、異次元の美しさだった。
    それまで見て来たのは野村芳太郎監督の「五辨の椿」や「鬼畜」「疑惑」などであり、それらの作品(ある意味狂気の演技が)がその後の五社英雄監督の「極妻」シリーズへの布石となったのかな、という程度の理解だった。
    いやいや、この本を読むととてもそれどころではない。
    出演作品すべてにちゃんと物語があり、監督さんとの思い出やエピソードもあり、この大女優さんにここまで対面で聴きこんだ映画研究家・春日太一さんには感謝しかない。

    映画界に入る前は、精神科医になるべく猛勉強をしていたというのも初耳。
    川端康成原作の「古都」では、その頃のふた役の撮影方法に驚き、夫・篠田正弘監督との出会いの秘話に思わず頬がゆるみ、妻・母・女優の狭間で揺れ動いていた時期、その葛藤を突破したのが「はなれ瞽女おりん」だったとか(この映画が一番好きかな)・・もう、とてもここでは載せきれない。
    結婚したら仕事を辞めて家庭に入るのがまだ当たり前だった時代、「自分と結婚したために岩下志麻がダメになったと言われたくない」と言った篠田監督は、誰よりも女優としての成長を応援してくれた存在だったと言える。
    結婚してもなお主演女優を続けていくという道は、岩下さんが開拓したものだったのね。

    役に「憑依」するタイプの女優さんなので、そこから生まれたエピソードも数々。
    「鬼畜」の時は、新幹線の通路をバタバタ走り回る子どもたちの襟首をつかんでトイレの前に連れて行き「お前ら静かにしないと線路にぶち落とすぞ!」とどやし付けたらしい。
    ああ、気持ちいい・笑 
    丹波哲郎さんだの原田芳雄さんだの、西村晃さん、伊藤雄之助さん、小沢昭一さん、岡田英次さん等々懐かしい名前も続々登場する。
    女優歴60年は伊達じゃないのだ。

    というわけで、読後「秋刀魚の味」を再視聴した。小津監督は必ず画面の中に赤色を入れるという話をこの眼で確認した。
    また、俳優さんの衣装を監督自身が生地から見立てるというので、衣装も大注目してみた。
    映画の新しい愉しみ方を教えてくれた本書。
    岩下志麻さん、またお元気な姿をスクリーンで拝見したいものです。

  • 岩下志麻を知り尽くしたいという春日太一と受けて立つ岩下志麻との対談は、とても真摯で読み応えがありました。出演作ごとに、役作りや演技論、共演者たちの思い出を語られます。将棋や囲碁の達人は自分の対局を全て再現できるとは聞いていましたが、岩下さんの記憶も細部まで鮮明で驚きました。紛れもないクールビューティですが、性格はサバサバして男気さえ感じます。演者としては、真面目で一生懸命。天才肌ではなく、精進を重ねる感じですね。インストールするように役に入り、終わってからも暫く役が抜けないそうです。プライベートは深く語られませんが、自分から告白したエピソードに驚きました。また、娘さんは彼女の作品を一切見ないそうです。どういう親子関係か、また、監督である夫との夫婦関係も知りたい。外国なら間違いなくプライベートを扱った本も出ているでしょうね。ともあれ、これだけ情熱を注いでこられた日本映画を如何に見ていないか、この機会に日本映画の温故知新をしたくなりました。そして、彼女が最後の一作に希望する「サンセット大通り」を見たいものです。

    • nejidonさん
      myjstyleさん、私も同じ本を読みました!
      だいぶ前の話ですが、本棚にも入ってます。
      岩下さん、素敵ですよね。憑依型の女優さんなんで...
      myjstyleさん、私も同じ本を読みました!
      だいぶ前の話ですが、本棚にも入ってます。
      岩下さん、素敵ですよね。憑依型の女優さんなんですよね。
      読んだ後、ずいぶん観直した作品もあります。
      「サンセット大通り」ですか。また難しい役を。。
      でもきっと心を惹きつける演技だと思います。
      2020/08/19
    • myjstyleさん
      コメントありがとうございます。
      憑依というか、私はインストールという印象を受けました。「サンセット大通り」はご本人の希望です。矜持を感じま...
      コメントありがとうございます。
      憑依というか、私はインストールという印象を受けました。「サンセット大通り」はご本人の希望です。矜持を感じました。誰か、ポンと資金を出しませんかね。天下の大女優のために。
      2020/08/19
  • 岩下志麻は好きな女優の1人ではあるんだけど、なんか全ての演技が「岩下志麻が演じる◯◯」て感じなんだよなー主役ってそんなもんかなー顔が綺麗過ぎて演技が入ってこないだけかなー普通のエビじゃなくて甘エビの脚が歯に挟まったような感覚するんだよなーそんなもん飲み込めよ繊細野郎って言われるのかなーと思ってたところこちらの本を読んで納得。

    「本場フランスで5年修行、帰国後は◯◯レストランで主席シェフとして」とか自分で言ってないでブラインドで100皿出した中でてめぇの皿が一番美味いと言わせてみせろよ、それが一流の料理人の証だよ!

    岩下志麻には関係ないんですけどなぜかそういう気分になる本。作り込みの際の下書き鉛筆が残ったままの演技なのかな。っていう。

    「この子の七つのお祝いに」についてのコメントが爆笑だった。

  • 時代劇や映画史の専門家である著者による、大女優・岩下志麻へのインタヴュー。自らの芸能人生を振り返る彼女と、いちファンとしての顔を良い意味で隠しきれない著者の楽しげで和気藹々とした雰囲気が伝わってくる。本文中で登場した各作品をチェックしたくなった。

  • 岩下さんの演じることへの入り込みは聞いていたが、
    ・役から抜けるのに一ヵ月ぐらいかかる
    ・他の仕事が入ると、その役作りをしているうちに(前の役は)完全に消えていく
    ・だから、自分が戻れなくなるかもしれないという恐怖はないが、自分は何者なんだろうっていう、そういう問いかけがある
    ・演じていない時は何もできない。そういう恐怖が役と役の間に来る
    というところは驚異的。
    この本によると、たまたま縁あって役者さんになった方ということ。だから演出や脚本を信じきって、その身ごと入り込んでしまうのだろうか。
    小津監督との写真が良かった

  • この間、東京堂書店へご挨拶へうかがったついでに購入。いわばジャケ買いだ。志麻姐さんは役にのめり込むタイプ。可憐な女にもなるし、気の狂った女にもなる。太古の女王、盲目の旅芸人、弁護士、極妻。近親相姦母にDV加害妻。極妻のとき、知人からかかってきた電話に「おう、わてや」とドスの効いた声で答えるという失敗をしてしまったのは有名。
    役が憑依しすぎて、元の生活に戻るまでにしばらく時間がかかるらしい。その感覚、いろんな方にインタビューをする私もなんとなくわかる。
    この本自体は、各エピソードが薄めで勿体ない気がした。厚さが倍になっても良いので、突っ込んだ話を読みたかった。

  • 【女優人生の全てを語り尽くす】女優生活六十周年を迎えた岩下志麻が、清純な娘役から悪女・狂女、極道の女まで、その演技のすべてを語る。聞き手は春日太一。

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著者プロフィール

映画史・時代劇研究家。1977年東京都生まれ。日本大学大学院博士後期課程修了。映画界を彩った俳優とスタッフたちのインタビューをライフワークにしている。著書に『時代劇聖地巡礼』『時代劇聖地巡礼 関西ディープ編』(ミシマ社)、『天才 勝新太郎』(文春新書)、『ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまで』(文春文庫)、『すべての道は役者に通ず』(小学館)、『時代劇は死なず! 完全版』(河出文庫)、『大河ドラマの黄金時代』(NHK出版新書)、『忠臣蔵入門――映像で読み解く物語の魅力』(角川新書)など多数。『鬼の筆――戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』(文藝春秋)で第55回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

「2026年 『自宅で楽しむ 週末邦画劇場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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